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そこで、新たな取り組みの1つとして、「SANKI オープンイノベーションプログラム2023」に挑戦。初めてのアクセラレータープログラムに挑むファシリティシステム事業部 佐々木 宏之氏、経営企画室 経営企画部 石綿 央氏、 徳田 直也氏に、それぞれの立場から率直な想いを伺いました。

“新たなイノベーション”
マッチングサービスとは異なるオープンイノベーションへの期待

ーーオープンイノベーションを推進する背景について教えてください。
石綿:プログラムに参加している「ファシリティシステム事業部(FS事業部)」は、オフィスなどのワークプレイスに対して、その構築や移転にかかわる設計とプロジェクトマネジメント、さらには戦略や運用面のコンサルティングを行う事業部です。
建設業界は、まだまだ“昭和のにおい”がするような業界ではありますが、次なる100年を見据えて、今こそ新たな取り組みに挑戦する機運を高めたい。社会に新しい価値を提供し続けていきたい。そのためには、社外の知見をより幅広く取り入れて視野を広げるとともに、スピードアップを図ることが必要であると考え、2022年度からの中期経営計画Phase3では、オープンイノベーションを積極的に推進することが決まっていました。
ーーなぜ、オープンイノベーションという手法を用いたのですか?
石綿:まず、コアビジネスが堅調で新たな取り組みに割けるリソースが不足しているという社内事情をもありますが、スピード感のあるスタートアップ企業との共創を求めたという背景があります。
また、我々の募集に対してどの様なスタートアップが興味を示してくれるのか、期待を込めたチャレンジでもありました。
ーー実際にプログラムに取り組まれてみた、率直な感想を教えてください!
佐々木:コアビジネスがある中でプロジェクトを進める難しさは「苦しみ」であり、新しい情報・知識をいただけるスタートアップの皆さまとの接点は「喜び」でもありました。
今回、経営企画部から話を受けた際、マッチングサービスとは異なり、“一緒に” 共創することで新たなイノベーションに繋がるのではないか、ということに大きな期待を寄せていました。
結果として、採択まで辿り着くことができ、良い機会をいただけたと思っています。

“同じ未来を描くことができるのか”
はじめて取り組むスタートアップとの共創
採択プロジェクトの内容と、採択した理由
佐々木:期待値を上回る30社からの応募があった中、1件を採択させていただきました。
徳田:採択案件は、「事業の延長線上での新規事業案」です。
特有のスキャニング技術を持ったスタートアップと、FS事業部が手掛けるオフィス内装・デザイン事業とで、シナジー効果が期待できた点が採択の理由です。
スタートアップから提案いただいた内容と、我々の技術とを組み合わせることで、今まで当社が手掛けたことのない面白い試みができるのではないかと考えています。
ーー採択に至るまでに、大切にしていたことを教えてください。
石綿:提案いただく内容もさることながら、「この人となら面白いことができそうだ」という感覚を重視しました。
徳田:私も、「一緒に同じ未来を描くことができるのか」「共感を持ってプロジェクトを進めていくことができるのか」を重要視していました。
採択に至るまでの「4つの壁」
佐々木:まずは、先ほども触れましたが、多忙なコアビジネスと並行して兼務でアクセラレータープログラムを進めていかねばならないという「時間の壁」です。
そして、事務局内にもメンバーそれぞれの価値観があるので、同じ協業案でも「やりたいか、やりたくないか」は当然違ってくるわけです。その擦り合わせが必要だった「多様性の壁」を感じましたが、それぞれの価値観を尊重し進めていきました。
また、アクセラレータープログラムの開催は、当社としては前例のない、初めての取り組みです。推進する上では、当然費用が発生し、失敗する可能性もゼロではありません。「誰の責任で、最終的な採択をするのか」という「意思決定の壁」がありました。
徳田:最後に「採択決定の壁」がありました。共創案を7つまで絞り込んだ時点で、どれも素晴らしく、甲乙を付けがたい案ができ上がっていたため、そこから、最終的な採択案を選定するまでが、非常に困難でした。採択された案をどうすれば実証実験という次のステップに繋げられるか、どのように社内の意思決定者の理解を得ていくのか、全てが初めてのことですので、壁の高さ・厚さを感じています。
社内に共創案を推進できる “強い個人(内的動機付けがされている、仕事を”ジブンゴト”として強力に推進できる従業員のこと)” が何人いて、実際に実証実験の推進にアサインできるのかで、採択数が決まったと思っています。生産性と人的リソースとの兼ね合いは、スタートアップとの共創を実現する上で乗り越えなくてはいけない要件であると思います。どうしても現在の業務に目が行きがちですが、将来的に必要となる「新たな価値を生むことの重要性」とそれを「企業体力があるうちに果断に判断し実行しなくてはいけない」こと、そしてそのために「”強い個人”をアサインし自由に動けるように環境を整えること」を丹念に社内で説明・説得し、意思決定者に理解をいただきました。
“衝撃だったスピード感の違い”
スタートアップとの協業におけるポイント

