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84社のエントリースタートアップの中から選出された「エクスペリサス」は富裕層向け文化体験プランの企画・運営を行っている。協業パートナーであるエクスペリサスは一体どんなスタートアップ企業なのか。そして、どういった松竹グループならではの富裕層向けプランを作っていくことができるのだろうか。
エクスペリサスのミッションは「一生に残る最高の体験をとにかく作り続けること」

エクスペリサスは例えば誰もが知っている京都のお寺を貸し切り、能楽や狂言を観賞しながら、ミシュランシェフの京料理をお楽しみいただく、といった文化の掛け算を通じて一晩限りの高付加価値体験コンテンツを数多く提供している。
「僕たちのミッションは一生に残る最高の体験をとにかく作り続けることです。」
富裕層向けプランに注力をしている理由は、基本的に人口が拡大する領域にベットする(注力する)ことが良い投資だと思ったからだ、とエクスペリサス代表取締役の丸山智義氏は話す。
丸山:世界のラグジュアリー消費額は完全にモノからコトにシフトチェンジしています。2023年には、モノ消費の倍の金額がコト消費(旅行やホテル、食事、アルコール)に使われると言われています。また、これからはインバウンド数が急激に増えていくことが予想されています。

そんなラグジュアリーマーケットにおける課題は非常にシンプルです。高富裕層向けのプランがほとんどを日本には存在していないという点。そして、ウェブサイドなど、高富裕層向けプランをまとめているサイトがほぼ存在していない点の2点です。
だからこそ僕たちは、こういった富裕層向けコンテンツを独自開発、共同開発し、それを Web アプリケーションを通じ、世界中の富裕層がたくさんいる企業や組織に卸しています。
エクスペリサスが提案した協業案とは

丸山:今回提案したのはナイトエコノミーという領域での協業案です。ナイトエコノミーは、潜在的な市場規模が5兆円と言われるほどポテンシャルの高い市場です。一方で、日本はナイトエコノミーの後進国と言われています。
理由は、ショービジネスが圧倒的に不足している点だと思っています。日本のナイトエコノミーは言語コミュニケーションがメインです。キャバクラ、クラブなどのコミュニケーションを通じて付加価値を上げていくものが多くを占めており、視覚情報のコンテンツが本当に少ない。
今回、実際に松竹の皆様とお話をさせていただいた時に、松竹さんがインバウンド向け観光エンターテイメントとして2019年1月に実施した「シアトリカルナイトツアー」は本当に素晴らしい企画だと思いました。 ここをベースに僕たちの富裕層ノウハウを掛け合わせ、継続性があり、かつ高利益の事業を作っていこうという話になってゆきました。
松竹とエクスペリサスによる実証実験事例とその結果
今回の実証実験では2つの富裕層向けプランが生み出された。
1つ目が「ゴールデン街×お化けBAR Hopping」である。
外国人からは、ナイトエコノミーの聖地とも言われるゴールデン街。一方で、商店街には外から入ってくるものに対して引くような文化がある。エクスペリサスはネットワークの強みを活かして、このようなハードルも越え、富裕層向けにたくさんのディープツアーを企画してきた。

このエクスペリサスが持つネットワーク力と松竹のアセットである演出=「お化け」とをコラボレーションして企画されたオープンイノベーション事例が「お化けBAR Hopping」だ。内容は非常にシンプル。 いくつかの会員制のバーを貸し切り、そこに松竹のコーディネートした役者が演じる「お化け」が登場する。間近で演劇に触れながらお酒を飲むというプランだ。
例えば、ある店舗には落ち武者が入っていて、お酒を飲んでるとトイレから落ち武者が「水をくれ、、、!」と言いながら登場し、そこでインタラクティブなやり取りが発生する。あるいは、織田信長が舞と共に登場するシーンから始まる店舗などもあった。

「ただお酒を飲むだけではなく、目の前で演劇を見ながら日本の文化を知ってもらい、ナイトライフを楽しんでいただく。こういった新しいナイトエコノミーの体験コンテンツを作りました。演出として、忍者、織田信長、 花魁、千利休の孫に化けたきつねのお手前、女幽霊、落ち武者等、海外の方にうけそうな要素を散りばめ、楽しみながら日本の文化に触れて頂けるよう工夫しました。」
脚本からしっかり作られていることもあり、総評として非常に面白かったという結果が出ている。高いエンターテイメント性があり、かつ、敷居の高い印象もあるゴールデン街を安心して楽しむことができた、欲を言うならもっと長い時間お店にいたかった、という意見もあった。

