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木曜日, 5月 26, 2022

スタートアップと地域企業が共創で挑む食品ロス課題解決〜hakkenの乾燥野菜によるイノベーション

世界には、今この時も食べ物を求め飢えに直面している人々がいます。一方で、日本の食糧廃棄量は深刻です。食品を焼却処理する際に排出されるCO2は地球温暖化の原因ともなっています。大量の食糧が廃棄される現実は、誰もが知っている矛盾であり、誰も解決できなかった難題でもあります。株式会社hakkenは、驚きの発想で廃棄させずに野菜をリメイクし、扱いやすい乾燥野菜を使ったサービスを展開、フードロス解消にアプローチしているスタートアップです。可能性に満ちた乾燥ロス野菜が創るイノベーションは注目を集め、NAGANO-OIC 2021では、2社から採択されました。果たしてその協業内容とはどんなものなのか。地域に根ざした小規模生産を活かすhakkenのビジョンとはー。穏やかに淡々と語る言葉に秘められた熱い胸の内について、代表の竹井氏にお話を伺いました。

気になるhakkenの事業内容とは?

ー御社の事業についてどのようなサービスを展開しているのか教えて下さい!

竹井:乾燥野菜をそのまま、あるいは加工を加えた商品にして、一般販売や企業との共同商品開発、食品メーカーへの卸売をする『UNDR12』というブランドを運営しています。

「自由水分」と呼ばれる“微生物が繁殖できる水分量”を12%以下まで落とすことで、野菜の保存期間を20倍以上に伸ばすんです。生野菜の9割は水分なのでその分重量も軽くなり、その結果、保管と輸送コストを下げることが可能になります。

今年の2月にECサイトを立ち上げたばかりで、現在は、toC、toB販売を進めている所です。
中でもtoBのニーズは常に高く、累計21社からご依頼をいただいている状況です。

ー例えばどんな商品を作られているのでしょうか?

竹井:既存商品としては、広島のメーカーと共同で作った本格的な四川の辛味と旨味を味わえる高級ふりかけ「四川坦々やさい」、収穫当日に乾燥させることで野菜の香りがとても濃い乾燥野菜パックの「濃厚やさい」などがあります。また最近は、挽き肉と混ぜれば一瞬で餃子のタネが出来上がる「餃子キット」を作っていて、試行錯誤の末ついに宇都宮餃子会の承認を取得しました。その他にも、養殖魚のロスを粉末化して野菜パウダーと合わせることで、アミノ酸を掛け合わせ旨味が倍増される出汁パックにも挑戦しています。また、乾燥ネギのポタージュやピザソースや具材作り、愛媛県では柑橘系にも挑戦。長野県の給食配給業者と一緒に、給食用の野菜パンを作ったりもしています。

世界の年間食糧支援量より日本の食糧廃棄の量の方が大きい

ー御社のサービスで解決したい社会課題を教えていただけますか??

竹井課題感として抱いているのは、400万トンあると言われている野菜の廃棄です。農水省の発表には含まれない出荷前の廃棄野菜を含めると、推定でこの位の量になります。そして、この400万トンという数字は、世界の貧困層約8億人に対する国連WFPの食料支援の量とほぼ同じくらい。日本の野菜廃棄量と、世界の全食糧支援の量は、大体一緒なんです。

また、日本の農村における高齢化率は加速しており、2030年までに60%に達します。野菜の作り手もどんどんいなくなり、将来的にもっと輸入量を増やさなくてはなりません。捨てているのに…。僕たちは、この矛盾だらけの現状を解消したいと思っています。

「人がやるべき仕事」の原点と向き合い、起業を決意

ー竹井さんは、もともと商社で営業をされていて、海外に駐在していた経験もおありです。食品ロス課題で起業しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

竹井:もともと興味を持っている課題ではありました。独立後に農水省と一緒に有機農業の促進に従事したり、オンライン料理教室のプラットフォームを自社サービスとして立ち上げたり、農と食の分野には割とずっと触れてきているという背景はあるのかなと思います。

商社時代に、海外のプロジェクトで鉄鉱石や石炭などを採掘するような資源系の仕事をしていた際に「これをずっとやっていていいのかな」と反発のようなものを感じていました。

コロナ禍において、仕事の概念や人生で大切なことを再定義する機会が訪れたような感覚を覚え、「自分がやるべき仕事」を見直した時、今が舵を切るタイミングだと思いました。

