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木曜日, 5月 26, 2022
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蚕を使った「シルクフード」を次世代の代替タンパク質へ!フードテックのスタートアップ「エリー」

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Crewwが注目のスタートアップを掘り下げて紹介する『大挑戦時代を生きるスタートアップ特集』。今回は、蚕を使った代替タンパク質「シルクフード」を開発するフードテックのスタートアップ「エリー株式会社」へ伺いました。
サステナブルな次世代食品「シルクフード」は一体どのようなものなのでしょうか。また、昆虫食のなかでも、蚕に着目したのはなぜなのでしょうか。その社会実装の推進やマネタイズの面を含めた現在、さらには環境問題の解決を見据え、エリーが目指す展開とはー。
食品メーカー勤務の経験を生かし、新しい代替タンパク質の開発に向けて起業したエリー株式会社代表の梶栗 隆弘氏が、社会に広めたい想いーその熱い胸の内をお話くださいました。

蚕を次世代の食品へ

ーまずはエリー株式会社さんについて教えてください。

梶栗:我々は、蚕を次世代の食品にするべく、蚕の生産から加工、製品の開発まで行っているスタートアップです。プロダクトは大きく2つあります。1つは食品原材料としてのパウダーやペーストです。

ーこちらのパウダー、色が違うのですが、味も違うのですか?

蚕からつくったシルクパウダー

梶栗:蚕が面白いのは、加工方法によって、全然味や品質が変わってしまうところなんです。黒い方はエビやカニのような風味で、白い方はきなことかナッツのようだと表現されることが多いですね。

蚕を加工食品として活用していくことは、世界的にみてもあまり例がないので、この「加工技術をいかに蓄積していくか」というのが僕らの事業のポイントだと思っています。

2つ目のプロダクトとして、これらの粉末を使ったチップスや、ペーストを使ったスムージーなどがあります。

ーパッケージがおしゃれで蚕という印象がありませんね。

梶栗:最初に抵抗感なく召し上がっていただくために、「昆虫感」ですとか、「気持ち悪い」といった感情を抑制して売りたいなと思っていたので、こういった手に取りやすいデザインや商品にしました。

ーシルクフードの商品を開発する上で困ったことはありましたか?

梶栗商品につながる原材料をどうつくるか、という点が難しいですね。例えば、チップスに使用するのであれば、分散しやすく、香ばしい味わいのパウダーが理想です。そういった商品に合わせた原材料をどう作るのか、という部分が一番大変だったりします。

シルクペーストを使ったスムージー。スムージーらしいトロトロ感があって、色もキレイ。

梶栗:スムージーは1食分の野菜が入ったグリーンと、1日分のフルーツが入ったフルーツがあります。どちらかというと、フルーツの方が飲みやすいと思います。そしてどちらにも、蚕プロテインが入っています。人によっては、後味にちょっとした“蚕感”はあるかもしれませんが、知らないと気づかない程度かと思います。

インタビューに伺ったCrewwスタッフも、「えっ!おいしい〜」と思わず笑顔に。毎日飲みたくなる味わい。

蚕が代替タンパク質に最適な理由とは?

ーシルクフードは原料が蚕ですが、なぜ梶栗さんは蚕を選んで起業されたのですか?

梶栗:もともと食品メーカーにいたので、「食品関係で起業したいな」と思っていました。そしてバックキャスティング的に、将来食の市場がどうなるかを考えたとき、「新しい代替タンパク質が必要になるだろう」ということはなんとなく見えていました。

いろいろな選択肢のなかで、「昆虫食は、世界的にも成功している企業がなくて、どう普及させていくのか誰もわかっていない」という点に面白さを感じて、「じゃあ、昆虫食でいこう」と。そこから、昆虫の中で蚕がもっとも食品に適していると思い、蚕を選びました。

食品が普及する要件っていくつかあって、蚕はそのうち2つの要件を満たしているんです。まず1つが、大量に生産できること。新しい食資源、新しいタンパク源にするとなると、大量に用意できないといけないわけですが、そこに不安がありません。

2つめは、汎用性が高いこと。僕はもともと食品原材料メーカーで、小麦粉や大豆タンパク、いわゆる大豆ミートなどを扱ってきたのですが、「代替タンパク質には昆虫が良いだろう」と考えたとき、特性の異なる粉末やペーストを作ることができる蚕の汎用性の高さに魅力を感じました。

世の中の昆虫食に対する印象が変わってきた!

ーエリーのサービスを通じて、どういった社会課題を解決したいと思われていますか?

梶栗:人々が当たり前のように蚕などの昆虫を食べるようになり、それによって、食糧供給のバランスをとっていくのが一番の目標ですね。

最初から、「昆虫食をメインで食べる」という状況にはならないと思いますが、僕らのチップスやスムージー、あとは最近パスコさんがこの原材料(シルクフード)を使ってパンを出してくださったので、そういったものを食べながら、まずは自然に触れ合ってもらいつつスタートしたいと思っています。

ーどのプロダクトもとてもおしゃれですが、どういった客層がメインのターゲットなのですか?

