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土曜日, 10月 23, 2021

セールステックSrush(スラッシュ)の流儀|セールスの新しい地図になる

成長の加速を落とさないスタートアップにフォーカスをして、失敗事例や克服のストーリー、成功体験など、生の声を配信している連載「スタートアップの流儀」。今回は、忙しい営業マンが手間と時間をかけずに、顧客とより良い信頼関係を築くためのセールスエンゲージメントツールの開発に乗り出したという株式会社Srush(スラッシュ)の代表取締役社長 樋口 海氏にお話を伺いました。

「セールスエンゲージメント」という新たな営業のKPIを作る

ーまず最初に、Srush様のサービスを通じて解決したい社会課題について教えてください。

樋口:我々Srushは、「いつでも受注できる関係を作る」ためのセールスエンゲージメントツールを作っています。

営業マンは基本的に売上と利益というKPIを持っていますが、それだけを追っていても、お客さんとの関係が良くなるわけではないんですよね。我々はこのツールを通じて、「セールスエンゲージメント」という新たな営業のKPIを作ろうとしています。

営業には3つ課題がありまして、まず1つめは、顧客対応の時間が限られていること。時間が限られている理由は、アポ調整や商談記録作成や事務処理など、1日の7割も顧客対応以外の業務に時間を取られています。2つめが、うまくリソース配分ができないと、担当顧客との関係にばらつきが出てしまうことです。ルートセールスや法人営業は、多い人で40〜100社顧客を抱えているんですが、「このお客さんとは仲が良いけれど、このお客さんとは仲良くない」みたいな偏りが出てしまう。

3つめが、顧客対応における正解がないこと。「このアクションで正しかったんだっけ?」「このタイミングで良かったんだっけ?」と思ってしまう。私も10年位営業をやっていますが、この課題って全然解決されないんですね。

私自身がどうやってこの課題に対して取り組んでいたのか、また今の営業マンがどうやって取り組んでいるかというと、一番最初に相談してもらえるような信頼関係をお客さんと築いておくことなんですね。

「ちょっと樋口さん相談してもいい?」「上司からこんなオーダーがあったんだけどなんか情報を持ってないかな?」と声をかけてもらえるような第一想起を得られれば、相談ベースで案件が降ってくるし、ガンガン提案することができるようになる。この状態を、我々Srushは作りたいと思っています。

ツールの機能としては、まず忙しい営業マンに対して、顧客接点作業を効率化します。具体的には、営業マンが普段から使っているメールやカレンダーと連携して、日程調整やカレンダー登録などを自動化しています。そして、そこで蓄積された営業活動データを用いて関係性をスコアリングし、データ分析して顧客対応の正解を提示します。

つまり、お客さんと営業担当者の関係を可視化することで、「次に何をすれば信頼関係を構築できるか」ということを提案するためのものを作っているんです。

お客さんとより良好な信頼関係を築くために

ービジョン・ミッションを言葉で表すと、どういった内容になりますか?

樋口:明確なビジョン・ミッションは、まだ作っていないですね。

ただ、我々はWEBサイトで「セールスの新しい地図になる」って伝えてるんですけれど、どういう意味かと言うと、先ほど言ったように、営業マンって、正しい歩き方がよくわからないのです。「この対応で良かったのか?」「このタイミングで合っていたのか?」とか。そこに一つの正解を提示すること、そのための新たなKPIを作ることが我々のミッションかなと思っています。

売上利益だけを追っていくと、お客さんとの関係が案件ごとに切れてしまいがちなので、ちゃんと信頼関係を築いていくことが重要なんです。エンゲージメントスコアを高められれば、お客さんとの関係が良くなり、案件が勝手に降ってきて受注が簡単になる。この入り口のところを変えたいなという思いがあります。

海外にはセールスエンゲージメントツールはたくさん存在していて、特にアメリカではだいたい3,000億円ぐらいの市場規模があります。ちなみに国内ではゼロでした。なんでそんなに差があるかと言うと、アメリカって、ニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコみたいに、もともと物理的距離があるので、効率よくエンゲージメントを高めるために注力してきたという背景があります。

