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火曜日, 7月 7, 2020

企業におけるオープンイノベーションの段階を7つのステージで考える

なぜ大手企業の新規事業開発やオープンイノベーションは上手く進まないのか。理由はいくつか考えられるが、その理由の大きな要素がゴール設定だ。正しいゴール設定のためには自社の状況を見える化し把握することが重要になってくる。Creww代表の伊地知天は、国内におけるオープンイノベーションエコシステムを加速させるため、各企業が自社の状況を捉えられるよう、オープンイノベーションの段階を7つのステージに分類した。

オープンイノベーションの段階をステージに分解した理由

企業としてオープンイノベーションを始める際、「総論OK」「各論NG」となるケースが多く見られるのですが、この事実に非常に課題を感じています。企業として新規事業に取り組むことは必須になってきているので、オープンイノベーションという手法の導入については総論として大抵どこの企業の経営陣も合意を出すんです。ですが、実際にスタートアップとの協業案を提案すると、様々な社内事情を理由に「それはちょっと、、、」と進まなくなってしまう。現実的になったことで、不確実性に対するリスクヘッジに走ってしまうことが、大企業では見受けられます。そうなってしまうと、オープンイノベーションの担当者やスタートアップはハシゴを外されてしまい、みんなが損するモデルになってしまう。

Creww株式会社代表 伊地知 天(いじち そらと)

そもそも新規事業は「不確実性の中から新しいタネを探し当て育てていくもの」です。新規事業における不確実性は前提として捉えておくものであり、不確実性を検証するためにPOCがある。
問題はそこで新規プロジェクトが頓挫してしまったり、プロジェクトチームの熱量が下がってしまうことで、担当者の評価が下がってしまうことなんです。

前提として理解しておいて欲しい点は、「新規事業の創出とは1勝9敗の世界だ。」ということです。むしろ「9敗から学びを得る」ことが重要であるにも関わらず、すぐに答えを求め、期待をしてしまうと、結果9敗の現実に「オープンイノベーションの足を止めてしまう」という落とし穴にはまってしまいます。問題は「ゴール設定ができていない」と点にあります。

例えば、アクセラレータープログラムを通じて自社がどうなっていれば正解なのか、という話は単発で語れるものではありません。「3ヶ年で会社としてどういう状況を目指すべきか」といったように、本来は中長期で考えていくべきものなのです。生み出される新規事業やアウトプットはその間の副産物。アクセラレータープログラム自体は「新しいことが創出される続ける組織に変革していくためのプロセス」における一手法という位置付けなんです。
この「新しいことが創出される続ける組織に変革していくためのプロセス」をどう見える化させるか、という点で「オープンイノベーションの7つのステージ」という考え方を提唱します。

オープンイノベーションの7つのステージとは

「スタートアップ共創による新規事業の創出」における成功には、自社のステージの理解と、オープンイノベーションの継続性により、ステージを上げていくことが重要です。可視化できるゴールを新規事業創出に関わる会社、社員、スタートアップの皆が捉えられる様に、7つのステージを定義しました。

Stage.0 「現状に危機感はあるが、まだ何もしていない状態」

Stage.1 「情報収集等、共創の検討はしているが実施はしていない状態」 

各種メディアやイベントへの参加を通じた情報収集、社内アイディアソン等の実施、VCへのLP出資等をしている。

Stage.2 「外部の力を借りるなどして、共創を実施し始めた状態」

新規事業創出の経験を得て、社内の風土が変化し始めた。但し、新規事業の評価軸や判断軸はまだ曖昧。実証実験で終わってしまう事が多い。
例:Crewwや01ブースター、eiiconなどの外部事業者を活用し、アクセラレータープログラムの実施をしている。

Stage.3 「経験やノウハウを元に、継続的に共創を実施している状態」

規模は小さくてもSTとのビジネスが生まれている。スタートアップへの直接出資も実施。但し、実証実験以降の推進体制がまだ整備されていない。
例:アクセラレータープログラムを一通り実施し、ノウハウがたまったような企業。ピンポイントのニーズベースでパートナーを探し、共創を進めていく。

Stage.4 「自社独自で、戦略的に共創ができる状態」

専任部署ができる。共創のコツがわかり内製化が始まり、組織や体制にまだ課題を持ちながらも試行錯誤して進めている。
例:オープンイノベーション事業部や新規事業関連部署が新設され、自社でアクセラレータープログラムを開催している企業。リコーなど。

Stage.5 「共創や出資まで自社独自で行える状態」

協業を事業化させた経験を持つ、投資の目利きが出来始める。挑戦のための人事評価が作れる。
例:東京メトロ、セイノー、アシックスなど

Stage.6 「新しいイノベーションが次々に生まれる仕組みが文化として根付いてる状態」

国内外のスタートアップと連携し、風土が根付く、スピンアウトも多く生まれだす。
例:新規事業を担う人たち専用の評価制度ができている状態

Stage.7 「企業の枠を超えた社会的資源を生かした挑戦の主体となる状態」

社会課題に対して大学や海外の技術を活用し、コンソーシアムの様な大きな座組みを主導する。   例:セブン銀行、リクルート、ソニー、楽天、サイバーエージェントなど、自社でスコープ設定して世界中のスタートアップから自社のミッシングピースを埋められる事業者を探索し始めており、投資をして育成までしている企業

新規事業がいくつ生まれたかをKPIにおくのではなく、自社のオープンイノベーションにおけるステージの成長をKPIにおくことが、イノベーションを継続して創出する企業環境をつくるためには必要です。
アクセラレータープログラムを「新規事業創出プログラム」と言ってしまうと、どれくらい大きな新規事業が生まれたかが評価軸になってしまいます。単発で新規事業を創りたいのではなく、継続して新規事業が創出される企業環境づくりが本来のゴールなので、アクセラレータープログラムにせよCVCの設立やVCへのLP出資にせよ、これらはあくまでオープンイノベーションステージを上げるための手段の一つという理解をしておく必要があります。

なので、初めてオープンイノベーションによる新規事業の創出に取り掛かる際は、大きな新規事業が生まれることはあまり期待できません。小さな実証実験を繰り返し、知見をため、社内の人材を成長させていく過程が「新規事業創出の継続可」につながっていくのです。

プロフィール
 伊地知 天(いじち そらと) 氏 Creww株式会社 代表取締役

高校、大学を米国で過ごす。カリフォルニア州立大学在学中に起業したことをきっかけに、これまで国内外で合計4社の企業を設立した実績を有す。現在は連続起業家として4社目となるCreww(クルー)に目下専念中!

【加盟組織・プロジェクト】
・ (社)新経済連盟 幹事
・ (社)情報社会デザイン協会 理事
・ J-Startup 推薦委員(経産省 x JETRO x NEDO)

PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

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