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土曜日, 3月 25, 2023

広島県と広島銀行が牽引するオープンイノベーション「HIROSHIMA OPEN ACCELERATOR 2020」の成果【前編】

広島県下のイノベーションエコシステムの構築に向けて、広島県内に新たな事業の創出を図ることを目的に、広島県と広島銀行とCrewwの協同で、「HIROSHIMA OPEN ACCELERATOR 2020(広島オープンアクセラレーター2020)」が実施された。参加企業は、中国新聞社、中国電力ネットワーク、広島ホームテレビ、山根木材(ヤマネホールディングス)の4社。提案された協業アイデアは合計で167件、実証実験につながったのは12件という結果を得られた。本記事では、中国新聞社と中国電力ネットワークによるスタートアップ協業の成果発表の内容をそれぞれお伝えする。

広島県と広島銀行が牽引するオープンイノベーション「HIROSHIMA OPEN ACCELERATOR 2020」の成果とは!?【後編】

2021年11月1日
2020年に実施された「HIROSHIMA OPEN ACCELERATOR 2020(広島オープンアクセラレーター2020)」

中国新聞社とスタートアップによるオープンイノベーション

中国新聞社は、広島を中心とした中国地方のニュースを発信する、ローカルメディアです。2022年の創刊130周年に向けて「地域最適」を掲げ、次世代メディアを目指しています。

今回のアクセラレータープログラムでは新聞社の枠組みを超えた新しいアイデアに期待して参画。「新聞社との関わりを通じて、人や企業の暮らしやビジネスを豊かにするサービスを提供したい」「地域の情報流通を変革したい」「地域ネットワークを生かし、持続可能な地域作りに貢献したい」という3つの柱を掲げ、スタートアップ4社との協業を採択しました。

Case1、giftee(ギフティ)
生活者ごとに最適な情報をマッチングするeギフト×Beaconネットワーク都市の構築

中国新聞社メディア開発局 石井将文

ギフティは、オンラインで手軽にギフトを贈れるサービスを主軸に、eギフトと組み合わせてプッシュ型広告配信やマーケティング分析なども提供しています。そこで、今回の協業で掲げたビジョンは、「一人一人に最適な情報をマッチングし、暮らしを豊かに。日本初のBeaconネットワーク都市を目指す」こと。

地域で暮らす生活者の行動データをビーコンで取得し、中国新聞社のリソースである「ちゅーピーくらぶ」の加盟店や会員、中国新聞ID、アプリなどと掛け合わせ、生活者それぞれにメリットのある、心地よい情報提供を実現させます。

ビーコンは、ちゅーピーくらぶの加盟店や百貨店などの店舗、駅やバス停、地下街など、県内を網羅する形で中国新聞社が設置し、個人を特定せずにオフラインの行動データを取得。ビーコンを設置した店舗には送客効果を提供し、利用者にはマッチした情報を提供します。さらに、ビーコンを通したプッシュ通知の広告枠を企業や店舗に販売してマネタイズを図りたいと考えています。

実証実験は、広島市内中心部にビーコンを設置して行動データを取得し、そのデータをもとに連携アプリにeギフトを付けたプッシュなどを配信。プッシュ開封率やeギフト利用率等を検証して事業化を検討し、地域メディアの新たな役割を担いたいと考えています。

Case2、NEXT BASE(ネクストベース)
科学的見地に基づいた映像解析によるオンライン野球アカデミーの開催

中国新聞社ソリューション推進チーム 江木康浩

ネクストベースは最先端のスポーツ科学とITを融合させて、スポーツデータ解析を行うスタートアップです。今回の協業では、ネクストベースが持つスポーツ映像の解析技術や野球のアカデミー運営ノウハウに、弊社の各種媒体による告知・PR力、読者やちゅーピーくらぶの会員などのリソースを掛け合わせ、広島を拠点としたスポーツ事業の新展開を図りたいと考えています。

実証実験では、小学4年生から中学3年生までを対象に「オンライン野球アカデミー」を開催。受講生の指導やトレーニングを行います。

応募するニーズは2パターンあると考えており、一つは部活やスポーツ少年団に入っている子どものさらなるレベルアップで、もう一つはコロナ禍でスポーツ教室に通うのが難しくなっていることです。

オンラインで今までにない野球指導を実施し、子どもの成長を分析しながら科学的かつ客観的なアドバイスを行うことで、子どもたちに可能性と選択肢の幅を広げてもらいたい。実証実験後にアンケートを実施して効果を検証し、アカデミーを通年開催するかどうかを検討していきます。

Case3、NEXT VISION(ネクストビジョン)
スマホ1台で誰もがカメラマン。動画投稿プラットフォーム「videocash」の活用

中国新聞企画サービス 千葉雄太

ネクストビジョンは、動画売買プラットフォーム「videocash」を運営しているスタートアップです。videocashとは、世界中の人から投稿された動画をメディアが購入できるサービス。投稿者は撮影した動画が購入されると報酬を得られ、メディアもリアルタイムの動画や決定的瞬間を入手できます。

