12.8 C
Japan
金曜日, 5月 27, 2022

世の中を驚かす新しいコンテンツと体験価値を生み続けるために。松竹の挑戦。

演劇や映像をはじめ、総合エンターテインメントを提供する松竹。銀座にある歌舞伎座が象徴的だが、伝統を継承しつつ、実は長年新しいコンテンツや新しい体験を追求してきた、「進化し続ける企業」の一つだ。そんな松竹がグループ各社を巻き込み、2019年に初めてアクセラレータープログラムに挑戦した。いかにしてプログラムを導入し、新たな取り組みを進めたのか。事務局として導入から実証実験までを牽引した、イノベーション推進部・森川朋彦氏と経営企画部の宮嶋歩氏に話を伺った。

未来の映画や演劇の可能性を探りたい

―アクセラレータープログラムを松竹に導入したのはお二人だと伺いました。どういった経緯でどのように導入したのか教えてください。

森川 まず大前提として、現状に満足してはいけない、という意識を経営層をはじめ、会社全体として常に持っていました。危機意識として持っていたのは、これから日本の人口が減少していく中で、映画や演劇のマーケットはこれ以上大きな成長が見込めない上に、むしろ縮小する可能性があるということです。今までも部署単位での新規事業や、新しいコンテンツを創造するチャレンジングな取り組みを実施してきましたが、それとは違った切り口で松竹が成長を続けるための起爆剤となる手段を模索していました。

宮嶋 そこで、Creww(クルー)のアクセラレータープログラムという枠組みを活用して新規事業のタネを見つけるきっかけを作り、スタートアップのスピード感で推し進めたら何か変わるのではないかと思ったのが始まりです。

松竹×Creww 松竹アクセラレーター2019

森川 ただ、自社のオープンイノベーション推進の目的と進め方などについて、経営層含めて議論して明確化すると同時に、ご一緒するスタートアップと本気で協業できる制度設計を先行して進めたため、このプログラムを導入するまでに時間がかかりました。

宮嶋 私はアクセラレータープログラムを進めるためのチーム組成や、松竹の文化でそれをやるためには、どんなプロセスを踏めばいいのかを考えて仕組みをつくりました。

プログラムオーナーである副社長から意見を聞いたり、事務局で意見を出し合ったりして進めていたのですが、そもそも「オープンイノベーションって何?」「アクセラレーターって何?」から会話が始まるので、どう伝えたら理解してもらえて魅力が伝わるのかは、かなり考えました。

しかも、プレイヤーはあくまで現場です。私を含む事務局は、演劇、映像、事業開発、不動産、管理部門の各部門から選抜されたメンバーが動きやすいように仕組みを整えて、相談に乗れることは乗り、逐次トップに状況を共有して円滑に進めていくという半年でした

―選抜メンバーはどのように決めたのでしょうか。

宮嶋 各部門からの選出と公募によって決めましたやはり、新しいことをやるには熱量とやる気が大事なので公募に踏み切りました。すると嬉しいことに16人も手を挙げてくれて。

全員と話した結果、公募からは5人に仲間になってもらい、部門選出の8人と合計13人のチームを組成しました。結果、様々な個性・知識・経験を持った多様なメンバーが集まりました。

夢があってワクワクするスタートアップとの協業

―アクセラレータープログラムで実際に実証実験まで進んだのは何社でしょうか。

宮嶋 5社です。具体的には、映像、写真、イラスト等の制作編集作業をAIに学習させて短時間で遂行する技術を持つラディウス・ファイブ、世界最大のVRライブプラットフォーム「VARK」を運営するActEvolve。

訪日外国人に動画で観光情報を提供するDIVE JAPAN、最先端の瞳孔解析技術の基礎研究を行う夏目綜合研究所、そして、インバウンド市場の富裕層向けサービスを提供しているエクスペリサスという5社。

どれも松竹が持つ劇場や映像などのコンテンツと掛け合わせて新しい体験を生み出せそうですし、5社5様でとても夢があってワクワク感があるんです。だから、メンバーも実証実験にコミットしていますし、熱量を持って進めてくれています。

森川 実証実験が終わった後、さらに現場を巻き込んで中長期で進めることが最重要なので、まずはこの取り組みが新規事業創出の着火剤になればいいなと思っています。

―アクセラレータープログラムに取り組んだことで、社内や社外からの反響はありますか?