ーースタートアップとの風土の違いを感じたエピソードがあれば教えてください。
石綿:驚いたのは、スタートアップの決裁までの速さです。一方で当社には、稟議を通すにも、各階層に向け、段階を踏んで説明・納得してもらう、とても丁寧である一方、骨の折れるプロセスを経ていました。
スタートアップとの協業においては、「この位のスピード感を持ってやらなければ、上手くいくものも、いかなくなってしまうのか」といった示唆を得られました。
佐々木:スピードに対応できていない自分に衝撃を受けましたね。「何とかしたい」という想いで、Crewwの皆さまに協力を求めました。
“新しい価値の創出”
スタートアップとの協業に期待すること

徳田:期待することは「新しい価値の創出」、これしかないです。我々が自分たちのみで新しい価値を創出することは、恐らく難しいでしょう。
スタートアップと大企業が、互いのアセットを組み合わせて、新しい価値を生むことが、いわゆる“勝ち筋” だと思っています。パートナーとして、同じ目線で取り組んでいくことが次の100年を見据えたときに大切なことだと確信しています。
スタートアップの方々に対しては、社会課題を解決する新しい価値やサービスを、当社と一緒に創出していただくことを期待しています。
石綿:社風に変化を与えるには、アクセラレータープログラムのような取り組みを行い、社外の風に触れ、新たな気付きを得ることが必要だと思います。
まずは、今回の取り組みを、どのように全社に展開できるかが重要なポイントになりますが、しっかりと成功体験を作ることで、全社的な活動に繋げていきたいという想いです。
“次なる100年を見据えた新たな挑戦”
オープンイノベーションで培う三機工業の未来
ーーあらためまして、最後に三機工業のビジョンについて教えてください。
石綿:三機工業は、2025年に創立100周年を迎えます。旧三井物産株式会社の機械部を母体に創業し、「エンジニアリング」で時代のニーズに応えてきました。現在、オフィスビルや工場などの空調衛生・電気設備や水処理施設の設計・施工管理等の事業を柱に、人々の生活や仕事を支えています。
中期経営計画 “Century2025” のPhase3に位置する現在は、2050ビジョンに掲げた「選ばれ続ける三機へ!」に向かい、「質」と「信頼」を高める施策の成熟と進化を図る一方で、新施策も積極的に推進しています。
磨き上げたエンジニアリングを通じて快適環境を創造し、持続可能な社会の構築に貢献したいと考えています。
ーーオープンイノベーションで成し遂げたい未来を教えてください。
石綿:今回の取り組みに関しては、中期経営計画の肝になる部分であります。社内外の期待を裏切らない結果を残したいと思っています。
この取り組みは、一過性で終わらせず、継続的に行っていくことが重要であると考えます。携わった経験のある人を増やしていくことで、オープンイノベーションが特別なものではなく、普通の活動として、社内に入り込んでくれたらと願っています。
社名 | 三機工業株式会社 |
設立 | 1925年4月22日 |
所在地 | 〒104-8506 東京都中央区明石町8番1号 |
代表者 | 代表取締役社長 石田 博一 |
事業概要 | 建築設備事業・プラント設備事業・不動産事業 |
URL | https://www.sanki.co.jp/ |
三機工業株式会社 ファシリティシステム事業部 ファシリティシステム2部 部長
石綿 央 氏
三機工業株式会社 経営企画室 経営企画部 専門課長
徳田 直也 氏
三機工業株式会社 経営企画室 経営企画部 主任(当時)