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金曜日, 9月 22, 2023

【三井物産 × スタートアップ4社】スタートアップとの共創!三井物産が切り開く未来とは

鉄鋼製品のトレーディングを起点に、鉄に限らない製造業、メンテナンス業、デジタルプラットフォーム業へと展開を進める三井物産株式会社の鉄鋼製品本部。同本部は、2022年12月に『三井物産スタートアップ共創プログラム 2023 Ver1』と題した同社初となるアクセラレータープログラムを開催した。産業課題・顧客の潜在的ニーズを先取りした新たな事業の共創を目指した本取り組みから、どのような成果が生まれたのだろうか。三井物産株式会社 鉄鋼製品本部 戦略企画室の長谷川明彦氏に話を伺った。

幅広い領域でスタートアップを募集

2022年12月に開催された『三井物産スタートアップ共創プログラム 2023 Ver1』

――今回、三井物産の鉄鋼製品本部がアクセラレーターに取り組んだ背景を教えてください。

三井物産の鉄鋼製品本部は、グローバルでの鉄鋼製品のトレーディングを強みに、鉄鋼に限らない製造業やメンテナンス業、デジタルプラットフォーム業などさまざまな分野に業態を広げてきました。

ただ、ユーザーニーズはモビリティやインフラ、エネルギー、デジタルなど多岐にわたるため、より新しい事業に挑戦する必要があります。

もちろん新規事業には何年も前から社内で挑戦しており、実際に育ちつつある事業は複数ありますが、社内だけではアイデアやアプローチが似通ってしまうという課題がありました。そこで、今回は我々にはない発想やテクノロジーを求めて、アクセラレーターを開催しました。

――具体的に、どのような課題解決を目指したのでしょうか?

テーマは4つあり、1つは持続可能な社会のために、社会課題解決に貢献するビジネス創出です。キーワードとしては、新興国の経済成長と脆弱な流通網や自然災害、資源不足、サイバー攻撃の脅威、人材不足などを解決するアイデアを求めました。

2つ目は、既存事業のリポジションと発展を目指し、デジタルサプライチェーンマネジメントやIoT、スマートファクトリー、モビリティDXなどの領域のアイデアやテクノロジーを持つスタートアップを募集しました。

3つ目は三井物産のネットワークを活用した事業展開サポートです。三井物産との単独の協業にとどまらず、我々が関係を構築してきた国内外の取引先に対して、スタートアップの事業を一緒に展開していくことを目指しました。協業先のキーワードとして挙げていたのは、自動車メーカーや建機・産機、電機、オイルメジャー、建設・住宅、電炉などです。

そして4つ目は、未来の潮流を見据えたビジネスアイデアです。現時点ではソリューションに落とし込めていない発想を募集し、一緒に検討したいと考えました。

――かなり幅広い領域でアイデアを求めたのですね。

自分たちにはない発想で新しい価値や新規事業を開発したかったので、資料ベースのアイデアでもいいから、さまざまなフェーズのスタートアップの方々とお話をしたいと考え、幅広く募集しました。

三井物産スタートアップ共創プログラム 2023 Ver1|挑戦と創造を通じた未来創り!

2022年12月6日

50社を超えるエントリーから4社を採択

――今回のアクセラレーターではどのような成果が得られましたか?

エントリーは50社を超え、想定以上のスタートアップに興味を持ってもらえました。その中から採択したのは4社で、まさにこれから実証実験や仮説検証など、事業化に向けて本格始動します。

――採択した4社について、詳しく教えてください。

1社目は、AIテックの企業です。もともと鉄鋼製品本部でやろうとしていたサーキュラーエコノミーのプラットフォームの事業案に対して、テクノロジーの親和性が高かったため採択しました。具体的には、非効率な自動車解体の作業をロボットとAIで効率化することで、三井物産と同社が一緒になって、新しいプラットフォームを構築する事業構想を立てているところです。