森川 伝統的な映画や演劇の会社というイメージをお持ちの方が多いので、社外からは「松竹がそんな取り組みをしているんだ」と驚かれることが多いです。社内は、松竹の新しい取り組みをオープンに広報しているのですが、今の所、ネガティブな意見は聞いていませんね。

宮嶋 そうなんですよね。新しいことに取り組むと変化を伴うので、少なからず反発はあると思うのですが、今のところネガティブな声は聞かないです。。

それは、アクセラレータープログラムに取り組むずっと以前から、新しい歌舞伎や新しい映像を作るなど、コンテンツ単位で工夫を凝らした挑戦をしていて、チャレンジする文化が根付いていたからだと思います。

―新しいコンテンツを世の中に提供している会社だからこそ、文化とマッチしたのですね。とはいえ、選抜メンバーは本業も抱えています。いかにして熱量を維持したのでしょうか。

宮嶋 “チームアクセラレーター”という形でお互いの知見をシェアしながら進めているから、モチベーションを維持できているのだと思います。

松竹株式会社 経営企画部 宮嶋 歩氏

森川 事務局は常に選抜メンバーと連絡を取るようにしていますし、それぞれに興味のあるスタートアップとタッグを組んでいるのが大きいと思います。

宮嶋 そうですね。事務局が決めると与えられた仕事になってしまうので、事務局は仕組みを作る役割に徹し、メンバーにスタートアップを選んでもらいました。自分が面白いと思った企画を担当しているので熱量が継続しているのだと思います。

硬い意思と柔らかい頭。ギブ・アンド・ギブの精神が会社を変える

―お二人が仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

森川 今までは与えられた仕事をしっかりとやり切って成果を出すことに注力していましたが、アクセラレータープログラムを導入したタイミングでDrone Fund(ドローン・エアモビリティに特化したベンチャーキャピタル)に出向したことで、考え方がガラリと変わりました。

たとえ与えられた仕事であっても主体性を持って取り組み、いかに付加価値を出すかが大事であると。

松竹株式会社 イノベーション推進部・森川 朋彦氏

それからもう一つ、自分にまったくなかった考えが「ギブ・アンド・テイク」ではなく「ギブ・アンド・ギブ」が大切であること。たった1年の出向でしたが、頭を鈍器で殴られたかのような衝撃がありましたね。

スタートアップはスピード感も違えば、求められる仕事やその量も違っていました。出向したことで得られたこの経験は、これから松竹に還元していきたいと思っています。

宮嶋 特に今回のプログラムにおいては、硬い意思を持って推し進めることと、頭を柔らかくして相手の意見を聞くバランスを大切にしました。

プログラムを推進するためには事務局が明確な方向性と意思を提示する必要があります。一方で、関わる人の数とタイプが多種多様だからこそ、いろんな人の意見を聞いて最適解は何かを考える柔軟さが必要。そのバランスを大切にしています。

新しい企業文化を確立させて、新規事業を作りたい

―これから実現させたいことを教えてください。

宮嶋 まずは、今回のアクセラレータープログラムで得られた成果から、結果を残すことです。今はCrewwのプログラムに乗っかることで進められていますが、プログラムが終わった後はいかにして継続して価値を創出できるかが重要と思っています

2020年にプログラムが終わってからが勝負なので、本腰を入れて頑張りたいと思っています。

それから、今回のプログラムは自分が実際に手を動かすものではないとしても、この取り組みが来年以降も続いていくとしたら「新しい企業文化」を作れたということになる。だから、それを実現させたいと思っています。

森川 今回の取り組みを起爆剤に、新規事業を創出することで結果を出したいと思っています。スタートアップとどのようにご一緒するのがベストなのか、会社として最適解を探しながら進めたいですね。

いずれにしても、スタートアップとタッグを組んで成長していくエコシステムに参加できるのは嬉しいことなので、松竹で結果を出しながら、スタートアップをサポートするメンバーとしても頑張っていきたいです。そうすることで、松竹の企業文化を進化させたいです。

―松竹が、若手が中心となって会社を動かしているのは知りませんでした。

宮嶋 考えてみると、入社した頃から若手にいろんなことを任せてくれています。年齢や社歴に関係なく、みんなでセッションする文化がありますよ。

森川 もしかしたら、意識的に若手に役割を与えているのかもしれないです。常にフレッシュな意見や価値観を理解することが、松竹のコンテンツ作りに生かされるのだと思います。そんな根底にある価値観を大切にして、松竹はもちろん、最終的にはエンターテインメントを進化させていきたいですね。

執筆
田村 朋美 
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
Facebook コメント
PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

Featured

【公募】循環炭素社会を目指し、スタートアップや起業家予備軍を含む研究者らを助成!

