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土曜日, 4月 10, 2021

経済産業省の三藤氏が語る、在籍出向のメリット・デメリット

潤沢なリソースがある一方、さまざまな制限によりイントレプレナーが育ちにくい大企業から、人材をスタートアップに送ってもらうことで、大企業側はイノベーター人材育成の課題解決につながり、スタートアップ側は人手不足の解消につながるという、在籍出向が注目を浴びています。実際に人材を交流させていく際のメリット・デメリットについて、経済産業省の三藤 慧介(みとう けいすけ)氏にお話を伺いました。

今日本でオープンイノベーションが求められる理由

国から伝えたい3つのこと

今僕は、日本におけるイノベーションを、ナショナル・プロジェクトではなく、民間の皆さんのお力をどうマッシュアップさせながら発展させていくのか、ということに取り組んでいます。

その上で、国としてお話させていただきたいことが3点あります。
日本にとって、大企業とスタートアップの連携を両輪にしながら成長していくことが重要であると考えているというのが、まず1点目。

2点目は、お金や技術のみならず、やはり人材においても、大企業とスタートアップの連携が欠かせないと思っているということ。

そして3点目は、今お話したことが大事だと思っているので、「補助金つくってみました」というご報告です。

高度成長期のイノベーションエコシステム

まずは現状認識をするために、日本が飛躍的に成長を遂げた高度成長期を図解してみました。

当時は、大学・国研にあった技術(シーズ)が、事業開発部門において応用・開発研究、さらに試作・POCが行われるようになり、その後営業の方ががんばって汗かいて、市場に上市していき、そこからまた技術への再投資が行われ、そのニーズを踏まえてまた開発が行われる、という単線的な流れだったと思われます。

「丈夫なものを作れば売れる、安いものを作れば売れる、速いものを作れば売れる」みたいな、今よりマーケットがわかりやすかった時代、マーケットの変化が緩やかだった時代においては、こういう内製化が強く意味をなしていたのだろうと推測されます。

人材の面で言うと、新卒一括採用・終身雇用が、まさにこういう、良い意味での均質性を社内につくり、直線的なイノベーションを支えて行ったんだろうなと想像しております。

イノベーションエコシステムの現状

一方、今の世の中で起きているような変化に対して、どのようなイノベーションエコシステムが成り立っているのか、そして日本としてはどういうカタチを目指していくのか、というのが次の図になります。

大きな変化として、モノが足りなかった時代からモノがあふれている世の中になり、マーケットが多様化、複雑化してきてしまったということが挙げられます。特にデジタル化が、よりそれを推し進めていると言って良いでしょう。

そうなってくると、じっくり5年10年かけて行われる研究開発や商品開発、事業開発よりも、図の下部に「2、3年〜数年未満」と書いてあるように、リーンにスピード感をもって、デジタルなどの技術を活用しながら新しいモノを生んでいく、そしてそれを手直ししていく、ということが求められてきていると思われます。

以上のようなプロセスにおいて、オープンイノベーションと呼ばれる、大学・国研のシーズを研究開発型のスタートアップがサービス化し、それを事業会社さんがM&Aしたり、はたまた、大学・国研の持っているシーズを共同研究というカタチで事業会社さんが上市していくといった流れが重要になってきています。

イノベーションにおける課題解決

日本が抱える3つの課題

そんな中、現在日本が抱える課題は大きく3つあります。1つめは「そもそも理系の学生が減ってません?」ということ。研究力の低下が指摘されています。

もう1つは、スタートアップエコシステムが、アメリカや中国と比べるとまだまだ弱いんじゃないか、という点です。

3つめは、政府においてもデジタル庁の新設が予定されていますが、オープン化や外部リソースの活用といった新たなイノベーションモデルに対応した市場形成・市場環境整備の遅れが挙げられます。

では課題対応策として何をするのかというと、大学・国研のなかにまだ残っているであろうシーズを迅速に移転して行くこと、またグローバル市場に対して、例えばカーボンニュートラルのように環境やデータといった価値軸をもって乗り出していくこと、あとはスタートアップと事業会社の間における価値の共創に好循環を生むこと、というあたりが柱になると思っております。

在籍出向で、大企業とスタートアップの間を人材がぐるぐる回る社会へ

日本の企業は、「両利きの経営」で言うところの「知の深化」はとても得意なんだろうと思われます。例えば「改善」とはその最たるものですね。

他方、「知の探索」に関しては少々苦手であるという風に言われています。その解決策として、スタートアップとのオープンイノベーションに興味を示されている事業会社も多いのではないでしょうか。

人材面で考えると、既存事業では堅実さやミスをしないといったことが求められます。そもそも日本の会社における組織としてのプロセスメイクはグローバルに見ても定評があり、誰が行っても失敗しないようなきちんとした枠組みが作られているということもあります。

