本プログラムは、優れた技術や経営基盤で成長を実現している山梨県内企業と、革新的なアイデアや技術を有するスタートアップ企業とのオープンイノベーションを支援することで、スタートアップ企業の事業定着や、県内産業の活性化を目指すプログラムです。本記事では、イノベーションへの強い意志を持つ各参加企業による発表を要約し、2022年10月からの約5ヶ月間に渡る取り組みの成果を【前編・後編】に分けて、レポートいたします!

『やまなしスタートアップアクセラレーションプログラム』の趣旨について(山梨県)

スピーカー:山梨県 産業労働部 スタートアップ・経営支援課 伊藤 氏
山梨県は、東京都の隣り・本州の中央に位置します。中部横断自動車道が静岡まで開通したことで、工場や物流拠点を検討する問い合わせも倍増し、スタートアップが国内外に進出しやすい新たな事業拠点として好適な立地条件を有しています。
また、山梨県は、仕事をしている者のうち起業者の割合が全国4位(H29 年度就業構造基本調査)。開業率で見ると全国8位(R3年度中小企業白書)です。現在、スタートアップの創出誘致に舵を切り、県全体で政策の強化を図っています。具体的には、支援策の発信、浜松市との連携、ビジネスコンテストの開催、起業支援金の交付、実証実験のフルサポート、アクセラレーションプログラムの実施による事業展開など、スタートアップ支援の枠組み拡充を行っております。
プログラム概要について(Creww)

スピーカー:Creww株式会社 小林 氏
『やまなしスタートアップアクセラレーションプログラム』は、①スタートアップ向け、②県内企業向けの2つのプログラムで構成されており、スタートアップの成長支援および 県内企業のスタートアップとの共創による新規事業創出支援を目的に実施しています。
スタートアップに対しては、県内での事業定着や事業拡大に向けた支援、県内企業に対しては、全国のスタートアップとのオープンイノベーション支援を行います。具体的には、プログラムに参加していただいたスタートアップ8社に対するメンタリング、レクチャー、山梨県内企業との事業共創に向けたマッチング支援、また、プログラムに参加して下さった県内企業3社に対しては、Crewwに登録する全国7000社の内から、課題解決に向けたオープンイノベーション実施支援を行いました。
本日は、参加企業の皆さまより、約半年間の成果を発表していただきます。貴重な経験を共有し、交流を深め、今後の気付きへと繋がる機会となることを願っております。
スタートアップ企業成果報告ピッチ
▶︎「予兆制御AI」株式会社アドダイス 成果報告ピッチ

スピーカー:伊東 氏
アドダイスは、予兆制御AIで、24時間365日リスクを見守るサービスを提供しています。
本プログラムでは、山梨県のご支援のもと、心に問題を抱える方をターゲットとし、山梨市内の病院や運輸企業、心理士の方にインタビューを実施しました。その結果、患者が抱える根本の原因や治療の効果が、週に一度のセラピーでは分かりにくいという課題が判明しました。
そこで、残りの23時間と6日間のメンタルの上下を可視化することで、セラピストを支援し、治療効果を明確化することを目指しました。様々な計測装置を開発するメーカーや、先生方が計測して集めたデータを、AIで解析した結果、うつや不安に対する高精度のリスクスコアを提示することができました。アドダイスは、今後も、医療機関・製薬企業・就労支援施設・産業医等へ実証の提案をしながら、こころの心配事がある人への価値提供を実現したいと考えています。
▶︎「除菌ができるライト」樹研合同会社 成果報告ピッチ

スピーカー:Stefano Valenzi 氏
樹研合同会社は、除菌ができるライトを提供しています。コロナウイルスも除菌できることが証明されています。また、菌の増殖を防ぎ、継続的に菌を抑制することができます。さらに、太陽光に近いLEDを作れるため、植物の成長をはやめることも可能である他、色や色覚にも影響を与える高品質なライトでもあります。
本プログラムでは、コロナ禍、アフターコロナにおいて、山梨県の観光客に、継続的な安心を提供することを目指しました。ライトを実際に導入した企業からも喜びの声が聞かれました。また樹研合同会社の技術は、蛍光灯を変えるだけで、簡単に提供することができます。
今後も、本プログラムにて様々な企業を紹介していただいた機会を活かし、サービスの周知を図ります。
▶︎「ドローンを活用した橋梁点検」エアロダインジャパン株式会社 成果報告ピッチ