「今後の展望としては、今後開催されるオリンピックに向けて、海外の富裕層向けにカスタマイズしていきながら、より高付加価値でかつ持続性のあるモデルを作っていきつつ、日本全国に横展開していきたいと思っています。」
もう1つは株式会社松竹マルチプレックスシアターズ(SMT)との協業事例。松竹が保有する新宿ピカデリーのプラチナシートを貸し切り、エクスペリサスが自らのネットワークから選定した有名バーを一日だけ出張開店させるという、高付加価値な体験コンテンツの企画である。
上演前、上映中、上演後、各領域において映画を楽しむプロセスを分析して体験価値の最大化を目指す。
「上映前にはラウンジエリアにてWelcome Drinkを楽しんでいただいたき、上映中はバーテンダーが席までドリンクをデリバリーする。「最高の映画を観ながら、且つ、最高のお酒を楽しむ」というコンセプトを通じて、映画の体験価値を新しい側面から引き上げられるよう、企画いたしました。」

終わった直後に、「また貸し切りたい」という反応もあったと言う。今回の実証実験を経て、今後は都度発注モデルとして個人・法人向け共に販売展開していく可能性も考えているとのことだ。
良きパートナー企業と事業化する事が成功への確率を高める
宮本 真行 氏/松竹株式会社 イノベーション推進部
−スタートアップとのオープンイノベーションということで、エクスペリサスさんとの実証実験において苦労された点などはありましたか?
松竹担当者 因藤靖久(以下、因藤):エクスペリサス様が得意とする「富裕層向けプライベートプランから海外の富裕層から予約を獲得すること」が、実証実験の短期間の締切までを考えると難しかった(海外富裕層は半年前から1年前に予約をおこなう)ため、方針を転換し国内富裕層で「約1ヵ月前にご案内しても都合のつく顧客」を探しました。また、日本の富裕層に向けたプランを今回のアクセラレータープログラム用に新しく仕上げる必要があったことが苦労した点です。
−短期間という実証実験の時間制約の壁を、どのように乗り越えたのでしょうか?
因藤:プラン実行までの短期間で予約を集めることができたのは、エクスペリサスのリレーションシップとコネクションのおかげです。彼らの持っているネットワークは今後の協業において有効な力になると確信しています。また、富裕層向けの新しいプランは両社で協力し、知恵を絞り合い、何度も相談して企画及びブラッシュアップを行いました。イベント実装後も本格的な事業化へ向けて富裕層の方々からの参考になるフィードバックを得られたことは今後活用できると考えています。
−今回のアクセラレータープログラムを通じて得られたもの、気づきなどはありましたか?
松竹担当者 宮本真行:ターゲットとそのニーズも踏まえたコンテンツづくり、そして販路をそろえることで、たとえ短期間であっても「新規事業を立ち上げから黒字化する」経験を積めたました。そして、リスクヘッジについても多様な視点をもって考えることが出来るようになりました。また、社内・グループ内で調整が必要な時も、相手の立場に立って考えられるようになるのだと気づかされました。
何より、良きパートナー企業と事業化する事が成功への確率を高めることだと実感しました。
社名 | エクスペリサス株式会社 |
設立 | 2017年01月25日 |
所在地 | 東京渋谷区渋谷 ILA渋谷美竹ビル |
代表者 | 丸山 智義 |
事業概要 | 富裕層向け文化体験プランの企画・運営 |
URL | https://jp.xperisus.net/ |
社名 | 松竹株式会社 |
所在地 | 〒104-8422 東京都中央区築地4丁目1番1号 東劇ビル |
創業・設立 | 創業:1895年(明治28年) 設立:1920年(大正9年) |
資本金 | 33,018,656,000円(平成31年2月28日現在) |
代表者 | 代表取締役社長 迫本 淳一 |
URL | https://www.shochiku.co.jp/company/ |