日本は、例えば都心だと電車にのれば15分でお客さんのところに着いてしまうので、これまではその必要がなかったんですね、会えば良いから。

ただコロナウイルスによって以前のように気軽に会えなくなり、一定の距離ができてしまったため、今まさに、“効率よくお客さんとのエンゲージメントを高める”ことの必要性が、注目を浴びてる状況だと思ってます。

それに企業のなかでDXが一番最初に取り組まれる部署がどこかというと、間違いなく営業なんです。なぜかというと、費用対効果がめちゃくちゃ高いから。取り組めば取り組んだだけ、売り上げが上がる。
だから営業DXのニーズは非常に高くて、日本ではここ5年ぐらいで3,000億円位の投資が見込まれています。

セールスエンゲージメントツールの概要

ーお話を伺っていると、強みばかりだと思われるんですが、逆に課題に思っていることはありますか?

樋口:実際のプロダクトを見てもらえればわかると思うんですが、β版のサービスなので、単純にまだ機能が足りないことが、ひとつめの課題です。

もうひとつ、海外では「エンゲージメントを高めることが、企業に高いパフォーマンスをもたらす」という論文が何本も出ているんですけれど、日本にはそれがまだないので、これから実証していかなくてはいけないという課題があります。

そのためにも、営業マンの顧客対応における非効率な部分を効率化するような機能を充実させることで、彼らにどんどん利用してもらい、自然とデータがたまって、エンゲージメントスコアの精度が上がっていく…みたいなプランを今考えています。

我々がご提供しているセールスエンゲージメントツールのインターフェースはカレンダーです。営業って未来型の仕事をしているので、カレンダーを起点に仕事をするんですよね。

なのでこのカレンダーに、日程調整やルート検索、Zoomミーティングの発行、名刺管理ソフトなどを全部組み込んでいるんです。

例えば、ある商談相手に対してアポイントをとりたいと思ったら、事前に相手と交わしたメールや商談内容をチェックしたうえで、候補日を選びます。

その後はクリックひとつで先方へメールが届き、日時が確定するとカレンダー上に表示され、同時に相手方へも確定メールが送られるという仕組みになっています。

ルート検索も自動で行われるようになっていますし、オンラインの場合は、相手への確定メールにZoomリンクが貼られた状態で届きます。

徹底的にカスタマージャーニーを考える

ーなるほど。Zoomなどのリンクはあらかじめ登録されているということですか?

樋口:そうです。カレンダーや日程調整の機能、ルート検索なんかは、GoogleやMicrosoftのシステムを利用していて、Zoomも連携済です。ルート検索は経路と料金の情報を伴っているので、交通費精算のためのエクスポートが可能です。

メッセンジャーや電話でやり取りしてる時に、カレンダーにも登録して、同時にZoomリンクも発行する…みたいなフェーズってあると思うんですけど、そんな時はカレンダーをポチッと押して「打ち合わせ」と入力するだけでZoomリンクが発行されるような機能もあります。

徹底的にカスタマージャーニーを考えているので、営業が行く前と帰ってきたあとの面倒なことをすべて効率化するような仕組みになっています。

このようにSrushを通じて商談を作ったり、日程調整をしてもらうことで、「エンゲージメントスコア」が出ます(今回の例では、下図右上の「75」がそれに該当)。

この値の良し悪しではなく、上がったか下がったかが重要で、「変化のあるお客さんを気にしましょう」ということです。分析タブを開くと、AIDMA(アイドマ)のような、お客さんの購買行動をグラフ化したものが出ます。関心があって、接点があって、信頼があって、熱心になった結果発注に至る、みたいな。それぞれのフェーズをグラフ化することで、今どこを高めなくてはいけないのかを可視化しています。

海外のセールスエンゲージメントツールは、「この後に何をすればいいのか」、例えばメールを打つのか、商談を設定するのかといった提案して、それをさらにワークフローを組んでオートメーション化しています。我々は現状まだそこまでできていませんが、今後やる予定です。