2社目は、発電、熱処理に関しユニークなテクノロジーを保有している企業。海外進出を目指していたので弊社がお手伝いできないかと思って採択しましたが、弊社としては発電、熱処理に関する市場の動向等を察知しており共に市場に打って出れる可能性を見極めております。弊社としては製造業の工場操業、サプライチェーン構築等のノウハウもあるため、ご一緒する事で同社に付加価値を存分に提供できると考えました。

3社目は、建設・インフラ関連でDXのソリューションを展開する企業。同社は、建設・公共交通・農業・施設管理など各分野のDXを実現させているのですが、我々も“建設テック”と言われる分野は何年も前からやりたかったことなんですね。また、スタートアップとはいえ、大手企業とのお付き合いも多く、ニッチな領域に強みを持っていて、経営者の方も非常に魅力的なので、一緒に事業を拡大したいと考えて採択しました。

最後の4社目は、まだ法人化していない大学を採択しました。ロボティクスやモーター制御に関するテクノロジーを研究されていて、これを事業化できないかとご応募いただきました。三井物産としても、製造業など労働人口が著しく減少する業界の課題解決は長年模索してきた領域です。もちろん人手不足を補うためのロボティクス化やリモート化は進んでいるものの、どうしても人の作業は残っています。そこに対して同大学のテクノロジーを活用したビジネスプランの検討を始めました。

最後まで、スタートアップの可能性を捨て切らない

――スタートアップと向き合うに当たって大切にしたポイントや、得られた気づきを教えてください。

これまでも、スタートアップとのお付き合いは多く、実際に連携している事業もあります。ただ今回は一度に50社を超えるスタートアップにエントリーいただいたことで、あらためて大企業ならではの固執した考え方や意思決定の遅さ、マインドセットの違いに気付かされました。

スタートアップと向き合う中で意識したのは、違いを受け入れることです。たとえば、求めているスケール感やゴールまでの時間軸は異なるケースが多かったので、そのすり合わせには丁寧に時間をかけました。

――選考時に意識したポイントがあれば教えてください。

全てのフェーズで“可能性”を捨てなかったことです。エントリーから最終選考まで、どのスタートアップも可能性を捨て切らずに最後まで議論を重ねました。そのぶん時間はかかりましたが、最終プレゼンの追い込み期間はお互いに休む間も惜しんで作り込むくらい、本気のプロジェクトに昇華しました。

だから、今回採択した4社との事業化が楽しみでなりません。スタートアップと一緒に、次の事業の柱になるよう、それぞれのビジネスを育てていきたいと考えています。

――アクセラレーターは今後も継続して開催する予定でしょうか。

もちろんです。常に新しいものを取り入れて、新しい事業を生み出し続ける組織に変化したいので、共創するスタートアップはどんどん増やしたいと考えています。1回目の開催によって我々の改善点も見えてきたので、2回目はより幅広いスタートアップにエントリーいただけると嬉しいです。エントリー時から膝を突き合わせて議論を重ね、より多くの可能性を追求したいですね。

【募集】三井物産スタートアップ共創プログラム 2023 Ver2|挑戦と創造を通じた未来創り

2023年5月31日
社名三井物産株式会社(英文名 MITSUI & CO., LTD.)
設立1947年(昭和22年)7月25日
代表者代表取締役社長 堀 健一
資本金342,560,274,484円 (2023年3月31日現在)
所在地〒100-8631 東京都千代田区大手町一丁目2番1号
事業概要金属資源、エネルギー、プロジェクト、モビリティ、化学品、鉄鋼製品、食料、流通事業、ウェルネス事業、ICT事業、コーポレートディベロップメントの各分野において、全世界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力などを活かし、多種多様な商品販売とそれを支えるロジスティクス、ファイナンス、さらには国際的なプロジェクト案件の構築など、各種事業を多角的に展開
URLhttps://www.mitsui.com/jp/ja/index.html
インタビュイー
長谷川 明彦 氏 三井物産株式会社 鉄鋼製品本部 戦略企画室
2020年三井物産キャリア入社。前職においてICT、IoT、AI等のデジタル関連の営業、新規事業開発、コンサルティングを約10年経験し、ドイツ駐在等を経て当社入社。 三井物産では鉄鋼製品本部における新規事業並びにデジタル関連を担当。
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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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