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月曜日, 11月 28, 2022

【世界初】環境移送ベンチャー「イノカ」が真冬に水槽内でのサンゴ産卵に成功!

環境移送ベンチャー企業の株式会社イノカは、2月16日、人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽でサンゴ(種目:エダコモンサンゴ)の産卵に成功しました。
季節をずらしたサンゴ礁生態系を再現することにより、日本では通常、年に1度6月にしか産卵しないサンゴを真冬に産卵させることに成功しました。

独自の環境移送技術により、産卵時期のコントロールに成功

人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽でサンゴの産卵に成功したことにより、今後サンゴの産卵時期を自在にコントロールできる可能性が見込まれます。本研究が進めば、年に一度しか研究が不可能であったサンゴの卵、幼生の研究がいつでも可能となります。

海洋生物の25%が住む海の生物多様性の中心でありながら、絶滅が危惧されるサンゴの保全知見が深まるとともに、創薬などのイノベーションの源泉となるサンゴについての基礎研究が進展することが期待されます。

さらに、本研究は日本企業の価値向上へも繋がっていく可能性を秘めています。昨今、国際組織TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures: 自然関連財務情報開示タスクフォース)などの活動により、脱炭素の次として生物多様性が注目を集めています。これにより、企業は脱炭素同様に生物多様性に対する影響評価を開示していく必要性が高まります。海洋生物多様性の代表であるサンゴの基礎研究が日本から進むことで、日本企業が国際的にも先進しながら次の環境対応をすることが可能となります。

サンゴ産卵確認・撮影中のCOO竹内氏、CEO高倉、CAO増田

研究概要

株式会社イノカでは、独自技術である環境移送技術(※)により、完全人工環境下においてサンゴの健康的な長期飼育に成功しています。
完全人工環境とは、人工海水を使用し、水温や光、栄養塩等のパラメーターが独自IoTシステムによって管理された水槽(=閉鎖環境)のことを指します。

さらに今回の実験は、環境移送技術を活用し沖縄県瀬底島の水温データを元に、自然界と4ヶ月ずらして四季を再現することで、日本では6月に観測されるサンゴの産卵を2月にずらすことに成功しました。
今回の実験は、同社の管理する水槽で3年以上飼育したサンゴを使用しております。

 (※)環境移送技術
環境移送技術とは、天然海水を使わず、水質(30以上の微量元素の溶存濃度)をはじめ、水温・水流・照明環境・微生物を含んだ様々な生物の関係性など、多岐に渡るパラメーターのバランスを取りながら、自社で開発したIoTデバイスを用いて、任意の生態系を水槽内に再現するイノカ独自の技術のこと。

産卵実験に使用した水槽

研究の背景

サンゴは、約4億年前に誕生し、熱帯を中心に生息している動物です。
生物多様性の面でも重要な役割を果たしており、海の表面積のわずか0.2%に過ぎないサンゴ礁海域に、海洋生物の25%が暮らしています。
また、人間の社会生活を支える上で必要な護岸効果や漁場の提供、建築材料や生活の道具の材料といった重要な役割を果たし、近年では医薬品への活用も期待されています。

生物多様性の担保や環境保全から市場経済や社会生活に必要不可欠なサンゴは、年間で推定3750億ドル(日本円で約43兆円)以上の経済価値があると言われています。(※1)

しかし、20年後には気候変動に伴う海水温の上昇によりサンゴ礁の70~90%が消滅する可能性が高いと言われており、海の生物多様性やそこからうまれる経済価値を守るためにサンゴ礁の保全は最重要課題です。

これまでの研究では産卵直前のサンゴを実験室に持ち帰り産卵させる方法が主でしたが、人工環境下での産卵に成功したことにより時期にとらわれずサンゴのライフサイクルの研究が可能となります。

本実験が進むことで、ハツカネズミやショウジョウバエのように何世代にもわたって研究調査を行うモデル生物としてサンゴを扱うことができるようになれば、サンゴの基礎研究が大きく進み、サンゴ保全に寄与すると考えられます。

