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金曜日, 3月 24, 2023

【セイノーHD×ファームシップ】次世代型農業への挑戦|生産からお届けまでの一気通貫を実現

BtoB物流No.1のセイノーホールディングスは、2017年に、Creww が提供するオープンイノベーション支援サービスCrewwコラボ(現Creww Growth)を通じて、アクセラレータープログラム「SEINO Accelerator 2017」を実施。既存のサービスにとらわれないビジネスの創出を目指し、スタートアップの革新的なアイデアやテクノロジーを募集しました。セイノーグループの保有する多様な事業領域と強固な顧客基盤等のアセットを活用し、世界最高の農業エンジニアテクノロジーで持続可能なアグリシステムを開発するスタートアップ「株式会社ファームシップ」と協業。本記事では、中京地方で複合機能型植物工場事業を立ち上げたその協業内容や、今日に至るまでの両社の連携について、セイノーホールディングス オープンイノベーション推進室 室長 加藤 徳人氏と、KOTO no Ha fresh farm 工場長 松山 昌弘氏にお話を伺いました。

物流以外の分野で、自社が保有するアセットを有効活用したい

協業により、セイノーが解決したかった社会課題と自社の課題とは?

加藤:弊社は、2016年にオープンイノベーション推進室として部署を立ち上げております。手前みそではありますが、業界の中でも比較的先駆けて、オープンイノベーションに取り組み始め、Creww さんからのご指導もあって、業界で初めてアクセラレータープログラムを開催しました。

ですから、もちろん社会課題起点での事業創発ではありましたが、弊社といたしましては、「物流以外の分野で、自社が保有している土地や建物などのアセットを、もっともっと有効に活用できないか」という思いがありました。

アクセラレータープログラムを進めていく中で、ファームシップさんとは非常に「ストーリーが合うな」と感じた一方で、ファームシップさんからも弊社側の事業に対し非常に共感をいただき、協業に至りました。

社会課題への取り組みとしては、本協業において、障害者雇用の機会を創出している点や、物流プレイヤー側が「荷物」(植物)を作り、農家さんへの集荷行為を不要にすることで、物流の効率が上がり、グリーン物流に向けたカーボンニュートラルにも寄与できていると思っております。

持続可能な農業の未来をつくるファームシップとの協業|作る生産者として植物工場事業にチャレンジ

松山:ファームシップさんとの協業により事業化した「コトノハ フレッシュファーム」は、農業事業者の減少、高齢化問題を抱える社会の中、異常気象の影響を受ける農業実態に対して、「安全で安心な野菜を安定的に生産し、食の場に野菜を届ける」ことをミッションに、作る生産者として植物工場事業を新たに展開することで、天候に左右されない安定した栽培と、無駄のない計画生産・提供を実現しています。

プロジェクト立ち上げの道のり〜苦難と事業の成長までのストーリー〜

松山:まず、我々は新規事業を行うにあたって「農業」に対して一切、何のノウハウもありませんでした。ですから、プロジェクトのコアメンバーは、工場を立ち上げる前の半年間、栽培・製造についてのノウハウをしっかりと習得する機会が必要でした。

そういったコンサルティング部分に加えて、工場の立ち上げに関しても、ファームシップさんから経験のある「工場立ち上げのプロフェッショナル」として数名がメンバーとなり、しっかりとサポートしてくださったおかげで、1年ほどで内製化ができたことは、非常に大きかったと思っております。

また、販売先を我々だけで開拓していくのは非常に難しかったので、全国にマーケットを持っているファームシップさんのネットワークをお借りして、事業の売り上げに繋げていけるように、事前にある程度の販売先を確保していただいてからスタートいたしました。

現在も両社で引き続き連携を図り、我々は「とにかく生産率を上げて、野菜をたくさん作る」、ファームシップさんには「売り上げのために、販売先を確保していただく」という形で業務提携を進めております。

週に一度の「製販ミーティング」をしっかりと行うことで、「製造」と「販売」の両視点から協議を行い、先一か月の需要の確認をし合いながら、計画的で無駄を出さない事業の運行をしております。

ものづくり事業へのチャレンジが物流会社にもたらした意識

2階で出荷準備された野菜をエレベーターで下の配送車に直接荷積できる仕組みがある

オープンイノベーションがもたらした成長機会とは?

