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火曜日, 9月 28, 2021

建設業界に変革を起こす。大幅な業務改善・効率化を目指す、安藤ハザマの挑戦|オープンイノベーション

安藤ハザマは、ダムやトンネル、道路、橋梁、商業施設、歴史的建造物など、国内外でさまざまな建設やインフラを整備してきたゼネコンである。そんな同社は、2019年4月にイノベーション部を新設し、国内最大級のオープンイノベーション支援サービスを運営するCreww(クルー)のサービスを使い、アクセラレータープログラムを実施。そして、協業を始めた「建築×IT」のプロダクトを開発するトラスに対し、2020年11月に1億円を出資した。トラスとはどのような取り組みをして、どんな課題解決を目指しているのか。イノベーション部長の古川幸則氏と、同部の齋藤孝治氏、榊原翼氏に話を聞いた。

業務の大幅改善、効率化のために「建築×IT」のスタートアップ「トラス」と協業

―2019年7月から「建築×IT」のスタートアップ、トラスとの協業がスタートしました。2020年11月に出資されるまで、どのような取り組みをされてきたのでしょうか。

トラスは、種類や数が膨大な「建材」をメーカー横断で比較でき、的確に製品を検索できる「建材選択クラウドサービス truss」を開発しているスタートアップです。

従来、設計者が行う建材選定の作業は建設に必要な建材を、各メーカーの“紙のカタログ”から一つずつ探す必要があり、時間と労力を要する大変な業務でした。しかも、建材の型番や色、性能などの情報を取りまとめて記載する表の社内外でのデータの共有が難しく、チェックするにも労力がかかり、管理するのも大変だったんです。

そのため、最新情報の確認に時間を要したり、更新前の情報に基づいて建材を発注してしまうといった部門(組織)を跨いだヒューマンエラーが発生していました。でも、トラスのクラウドサービスを活用すれば、分散していた建材情報がクラウド上で統合されるため、設計業務の大幅な効率化と業務改善が実現できます。

仕上表システム
trussのデータベースから建材を検索し、案件毎に進捗度合いに応じ、仕上表への登録、 更新が可能

そこで、2019年の7月から一部の部門でテスト運用をしながらシステムをブラッシュアップし、全社導入に向けて取り組みを進めてきました。

建築と一言でいうと簡単ですが、その過程に応じた組織が複数存在しており、トラスとの協業を実現するためには、複数の組織を横断して横串を入れるための動きも必要でした。役員や関係各所に何度も説明して理解や共感を得るのは簡単ではありませんでしたが、全社的に業務の煩雑さや業務量の多さ、手間など、解決したい課題感が一致していたので、徐々に理解を得ることができました。

株式会社安藤・間 イノベーション部 部長 古川 幸則 氏

現在、建材選定の業務で3割から4割の効率化が見込めるようになったので、2021年の早いタイミングで全社導入するとともに、既存の別システムとも連携して、さらなる業務連携や効率化、生産性向上を実現させたいと考えています。

複数の組織を横断するには、専業で取り組む組織が必要

―組織を横断して巻き込むのは、簡単ではなかったと思います。他にも苦労した点はありますか?

株式会社安藤・間 イノベーション部事業創生グループ長 齋藤 孝治 氏

トラスとの協業は、建築設計の社員が中心になり取り組みをスタートしました。一方、組織を横断する取り組みとするため、イノベーション部も一体となって推進してきました。

イノベーション部は2019年4月に新設された部門で事務や営業出身者も多く、システムや建築設計は専門外であるメンバーもいます。

だから、課題を「自分ごと化」して社内に説明できるよう、勉強をしながらプロジェクトを前進させるのは、なかなか大変でしたね。それでも、トラスとは毎日のようにコミュニケーションを取っていましたし、テスト運用している部門からのフィードバックを受けて改善を重ねてくれていたので、安心感はありました。

今回、安藤ハザマとしてスタートアップと本格的に協業するのは初めてだったのですが、イノベーション部のような専業チームがなかったら、きっと実現は難しかったと思います。

というのも、トラスのクラウドシステムのようなITソリューションは、どの部門も求めていたけれど、組織に横串を通す音頭を取るのは難しいし、本業への影響も少なくないため、簡単には手を出せないからです。