とにかく「営業はお客さんと会えばいいだけ」という状況を作り出すためのツールなんです。「関心が下がっているからアポイントの日程調整をする」「熱心が上がっているから電話をする」といった次のアクションを提示していくようなイメージですね。

Srushを起業した経緯について

ーSrushを立ち上げられた経緯について、共同創業者の山崎氏のお話も含め、お聞かせてください。

樋口:2019年の11月に起業したので、今ちょうど丸1年ぐらいですね。私は以前1社立ち上げているので、今回2社めになります。前回は共同創業でCOOをしていたんですが、それを辞めてM&Aアドバイザーをしていたときに、yenta(イェンタ)というビジネスマッチングアプリで現CTOの山崎と出会いました。

相性が良かったんだと思うのですが、最初からめちゃくちゃ気が合って、「人を第一にするプロダクトで起業しよう」みたいな話になり、最初は人材系のサービスを考えていたんですよ。でもなんかピンとこなくて。

そもそも私たちの出会いはyentaで日程調整したところから始まったなあ、という流れから、彼に「営業をやってきた上で感じた日程調整にまつわる課題感ってないですか?」と聞かれ、私が自分のカスタマージャーニーをExcelで100行位書いたんです。そしたら、「これはもうプロダクトなります」と言われ、今回のサービスが生まれました。

だから最初は営業の日程調整ツールだったんです。でも「スケール感や発展性に欠けるね」という話になり、エンゲージメントツールへと発展してきたという背景があります。

私が代表なので、自分が作ったプロダクトだと言いたいところなんですが、課題や困りごとを山崎に伝えて消化していった結果生まれたサービスで、会社名も彼が考えてくれました。Srushという会社名はSales rushの略です。

ゴールドラッシュという言葉がありますよね。新しく金が発見されたところに、人々が押し寄せることを言います。それと同じで、営業界隈でも「営業担当者がもっと営業に行ける世の中にしたい」という思いが込められています。これを営業未経験の山崎が考えたのが、彼の凄いところです。

営業マンにとっての使いやすさを重視

ー起業から1年経って、今どういうフェーズなのか教えていただけますか?

樋口:サービスをリリースしたので、今はユーザー層を獲得していくことと、「本当にニーズがあるのか」「どこに一番刺さるのか」というのを検証していくフェーズです。

去年の12月14日にリリースしたんですが、思ったよりも反響があって、特に年始からの勢いがすごいですね。我々は日程調整をやっているので、年始のあいさつに便利とか、あとはコロナの影響でますますZoomのニーズも高まってますし、それが理由かなと思います。

我々は営業マンのための日程調整などにフォーカスすることで、使いやすさを重視した、ライトなSFA(営業支援システム)・CRM(顧客関係管理)というポジションを築いていくつもりです。担当者が勝手に意思決定して、一人で使えるプロダクトじゃないと、営業は科学できないと思うので。

海外のセールスエンゲージメントツールは、徹底的に担当者ドリブンな機能を追及した結果出たデータを、後からマネージャーがチェックする、みたいなものが多いです。大切なのはマネージャー目線じゃなくて、担当者目線。まさにそこなんですよね。

これからマーケットをつくっていくプロダクト

ーまだ起業されてからそんなに時間が経っていませんが、今後どんな壁が立ちはだかってきて、それをどう越えて行こうと思っているのかをお聞かせください。

樋口:セールステックって、サービス開発自体が大変です。以前やっていたのは、バーティカルSaaSで、3-4画面で済んだんですが、現在のプロダクトは画面数がものすごく多いんです。

GoogleやMicrosoft、Zoomと連携するだけでなく、目玉機能として、メールを見ながらカレンダーを触ったり、日程調整をできるようなChromeの拡張機能も作っているんです。忙しい営業マンに使ってもらうためには、モバイル用のインターフェースも必要です。