また、サンゴ礁の研究は日本にとっても重要であると考えます。
日本は、世界で800種類存在するサンゴのうち約450種類が生息しており(※3)、領海が領土の12倍存在している海洋大国であります。海洋大国日本だからこそ、環境分野において「グリーン」同様に「ブルー」も推し進めていく必要があると考えます。「ジャパンブルー」を代表するサンゴ礁の研究は、今後世界の中での日本らしさを象徴するものとなります。

研究手法

・環境移送技術を活用し、サンゴを長期的かつ健康的に飼育できる人工生態系を構築。
・海水温を24度にキープしていた水槽の水温制御を2021/8/23より開始。
・021/8/23より沖縄県瀬底島の12月の海水温と同期。
・飼育を継続し、2022/2/16、エダコモンサンゴの産卵を確認することに成功。

今後の予定

今後はサンゴが毎月産卵するような実験設備を構築することでサンゴ幼生の着床率をあげるための実験や、高海水温に耐性のあるサンゴの育種研究へと繋げていく予定です。

コメント紹介

北海道大学大学院理学研究院/NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所理事長 渡邊 剛講師
海洋の生物の多様性を育むプラットフォームであるサンゴ礁生態系が地球温暖化でどうなるのかが危惧されています。一方で、サンゴの産卵による幼生が海流により運ばれることにより分布域が北上をしていることが確認されています。サンゴの産卵の研究が進んできているが、未解明な部分も多くあります。天然の環境や大型水槽では、産卵の時期を決める条件が多くあることが一因にあります。今回のような小型の水槽で産卵時期を人工的にコントロールできる技術の開発は今後のサンゴの産卵研究の発展やサンゴ移植事業の新しい展開に寄与するものと期待されます。

再生医療とサンゴの研究を進める関西大学化学生命工学部 上田 正人教授
2022年1月、完全閉鎖系(水槽)において「抱卵」を再現されました。さらに今回、沖縄の年間水温データを基に、時期をずらした状態で「産卵」までを再現されました。これは年中、産卵を誘発できることを示しています。受精卵を基点としたサンゴ増殖法の開発にも繋がると考えています。また、完全閉鎖系でサンゴの生活史に関する精緻なデータの取得が可能となりますので、本技術の確立はサイエンスの観点からも極めて重要だと思います。

東京海洋大学 海洋環境科学部門 今 孝悦准教授
造礁サンゴは石灰質の硬い骨格を持ち、複雑な立体構造を形成します。こうした構造は種々の生物に生息場を提供し、極めて多様な生物群集を支えています。しかし、地球規模で進行する温暖化や海洋酸性化は造礁サンゴの生残を著しく減じ、その消失が懸念されています。造礁サンゴの人工産卵技術は、それらの回復に直接資するだけでなく、安定的な試料提供を可能とし、基礎的研究への寄与も期待されます。

株式会社フォース・マーケティングアンドマネージメント 代表取締役CEO 岩田 彰一郎氏
イノカがIoTを用いた海洋環境の研究で、自然と人類の共存における課題の解決に取り組んでいることから、弊社のモットーである志の高い社会課題解決ベンチャーと考え、支援する運びとなりました。環境と経済の新しい共存の在り方が模索され、TNFDなどの枠組みが注目されるなか、このような世界初の偉業が、研究室ではなく、ベンチャー企業から産まれたことは大きな意味を持ちます。
そしてなにより、イノカのサンゴへの愛情が、環境移送された東京で厳かな生命の神秘を生む技術を育みました。
社会全体が長期的な視点で志の高いベンチャーを支援することにより、環境と経済がバランスよく、自然からの搾取を共生に変え、人類が本質的な持続する豊かさを得ることこそ、我々が目指すべき方向と確信いたします。

株式会社リバネス 代表取締役 グループCEO 丸 幸弘氏
2019年4月から毎日こつこつと虎ノ門ラボで研究を積み重ねてきた姿を観てきました。環境移送技術で実現した今回のサンゴの産卵は、その努力の成果だと考えています。イノカが開発している環境移送技術は、最先端の飛び抜けた技術ではなく、課題を解決するためのテクノロジーの集合体である「ディープテック」です。この技術開発によって、世界が変わる可能性の一端がみえたのではないかと思っています。世界をかえるビジネスはたった一人の熱から生まれる。ぜひ世界を変えていってください。

