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日曜日, 4月 11, 2021

逆境でも諦めない。丸紅につくったスタートアップとの共創文化

丸紅の国内電力プロジェクト部にアクセラレータープログラムを導入し、新規事業の創出やスタートアップとのシナジーを生むべく奔走する女性がいる。同企画チームの吉野美佳氏だ。現在10社のスタートアップとの実証実験を進めている。しかし、吉野氏は入社以降、いくつもの挫折を経てこのアクセラレータープログラムにたどり着いた。何が彼女を変えたのだろうか。お話を伺った。

中東駐在のチャンスを得るも、踏み切れなかったジレンマ

私は大学時代、クウェート政府の奨学金で中東に1年ほど留学していました。きっかけは“9.11”のテロ。幼少時より世界平和に寄与したいという正義感が強く、なぜそのようなことが起きるのか学ぶために法学部の政治学科に進みましたが、本当の意味で理解するためにはアラビア語の習得が必要だと思い、渡航しました。

アラビア語の美しさに魅せられた私は、中東に関係する仕事がしたい、中東の発展に貢献したいと思い、帰国後、就職活動をスタート。「中東駐在×電力」をキーワードに、丸紅に入社しました。

2011年に入社後は、電力本部で中東地域を管轄する部署に配属されました。そこは中東地域で発電所投資を行う部署。ただ、意気込んで入社したものの、大型の案件を開発していくことは想像以上の世界で、最前線でバリバリ働く先輩たちの迫力と私とは遠くかけ離れていたんです。

私はコミュニケーションを取るのが苦手で、周りの人の顔色を窺ってばかり。わからないことがあっても嫌われるのが怖くて聞けないから、物事を上手く前に進めていくことができず悪循環でした。しかも地道な努力を積み重ねることもできませんでした。

「仕事ができない新入社員」のまま突入した2年目の終わりに、自らが願っていたはずのチャンスを蹴ってしまいます。新しく立ち上げていたドバイ拠点で駐在の機会をもらえたのに、断ってしまったのです。

現地で発電所をつくるには、強い精神力を保ちながら最前線で指揮をとる必要がありますが、自分にはできないと思い込んでいたのが根本的な理由でした。

そんな中、会社の組織に変更があって、私は中東の担当部署から別の部署に異動。振り返ればこの一連の出来事は自分の中での大きな挫折となりました。

出産を機に仕事への向き合い方が変わる。自分のできることを模索して異動を志願

ターニングポイントは、入社4年目に育児休業からヨーロッパの担当部署へ復帰したときです。限られた時間で効率的に働く必要にも迫られ、働き方や自分の進むべき道などに悩みました。

人の顔色を窺うのではなく、自ら積極的なコミュニケーションをしながらイニシアチブを取り、実績を作ることで自分の価値を高めないといけないと痛感するように。東京にいながら後方支援的な業務で価値が出せないか模索していました。

制約が生まれたことで、やれることが明確になり、努力の方向性が定まって何とか少しずつアウトプットが出せるようになったころと、世界的に電力・エネルギー業界が大きく変わろうとしている時期が重なり、2016~17年ごろはヨーロッパでの新規事業開発を模索し始めるようになります。

ヨーロッパでは、地場の大手電力会社各社がアクセラレータープログラムを実施していることを見ていました。

それならば、日本市場でできることがあるのではと考えるようになり、国内電力プロジェクト部に自ら異動を志願しました。

反対意見を力に変えて、掴み取ったアクセラレーターへの挑戦

異動後は、アクセラレータープログラムを検討し、周りの人の後押しや上司のサポートもあって、前進させることができました。ただ、アクセラレーターはやってみないと何が生まれるかはわかりません。

世の中の成功事例もまだ限られています。小規模な組織で高速PDCAを回しているスタートアップと大企業が一緒にやること自体がチャレンジングなこと。だからこそ生まれる化学反応が期待されるのがアクセラレーターの取り組みです。「失敗」に怖じ気ついて何も始めないのではなく、覚悟を持って大きな絵を描きつつ挑戦しないと、今の時代のニーズには応えられないという意識はありました。

社内外の色々な人に相談をしてエビデンスを集めながら、アクセラレーターを始めるチャンスを得ることができました。

また、反対意見にも感謝しています。最初はアクセラレーターの目的を「新規事業の創出」にしていましたが、達成できるとは限らないし、それ自体なら他の手段のほうが大手企業にとっては有力です。そこで、重視する順に「新規事業創出のためのノウハウの獲得」「新規事業の効果的・効率的な創出」「組織風土の改革」という3つの柱を据えたことで、自分自身も腹落ちして踏み切ることができたかと思っています。

仲間を増やしながら、スタートアップ10社との実証実験をスタート

こうして、かつては勝手に挫折していた私が、アクセラレーターの旗振り役になりました。もちろん、私だけでできたわけでは全くなく、常に自発的に力になってくださる仲間が周囲にいました。

自分も含めて全員、本業がありながら、関わり方は色々ですが、多いときで30人くらいに手伝ってもらいました。募集ページを公開し、約100社からの応募をいただくことができたのですが、そこから絞っていくにあたっては自社の目利きが確かなのか不安になり、蕁麻疹が出ながら選考していました(笑)。

結果的にそこから35社に絞り、現在は10社との実証実験を進めていますが、それぞれに優秀で情熱のある担当者が集まってきてくださり、私はいくつか主担当をやらせてもらいながら、全体の黒子として担当者が走りやすいレールを敷くことを自らに課しています。

10社との取り組みを事業化するかどうかの判断はこれからですが、このプログラム自体に意義があったと言えることと、スタートアップとの協業で一定の成果を出せそうだということが分かってきたので、少しホッとしています。

既存のルールではない「土俵」が、人生を変える突破口に

私は、アクセラレーターを通じて少しだけ自信を持てるようになったような気がします。根回しをしながら周りを巻き込んで、とにかく前に進めていく「ブルドーザー」のような人だと言われることが増え、それを私の売りにしていこうと思えました。

それから、この取り組みを通じてわかったのは、私は決まったフレームワークの中でコスト削減や効率化をする仕事よりも、誰と何をやるのかも決まっていない状態から新しい事業を立ち上げるのが好きだということ。既存のルールではない新しい土俵をいただいたことで、これまで分からなかった自分の側面に気づきました。

これは、個人の挑戦は会社の挑戦として応援してくれる組織風土があったからこそ。そして何より、周りの人たちが私を支えてくれたから実現したのだと感謝しています。

アクセラレーターに限らず、新規事業を担当するということは、ずっと走り続けないといけないことだと思っています。たぶん妊娠出産や子育てと同じで、一度走り始めたジェットコースターからは降りられません。登っても下がっても突き抜けるしかない。 この先、アクセラレーターでの成果をどこまで発展させられるのかは自分たち次第で未知数ですし、やってみないと分かりません。スタートアップとのワクワクする共創で非連続なイノベーションや価値を創出できるよう、走り続けたいと思っています。

インタビュイー
吉野 美佳 氏 丸紅株式会社 国内電力プロジェクト部企画チーム
2011年丸紅入社、中東、欧州市場での発電所投資や電力小売事業を経て、現職にて新規事業を企画推進中。
執筆
田村 朋美 
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。

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