12.8 C
Japan
土曜日, 10月 31, 2020

丸紅に根付くスタートアップとの協業文化。1年の開発を経てIoT製品を商品化へ

「お金で買えない価値を売りたい!〜コンセントの先の未来へ〜」というコンセプトで、2018年にアクセラレータープログラムを開始した丸紅電力本部。IoT製品である、コネクテッド・バッテリー「MaBeeeみまもり電池」を開発しているスタートアップのノバルスと、1年間の開発・協議を経て、2020年8月より丸紅ソーラートレーディングより販売を開始した。具体的にどのようにプロジェクトを進めてきたのか、丸紅ソーラートレーディングの青木健治氏と、ノバルス代表の岡部顕宏氏に本オープンイノベーションの話を聞いた。

孤独死を解決したい。「MaBeee みまもり電池」

―今回、アクセラレータプログラムを導入した背景や、期待していたことを教えてください。

青木 丸紅電力本部は60年以上にわたるグローバルな電力事業展開のノウハウを背景に、安全かつ安定した電気を供給し、地域や産業、一般家庭のお客様の生活を支えてきました。多種多様化するエネルギーの事業領域とその拡大に応えていく為にステークホルダーや社会からの期待と要請の把握に努め、常に最適な電力・エネルギーソリューションを提供できるパートナーを目指すなかで、電気の値下げにとどまらない付加価値を提供することが長期的な成長に必要となるのでは、と考えました。

そこで、新規の事業ドメインを模索する中で、異業種の方とのコラボレーションを検討を開始し、今回「お金で買えない価値を売りたい!〜コンセントの先の未来へ〜」というコンセプトでアクセラレータープログラムを実施しました。

2018年に実施された「丸紅アクセラレーター2018」

今回ノバルスさんを採択させていただいた理由は、孤独死などの社会課題を解決するために「見守り」にフォーカスしたIoT製品を開発されていること。そして、多岐にわたる見守りサービスの中でも、乾電池でさりげなく見守りができるというサービス内容が非常に良かったことです。

また、ノバルスさんがターゲットとしているお客様と、我々が電力を販売しているお客様層が重なっていたことも採択した理由でした。

岡部 ノバルスでは、電池一本で簡単に見守りができる、「MaBeeeみまもり電池」を開発しています。これは、テレビや照明、エアコンなどの自宅にある家電製品のリモコンの電池を「MaBeeeみまもり電池」に入れ替えるだけで、遠く離れた家族を簡単に見守れるサービス。家電製品の利用状況がわかるので、たとえば暑い日にエアコンを使用していない、照明がずっとついているなどの異変をキャッチできます。

電池型のプロダクトにしたのは、電池は誰もが使える・使っているものだからです。先端技術を使った多くのIoT製品は、リテラシーのない高齢者が使えるようになるまで時間がかかりますが、電池型のIoT製品なら高齢者も含めて、誰でも今すぐ使えます。

また、見守りサービスを作った背景には、日本の社会問題となっている孤独死を解決したい思いがありました。交通事故死亡者数の3倍以上が孤独死と言われている日本には、約700万人の高齢者一人暮らし世帯があります。だから、全国にネットワークを持つ丸紅さんと協業して、みまもり電池を広めたいと考えました。

短期集中ではなく、1年間じっくりと取り組んでサービス化へ

―採択から1年をかけてサービスをローンチされていますが、プロジェクトはどのように進めたのでしょうか。

青木 採択当時、ノバルスさんのみまもり電池はまだ開発初期だったので、弊社の社員がモニターとして使わせていただき、フィードバックを繰り返すところから始めました。

これまでさまざまな企業といろんな取り組み方をしてきましたが、ノバルスさんとは短期集中ではなく約1年という時間をかけています。これは社内的に、じっくりと取り組むことで芽吹くサービスの実績を作れたので良かったと思っています。

岡部 本当に初期段階のプロダクトで、アプリの機能も足りていない状態にも関わらず評価をいただきました。開発中はお待たせする形になりましたが、それでも根気よく待っていただいて一緒にサービスを作り上げていけたのはありがたかったです。

