しかし、代表の崔 彰桓 (チェチャンファン)氏は、今こそを準備期間であると捉え、いずれは外国人観光客を誘致できる街ぐるみのエコシステムを構築したいと考えていました。今回の「鹿児島アクセラレーター2021」における採択では、鹿児島県の地域活性化という互いのゴールへ向け、南日本放送との協業に挑戦。南日本放送の信頼たるネットワークを活用し、小売店の免税店化を支援するサービス「REMOTAX(リモタックス)」を展開します。
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小売企業の心強い味方!三方良しの免税販売手続き代行サービス「REMOTAX」

ー御社の事業について、どのようなサービスを展開しているのか教えて下さい。
崔 :弊社のサービス「REMOTAX」は、免税店に対して、免税販売手続き業務を代行するサービスです。スマホアプリへの簡単な入力と写真の送信だけで、あとの面倒な免税手続き業務は、Tomobizが代行します。
空港などでDUTY FREEという言葉を目にされたことがあるかもしれませんが、TAX FREEとの違いはご存じでしょうか。
DUTY FREEの店舗は、出国者に対して消費税・関税・酒税等を免除して販売する店のことで、日本では主に国際空港の出国エリアに存在しています。一方の免税店は、TAX FREEーつまり、日本国内にて非居住者に対し消費税だけを免除して販売する店のことです。そもそも消費税は、日本で消費した人にかかる税金ですから、「購入した品を国内では消費せずに自国に持ち帰る」という条件下では、商品に消費税がかかりません。
購入者にとって魅力的なわけですから、当然小売企業にとっても免税店にすることによる効果は期待できる仕組みであるはずです。にも関わらず、免税店の数は決して多いとは言えません。それは一体なぜなのでしょうかー。

小売企業が免税店にならない理由として、1つには免税店にすると手続き業務が増える点です。免税店側は、日本に居住していない人に商品を売ったという事実を国に証明する必要があり、その手続き業務は、非常に手間がかかるのです。
“面倒な手続き業務より、小売店様にはお客様によいモノ、サービスに力を注いでもらいたい。そのためには、面倒な手続き業務を代行しよう”
私はそんな思いで、この免税販売手続き代行サービスを考案しました。
ー他社のサービスと比較した「REMOTAX」の強みは何ですか。
崔 :他社からも、免税販売手続きを行うシステムの提供はされています。しかし、システムの提供後、それを活用して業務を行うのは免税店側です。それに対し「REMOTAX」は、免税販売手続きの作業自体も代行で実施するサービスです。しかも、初回に1万円程度の初期費用をいただいたあとは利用料が無料であり、他社とは違いランニングコストはかかりません。
テクノロジーを通じた三方よしの精神で、日本の観光ビジネスを盛り上げたい
ー「REMOTAX」提供に至った背景を教えていただけますか。
崔 :観光で買い物をする際、消費者側にとっては、“お得”な免税は楽しみの1つです。しかし、大型商業施設では免税システムが導入されている一方で、小売企業では、免税店の登録をしていない店舗が85.7%にものぼります。
それは何故かー。
理由は、「免税に対応することで支出過多になるリスクがある」と小売企業が感じるからなんです。システムの購入費やその後のランニングコストがかかる、専門のスタッフが不足している、売り上げに直接繋がるのかが分かりにくいなどの理由で、二の足を踏んでいるのです。
また、私自身の原体験として、外国から観光客として訪れた免税店で買い物をした際に、「手続きがあるので1時間待ってほしい」と伝えられた経験があります。貴重な観光時間の内、多くの時間をそこに使うということは、あまり現実的ではないですよね。
外国人として、免税の魅力が分かるだけに、この課題は非常にもったいないと感じました。
私が好きな言葉に“三方よし”という言葉があります。皆にとってHappyなビジネスは長く続くと思っています。テクノロジーを通じた三方よしの精神で、日本の観光ビジネスを盛り上げたいという想いがあるのです。
鹿児島県をインバウンドに強い街に!南日本放送との協業事例

