12.8 C
Japan
日曜日, 7月 3, 2022

新規事業創出に大切なのは、ワクワクする事業のタネを見つけ、明るい将来ビジョンを描くこと

2016年からオープンイノベーション推進室を設置し、新規事業創出の取り組みを加速させているセイノーホールディングス。これまで事業化されたプロジェクトは10を超えており、子会社化したプロジェクトも複数社ある。
その一つに、ラストワンマイル問題を解決するためセブン-イレブン・ジャパンとの業務提携によって誕生したGENie株式会社がある。2019年よりその代表を務める田口義展氏は、オープンイノベーション推進室時代、Creww(クルー)のアクセラレータープログラムを活用して株式会社ファームシップとの協業で生産から物流まで一括管理する野菜工場事業「KOTO no HA fresh farm」を企画立案した。創業家4代目でもある田口氏は、セイノーホールディングスでどのような動きを取ってきたのか。話を伺った。

新設の部署に自ら志願して異動

2012年にセブン-イレブン・ジャパンへ入社し、生鮮食品などの生産から消費まで低温に保つ物流方式「コールドチェーン」を担当していました。2015年になると、セイノーホールディングスにコールドチェーンの部署が立ち上がるという話を聞き、「これは自分のスキルを生かせる」と思ってジョイン。

新設されたコールドチェーン推進室は、初めて社内ベンチャーを作った河合が室長になり、一緒に新しいスキームを考える日々を送っていました。そこから発展的にコールドチェーン推進室からオープンイノベーション推進室(以下:推進室)へと変わったのですが、この変化は不安よりもワクワクが大きかったですね。

推進室を作った背景にあったのは、セイノーグループに新たな柱となる事業を作りたい、新規事業によって課題を解決したいという思い。高速道路のない時代に、トラックでの混載輸送を創造した創業者精神を再びセイノーグループに取り戻すべく、始動しました。

当時、推進室にいたのは河合を含めて7人のメンバーです。全員が志望して集まっており、セイノーグループが持つアセットをうまく活用して新たなビジネスを立ち上げるために、それぞれがいろんなスタートアップに話を聞いて、新規事業のタネを探していました。

ただ、社内に根付いていない新しい文化なので、グループ会社に「スタートアップとオープンイノベーションの取り組みをしないか」という話をしても、最初は懐疑的な人が多かったですね。

大切なのは、全員が明るいビジョンを描けて“やりたい”と思えること

実際、Crewwのアクセラレータープログラムを活用して、工場野菜のノウハウを持つファームシップさんとの協業で岐阜県土岐市の物流センター内に作った野菜工場事業「KOTO no HA fresh farm」を立ち上げるときも、今一緒に取り組んでいるグループ会社に話をするまで、調整が難航しました。

そこから学んだのは、オープンイノベーションで新規事業を作るには「全員がやりたいと思えるか」「明るいビジョンをみんながいかに描けるか」が大切であること。それを引っ張っていくのが推進室の役割なので、僕自身が心から「この事業を実現したら面白い」と思えて、スモールスタートかつ最小限のリスクで着手できる提案が必要だとわかりました。

その点、野菜工場はコールドチェーンに携わっていた僕にとって本当に実現させたい事業でした。なぜなら、生産から物流までを一括管理する野菜工場を作れば、コールドチェーンの一番のネックになる「荷主を集められない」という問題をクリアでき、セイノーとしてのコールドチェーンネットワークの実現につながると考えたからです。

生産と物流の連携がうまくいけば、全国展開はもちろん海外進出も夢ではなく、セイノーの大きな力になり得る。

そこで、現在組んでいるグループ会社・東海西濃の社長に「この農業事業はセイノーグループを大きく発展させる可能性を秘めたプロジェクトです。これから世界との勝負を考えたとき、物流会社として製造一貫型のコールドチェーンは世界と戦う武器になります」と、明るいビジョンとワクワク感を伝えました。

その思いに社長が賛同してくれたことで「KOTO no HA fresh farm」の事業化につながりました。現在、「KOTO no HA fresh farm」は順調に成長を続けています。

自分が心から面白い、ワクワクする事業を提案する

オープンイノベーションを実行するにあたって苦労したのは、スタートアップと大企業はプロジェクトの進め方に違いがあることです。大企業は決めたことでも社内のプレゼンを経て方向転換が必要になることもありますし、合意形成に時間がかかってしまうこともあります。だから、お互いがいかにフレキシブルなマインドを持てるかは難しい点でした。

その中でも成功したプロジェクトは、将来ビジョンの合意形成ができていて、お互いが臨機応変に対応できたケースです。同じ将来ビジョンが描けていたら、目の前がどんな状態になったとしても、“それなら何をすべきか”とできることのすり合わせができます。とはいえ、どのプロジェクトを推進するにも紆余曲折がありましたけどね。

いま、いろんな企業で新規事業を立ち上げようと奮闘している人はたくさんいると思います。巻き込み方は会社の文化等によって違うと思いますが、僕が一つアドバイスを言えるとしたら、「収益ではなく、どんな未来を作れるのかを想像し、その事業を心から面白いと思う」ことです。本当に面白いと思えなかったら、壁にぶつかったとき簡単にダメになると思いますし、そもそもワクワクしないのであればやめた方がいい。