株式会社イノカ 代表取締役CEO 高倉 葉太氏
2019年、創業直後に沖縄で初めてサンゴの産卵を目にして、「これをみんなにも見せたい」というシンプルな思いつきからチャレンジを進めてきました。

初年度は抱卵までの成功、2年目は抱卵どころか親サンゴの不調を招いてしまうという数々の失敗を重ねてきたのですが、三度目の正直で、ついに成功に至ることが出来まして、本当に嬉しく感じております。しかも今回はもう一つサプライズだったのが、「想定していなかったサンゴが産卵した」ということです。

実は産卵したサンゴは私が大学院時代に、改めてサンゴと向き合おうと決心した際に購入したサンゴなのです。飼育が上手くなかった当時の自分はそのサンゴを何度も生命の危険にさらしてしまっていたのですが、CAO(チーフアクアリウムオフィサー)の増田氏と出会い、教えを乞いながらなんとか大きく育てることができました。コモンサンゴの天敵であるミノウミウシを毎日毎日サンゴから取り除いていたころが本当に懐かく思い出されます。

そんな思い入れのあるサンゴが産卵してくれたことは、個人的にも大変感慨深いものです。まさに生き物を扱うベンチャーだからこそ得られる最大のご褒美でした。もちろん本研究はサンゴを救うためのほんの一歩目でしかありません。

しかし、環境移送ベンチャーにとっては大いなる一歩であると考えています。産卵成功にあぐらをかかず、この成果をサンゴのため、海洋のため、ひいては人類のため。”ジャパンブルー”で、地球貢献ができますよう今後も尽力致します。

改めて、ここまで弊社と関わり支えてくださった皆様に感謝申し上げます。みなさまの様々なサポートがなければ実現できなかったことです。今後ともイノカの応援よろしくお願い致します!

出典
※1:IUCN(国際自然保護連合) Coral Reefs
https://www.iucn.org/theme/marine-and-polar/get-involved/coral-reefs?fbclid=IwAR2x9LnMAHTRNr2BGmlO364w2ePrkgA_sovBts_cziMI8L4rLdSz88Du6_8

※2:国連気候変動に関する政府間パネル (IPCC = Intergovernmental Panel on Climate Change)Global Warming of 1.5°C (2018), p8. B.4.2 
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/sites/2/2019/06/SR15_Full_Report_High_Res.pdf

※3:環境省 日本のサンゴ礁1-1 日本の造礁サンゴ類
https://www.env.go.jp/nature/biodic/coralreefs/reference/mokuji.html

株式会社イノカ 概要

日本で有数のサンゴ飼育技術を持つアクアリストと、東京大学でAI研究を行っていたエンジニアが2019年に創業したベンチャー企業です。
アクアリストとは、自宅にて魚や貝、そしてサンゴまでをも飼育する、いわゆるアクアリウムを趣味とする人々のことを指します。

自然を愛し、好奇心に基づいて飼育研究を行う人々の力とIoT・AI技術を組み合わせることで、任意の生態系を水槽内に再現する『環境移送技術』の研究開発を行っています。

自然を愛する人たちの知見で、自然を守るだけではなく、経済合理性との両立を目指し、環境移送技術を活用した教育事業と海洋研究プラットフォーム事業を中心に活動している企業です。

イノカオフィス 水槽
社名株式会社イノカ
代表者代表取締役CEO 高倉 葉太
設立2019年4月
所在地東京都港区虎ノ門3-7-10 ランディック虎ノ門2階
事業概要建設事業(土木事業・建築事業)及び開発事業
URLhttps://corp.innoqua.jp
お問合せinfo@innoqua.jp

【インタビュー】IoT×サンゴで生態系課題に挑戦!東大発スタートアップ「イノカ」

2022年1月28日
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