目次
<目次>
・なぜ新規事業・オープンイノベーションを推進するのか
・描くビジョンへ!“みらい”社会を創るイノベーション事例
・事業性を見極める!?ゴールの設定はいつにする?
・アクセラレーター推進の試練!?自社経営層の説得はどうする
・どこがゴール?実証実験におけるゴールの作り方
・プログラムの見極め時?!設定したゴールまで走り切るために
・失敗はない!?新規事業・オープンイノベーションの成果とは
なぜ新規事業・オープンイノベーションを推進するのか
ーーフジクラ様の取り組みや、オープンイノベーションを推進している背景についてお話いただけますでしょうか。
平船:フジクラは、BtoBで、インフラを大きなお客様に収める会社です。一方で、社会課題を我々自身で直接解決したいという想いから、2017年に『2030ビジョン』を掲げ、快適で持続可能な“みらい”社会のために、“つなぐ”ソリューションの提供を目指しています。
事業を展開する市場は、既存事業の延長上にあるものも含めて4つです。新しいことを目指すのですから、フジクラ1社だけでは出来ないのは当然で、外の色々な方とも対話をし、サポートを頂くコラボレーションが必要であると考え、新たな価値創造のために「オープンイノベーション」と言う新しい取り組みを始めました。

描くビジョンへ!“みらい”社会を創るイノベーション事例
アクセラレータープログラムから生まれた株式会社アクティベートラボとの共創
平船:オープンイノベーションという新たな取り組みを推進するため、最初に行ったのは、Creww(クルー)にアドバイスを頂きながら開催したアクセラレータープログラムです。
採択スタートアップのアクティベートラボ様は、障害者雇用の問題を打破する仕組みを作りたいと、フジクラが掲げるビジョンの一つ「Life-Assistance」の内、健康リテラシー向上の分野に応募を頂きました。
「個々人の特性を切り口に考えるQOLの向上」というもう一つの軸も必要であると気付かされたと同時に、障害者雇用サービスのさらに先には、ダイバーシティインフラの構築という目指すべきビジョンがあることを確認して、協業が始まっています。

事業性を見極める!?ゴールの設定はいつにおく?
ーー共創案を練る中で、マネタイズ含め総合的な利益については、どの時期にお考えでしょうか?
平船:アクティベートラボ様との案件は、中身がフジクラの既存事業とくっつけられるものではないので、利益を考えるのは、数年後になるかと思います。一方で、フジクラの既存事業に近いアイデアについては、1.2年後には、サービスの提供ができるかと思います。
どういうビジョンでやるのか、どの様な形で事業を作るのかによって、“事業にする=ゴール”の設定は変わってくるのではないでしょうか。
また、事業性の一つの目安としては、サービスを開始するということが第一のステップであると思っていて、それをいつにするのかということは、スタートアップさんとも共有しています。

アクセラレーター推進の試練!?自社経営層の説得はどうする
ーーアクティベートラボ様へは、2020年には出資もされていらっしゃいますよね。数年先ではなく、さらに遠い未来へ向けた投資は、企業としては思い切った判断だと思いました。自社内で稟議を通すのも容易ではなかったのではないですか?
平船:これまでのモノ作りの事業とは、事業の作り方が違うと思っています。その新しいチャレンジ・方法を含めて、会社が容認してくれたのかなと感じています。社内でも協議は重ねましたが、モノを売るのではなく、“つなぐ”ソリューションを提供するという大きな目標に向けた活動ができる分野であったので、未来を見ることができたのだと思います。
ーー事務局は、ソーシャルインパクト・QOLといった社会的意義を目標にされる一方で、経営層側はどうしても短期的な利益を追求したゴール設定を行いやすいかもしれません。
平船:1人背中を押してくれる経営層に理解してもらっていることが必要ですね。また、上層部への説得も大事ですが、一方で仲間を作る事も非常に後押しになると思います。地道に仲間を増やしていると、社内に流れが出来ます。

どこがゴール?実証実験におけるゴールの作り方
―ー実証実験のゴールの設定についてはどのようにお考えでしょうか?
平船:まずPOCの実施に当たっては、「スタートアップの速度設定に対して大企業側は遅いので、3か月で何か成果を出すのは、なかなか難しいですがそれでも良いですか」という確認をします。それから、ビジョンの共有に加え、どういう所をどう出来たら良いのか、という“ゴール感”の擦り合わせもきっちり行います。
その上で、第一弾のPOCはいつにするのかというお話をさせて頂きますが、最初のPOCを作りユーザーインタビューを実施するまで大体半年ですね。研究開発が必要な事業であればその期間は必要であるし、上手くいかなけれな検討も必要です。どちらかと言えば、速度よりも、どこまでをやるかをゴールに設定していますね。
ーーPOCは、数字が見えづらいですが、会社への成果の見せ方・評価の仕方で工夫されていることはありますか。
平船:そうですね。成果としては、結局サービスになって見えないことには、なかなか評価はしてもらえませんが、「どういう風に進んで行っているのか、どの位置にいて、どこまですれば次に進めるのか」といったお話はしています。
評価に関しては、頂いた賞などの外の評価を使わせていただくことはあります。また、プレスリリースを利用してPOCの実施を外に向けて発信することで、インプットを促すこともしていますね。

プログラムの見極め時?!設定したゴールまで走り切るために
ーー新規事業のゴール設定ができず、予算が獲得できないという課題を抱えた企業も少なくないと思いますが、KPIを置かない場合の予算獲得はどうされているのでしょうか。
平船:まず、イノベーションを推進するために動く人の活動費は頂いております。それから、計画が進んでいるテーマがあって予算を獲得したい場合には、それが必要であるかどうかについて攻防はあると思いますが、具体的に区切りを示して、「ここまではやらせてほしい、ここまでやらないと分からないので進ませてください」と話します。次に活かせるための何を得られたのかが大事だと思うんですね。
失敗はない!?新規事業・オープンイノベーションの成果とは
平船:我々は、失敗という言葉を使わないんです。動くことで何かしらが得られる、やめるとしても知見をもらえる、それも成果なのではないかなと思っております。
ーーなるほど。
オープンイノベーションという取り組みの成果は、数字の利益以外にも、挑戦する組織の風土でもあるのですね。平船さんもおっしゃって下さいましたが、仲間を募っていくことで会社自身の考え方が変わっていけば、それは非常に大きな資産に繋がっていくことであると思います。皆様にもぜひ、オープンイノベーションのゴール設定を考える上で、意識していただけたらと思います。
本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。

(株)フジクラ入社後、光ファイバの開発、電子デバイスの開発及び量産立ち上げに従事。2013年に新規事業推進センターに異動し、主に品証担当として、新規事業のインキュベーション業務に従事。2017年4月、新規事業推進センターつなぐみらいイノベーション推進室長に就任し、オープンイノベーションを通じて新しい価値創出すべく活動中。
■ Innovator`s Academy とは
イノベーションが首都圏のみならず全国規模で取り組まれ、スタートアップから事業会社、自治体に至るまで幅広く挑戦が繰り広げられるように。イノベーションの成功例や失敗例、気をつけるべきポイントなど、経験豊富なゲストから様々なノウハウを持ち帰ってもらう場。それが「Innovator`s Academy」です。