ーTomobizさんは、「鹿児島アクセラレーター2021」に採択され、南日本放送さんとの協業を進めていらっしゃいます。“協業すること”のどこに期待を寄せて、どんな点にメリットを見出されプログラムへ参加されたのでしょうか?
崔 :弊社のサービスは、小売企業に利用していただくサービスですが、全国の小売企業をまわって、一店舗一店舗に訪問営業を実施することは難しいですよね。スタートアップなので、まだ資金などリソースが十分ではない中、「REMOTAX」というサービスを周知させるためにはどうしたらいいのかを考え、パートナーを探したいと思ったのです。
先ずは、特定の地域を決め、実績を創るエリア戦略を考えました。丁度今回のアクセラレーターがあり、第一ターゲットを鹿児島と決めて放送局へ応募したわけです。放送局には地域の信頼性があります。南日本放送様の信用力とネットワークに期待しています。
ー実際の協業プログラムはどんな内容なのでしょうか。
崔 :「鹿児島県をインバウンドに強い街にしましょう!」という共通のゴールに向かって、南放送局様には、放送局のネットワーク網を活用し「REMOTAX」のサービスを広めていただく。賛同して下さる小売店様とは、“免税街作り”を進めているところです。弊社は、そのための運用を進めております。
ー協業を進めていく中、事業化にたどり着くまでに壁を感じたことはありましたか。
崔 :まず、課題は「コロナ禍である」ということです。例えサービスの内容に評価いただいていても、インバウンド市場が盛り上がっていない状況では時期尚早なのではないかという意見もいただきました。けれど今だからこそ、準備ができる時期だと説明し、理解を得ることができたんです。
ー地域の企業とスタートアップを比べた風土の違いや、その壁を乗り越えるコツがあれば教えて下さい!
崔 :協業するにあたっては、風土の違いというよりは、お互いにどのようなリソース、強みをもっているのかという事の方が重要だと思っています。南日本放送様にとっては、もともと持っているネットワークを活用し新たな領域を試すことができる。Tomobizにとっては、サービス開発と運用を担って、自社のサービスを地域社会に広めることができます。
「地域を活性化させましょう」というゴールに向け、互いにとって良いマッチングになったのではないかなと思っております。
『三方よし』の観光ビジネスでつなげる地域活性

ーこれからの事業展開について、今後のビジョンや貴社が叶えたい未来についてお聞かせください。
崔 :まずは、4/1から鹿児島県内で「REMOTAX」サービスを南日本放送と一緒に本格的に展開を行います。
鹿児島で一つの成功モデルを創り、他の地方自治体への横展開を進めたいです。暫くは鹿児島モデルづくりを念頭に動くことを考えています。
また、今後のビジョンに関しては、オンラインにて免税販売商品を提供する海外向けの越境EC販売代行モールの開発・運営を考えています。コロナ禍である現在、そもそも観光客は、日本に来ておりません。それなら、日本のものを海外に届けてしまえばいいのではないかと発想を転換させたのです。
免税店の宣伝も行うことが可能であり、地域の活性化にも繋がるのではないかと思っています。
例えば、商品についての情報だけではなくて、ストーリーテリングで職人や歴史についても発信し興味を持っていただく。それが誘客のきっかけになればと思うのです。観光客が、自国に帰ってから好評だった品物をオンライン上で友達に購入するなどすれば、リピーターの獲得も期待できます。

ー今後、サービスを利用する小売企業が増えていくことが期待されていますが、免税店に代わって行う各種手続き業務は、手動でされていくのですか。
崔 :確かに、現在は免税販売の手続き作業は、手動で入力が行われています。しかし「OCR」と呼ばれる「資料を読み取る技術」について研究をしている最中なので、今後はDXを推進し、なるべく人を介さない様どんどん業務を自動化させようと考えています。
また、地域にお住まいで、退職後の仕事を求めている方などと連携して業務ができたらとも考えています。そうすることで、雇用も生まれますよね。
我々のサービス「REMOTAX」は、前述したように、ランニングコストがかかりません。
収益モデルは、小売店の負担を下げる代わりに、購入者から手数料をいただくシステムになっています。日本では一般的でない仕組みですが、海外では一般的な方法です。
免税店側にとっては面倒な手続き作業やコストの負担がなく、購入者側にとっても、そもそも免税店でなければ戻って来ないはずの消費者が還元される、また観光客を誘致できれば良い循環が生まれ、地域の経済が活性化するー。まさに我々が目指す『三方よし』の観光ビジネスとなるわけです。
私は、 本質的に価値のあるモノが評価される世界、 そのために行った努力が実を結ぶ世界、 であってほしいと心から思っています。
お客様とトモに日本の観光産業を盛上げたいです!
導入期にあるプロダクトを操縦する経営者とビジョンや戦略、戦術等について具体的にコミュニケーションが取れたことや、自社の強みや弱みなどを全社横断的に考え、実際のビジネスへ落とし込んでいく過程は、私たちの日々の仕事とはまた違った頭の使い方が必要であり、ビジネスマンのとして領域を更に広げていくうえで貴重な成長機会に繋がりました。
今後も両社で協議・実証を続け、鹿児島の観光産業を盛り上げる事業の展開を目指して参ります。
Tomobiz様にとって、鹿児島の地域で免税販売手続き代行サービス「REMOTAX」を展開するには、地域企業・県民からの高い信頼性、地域振興への想い、そして強い営業力を持つ南日本放送様はこれ以上ないパートナーだと思います。
また、南日本放送様にとっても、新規ビジネスへのチャレンジだけでなく、Tomobiz様の革新的なサービスが鹿児島の発展に繋がると感じたことが今回の協業に結び付いたと感じています。
社名 | 株式会社Tomobiz |
設立 | 2019年6月 |
所在地 | 東京都文京区 |
代表者 | 崔 彰桓 (チェチャンファン) |
事業概要 | 免税販売手続き代行サービス、日本進出のコンサルティング、通訳・翻訳 |
URL | https://www.remotax.jp/ |