時間がかかってもずっと伴走してくださった背景には、商品が出来上がる前の段階からみまもり電池が世の中のためになると信じていただけたことと、作りたいサービスと世界観、目的がお互いにずっとブレなかったことがあると思っています。

青木 そうですね。同じ思いで取り組みを続けた結果、2020年8月から丸紅傘下の丸紅ソーラートレーディングで、ご契約中のお客様向けに「MaBeeeみまもり電池サービス」の提供を開始できました。

丸紅ソーラートレーディングは太陽光の余剰電力を買い取るサービス等を展開している会社で、お客様は10年以上前に太陽光パネルを設置された、60歳前後がボリュームゾーンです。そのお客様に対して「クラシカザル計画」というコンセプトで、日々の暮らしを少し彩るようなサービスを追加でご案内するために、いろんな企業との協議を重ねていたんですね。

今回のノバルスさんとの取り組みは、「クラシカザル計画」の一環として展開しており、将来的には丸紅新電力の個人向け電力の電力小売事業とのタイアップも見据えています。

丸紅に根付く、スタートアップとのオープンイノベーション文化

―丸紅はノバルス以外にもさまざまなスタートアップとのオープンイノベーションに取り組まれています。協業がうまくいく理由は何でしょうか。

青木 もともと社内の理解があった上で、電力関連部門でアクセラレータープログラムの推進を掲げているというのもありますが、「社会課題を解決するために、スタートアップと組みたい」「自分の守備範囲を超えた事業を自発的に作りたい」という前向きな思いを持つ社員が多いことも関係していると思います。

どんな企業とも一緒に組むことの可能性を追求しよう、というスタンスが浸透しているんですね。しかも、進め方は個々のプロジェクトの担当者に委ねられているため、今回のようなフレシキブルな動きも取れますし、対等な目線で協業しやすいのだと思います。

岡部 それは、私たちからもすごく感じました。やはり、少し高圧的に感じる大企業の担当者もいらっしゃるなかで、私たちの開発都合でプロジェクトがなかなか進まなくても、パートナーとして伴走してくれました。

―なぜ丸紅にはそのようなオープンイノベーション風土があるのでしょうか。

青木 個人的な想像ですが、新しいことに挑戦したいというマインドがベースにあるなか、愚直に新しいことにチャレンジするスタートアップに対する憧れのようなものがあるのだと思います。

複数のスタートアップと協業させていただくなかで学ばせていただいたこととしては、大企業がスタートアップ企業のパートナーとして事業を作っていくためには、双方の目線の高さ・物事を考える時間軸をすり合わせていく姿勢が大切だということです。お互いにお互いの価値観に寄り添い、一緒に新しいことに向けて取り組むことが重要だと考えています。

特にノバルスさんとの取り組みは、一緒にサービスを作り上げたい思いがお互いに強かったですね。

コネクテッド・バッテリーを世界中に広めたい

―8月に「MaBeeeみまもり電池」の販売が開始されましたが、今後の展開や、これから作りたい未来について教えてください。

青木 今回「MaBeeeみまもり電池」は丸紅ソーラートレーニングのお客様向けにご案内を始めましたが、いずれ丸紅グループの他のBtoC向け事業にも展開していきたいので、引き続きノバルスさんと協議を続けているところです。

また、みまもり電池以外にも「クラシカザル計画」としてお客様に提案できる商品ラインナップを増やしたいので、スタートアップを含む複数の異業種企業との協議を始めています。コロナ禍でなかなか外出ができなくて、刺激の少ない日々を送っていらっしゃる方も多いと思うので、日々の暮らしに楽しみを提供できるようなサービスを提供したいですね。

