12.8 C
Japan
土曜日, 3月 25, 2023

協業で四角い頭を丸くする。既存事業の「飛び地」を狙った新規事業を形にしたい|アネスト岩田のオープンイノベーション

日本の塗装用機械器具や空気圧縮機を90年以上リードし続けてきたアネスト岩田。世界初となる製品をいくつも開発してきた同社は、世界20カ国以上の拠点と1700名を超える従業員、そして35社のグループ会社を持つ企業へと成長を続けている。そんな同社が、2020年から初めて導入したのがCreww(クルー)のアクセラレータープログラムだ。既存事業とのシナジーだけでなく、「飛び地」での新規事業の可能性を探るための取り組みを進めている。具体的に、何が生まれようとしているのか。スポーツ領域のスタートアップ「KuruSPO(クルスポ)」との協業を進めている、デジタルマーケティングチームの小針一晃氏に話を聞いた。

アネスト岩田のイノベーションを牽引するイントレプレナー

―小針さんがアネスト岩田に入社したきっかけと、どのような仕事をされているのかを教えてください。

私は学校を卒業後、プリンター関係の製造業で4年ほど働いていました。しかし、リーマンショックで会社の経営が悪化し、早期退職を余儀なくされてしまったのです。

そこで転職活動を始めると、人材紹介のエージェントから強くお勧めされたのが、アネスト岩田でした。もともとアネスト岩田の製品は扱っていて馴染みもあったので、お勧めされたまま面接に行くと、かなり好印象だったんですね。

そのまま入社が決まり、後日エージェントから聞かされたのは「実はアネスト岩田で人事をしていた」という話。「アネスト岩田のカルチャーは熟知しているから、小針さんにぴったりだと思った」と言ってくれて、とてもご縁を感じました。

現在は入社7年目で、6年ほど品質保証を担当し、2020年3月に品質保証との兼務でアクセラレータープログラムのブラッシュアップ担当に指名されました。6月にデジタルマーケティングに異動して現在に至ります。

スプレーガンの世界シェア2位を誇る「アネスト岩田」が、共創スタートアップ企業を大募集!|アネスト岩田アクセラレーター2020

スプレーガンの世界シェア2位を誇る「アネスト岩田」が、共創スタートアップを大募集!|アネスト岩田アクセラレーター2020

2020年3月23日

どこに行っても通用する力を身につけたい

―全く違う職種への異動と、アクセラレータープログラム担当の指名の時期が近いですが、両立は大変ではなかったですか?

いえ、むしろ嬉しかったです。実は今、通信制大学の3年生でもあって、経営やマネジメントを学んでいるんです。というのも、前職で早期退職を経験して「社内だけで通用するスキルを持っていても、外に出たら通用しない」「スキルを一つしか持たないのは怖いことだ」という危機感を持っていたから。

「どこに行っても通用する力を身につけたい」と思って起こした行動が、デジタルマーケティングの仕事に生きていますし、さらにスタートアップと共創するアクセラ担当にも指名されて、とてもありがたい成長の機会だと思っています。

コンディションを良くする運動の文化を広めたい

―今回、アクセラレータープログラムのブラッシュアップ担当として、どのようなことをしたのか、またスタートアップとのオープンイノベーションで何を生み出したいと思ったのかを教えてください。

50社以上の応募があったのですが、ブラッシュアップ担当はそれぞれに協業したいスタートアップを選んで、プロジェクトを進めています。

そのなかで私が選んだのは、スポーツやトレーニングイベントの検索・参加ができるプラットフォームを運営する、「KuruSPO(以下、クルスポ)」というスタートアップです。提案は、「健康経営をスポーツで実践しませんか」というもの。

ちょうど、アネスト岩田は経済産業省の「健康経営優良法人」のホワイト500に認定されることを目指して、健康に関する制度や取り組みを充実させています。加えて、私自身筋トレが好きで、運動する文化を広めたいという思いがありました。