アプローチ方法としては他に、気候変動対策や、プラントベース、スマート農業など色々あると思いますが、僕の中では、この食糧廃棄という問題が一番“気持ち悪かった”んですね。どこが一番儲けられそうかということよりも、最も課題感を強く感じるテーマの方が、モチベーションとして動きやすいので、この食糧廃棄の課題を選んだんです。

ー大手商社から一転、起業するのには相当の覚悟が必要であったと思います。安定を捨ててまで起業しようと思ったのは何故なのでしょうか

竹井:そうですね、僕から見ると、安定を捨てたというよりは、むしろ元の業界に残る方にネガティブなものを感じたんですね。地球が何億年もかけて堆積してきたものを取り出して、燃やして、エネルギーにしてお金を作っていることに対して、冷静に客観的に見ると疑問を感じました。儲かりますが、環境や国際関係でのデメリットがとても大きく、長い目で見た時に僕は、人として正しいサイドにいたかったんです。

地域アクセラレータープログラムをどう活用するか

ー「愛媛アクセラレーター2021」や長野県主催のアクセラレータープログラム「NAGANO-OIC 2021」で採択され、地域企業との協業を進めていらっしゃいますが、実際にアクセラレーターに参加されてみて、事業会社と協業することのどんな点にメリットを感じていますか?

竹井:地域に入り込みやすいのがメリットだと思っています。やりたいことを企業との協業で叶えるというよりも、企業と知り合えたり、企業が注力している地域に入るきっかけを掴めることにメリットを感じています。 

<ヨンキュウ×hakken>魚の粉末と野菜の粉末を合わせて作る出汁

ー「愛媛アクセラレーター2021」で採択されたヨンキュウ様との協業について教えていただけますか

※ヨンキュウ:愛媛県宇和島市にある、鮮魚流通卸、養殖用稚魚・飼料の卸を展開する企業

竹井:ヨンキュウさんとは、魚の粉末と野菜の粉末を合わせて出汁を開発しています。「イノシン酸とグルタミン酸を掛け合わせて旨味を7-8倍に増加させる」という商品です。

この開発はハードルが非常に高く、現在も試行錯誤の日々です。実際に宇和島に出向いて工場視察をし、一週間位こもって商品作りをしたのですが、魚油の抽出が上手くいかないため商品化した際に酸化しやすいという点で苦戦しています。魚油抽出は手作りでもできるのですが、効率を考えると商品化するためには魚油を加工するパートナーを間に挟む必要があります。これを乗り越えていくのか、取り組みの方向性をピボットするのかで現在検討をしているところですが、魚油のDHAには商品価値もあるので、僕たちと一緒に、社会とカラダに良いサプリメントを作ってくれるメーカーさんの参画をお待ちしています!

<ミールケア×hakken>乾燥野菜を使った給食パン作り

ー「NAGANO-OIC 2021」で採択された、ミールケア様との協業について教えていただけますか

※株式会社ミールケア:長野を起点に保育園・幼稚園・認定こども園や病院、介護施設などでの受託給食・食育事業を中心に“食”のサービス事業を展開している

竹井:まず、ミールケアさんが給食用に作っている野菜パンの新シリーズとして弊社の野菜パウダーを使ってみたいというお話しがありました。

できれば地元長野県産の野菜を使用したいのですが、まだUNDR12の工場が長野県にはないので、まずは僕たちの野菜パウダーを使い8種類ほどのパンを試作しています。弊社のパウダーは季節ごとに種類が変わり、パウダーの粒度も調整できて、無添加で100%自然由来です。サプライヤーとメーカーという関係ではなく、一緒に商品を作っていくようなアプローチで事業を進めています。

また、このアクセラレータープログラム「NAGANO-OIC 2021」には、いくつかの組織が絡んでいたので、例えば…パンという「商品作り」と、パン作りを起点にSDGSに関する教育コンテンツを子ども達に配信する「食育」、それから地産地消による地域経済圏「フードプラットフォーム作り」までを丸々パッケージにして、それを長野市に限らず、ミールケアさんが提供している他の自治体や、何なら長野県に限らず県外にも展開していけたら面白いよね、という話にも発展しています。

ミールケアさんからすると自社に限らない「事業アイデア」、僕らからすると自分達にはないミールケアさんの「技術力」と「信用」と「規模感」を得られるので、丁度そこがマッチしたのだと思います。