梶栗:全体のイメージとしては、環境負荷やオーガニック、サステナブルといったことに興味を持っている方々が興味を持ってくださるのではないかと思っているので、20代から40代の女性をターゲットに据えてデザインしています。

最近はZ世代でもサステナブルに関心をもっている方が多く、「昆虫食を食べたことがある」という人が増えてきていると実感しているのですが…

梶栗:もちろん、いちばん食べてもらいたいのはZ世代ですね。地球に関する環境意識、社会課題意識というのを、Z世代の方は圧倒的に多く持っていると思うので、その層にも届けられればいいなと思っています。

ー昆虫ときくだけで「うわっ」と思ってしまう方々のマインドセットを変えていくような工夫があればお聞かせください。

梶栗:一企業としてできるのは、「抵抗感を減らす」とか、「食べてみたいと思うような価値のある商品をつくる」といったことになりますが、マインドを1社だけで変えるのは難しくて、昆虫食のプレイヤーがすごく増えるとか、それを利用する大企業がオープンイノベーションで取り入れるとか…そういった社会全体の大きな流れの中で徐々に変わっていくものなのかな、と思っています。

実際、創業した2018年と今の2022年とでは、世の中の昆虫食に対する印象は全然違ってきているので、今ならサンプリング調査などで「昆虫」と言っても、おそらくほとんどの方に召し上がっていただける状況になっていると思います。

コンビニやスーパーに並ぶような商品にしていきたい

ーエリーさんのマネタイズのポイントはどこですか?

梶栗:今の段階だと大きく2種類あります。1つは最終商品、こういったスムージーやチップスなどのシルクフードの商品をしっかり売っていくこと。

もう一つは、粉末やペーストを大手の企業さんに供給させていただき、そうしてできたものを、世の中のコンビニやスーパーに並ぶようなメジャーな商品にしていくことです。最終的に、我々は原材料としての供給をメインにしていきたいと考えています。

ー最初、エリーさんはどのように資金調達されたのですか?

梶栗:事業のコンセプトがはっきり定まったあとは、投資家さんをまわって、「ぜひ出資してください」とお願いし、シードラウンドに臨みました。

蚕はクセがなくておいしい。それが「いける!」と確信した理由

ー梶栗さんのなかで「シルクフードいける!」となったきっかけはありますか?

梶栗:いちばん大きかったのは、純粋に「味がおいしい」という点です。創業当初に、コオロギやバッタなどいろいろ食べたのですが、蚕がいちばん味にクセがなかったんです。その際は、蚕を姿かたちののままの状態で食べたのですが、この味をパウダーやペーストにしても維持できるのであれば、「どんな食品にも使えるな」と思い、「いける」と確信しました。

大正製薬とのオープンイノベーションで判明!蚕は62種類もの栄養素を含有

ー大正製薬さんとのオープンイノベーションについてお話しいただけますか?

梶栗:創業当初から、我々は「オープンイノベーションで、大手企業さんのリソースを活用させていただきながら、シルクフードを世の中に発信していく」というコンセプトを掲げています。今回大正製薬さんとやりたかったのは、「蚕に実際どんな栄養素があって、どういう風に人々に健康価値を提供できるのか」ということの証明です。

実際に大正製薬さんと研究した結果、蚕自体に62種類の栄養素が含まれていることがわかって、まずそれに関するリリースを出しました。

そして、「62種類の栄養素」といった、複合的な栄養素をうまく伝える商品って何かなと考えたときに、スムージーや野菜ジュースのような、広く健康でいるために摂取される商品が適していると考え作ったのが、このスムージーです。「フルーツ」は、プロテイン5gと1日分のフルーツが摂れて、「野菜」は、プロテイン5gと1食分の野菜を摂ることができます。

ー大正製薬さんと取り組みを進めていくうえで、大正製薬さん側でも何か狙いがあったのかなと思うのですが、そちらについても教えてください。

梶栗:大正製薬さんは大きな企業なので、社会貢献、社会課題の解決という意識は常にお持ちなのだと思います。我々の昆虫食「シルクフード」が、いずれ彼らの商品の原材料になるような世界がくれば、世の中の食糧問題を解決することに繋がる。そういった社会課題の解決の一つの可能性として採択されたのだと思っています。

ー大正製薬さん以外にも、いろいろなアクセラレータープログラムを活用されているのと思うのですが、他にも良い事例があれば教えてください。

梶栗:僕らはスタートアップで、常にリソースが不足しているので、アクセラレータープログラムを活用しています。

例えば、稲畑ファインテックという商社さんのアクセラレーターに応募したときは、海外支店のネットワークを活用させてもらいました。

我々は蚕の生産を海外で行こなっているため、現地でやらなくてはならないことがいろいろあるのですが、人数も足りないし、知見もなくて…。でも、稲畑ファインテックの海外支店のネットワークのおかげで、うまく生産体制を築けたんです。

蚕を使った食品をどんどん増やしていきたい

ーエリーさんの今後の展望について、ぜひお聞かせください。

梶栗シルクフードを原材料として、世の中にもっともっと普及させていきたいと思っています。そのため、外食産業や食品メーカーさんに、より使いやすい原料を供給し、どんどん蚕を使った食品が増えていくような世界をつくっていきたいと思っています。

【会社概要】

社名エリー株式会社
設立2017年
代表者代表取締役 梶栗 隆弘
所在地〒164-0002 東京都中野区上高田1-3-9
事業概要「蚕」と「⾷品」に関する研究知⾒を掛け合わせた、代替タンパク質産業
URLhttps://www.ellieinc.co.jp/
インタビュイー
梶栗 隆弘 氏 エリー株式会社 代表取締役

1986年生まれ、福岡県宗像市出身。法政大学卒業後、昭和産業株式会社に入社。法人営業やGMS・SMの商品開発等に従事。2018年に蚕を次世代の食品にすべく、当事業を共同創業。

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石神 美実子
広告代理店、広告制作事務所を経て、現在フリーランスのコピーライター・ライターとして活動中。キャッチフレーズやネーミング、プレスリリース等の制作から、WEBメディアの執筆まで幅広く従事。とりわけ、円滑なコミュニケーションを必要とする人物インタビューが得意。
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