一方新規事業では、社内外を含めて、どう人を巻き込んで行くのかという動きや、どれだけを情熱を持ってその事業に取り組めるのか、またプロセスにおけるスピード感などが重視されます。評価においても、今すぐ大きな実にならずとも、将来金のなる木に成長するものを見つけていく、といった将来価値に重きが置かれます。

大企業の中で新規事業を立ち上げる場合、きっちりした社内ルールのある中で行っていくよりも、一度外へ出て、出向起業というカタチをとった方が人材育成や知の探索につながるのではないかという考えが最近の潮流ですし、経済産業省としても推していくところです。

スタートアップ側は資金、人材、設備、販路、ネットワーク情報など様々なリソースが常に不足しており、大企業側は色々な拘束、制限がある中で新規事業を創出したり、チャレンジしやすい環境をつくるのが難しいという面があります。

そこで、スタートアップと大企業の間を人材がぐるぐる回るというか、大企業のなかに在籍したままで、兼業や副業、あとは業務委託を請け負うといった様々な関わり方を推進するべきだと思っています。

その中で、お互いの良いところを法人同士としても補いつつ、1個人としてもそれぞれの組織のなかで学べることを学んでいくということが、日本のイノベーションエコシステムの大事な基礎になっていくのではないかと考え、経済産業省としても「人材の環流」を大きくしていきたいと考えているところです。

経営人材支援事業への補助金を新設

大企業とスタートアップがwin-winの関係を築くために

最初にお話した補助金の話に戻ります。令和3年度の予算がまだ国会を通っていないので、案の段階ですけれども、政府としてはスタートアップ向け経営人材支援事業に新規の予算として4.4億円提示させて頂いております。

これは、出向でも業務委託でも、顧問契約でも、兼業副業であろうと何でもいいので、大企業の人材が、スタートアップの中でCTOやCOO、またはそれに準ずる部長級のしっかり重責を担うような立場で課題感やスピード感というものを実感していただく機会を増やすのが目的です。


また出向起業という別の予算事業でも一部ご支援させていただいておりますが、大企業から出向という形で人材をスタートアップの方に送っていただき、その人が起業する場合、それに対して外部のVCが出資したり、さらに大もとの大企業様からも出資いただければ、キャピタル・ゲインが生まれたり、そのままM&Aをするというカタチもあるのはないかと。

つまり、出向という形態で、大企業にいる方に起業していただくわけです。

このように、大企業の中の優秀な皆様に、スタートアップにおける経験を積んでいただき、それをまたふんだんにある大企業の中のリソースを使って次の事業に生かしていただく。そういう、人をぐるぐるまわしていけるような世の中を作っていくための一助となればと思い、初めての予算を計上しました。

今回の予算については、スタートアップ周りのみならず、大企業の方からもご期待いただいているようなので、経済産業省としても、人材が環流する世の中をつくるために、新しい事業をスタートさせて行こうとしているところでございます。

以上が在籍出向におけるメリットとなります。

出向がもたらす新たな可能性

ではデメリットは何かと申しますと、一度出向してしまうと、そのまま転職したくなってしまう場合がある、ということでしょうか。また、大企業と言えど、それほど人が足りている状態ではないと思いますので、一時的な人手不足というのがあるのだろうと思っています。

ただ、転職してしまったり、一時的に人が減ってしまうのは、確かにデメリットだと思うのですが、
また戻ってくるということも往々にしてあると思いますし、戻ってくるだけでなく、アルムナイ(企業の離職・退職した人の集まり)といったネットワークにつながるケースもあります。

そうやって、一回外へ出て行った人材がまた、組織のために何か恩返しをしていこうという動きも往々にしてありますし、回転ドアと表現したりしますが、出て行った人がまた戻ってくるというのも、これはこれで一つのオープンイノベーションのカタチなのかなと思っております。

実際経済産業省におきましても同様のケースがみられますし、大企業様におかれましても、電通やサントリー、中外製薬などでそういう取組をされている方もいらっしゃいます。

経済産業省としては、日本という国をベースに大きな目で見て、大企業の中の優秀な人材がぐるぐる回って、またもとの会社にメリットを生むカタチで帰ってくるという好循環を目指すべく、いろいろな事業を進めていきたいと思っています。

お話を伺った人
三藤 慧介(みとう けいすけ)氏 経済産業省 産業技術環境局 技術振興・大学連携推進課 課長補佐(総括担当)

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石神 美実子
広告代理店、広告制作事務所を経て、現在フリーランスのコピーライター・ライターとして活動中。キャッチフレーズやネーミング、プレスリリース等の制作から、WEBメディアの執筆まで幅広く従事。とりわけ、円滑なコミュニケーションを必要とする人物インタビューが得意。
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