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月曜日, 9月 20, 2021

新規事業は子会社化。本気のオープンイノベーションでセイノーと物流の未来をつくる

岐阜県大垣市に本社を置き、主に商業貨物を輸送している大手運輸企業のセイノーホールディングス。物流というと“トラック運転手”“激務”“古くて硬いドメスティックな企業”とイメージされがちだが、セイノーホールディングスはそれとは一線を画している。同社に変革をもたらしているのは、2011年に社内ベンチャーを立ち上げ、2016年にはオープンイノベーション推進室を発足して数々の新規事業を生み出している同室室長の河合秀治氏だ。河合氏は現在、10社の会社で社長、取締役の肩書きを持つという。具体的に、どのような考えでどのような取り組みを推進しているのか。話を伺った。

挑戦して失敗しても、再び挑戦できる受け皿づくり

私は2011年に、ココネットという会社をセイノーの社内ベンチャーとして設立しました。これは、「日常の買い物」に不便を感じる買い物弱者に対して、食料品のお届けや見守りなどをする事業。お客様に商品を届ける物流の最後の区間、「ラストワンマイル」に対する課題を解決するための会社です。

ただ、それまで社内起業の事例がなかったので、周りからの共感はなかなか得られず、立ち上げるまでに時間もかかって大変な思いをしました。「会社の中で新しい会社を作るって何?」「その事業は文化に合わない」など課題が多くて。起業までに約2年がかかり、さらに最初の2年は赤字だったこともあって、相当苦労したんですね。

新しい事業を立ち上げるのにここまで大変だと、セイノーで「新規事業を作りたい」と後に続く人はいなくなる可能性は高くなります。特に、私の苦労する姿を見ていた人は、同じことをやりたいとは1ミリも思わないでしょう。

とはいえ、物流業界には解決すべき課題が山積みです。たとえば、少子高齢化に伴う人口減少によってトラック運転手不足は喫緊の課題ですし、再配達の増加などラストワンマイル配送問題や燃料高騰、地球温暖化など挙げるとキリがありません。

でも、それらの課題は我々の持っているたくさんのアセットと、スタートアップ等の技術力を掛け合わせたら少しずつ解決できる可能性があります。

たとえば、約2万8000車両所有しているトラックは、毎年地球を1万6000周走っている計算になるのですが、その間事故はほとんどないんです。だから、全走行データを分析したら事故が少ない社会に貢献できるかもしれませんし、他にもタクシーや鉄道コンテナ、飛行機、船舶、軽油など、たくさんのアセットがある。

そこで、2016年にオープンイノベーション推進室を作り、他社と協業して新しいことに挑戦できる土台と、失敗しても戻って何度もチャレンジできる受け皿を作りました。そして、若手に対して新規事業の立ち上げや社内起業を推進する、イントレプレナーづくりを始めたのです。

プロジェクトは積極的に事業化し、担当した社員が経営する

オープンイノベーション推進室には現在15名のメンバーが在籍しており、私以外は全員専任です。特徴的なのは、自分でプロジェクトを立ち上げたら事業会社を設立するか、事業会社に事業を持って行ってハンズオンで育てるかの2択であること。社内でなんとなく消えていくようなプロジェクトではなく、会社からスピンアウトするような本気度の高いスタンスで取り組んでいます。

2016年からの3年間で形にしてきたプロジェクトは10を超えていて、子会社化したプロジェクトも複数。たとえば、メンバーからの発案で生まれた「セイノーメンテック」という子会社は防災・減災に取り組んでいます。

日本には非常用発電設備が100万台以上存在しているのですが、十分なメンテナンスがされていないので、非常時に正常に稼動しないという問題が全国で顕在化しているんですね。しかも、突然動かすことで火災につながるケースも。そういった設備をメンテナンスする会社としてセイノーメンテックを立ち上げました。

この会社は責任者として私を社長にしていますが、実際は32歳のメンバーが執行役員として指揮をとっています。

ほかにも、文京区と連携した「こども宅食プロジェクト」や、セブンイレブンジャパンと業務提携した新会社・GENie、2017年のCrewwのアクセラレータープログラムから、生産から物流まで一括管理する野菜工場事業「コトノハ フレッシュファーム(https://kotonoha-ff.com/)」も立ち上げました。

これは、LEDで野菜を作る技術を持つファームシップさんとの協業で岐阜県土岐市の物流センター内に作った野菜工場で、野菜を収穫するとそのまま垂直搬送機でターミナルに下し、トラックに積まれるという、配送までのさまざまなコストをカットした画期的な事業です。

また、熊本県にオーガニック路地野菜の農業法人「モエ・アグリファーム」も設立。東京ドーム4個分の広大な土地で30種類以上の野菜を栽培しているのですが、特例子会社として就労支援団体と一緒に現地で30名の社員を採用しており、うち15名は障がい者雇用。