【オープンイノベーションインタビュー】循環炭素社会の構築を目的として誕生した一般社団法人カーボンリサイクルファンドは、民間からの寄付金を原資にシード/アーリーステージのスタートアップにとって必要な見返りを求めない“GAPファンド”として、循環炭素社会の実現に向けてイノベーションを起こそうとする大学・企業等の研究者(研究チーム)に助成金を交付している。そんな同団体が開催する助成活動について、イノベーション部/部長代理 鹿島淳氏に話を伺った。 #募集 #カーボンリサイクルファンド #アクセラレータープログラム #インタビュー #オープンイノベーション #スタートアップ #CrewwGrowth #大挑戦時代をつくる #Creww

【Creww ×メリービズ】管理部門の働き方を先進的にする、スマートバックオフィス

さまざまなスタートアップから次々と誕生している、バックオフィス業務のSaaSサービス。Crewwは、それらのサービスを複数導入することで、管理部門における新しい働き方とキャリアを創出し、社会に広めていくための「スマートバックオフィス化」を進めています。そこで、Crewwが導入している「バーチャル経理アシスタント」を提供する、メリービズの長谷龍一氏と、Creww取締役の高橋彗に、バックオフィスをデジタル化することの価値について話を伺いました。

スタートアップと地域企業が共創で挑む食品ロス課題解決〜hakkenの乾燥野菜によるイノベーション

【スタートアップインタビュー】 世界には、今この時も食べ物を求め飢えに直面している人々がいます。一方で、日本の食糧廃棄量は深刻です。食品を焼却処理する際に排出されるCO2は地球温暖化の原因ともなっています。大量の食糧が廃棄される現実は、誰もが知っている矛盾であり、誰も解決できなかった難題でもあります。株式会社hakkenは、驚きの発想で廃棄させずに野菜をリメイクし、扱いやすい乾燥野菜を使ったサービスを展開、フードロス解消にアプローチしているスタートアップです。可能性に満ちた乾燥ロス野菜が創るイノベーションは注目を集め、NAGANO-OIC 2021では、2社から採択されました。果たしてその協業内容とはどんなものなのか。地域に根ざした小規模生産を活かすhakkenのビジョンとはー。穏やかに淡々と語る言葉に秘められた熱い胸の内について、代表の竹井氏にお話を伺いました。 #hakken #SDGs #食品ロス #食糧廃棄 #乾燥野菜 #イノベーション #NAGANO_OIC_2021 #スタートアップ #地域創生 #共創 #Creww #大挑戦時代をつくる

蚕を使った「シルクフード」を次世代の代替タンパク質へ!フードテックのスタートアップ「エリー」

【スタートアップインタビュー】 Crewwが注目のスタートアップを掘り下げて紹介する『大挑戦時代を生きるスタートアップ特集』。今回は、蚕を使った代替タンパク質「シルクフード」を開発するフードテックのスタートアップ「エリー株式会社」へ伺いました。 サステナブルな次世代食品「シルクフード」は一体どのようなものなのでしょうか。また、昆虫食のなかでも、蚕に着目したのはなぜなのでしょうか。その社会実装の推進やマネタイズの面を含めた現在、さらには環境問題の解決を見据え、エリーが目指す展開とはー。 食品メーカー勤務の経験を生かし、新しい代替タンパク質の開発に向けて起業したエリー株式会社代表の梶栗 隆弘氏が、社会に広めたい想いーその熱い胸の内をお話くださいました。 #スタートアップ #インタビュー #FoodTech #シルクフード #エリー #昆虫食 #代替タンパク質 #大挑戦時代をつくる #Creww
Facebook コメント