スピーカー:鹿谷 氏
エアロダイングループは、ドローンを活用して電力線、通信鉄塔、橋梁、港湾などのインフラ点検を行うドローンソリューションプロバイダーとして、世界No1の評価をいただいています。
インフラ点検にもたくさんの種類がありますが、規制の状況などが違い、国によって、何のインフラ点検でドローン活用が進展するかはバラバラです。
日本においては、国内70万橋の総数検査が行われている橋梁点検市場に注目をしております。
その中で、国交省直轄の事業ではドローンの活用が進んでいるのに比べ、地方公共団体の橋梁では未だにDX化の情報が共有されていないことを市場課題と捉えました。
本プログラムでは、山梨県のバックアップを得ることで、県庁・事業者と勉強会を実施し、ドローン活用の2023年度橋梁点検仕様書への反映を目標に取り組みを行いました。
▶︎「汚染の浄化とCO2の吸収を合わせた環境浄化事業」株式会社GAIA-X 成果報告ピッチ

スピーカー:山中 氏
GAIA-Xは、汚染の浄化とCO2の吸収を合わせた環境浄化事業を行っています。Gaia-X浄化剤を用いて、専用の浄化プラントを活用することで、汚染土壌や汚水に含まれる、生態系にとって有害な物質を無害化しています。また、同時にCO2の吸収も可能とする唯一無二の技術であることが、弊社事業の特徴です。さらに、放射性物質・PFASのような浄化困難な汚染源を浄化する優れた技術力を有しているにも関わらず、低コストでサービスを提供しております。
本プログラムに参加した背景には、山梨県における汚染土壌問題があります。リニア新幹線・中部横断道建設等により、重金属等を含む建設発生土は1500万トン以上になる見込みです。
そこで、建設業界への市場調査を重点的に行い、年間の汚染現場の数や支出についてヒアリング、小規模施工での技術検証に取り組みました。今後は、エビデンスの強化やコンソーシアムの形成という課題をクリアしながら、長期常設型プラント事業の展開に向けて、山梨県に第一号プラントの設置を目指し、資金調達を実施する予定です。
▶︎「映像解析AI警備サービス」KB-eye株式会社 成果報告ピッチ

スピーカー:秋山 氏
KB-eyeは山梨県発のスタートアップです。既に災害現場での採用実績がありますが、今後さらに大きく事業をスケールしていくために、本プログラムに参加しました。
KB-eyeは、映像解析AI警備サービスを提供しています。交通誘導に特化した独自のAIが、自動的に危険を判定し、現場両端に設置した大型LEDが、車両の進行と停止を誘導します。また、KB-eyeを導入することで、省人化を叶え、受注現場数を増やすことが可能です。具体的には、KB-eye+警備員1人で、警備員3人分の売り上げを確保することができます。5年間で250以上の実験を重ねた結果、事故は0件です。
今後は、警備の完全自動化・自動運転との連携へと展開予定です。KB-eyeは、交通誘導整備現場の新たなビジネスモデルを構築し、負のイメージと劣悪な労働環境による警備員不足や高齢化といった課題を解決することで、犠牲者のない安全な社会を実現します。
▶︎「歯垢検査ライト」歯っぴー株式会社 成果報告ピッチ

スピーカー:小山氏
歯っぴーは、ヘルスケア事業を展開しています。一般的に用いられる歯垢着色液ではなく、成熟したプラークを赤く発光させる歯垢検査技術を用いて口腔内を視える化する技術や、光を当てるだけで、浮かび上がった細菌をチェックすることができ、食品衛生の視える化に役立つプロダクト、さらには、汎用AIを活用し、歯周病等の特定の疾患に関わる専門医の目を、スマートフォンで撮影しただけで再現する技術を有しています。
本プログラムでは、歯垢検査ライトを地元企業にて販売した他、人間ドックや健康診断を扱う事業会社とのマッチングを通して、健康診断の場で歯科を啓蒙できるような健康教室の展開を考えています。また、新規市場では、汚染チェックライトのレンタルにより食品衛生管理の自主検査を可能とし、独占市場にイノベーションを起こすことで、消費者が自分で選択できるような環境づくりにも取り組みました。具体的には、山梨県の学校給食会との連携を高め、学校給食の質を高める取り組みを続けます。(参考URL:http://www.yamanashi-gk.com/news_data/1565/)
▶︎「エアロゾロ感染対策フィルター」株式会社ユニパック 成果報告ピッチ

スピーカー:松江 氏
ユニパックは、空調用エアフィルターの企画・製造・販売をしています。「使い捨て」とされてきた中性能フィルターを見直し、洗浄再利用可能なフィルターを開発・提供しています。
本プログラムでは、マスクレス時代のエアロゾロ感染対策フィルターの開発を行いました。富士フィルムと提携し、同社のハイドロエージ―技術を組み合わせた持続抗菌フィルターです。ウイルスは、空気中の粉塵と一体となって浮遊しています。そこで、粉塵ごとフィルターに付着させ、ウイルスを不活化することを考えました。現在、国立競技場や、関西国際空港他、東京ドームLaQua等、多くの施設に導入されています。
今後は、マスクレス時代に従業員を守る福利厚生として商品の展開を図ります。また、ウイルスに限らず、細菌やカビ等、微生物の増殖を抑制するため、医療施設に留まらず、食品工場や文化施設にも提供していきたいと考えております。