この会社は野菜作りに興味を持っていた24歳の若手社員が現地に住み込み、農業と福祉の連携を進めながら順調に成長させているところです。

社内で挑戦者を増やすために、アクセラレータープログラムは継続して開催

推進室を立ち上げて以降、毎年継続してアクセラレータープログラムを開催しているのですが、その理由は、社外の企業や団体などが「物流領域で何か新しいことができないか」と考えたときに、真っ先にセイノーを思い浮かべてほしいからです。古く硬いイメージを払拭し、「面白いことを次々とやっている企業だ」「セイノーなら話を聞いてもらえそう」と思ってもらいたい。

これまで、オープンイノベーションに関連したコミュニティーや、いろんなイベントに参加してきましたが、やはりアクセラレータープログラムの開催が最も象徴的にセイノーの取り組みをアピールできると実感しています。

また、社内に対してもアクセラレータープログラムを継続することで良い影響が出始めています。推進室の取り組みはメディアへの露出で知る社員が多いのですが、それを見て異動を志願する人が出るようになったのです。

そういう社員は全員受け入れているのですが、なかには滋賀県で20年間トラックドライバーをしていたけれど「新しいことに挑戦したい」と、単身東京にやってきた社員もいます。また、メディアの情報を見て「推進室で働きたい」と応募してきた中途社員も。

新しいことをやりたいと思っていても、一人でやるのはリスクがあります。だけど、社内で事業化までできるバックアップ体制があり、農業や林業、ドローン、トラック関連など挑戦できる領域に制約はないので、手を挙げる人がもっと増えて、活躍する人が増えたら嬉しいですね。

イノベーティブな創業者のDNAを取り戻し、イントレプレナーを輩出するために

私がここまで新規事業創出に力を入れているのは、自分が会社をつくったときの苦労がとても大きく、ハードルを下げないと誰も新規事業を提案しなくなるという危機感に加えて、創業者のイノベーティブなDNAを取り戻したいという思いがあるからです。

セイノーの創業者は、約70年前に日本で初めて複数の企業の商品を混載したトラックで長距離輸送を始めました。きっかけは、創業者の地元・岐阜県大垣市が繊維の街であり、その繊維を地元だけでなく東京でも販売したいと考えたこと。しかも、中小の工場がほとんどなので、個社でトラックを借りると採算が合わないから複数社の商品を混載して運ぼうと。

ただ当時は、長距離輸送するトラックは存在しなかったので、免許やルールもありません。そこで、創業者はそれらを自ら作って国に提案し、初めて岐阜県から箱根の山をトラックで超えて、東京に商品を運びました。

セイノーにはそういった歴史があるからこそ、失いかけていた創業者のイノベーティブなマインドを再び持てば、世の中に貢献する事業を創出できるはずだと考えました。

現在は一次産業を中心に新規事業を立ち上げており、近く漁業や畜産に関する事業も検討を進めています。突拍子もない領域での挑戦は避けますが、ロジスティクスに関する領域で我々のアセットが活用できるなら、枠組みは作らずに挑戦したい。そのためにも100人、200人と推進室の仲間を増やし、社会課題を解決して新しい価値を創出し続けたいと思っています。

(執筆日:2019年11月7日)

インタビュイー
河合 秀治 氏 セイノーホールディングス株式会社
オープンイノベーション推進室室長
1997年西濃運輸株式会社に入社後、トラックドライバーとし てキャリアをスタートし、トラック輸送の現場を経験。セイ ノーホールディングス株式会社の業務改善・人財開発・内部統 制プロジェクトを経て、社内では異例のベンチャー企業、ココ ネット株式会社を2011年に設立し、後に社長に就任。 同社は「買い物弱者対策」として、ご用聞き・食料品やお弁当 のお届け・見守りなどのソーシャルビジネスを全国で展開。 現在はセイノーHDオープンイノベーション推進室室長を兼務 し、新規事業構築とイントレプレナー輩出を進めると共に社会 課題解決の取り組みも進めている。
GENie株式会社 代表取締役
株式会社ベクトルワン 代表取締役
株式会社インテンツ 取締役
セイノーメンテック株式会社 代表取締役社長
株式会社二葉工業所 取締役
株式会社モエ・アグリファーム 取締役
株式会社EPARKスイーツ 社外取締役 株式会社LOCCO 代表取締役
(一社)買い物弱者対策推進協議会 代表理事
(一社)こども宅食応援団 理事
(一社)全国防災・減災設備点検協議会 専務理事
明治大学 サービス創新研究所 客員研究員

新規事業創出に大切なのは、ワクワクする事業のタネを見つけ、明るい将来ビジョンを描くこと

2019年11月22日
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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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