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日曜日, 11月 27, 2022

「人間と自然の掛け橋」に。兵庫県加古川市の優良企業ムサシがスタートアップ協業

全国屈指の金物のまち兵庫県三木市を発祥として、刃物・金物商社として1983年にムサシを設立。加古川に本社を置く同社は、高枝切鋏のムサシとして業績を軌道に乗せ、現在はセンサーライトと園芸用品のムサシとして事業成長をしている優良中堅企業です。
人と自然にかかわる事業を展開する地域の牽引企業として、ここ数年最前線で課題に感じているのは、地方企業のためライフスタイルの多様化についていけない現状なのだとか。そこで、スタートアップとの協業により、企業の枠を超えて社会課題解決につながるサービスや製品を生みだすべく、Crewwのオープンイノベーション支援サービスを使い、アクセラレータープログラム開催に向けて一歩を踏みだしました。オープンイノベーションに乗りだすにいたるまでの思いを、株式会社ムサシ代表取締役社長の岡本篤氏にうかがってみました。

既存の枠を外して、思い切り楽しめる事業を!

ー今回、オープンイノベーションを推進して新規事業を立ち上げようと考えられた背景を教えてください

岡本:突飛なアイデアもそれを実行していく人材のリソースも足りないんです。現在80人の従業員がいますが、30名が月給社員で残り50名が時給社員です。

のんびりした田舎で仕事をしているため、どうしても今の時代に合った、新規性のある事業に関する情報のキャッチアップに遅れてしまいます。それを解決したいと思うのが一番大きいですね。

今までずっと、会社があって、その中に社員が囲われているという昭和的な働き方が続いてきました。もちろん、外部のデザイナーが出入りしてやりとりするなど会社の枠がゆるんできてはいるんですが、さらにいろんな人が出入りして、プロジェクトに参画していくスタイルに変えていきたいんです。それらの点を変革をしたく、今回Crewwのサービスを導入してアクセラレータープログラムを開催することになりました。

ーオープンイノベーションを推進する上で大事にしたいことは何ですか?

岡本面白いかどうか、楽しいかどうか、ですかね。事業会社とスタートアップとでは文化も異なるので、協業プロジェクトを進めていく中で、当然すったもんだが起きたりするじゃないですか。

その時に、自分たちはもちろん、参画してくれるスタートアップも含めて「これめちゃくちゃ面白いな」と思ってやれるかどうか、一緒に一つのチームとしてプロジェクトを成し遂げられるかどうかが、とても大事だと思っています。

ですから、当社の事務局メンバーには、思い切り楽しみながら事業を作り出していける、一番頭のまあるい人材を選びました。

ー今回のプログラムに期待することは?

岡本:アクセラレータープログラムを通じて、「外部と連携しながら協業していく」ということが当たり前になって欲しいですね。

自分たちだけで何とかしようとするのではなく、既存のメーカーやデザイナー、販路とだけ付き合うのでもなく、「そんな商売の仕方があるのか!?」などといった発見や刺激を得ることで、社員が成長できるような機会になれば嬉しいですね。

<募集概要>
①募集期間: 2021年6月23日 ~ 2021年7月9日
②対象企業: 分野、業種を問わず、すべてのスタートアップ法人がエントリーできます。
③募集テーマ
●センサーライトと園芸分野の拡大
●過去の延長線ではない新規事業への挑戦
●既存リソースの新たな活用
※募集ページ:https://growth.creww.me/a25d8455-c508-11eb-9726-d39f326f6445.html

求む!突拍子もないほどの新しい発想

ースタートアップとどのような協業をしていきたいとお考えですか?

岡本:自然と人間のコンフリクト(衝突)を解決するような製品とサービスが生まれたら嬉しいですね。当社はメーカーなので「サービス」となるとイメージできないスタッフが多いんです。ものづくりだけでなく、サービスまでカバーできたら面白いですよね。

団塊の世代があと10年もするとさらに年老いていく中で、庭の枝が伸び放題になってしまったりと、さまざまな生活における課題が浮上してきています。ここ10年ぐらいでガラッと世の中の仕組みや構造が変わってくると思うので、そこにリーチしていきたいです。

来るべき未来に備えて、当社のもつリソースと掛け合わせた製品やサービスだけでなく、突拍子もないくらいの全く新しい発想で「人間と自然の関係」をより良くする製品やサービスを生み出していけたら嬉しいです。

実はメイン事業とは別に、今アウトドア事業を加古川でやろうとしているんです。例えば、鯨の研究をやっているスタートアップと新しいタイプのホエールウォッチングサービスを創り出すとか、そんなイメージで既存の事業を超えた可能性に挑戦していきたいと思っています。

金物問屋からメーカーへ

ー改めまして、株式会社ムサシの成り立ちや事業内容ついてお聞かせください。

岡本:私の先祖はもともとノコギリ鍛冶だったんです。そのながれをくんで、兵庫県加古川市で設立された当時は刃物や金物を扱う商社でした。

設立当初は海外むけに日本製金物を輸出、つぎに国内の金物屋さんをクライアントに、主産地であった台湾から工具や金物などの製品を輸入して売るようになりました。つまり金物を輸出入する専門商社ですね。

その後、国内でホームセンター業態がたちあがるなか、「自社オリジナルの商品をつくりたい」と考え、ヒットしたのが「高枝切り鋏」でした。ロープ式の高枝切り鋏を手元のグリップで操作できる商品にしたのは弊社なんです。

そこからさらに製品分野をひろげるため試行錯誤をつづけ、米国の展示会でセンサーライトという製品をキャッチしました。センサーライトは、使用する電球や電池、ソーラーパネル、そしてマイクロコンピューターなどのデバイスが進化したことに乗じて、順調に事業成長してきました。ですから、ここ20年以上にわたり、園芸製品とセンサーライトの二本柱で事業展開をしています。