仮に、どうにか形にできたとしても、その後の運用まで手が回らなければ、誰も使わないソリューションになってしまう。

でも、イノベーション部が立ち回り、そうした問題を回避できたのは、とても意味があったと思います。オープンイノベーションを進めるには、片手間ではなく専業で取り組む機能の存在はとても大事だと実感しました。

出資で開発スピードを早め、社内外に取り組みを示す

―2020年11月、安藤ハザマはトラスに約1億円の出資をされました。その背景を教えてください。

安藤ハザマとしては、トラスの開発力を増強して、開発スピードを早めて欲しいというニーズがあり、トラスとしては早く導入を実現したいから資本を増やしたいというニーズがありました。両者のニーズが合致し、それを解決するために出資したというのが背景です。

―出資に際し、国のオープンイノベーション促進税制を活用したと伺いました。

国の施策を活用することで当社にもメリットがあるのはもちろんですが、それ以上に、国の目指している方向性と安藤ハザマの取り組みは合致していることを、社内にアピールしたかったというのもあるんです。「イノベーション部が独自に何かしている」といった認識ではなく、「国が目指す方向性と同じ取り組みをしている」という認識に変われば、見方も変わりますよね。

加えて、安藤ハザマがオープンイノベーションに積極的であるという姿勢を、社外に示せるのではないかとも思いました。実際、プレスリリースの反響が大きかったという話を広報から聞いていますし、思わぬところから「スタートアップに出資したと聞きました」と言われるようにもなりました。

こうした話題を社員も耳にする機会が増えれば、良い影響を与えるきっかけになるかもしれないし、他のスタートアップからも「協業したい」と声がかかるようになるかもしれません。

社内に生まれた、変化の兆し

株式会社安藤・間 イノベーション部 事業創生グループ担当課長 榊原 翼 氏

―社内を巻き込んでスタートアップとの協業を進めるなかで、社員に変化は生まれましたか?

イノベーション部が立ち上がった頃は、関係部署にスタートアップの情報を伝えて「協業に参加しませんか」と呼びかけても反応はイマイチで、必死に呼びかけないと協力を得られませんでした。

でも、最近は社員から「こういう技術を持つスタートアップは知りませんか?」と声がかかるようになり、また、新しいことを始めようとすると、誘っていない部門からも「参加したい」と声が挙がるようになったんです。

また、イノベーション部の草の根活動として、定期的に就業時間外に開催しているスタートアップを社員に紹介するイベントは、自由参加にも関わらず毎回20名以上が参加してくれています。コロナ禍でオンラインイベントに変えると、海外駐在の社員も参加してくれたのには驚きました。

こうして社内に少しずつ変化が生まれ、スタートアップとの協業もしやすくなったことで、イノベーション部ではトラスとの取り組みと並行して、国内外のスタートアップに直接お声がけするようになりました。

現在、トラスを含めて6社との協業を進めていますが、協業するスタートアップを3倍、4倍と増やしたいので、まずはトラスのクラウドシステムを全社導入するという実績を作って、オープンイノベーションを加速させたいと考えています。

仕事のやり方を根本から変え、建設業界を刷新したい

―イノベーションにより、これからどんな未来を作りたいですか?

前提として、トラスの建材選択クラウドシステムは、安藤ハザマだけで使いたいとは思っていないんですね。我々が抱えている課題は、業界全体が抱えている課題。だから、我々も協力してトラスが建設業界全体で使えるプラットフォームに成長すれば、業界の大改革にもつながると思っています。

その上で、建設業界の仕事のやり方やあり方を変えることにも挑戦したい。今までは、技術や知識といった暗黙知は、時間をかけて伝承していくスタイルが一般的でしたが、それでは立ち行かなくなると20年近く前から言われていました。

ずっと変わらなかった仕組みですが、クラウドが安価に使えるようになり、尖った技術力を持つスタートアップが増えてきた今、テクノロジーを使って暗黙知の伝承の仕方や仕事のやり方そのものを変えるタイミングにあると考えています。むしろ、今変わらないといけない。

たとえば、遠隔操作で重機を扱えるようになって、オフィスでモニターを見ながらトンネルの掘削工事ができるようになれば、業界のイメージは180度変わります。危険だと思われていた仕事がオフィスワークに変われば、女性も活躍しやすくなるでしょう。そんな、次世代の建設業界、今はイメージできないような建設業界の未来を、安藤ハザマが牽引できればいいなと思っています。

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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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