双方にとっての協業のメリットと壁

ー事業会社さんとの協業を進めていく上で、事業化にたどり着くまでに壁はありましたか。

竹井:そうですね大手小売り流通業界では、もともとコスト削減にはかなり努力されている状態なので、仕入れ値はほぼ完成している状態なんですよね。そこにスタートアップが入ると、基本的にはどうしてもコストアップになってしまうんです。

ですから、企業にとっては、その損を上回るくらいのメリットが必要になりますよね。

事業会社側にとっての協業メリットは、新規事業の拡張性であったり、社会性のあるプロダクトへ切り替えることでの会社PRにあると思うのですが、一方で既存の大量生産大量販売のコスト感に合わて色々と切り詰めて頑張ろうとすると、イノベーティブなことはできても収益化は望みにくくなる、という壁はあるように感じます。

なので改善案と言いますか要望ではあるのですが、例えば、地銀さんが「社会的で面白い実証実験にスポンサードする」のも面白いのではと感じています。アクセラレーションをファイナンス面でサポートするイメージです。プログラムに参加する地銀としては地域の活性化が狙いであるものの、融資実績のないスタートアップにいきなり融資するのは難しいと思うんです。なので、プログラムを企画する地場企業に特別な融資枠を設けることでアクセラレーションの取組自体をスポンサードするような形が出来れば、当初の狙いも、PRバリューも高くなるのではと思ったりしています。

hakkenの挑戦

ー最後に、今後のビジョンについて、貴社が成し遂げたい目標・叶えたい未来があればお聞かせください。

竹井:まもなくhakkenのUNDR12拠点は合計で7拠点位になる予定ですが、僕たちは今後も、小規模分散生産にこだわっていこうと思っています。大きな工場を作って安い賃金で大量生産すれば商品の値段が安くはなってはいくのですが、その結果が今の食糧廃棄や生産地域と消費地域の格差に繋がっています。デフレ経済に合わせて価格を下げるために低賃金で機械のように働いてもらうのではなく、そのコストアップをどこで吸収するかを工夫していく考え方が必要な時代だと思います。

だから、「僕たちの工場はずっと小規模で地元の顔が見える距離を大切にして、拠点数の増加と事業規模の拡大を比例させていく」という方針を取っていくつもりです。

また、今後の会社の展望としては、乾燥ロス野菜を生産してフードロスを削減しながら、この取組自体が長期的に地方を活性化させる仕組みを確立していきます。僕らはずっと地域の拠点の中にいるので、地元の当事者と課題から一歩も逃げない長期の付き合いができますし、形骸化している地方創生対策を「外部からの起案者/地域住民」という立場で是正することができると思っています。実際に、進出からもうすぐ1年が経つ安芸高田市では、役場の担当者と密に相談して、食育や企業誘致に関するプログラムを進めていくことが決まっています。

それからもう一つ挑戦していきたいと思っているのが、全国の乾燥機を在庫システムで繋げていく「全国クラウド乾燥工場」です。全国には使用していない乾燥機が沢山眠っています。その乾燥機を使用しhakkenの基準に従って地域でロスとなる野菜を乾燥して弊社の在庫システムに登録すると、hakkenがそれをニーズと紐づけて買い取るというものです。現在、システムのフレームを構築し始めたところです。

僕たちが直営で100拠点まで増やしたとて、実はロス野菜の回収量は廃棄量の1%にも満たないのです。でもこうしてどんどん全国のプレーヤーを巻き込んで在庫量を増やして行けば、廃棄野菜400万トンの一割に当たる40万トン位にはなるのではないかー食糧ロス課題の解消に遂に貢献できるのではないかと思っています。

社名株式会社hakken
設立2019年
所在地京都府京都市中京区河原町通二条下る
代表者竹井淳平 氏
URLhttps://creww.me/ja/startup/7zhzz676q
https://about.hakken.io/
インタビュイー
竹井淳平 氏 株式会社hakken
CEO

三井物産株式会社にてヘリコプター営業/連結経理、資源事業投資で南米やアフリカに駐在。退職後、19年10月に株式会社hakkenを設立。webサービス開発を生業としつつ、広島熊本などに野菜の乾燥加工場を作り、フードロスと地域課題解決を同時に実現するプロジェクト『UNDR12』を推進中。社会や地球のおもしろい方の未来に期待しながら毎日一生懸命仕事しています。現在、家がない。

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ai taniuchi
2020年からPORT by Creww にてフリーランスライターとして活動中。
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