また、今は提案を受け入れてもらえなかったとしても、会社のステージや社会のマインドの変化によって、違うタイミングなら実現できる可能性があります。諦めずにタイミングを見計らって提案するといいかもしれません。

オープンイノベーションやアクセラレータープログラムは、ひとつの手法でしかありません。そういった手法を使わずに社内を説得して新規事業ができるなら、活用する必要はないと思います。でも、セイノーグループには、アクセラレータープログラムが必要でした。

最初は「オープンイノベーション」という言葉自体を煙たがれることも多かったのですが、相手が面白いと思えるようにグループ会社や担当部署のメリットを考えながら提案し続けていたら、少しずつですが「新規事業が面白い」と共感してくれる人が増え、推進室にも手を挙げて異動する人が出始めています。

だから、オープンイノベーションや新規事業の文化がない会社でも、諦めずに、相手がメリットだと思うことを提示しながら、継続して提案することで状況は変えられると思います。「新しい挑戦をしたい」人が、社会にとって価値ある事業をたくさん創出できる世の中になれば、もっと楽しい世の中になると思っています。

インタビュイー
田口 義展 氏 GENie株式会社 代表取締役社長
岐阜県大垣市育ち。15歳~19歳までイギリスに留学し、学習院大学へ入学。セブン-イレブン・ジャパンで3年間勤務し、西濃運輸へ転職。
オープンイノベーションを含む各種部署を経由し現在に至る。
Facebook コメント
田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。

Featured

【募集】浜松市で実証実験&事業化を目指しませんか。全国からスタートアップを募集

【オープンイノベーションインタビュー】国土縮図型都市である静岡県浜松市では、本日より「令和4年度実証実験サポート事業」のプロジェクト募集を開始!全国のスタートアップに対して1年間、市内実証実験フィールドの提供や広報活動、最大200万円の助成、法制度に関するアドバイスを実施。さらに「トライアル発注制度」を新設して実験後の出口支援も強化するという。具体的にどのようなスタートアップを募集するのか。浜松市産業部スタートアップ推進課主幹の新村仁氏に話を伺った。 #募集 #浜松市 #アクセラレータープログラム #アクセラレーターインタビュー #オープンイノベーション #スタートアップ #CrewwGrowth #大挑戦時代をつくる #Creww

【公募】循環炭素社会を目指し、スタートアップや起業家予備軍を含む研究者らを助成!

【オープンイノベーションインタビュー】循環炭素社会の構築を目的として誕生した一般社団法人カーボンリサイクルファンドは、民間からの寄付金を原資にシード/アーリーステージのスタートアップにとって必要な見返りを求めない“GAPファンド”として、循環炭素社会の実現に向けてイノベーションを起こそうとする大学・企業等の研究者(研究チーム)に助成金を交付している。そんな同団体が開催する助成活動について、イノベーション部/部長代理 鹿島淳氏に話を伺った。 #募集 #カーボンリサイクルファンド #アクセラレータープログラム #インタビュー #オープンイノベーション #スタートアップ #CrewwGrowth #大挑戦時代をつくる #Creww

【Creww ×メリービズ】管理部門の働き方を先進的にする、スマートバックオフィス

さまざまなスタートアップから次々と誕生している、バックオフィス業務のSaaSサービス。Crewwは、それらのサービスを複数導入することで、管理部門における新しい働き方とキャリアを創出し、社会に広めていくための「スマートバックオフィス化」を進めています。そこで、Crewwが導入している「バーチャル経理アシスタント」を提供する、メリービズの長谷龍一氏と、Creww取締役の高橋彗に、バックオフィスをデジタル化することの価値について話を伺いました。

スタートアップと地域企業が共創で挑む食品ロス課題解決〜hakkenの乾燥野菜によるイノベーション

【スタートアップインタビュー】 世界には、今この時も食べ物を求め飢えに直面している人々がいます。一方で、日本の食糧廃棄量は深刻です。食品を焼却処理する際に排出されるCO2は地球温暖化の原因ともなっています。大量の食糧が廃棄される現実は、誰もが知っている矛盾であり、誰も解決できなかった難題でもあります。株式会社hakkenは、驚きの発想で廃棄させずに野菜をリメイクし、扱いやすい乾燥野菜を使ったサービスを展開、フードロス解消にアプローチしているスタートアップです。可能性に満ちた乾燥ロス野菜が創るイノベーションは注目を集め、NAGANO-OIC 2021では、2社から採択されました。果たしてその協業内容とはどんなものなのか。地域に根ざした小規模生産を活かすhakkenのビジョンとはー。穏やかに淡々と語る言葉に秘められた熱い胸の内について、代表の竹井氏にお話を伺いました。 #hakken #SDGs #食品ロス #食糧廃棄 #乾燥野菜 #イノベーション #NAGANO_OIC_2021 #スタートアップ #地域創生 #共創 #Creww #大挑戦時代をつくる
Facebook コメント