当社は、兵庫県の沿岸部にある大きな工業地帯の北の外れに位置しています。その中では、特に大企業というわけではないのですが、地域の中堅優良企業として順調に歩んでいます。

社員の成長とチームの関係づくりを重視

ームサシ様の企業ビジョンを教えてください。

岡本ムサシの事業の手段は「社員の成長」にあります。私が経営者になる時に「会社を成長させるために、何をベンチマークに置けば一番高確率になるか」と考えたんです。

例えばROI(投資収益率)などに主眼を置いた、数値的経営を行う選択肢もあったのですが、あえてそこは選びませんでした。そのタイミングではないと思った。理由は今でも毎年社員で海外旅行に行くなど、非常に和気あいあいとした雰囲気が魅力の会社だからです。

もともと厳密な数値目標を定めておらず、社員が数値ベースのみで評価されたり、非難されたりすることはないのですが、不思議なことにちゃんと好業績をあげているんです。経営を数値的にロジカルに行えば、その良さが失われる可能性はないか。

好業績をつづけている理由は「従業員が楽しくやっている」からだと思っています。だからこそ困難な壁が立ちはだかった時でも踏ん張りが効く。これこそが事業の本質、ムサシの強みだと思います。

私がその強みを出すためにやったことは、飲み会や海外旅行などの“場づくり”でした。昨今は「若者が飲み会にこない」なんて言われますが、うちの場合は皆来るんですよね。なので、そこに力を注ぎましたね。

何をベンチマークにするかという話に戻りますが、あえて数値などの定量的なものではなく、定性的なもの、つまりスタッフ一人一人ががどれだけ成長したかにフォーカスしています。

大企業に比べて各々の能力に差がありバランスは悪いのですが、チームになることで、上手い具合にそれぞれ補い合えるんです。ですから、「一人ひとりが成長すること」、そして「チームのコミュニケーションを濃密に保つこと」の2つにフォーカスしています。

景気が悪くなると、個々人の成長と関係なく一気に業績は落ちるものです。しかしもっと長いスパンで考えたとき、高確率で業績を伸ばしていくのは、それを支えている「社員の成長」だと考えていますね。

人間と自然の関係を構築し直す

ーどのような社会課題を解決していきたいと考えているのでしょうか?

岡本:今世の中で問題になっているのは、「自然とのつきあい方がわからなくなっている」ということだと思うんです。

二酸化炭素の増加や耕作放棄地のほか、害獣・森林問題など現代の課題はいろいろあります。それをまとまりとして考えたときに一番おおきな課題は、「人間と自然の関係をもういっぺん構築し直していく」ことじゃないでしょうか。

我が社の場合も、園芸などはまさに人間と自然に関わる事業ですし、センサーライトも、昼間の時間を延長するもの、言い換えれば夜の暗さとどう付き合っていくかという、人間と自然の関係に関わる製品なんです。

三木の地場産業から出発したので、最近までミッションはありませんでした。年商30億円とある程度の成長をとげたので、その後「どんな分野で事業展開していくのか」「どういう社会問題を解決していくのか」を決める段階で、ムサシは「人間と自然の関係に関わる事業」を選びました

人と自然の関係性をより良いものへ

ー今後、貴社が成し遂げたい目標・叶えたい未来についてお聞かせください。

岡本自然に対するコンセプトを変える問題提起をしたいと考えています。新しい事業を立ち上げて、それを収益化していきたいというのはもちろんありますが、「自然と付き合うこと」が一体どういうことなのか、今一度考えてもらえるようにしたいと思っています。

例えば農家は日々が目の前の具体的な自然との戦いなんですよね。なので、そんな大上段に「自然を守ろう」とか言わないんですよ。一方、都会などで自然と離れて暮らしていると、どうしてもロジックだけで考えてしまう傾向があるんです。そこに対して、「自然の側面はそこだけではないよ」という投げかけはしていきたい。

これまでは人間が主で、害獣や害虫、雑草を制圧するということで事業をやってきましたが、今ユーザーのニーズは多様化しているので、細かく手を入れる必要があると思っているんです。例えば道具を活用して効率的に手入れをしていく一方で、あえて自分の手で雑草を抜いたり、枝に触れたりすることを楽しみたいというニーズもある。自然と関わるひと手間を「面白がる」という選択肢により、自然と人間の関係性が変わっていくんですよね。

また、田舎に住みたいという人は多いですが、都会人にはなかなか難しい。これをどうつなげるのか。どうやってもう一度田舎に戻して、田舎暮らしに浸透して行ってもらうのか…。

あとは、日本の自然がまともな形を取り戻せるかどうか、ということに、今世の中の目が向いているじゃないですか。わたしもじつは林業の活性化のためにイベントで薪割りを教えていたりします。そういった色々な活動をしているので、ぜひ幅広いアイデアをお待ちしています

ー 「自然との付き合い方を考え直す」「自然に対する多様化なニーズに応える」「都会の人と自然をつなぐ橋渡しとなる」の3つを大切にされているんですね。最後にスタートアップの方にメッセージをお願いします!

岡本:とりあえず緊急事態宣言が明けたら、一緒にビールでも飲みながら、語り合いましょう(笑)。

社名株式会社ムサシ
設立1983年
本社兵庫県加古川市
代表者岡本 篤
事業概要センサーライト、園芸用品の製造販売
URLhttps://www.634634.jp/index.html
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石神 美実子
広告代理店、広告制作事務所を経て、現在フリーランスのコピーライター・ライターとして活動中。キャッチフレーズやネーミング、プレスリリース等の制作から、WEBメディアの執筆まで幅広く従事。とりわけ、円滑なコミュニケーションを必要とする人物インタビューが得意。
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