丸紅は常にオープンなので、どこかの大企業とタイアップしたいとお考えのスタートアップには、ぜひ気軽にお声がけいただきたいです。

岡部 IoT電池でコネクテッドに、いろんなモノがつながるようになると、人と人の直接的な意思疎通だけでなく、さりげないけれど密度の高いコミュニケーションが取れるような、豊かな社会になると考えています。だから、高齢者の見守りに限らず、もっと幅広い領域で使われるよう、いろんな顧客基盤を持つ企業とのタイアップで可能性を模索したいです。

そして目指すのは、世界展開です。現在、乾電池は世界中で使われていますが、もともと130年前に日本の中小企業が発明したものが、全世界に広がったんですね。同じように、ノバルスも、“つながる”電池を世界中に広められる可能性があると思っています。

高齢化社会の先進国である日本国内に浸透すれば、世界にも同じシステムを持っていけるはずなので、その際にも丸紅さんとご一緒できたらいいなと思っています。

インタビュイー
青木健治 氏 丸紅ソーラートレーディング株式会社 取締役

2010年丸紅入社、国内外発電プロジェクトの事業計画策定等を経て、2015年より丸紅新電力㈱の設立、高圧代理店開拓、電源調達、融通等に従事。現在は同社の新規サービス開発を担当し、2018年11月より現職にて卒FIT電力の買取、その他新規サービスの開発を推進。丸紅アクセラレータ2018の事務局メンバー。

インタビュイー
岡部顕宏 氏 ノバルス株式会社 代表取締役

出版社アスキーなどを経て、2002年セイコーインスツルに入社。国内時計業界初となるBluetoothWatchの規格策定や、店舗向けソリューションシステムなど新規事業開発を担当。2015年ノバルスを創業、2016年8月に乾電池型IoT「MaBeee」をリリース

逆境でも諦めない。丸紅につくったスタートアップとの共創文化

2019年11月28日
田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。

Featured

【新規事業開発インタビューvol.1】Freeat_食品ロス削減の仕組みを創る(前編)

“本業を退職せず”事業創出を実現できるインキュベーションプログラム「STARTUP STUDIO by Creww」にてプロジェクトを推進するファウンダーインタビュー連載。第一弾は、食品ロス削減の仕組みを創る「Freeat」の小嶋 亮 氏にお話を伺いました。スタートアップスタジオで本業を続けながら事業開発をするメリットや、ぶっちゃけ大変なこと、失敗談などなど…ここでしか聞けない生の声を赤裸々に語っていただきました。 前編では、プロジェクトの発足背景、仲間集めのポイント、プロジェクトを推進する上で行った事を伺いました。

コロナ禍の新たな顧客体験構築に挑む、店舗業務効率化SAASスタートアップ

成長の加速を落とさないスタートアップにフォーカスをして、失敗事例や克服のストーリー成功体験など、生の声を配信している連載「スタートアップの流儀」。今回は、Leretto(リリット)の代表取締役社長である辰巳 衛氏にお話を伺いました。

シードラウンド調達完了|廃棄物業界の省力化・効率化に取り組むファンファーレを紐解く

成長の加速を落とさないスタートアップ企業にフォーカスし、「失敗事例や克服のストーリー、成功体験」など、生の声をこれから成長していくスタートアップに参考にしてもらえるお話をお届けする「スタートアップの流儀」。 第二回目のゲストは、テクノロジーを活用して廃棄物業界の省力化や効率化を目指す、ゴミテック領域のスタートアップ、ファンファーレ株式会社の代表取締役 近藤志人さんにお話を伺いました。

丸紅に根付くスタートアップとの協業文化。1年の開発を経てIoT製品を商品化へ

「お金で買えない価値を売りたい!〜コンセントの先の未来へ〜」というコンセプトで、2018年にアクセラレータープログラムを開始した丸紅電力本部。IoT製品である、コネクテッド・バッテリー「みまもり電池MaBeee」を開発しているスタートアップのノバルスと、1年間の開発・協議を経て、2020年8月より丸紅ソーラートレーディングより販売を開始した。具体的にどのようにプロジェクトを進めてきたのか、丸紅ソーラートレーディングの青木健治氏と、ノバルス代表の岡部顕宏氏に話を聞きました。