今回の協業では、videocashを導入することで紙面とデジタルの差別化を図り、未読者や若年層にリーチできるよう、中国新聞デジタルのコンテンツ充実化を目指します。実証実験では、読者を中心に動画投稿を広く呼びかけ、期間中に集まった動画の質や量、動画を中国新聞デジタルに掲載するまでの工数確認、掲載後の反響やPV数を検証します。

ただ、新聞社がフェイクニュースやいたずら動画を取り扱うわけにはいかないので、しっかりと動画の質を検証し、時代に合わせた情報発信につなげたいと考えています。

Case4、ConciergeU(コンシェルジュ)
ノーコード対話AIプラットフォーム「kuzen」による新しい会話体験の提供

中国新聞社メディア開発局 吉井弘樹

コンシェルジュは、ノーコードでAIチャットボットを構築できるプラットフォーム「kuzen」を運営しているスタートアップです。今回の協業ではkuzenに中国新聞社が持つ新聞購読者や中国新聞ID、ちゅーピーくらぶ会員、県民・地元企業とのネットワークを掛け合わせて、「なんでも相談チャット」の実装を目指します。

実証実験では、ちゅーピークラブ関連や新聞の販売、運営している住宅展示場関連などのお問い合わせに対するチャットボットを作成。お問い合わせの効率化が測れるかを検証します。

この取り組みによって、まずは自社内の業務効率化の実現を目指しますが、そこで蓄積したノウハウを地域のさまざまなサービスに展開し、あらゆるものを「親切化」していきたいと考えています。

※2021年3月時点の状況及び情報です。

中国電力ネットワークとスタートアップによるオープンイノベーション

中国電力ネットワークは、2020年4月に中国電力から送配電事業を引き継ぐ形で事業を開始した会社です。「低廉で安定した電気をお客さまにお届けする」という使命を果たしつつ、保有している送配電設備などの電力インフラを生かして、お客さまに喜ばれる新たなサービスを展開し、地域活性化への貢献を目指しています。

今回のプログラムでは、既成概念を超えた発想で、地域社会に新たな価値創出を目指し、鉄塔や電柱などのネットワーク設備や、落雷データ、停電情報、電柱鉄塔の位置情報などのビッグデータを活用できる協業案を募集し、2社の協業案を採択し、協業に向けた検討を開始することとしました。

Case1、Liers(リエール)
電柱を活用したFree Wi-Fiによる広告のシェアリングエコノミーモデル構築

ネットワークサービス部 サービス総括グループ 担当副長 千々松拓紀

Liersは、QRコード決済や他言語対応の店舗案内アプリ、Free Wi-Fiを利用した広告事業を展開しているスタートアップです。今回の協業では、当社が中国地方全域に設置している約170万本の電柱や築いてきたビジネス基盤に、リエールの広告配信システムとWi-Fi機器、さらに災害時の完全Free Wi-Fi化の技術を掛け合わせ、電柱の新たな活用を目指します。

具体的な協業内容は、電源確保が容易な電柱にWi-Fi機器を設置し、多数同時接続と高速通信が可能なFree Wi-Fiを利用者に提供します。Liersの広告配信システムにより、利用者には定期的な動画広告を配信し、その収益の一部をWi-Fi設置者に還元することで、導入コストやランニングコストの負担軽減につなげます。

今後は、市場ニーズの把握や社内体制の整備、設置工事会社の調整などを含めてビジネスの可能性を検討し、地域活性化に貢献したいと考えています。

Case2、Andeco(アンデコ)
エッジAIカメラ収集データによる安心・安全で活力あるまちづくりの実現

ネットワークサービス部 サービス総括グループ 片山明生

Andecoはスマートシティのデザイン及びコンサルティングを手がけるスタートアップです。今回の協業では、当社が保有する約170万本の電柱に、Andecoのデジタルエリアマネジメントの知見と先端技術を有する企業ネットワークを掛け合わせて、電柱を活用した「人の移動、交通量のデータ収集・分析サービス」を検討します。

具体的には、自動車や人を自動で認識してカウントする「エッジAIカメラ」を電柱に設置し、個人情報を取得しない方式によりプライバシーにも配慮した「交通量」や「人の移動」のデータを取得します。実証試験では、「交通量」や「人の移動」に関する市場ニーズの把握を中心に、電柱に設置した際のデータ精度等の検証を行い、新たなビジネスの可能性を検討したいと考えています。

取得したデータを交通網整備や避難所設置計画、飲食店などの出店計画に活用いただくことで、安心安全で活力あるまちづくりに貢献したいと考えています。

今回は、ご応募いただいた27件から2件を採択しましたが、当社のリソースとスタートアップの技術やアイデアを掛け合わせることで、当社だけでは発想できない新たな価値の創造と地域貢献、社会課題解決につながることがわかりました。今後も引き続き協業の取り組みを進めながら、さまざまなサービスを生み出したいと考えています。

※2021年3月時点の状況及び情報です。

広島県は2021年もオープンイノベーションを推進!

2019年度の開催から今年で3度目となる2021年においても、広島県下の企業の経営資源と全国のスタートアップ企業の持つ全く新しいアイデアや斬新なノウハウの双方を活用して、新たなビジネス・サービスの共創や既存事業のイノベーションをはかることを目的に『広島オープンアクセラレーター2021』を実施します。

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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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