会社にはフットサルコートもありますが、人数を集める必要があるので頻繁に開催することはできません。だけど、社内にあるジムに1人でもフラッと行けば、ジム内での活発なコミュニケーションが生まれるし、コンディションも良くなります。だから、どうにか広められないかと考えていたんです。

会社が目指している方向性と、私の思いが合致して、ぜひクルスポと協業したいと思いました。

企業向けの運動支援サービス、コンサルティングサービスを目指す

―自分ごと化できるテーマだったのですね。具体的に、どのような実証実験に取り組んでいるのでしょうか。

社員20人にモニターになってもらって、運動習慣をつけるための実証実験を行っています。具体的には、「1日10分のトレーニング動画」を配信し、週1回40分間の「オンライングループレッスン」を実施。

さらに、ウェアラブルデバイスで1日の運動量や睡眠時間と質を計測して、パーソナルトレーナーが改善のためのアドバイスをしたり、栄養士さんがおすすめの食事メニューを伝えるサービスを導入したりしています。

クルスポが協業しているパーソナルトレーニングの知見やサービスを取り入れて、企業向けサービスとして成り立つかを検討しているのです。

ただ、従来の運動はプライベートな時間で行われるものであり、会社として強制はできないので、これを全社員に展開しても使われないかもしれない、またコストもかかるのでサービス化は難しいかもしれないと思うように。そこで、新しい実証実験として、オフィスでできる運動をテーマにした新規事業の検討も開始しました。

企業が従業員の運動を支援する、と聞くと不思議な感じですが、肩こりや腰痛など体の不調による仕事のパフォーマンス低下は生産性の低下と直結しています。
運動は生産性向上のための手段のひとつであり、企業が生産性向上を目的として従業員の運動習慣化を支援することは今後一般的になると考えています。

クルスポの知見やサービスを活用して、企業向けの運動支援サービス、もしくはコンサルティング事業を実現できたらいいなと思っています。

いつの間にか、ブレーキをかけていた自由な発想

―スタートアップや他社と協業したことで得られた気づきはありましたか?

スタートアップの皆さんが、自由な発想でいろんなアイデアを出す様子を見て、気づかないうちに、自分の頭が固くなっていたことに気付かされました。組織の一員として働くうちに、実現可能性が低いと思ったアイデアは発言しなくなり、いつの間にか考えることすらやめてしまっていたのだな、と。

もっと自由に発想していいはずなのに、なぜ自分の中でブレーキをかけていたのかを問うきっかけにもなり、四角い頭が丸くなっていくのを感じました。加えて、スタートアップのスピード感は見習うべきだとも思いましたね。

普段の仕事は、既存の事業に何かを足す、もしくは何かを変えることしかなかったけれど、今回、初めてゼロからビジネスを考える経験を積んで、自分に足りないことが明確になりました。その機会を得られて本当にラッキーだと実感しています。

アネスト岩田は、今後もスタートアップをはじめ、他社との協業の継続を決めているので、会社にとって有益な人材として貢献し、社会に価値を提供する存在になるためにも、今後も新規事業の創出やスタートアップとの協業には挑戦し続けるつもりです。そして、いつかは自分で事業を興したいと考えています。

まだ世の中にない新たな体験価値を創出する、「香り噴霧器」の製品化を目指す|アネスト岩田のオープンイノベーション

2021年3月23日
社名アネスト岩田株式会社
設立1926年5月
資本金33億5,435万円
代表者壷田 貴弘(つぼた たかひろ)
事業概要空気圧縮機(エアーコンプレッサ)、真空機器、塗装機器・設備並びに液圧機器・設備の製造・販売
URLhttps://anest-iwata.co.jp
Facebook コメント
田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。