松山:商品を製造して販売するということ自体が、これまでの東海西濃運輸には経験のないことでしたので、「ものを作ってお客様に提供する」という新規事業を創出できたことは、やはり我々にとって非常に大きなことだと思います。

時間あたりの生産数の求め方や、労働員の工数を数値化していく作業など、生産性を高めるために「製造業の視点」で仕事ができる様になりました

1つの野菜が実って、お客様に届くまでの流れというものは、最初はなかなか掴み切れませんでした。種を撒いてから野菜が実ってくるまでの一か月という工程で、いかにして生産性を高められるかに注力しましたが、パートさんの働きを管理する点では非常に苦労しました。

ファームシップさんからもいくつかヒントをいただきながら、最終的には我々で、各工程の標準化を図り、誰がやっても同じ時間でできるようにパートさんを指導するなどの工夫をしています。

はっきりと数字で示した年間の労働生産目標に向け、自分たちで目指す数字に近付けていくという経験を得られた意味は、非常に大きかったですね。

また、「野菜を販売していく」という点に関しましても、我々には今まで経験がない業務でありましたが、ファームシップさんが東海西濃運輸の拠点に近い名古屋に拠点を構えて下さいまして、営業担当の方にも2名ほど滞在していただくことがきました。

販売先を確保する際には、実際の営業にも一緒に同行させていただき、どうやって野菜を販売していくのかということも、一つ一つ細かく教えていただきながら、「販売」に関しても非常に多く学ばせていただいたと思っております。

現在では、自社でも営業を行えるようになり、数社ではありますが、販売先も確保できております。

加藤:ものづくりの楽しさや難しさは、経験しないとなかなか伝えるのは難しいものです。

ドライバーも日々お客様との会話の中で商品の大切さや取り扱いに関しての事項などを学ばさせて頂いておりますが、その点において、ものづくりの事業というものを、物流業者が一気通貫でやるということは、「お客様のお気持ちを理解して荷物をお運びすることの大切さ」という面において、おそらく言葉以上に体感することが出来ており、当社の組織としての成長へと繋がっているのではないかと思います。

売り上げには見えない良い成長機会だったと感じます。

ー2017年にアクセラレータープログラムを実施した際には、出島にも見える植物工場事業というものに対して、どの様な印象をお持ちだったのでしょうか?

加藤:我々のアセットを活用して、新たな事業を創出できないかということを起点にこの部署を立ち上げておりますので、水耕栽培の世の中の実績は情報としてインプットはしておりました。

ただ、弊社に経験値やノウハウもない中では、それが具体的なイメージになっていたかというとそうではなかったですね。やはりファームシップさんの方から色々とご提案をいただいたことで、「これだったら実例として面白いよね」と、より解像度がクリアになりました。

私には、夢がある

自身の夢と今後挑戦とは

松山:まずは、この工場を日本一にしたいです。規模という意味ではなく、しっかりと利益が出る植物工場事業にしたいという意味で、日本一にするのが私の目標です。

加藤:個人的な思いがすごく強いかもしれませんが、アンカーとして常に僕の中には、「環境」と「教育」というテーマがあるんですね。

自身が、ソーシャルビジネスが大好きというのもありまして、社会的な活動も色々としているので、せっかく今こういう部署に在籍させていただいているからこそ、そこにもっと会社機能を良い意味で使うことでレバレッジを効かせて、グリーン物流への貢献であったり、SDGsに対応する貢献ができたら良いなと思っております。

また、小さなお子さまに限らずですが、世界中の色々な社会課題を持った子ども達への教育機会の創出を考えております。今後はそういった活動も、具現化していきたいと思っています。

事業所名コトノハフレッシュファーム
所在地岐阜県土岐市下石町西山304-912
事業会社名東海西濃運輸株式会社
栽培方法LED照明を活用した水耕栽培
栽培品目フリルレタス、グリーンリーフ、オークレタス、サンチュなど
インタビュイー
加藤 徳人氏 セイノーホールディングス オープンイノベーション推進室 室長
1998年西濃運輸株式会社に入社。首都圏営業専門職として7年間従事した後、セイノーグループ管理者層に対する米国式マネジメント経営システムの導入およびハンズ オン業務改善支援を行うなど幅広い現場経験を持つ。 2016年、新設のオープンイノベーション推進室立上げ自社アセット活用による価値創造を目的としたインキュベーションに従事。
日本初ロジスティクス専門ファンドの設立(CVC/Logistics Innovation Fund)や 、基礎自治体の協力を得ながら進めている“新スマート(ドローン)物流構築”・“農福連携事業“など、既存事業の枠を超えた共創による社会課題解決を目指す。
インタビュイー
松山 昌弘 氏 KOTO no Ha fresh farm 工場長
1989年東海西濃運輸株式会社に入社。3年間物流現場を経験した後、施設・設備メンテナンス管理を専門職として21年間従事しその後物流拠点で5年間の現場経験を経て2018年より新事業立ち上げに参画し2019年アグリカルチャー事業部 工場名:コトノハフレッシュファーム 工場長に就任。
セイノーグループの持つ多様な事業領域と強固な顧客基盤等のリソースを活用し、革新的かつ斬新な新規ビジネスを展開し生産×物流「作る」と「届ける」の複合機能一体化を実現することでシナジー効果を創出し地域社会に貢献すると共にSDGs達成に向けた取組みに従事。
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ai taniuchi
2020年からPORT by Creww にてフリーランスライターとして活動中。
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