Featured

【SceneryScent × アネスト岩田】“香り噴霧器”で新たな価値と市場を生み出す

【Creww Growth活用協業事例インタビュー】日本の塗装機器や空気圧縮機の業界を95年以上リードし続けているアネスト岩田。“開発型企業”として国内外で1,200件を超える特許出願数を持ち、世界20カ国以上の拠点、35社のグループ会社を持つ企業だ。 同社は2020年に導入したアクセラレータープログラムで、香り空間演出・プロデュース事業を展開するスタートアップSceneryScent社(シーナリーセント)を採択し、わずか1年半で、人感センサー内蔵香り演出機器「Ambiscent(アンビセント)」のデモ機を開発。社外でのトライアルがスタートした。 具体的にどのような取り組みを重ねているのか。アネスト岩田の和泉孝明氏と、SceneryScent代表の郡香苗氏にお話を伺った。 #アネスト岩田 #SceneryScent #シーナリーセント #Ambiscent #アンビセント #スタートアップ #オープンイノベーション #活用協業事例インタビュー #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる

【熊平製作所 × MAMORIO】創業125年のトータルセキュリティ企業が、スタートアップ共創で未来の「安心・安全」を創る

【Creww Growth活用協業事例インタビュー】広島銀行とCrewwは、広島県下のイノベーションエコシステムの構築に向け、広島県内に新たな事業の創出を図ることを目的に「HIROSHIMA OPEN ACCELERATOR 2021(広島オープンアクセラレーター2021)」を共催しました。本記事では、プログラム参加企業である熊平製作所と、「なくすを、なくす」をミッションに、紛失防止デバイス「MAMORIO」を始めとした 様々な製品・サービスを提供するIoTスタートアップ「MAMORIO」との共創プロジェクトにフォーカス。株式会社熊平製作所 新規事業開発部 取締役部長 茶之原 氏に、プロジェクトの共創に至った背景や、スタートアップとの共創から実際に得た体感や変化について、お話を伺いました。 #広島銀行 #広島県 #イノベーション #広島オープンアクセラレーター2021 #熊平製作所 #MAMORIO #IoT #スタートアップ #共創 #新規事業 #協業事例インタビュー #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる

関東近郊2万坪の土地 × スタートアップで、今までにない斬新な “場” を作りたい|Gulliverが挑む!

【オープンイノベーションインタビュー】中古車売買でお馴染みの「Gulliver」を運営する株式会社IDOMが、2022年10月24日から「Gulliver アクセラレータープログラム2022」を実施。新しい購買体験の提供と、生活を彩るクルマの価値を創造する新しいコンセプト店舗の開発をテーマに、関東近郊に2万坪の土地を用意し、スタートアップの皆さんと一緒に新しい場づくりに取り組みたいという。具体的に、どのような構想を描いているのか。株式会社IDOMの経営戦略室チームリーダー、三樹教生氏に話を伺った。 #Gulliver #IDOM #スタートアップ #アクセラレータープログラム #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる

スタートアップ募集!【豊富な開発技術力 × デミング賞大賞の社内風土】モノづくりメーカーのOTICSに、今求めるパートナーを聞く

【オープンイノベーションインタビュー】高出力・低燃費・低エミッション化などの要求に対し、積極的な技術提案と高精度な品質で応えるOTICS(オティックス)の自動車部品は、多くの車種で採用されています。一方で、120以上の国と地域が目標に掲げる「2050年カーボンニュートラル」に向け「脱炭素化」の企業経営に取り組むOTICSは、初めてのアクセラレータープログラムを開催。豊富な開発経験と生産技術力を活かせる協業案、自然環境保全や社会・地域に貢献できるアイデア等をスタートアップから広く募集します。デミング賞大賞も受賞したOTICSの社風、アクセラレータープログラムの開催に至った背景や、募集ページだけでは伝わらない魅力、プログラムに関わる方々の想いを、株式会社オティックス 経営管理本部TQM経営戦略室 係長 奥村守氏に話を伺いました。 #OTICS #自動車 #カーボンニュートラル #アクセラレータープログラム #協業 #スタートアップ #デミング賞 #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる
Facebook コメント