本当はβ版かつシード期に作れるレベルのプロダクトじゃないと思っていて。だからそこのスピード感をいかに出していくのかは、やっぱりものすごい課題ですね。今正社員は5人で、外部人材を入れると20人位の体制なんですが、うちの山崎がずば抜けて優秀なので助かっています。

我々の強みとしては、私がBtoBでやっていて、2人とも起業経験や経営経験があるというところなんですけど、実は山崎はC向けプロダクトのCTOも7年位やっていたんです。なので、BtoBの勘所は私が、BtoCの勘所は山崎が持っているので、2人が合わさることで、忙しい営業マンにちゃんと刺さるプロダクトができるという自信はあります。

ーすでに資金調達をされていますが、他の企業や事業会社との協業やオープンイノベーションは考えていらっしゃいますか?

樋口:日程調整やルート検索など、カレンダーのインターフェース部分はニーズが明確なので、そこはジェネレートに突き進んでいくだけなんですけれども、エンゲージメントスコアが、はたしてどれほど受注に相関があるのかを国内で証明していく必要があります。

我々が取り組んでいるエンゲージメントスコアに関するサービスは、これからマーケットを作っていくプロダクトなんです。そのためには企業さんの協力が絶対必要ですね。

個人ユーザーには効率化の部分を使ってもらって、実証実験は企業といっしょにやっていく、みたいな。売上利益だけを追っていってもダメだ、ということに気づいてる企業さんは多分にあるので、「高いエンゲージメントが企業に高いパフォーマンスをもたらすということの証明をいっしょにやりませんか?」とお誘いする感じです。

人と人のつながりがイノベーションを起こす

ー最後に、今後のビジョンについて、御社が成し遂げたい目標や思い描く未来について教えてください。

樋口:1年間ずっとプロダクトのことしか考えていなかったし、これからやりたいことも多すぎてまとまらないんですが、やはり「営業の世界をちゃんと変えたい」という思いはあります。私自身、営業に10年間携わってきたので、お世話になった上司や先輩、後輩に恩返しができるように、営業がもっとラクになる世界を作りたいと思っています。何よりお客様のためになる世界の実現ですね。

要するに、一番大事な瞬間にだけ時間と労力を使えるような世の中、お客さんと会うことのみに集中することで成果をあげられるような世の中をつくらないとダメだなと。

山崎と私の出会いに象徴されるように、人と人とのつながりがいちばん大事だと思うんです。日程調整ひとつとってもそうですよね。そこを円滑にすることでイノベーションも起こるし、世の中もより良くなると信じています。

最近人材系のお客様から、「候補者の管理に使えないかな?」と言う声を頂きました。「エンゲージメントスコアの高い候補者を企業に紹介すると内定率や入社率が高いんじゃないか」と言うご意見には、このような使い方もあるのかと、我々も驚きました。
他にも、上司と部下、家族、恋人、など色んな間柄でエンゲージメントは活躍することが可能です。

人間関係っていろんな領域に通じるし、人間関係がいちばん人がコントロールできないものだと思うんです。そこに我々はデータドリブンで一定の示唆を与えつづけていけるようになるといいかな。

Srushのサービスは無料で提供中

ーありがとうございます。最後にこれだけは言っておきたいということがありましたらお願いします。

樋口:今、Srushのサービスは全部無料で使えるので、ぜひ登録して使ってみてください。エンゲージメントスコアが今後のマーケットをつくっていくというプロダクトなので、皆さんの協力があってこそなんです。

ですので、今だけでなく、基本的には無料でご利用いただけます。我々はプロダクト・レッド・グロース型のビジネスモデルでやっていこうと思っているので、効率化の機能に関しては「どうぞご自由に無料でお使いください」となっています。エンゲージメントスコアやワークフローオートメーションの部分で課金する予定ですが、日本はそういうビジネスモデルは成功しづらいので、それもチャレンジですね。

インタビュイー
樋口 海氏 株式会社Srush 代表取締役社長

NTTコミュニケーションズの法人営業部門にて大手自動車を担当しグローバルインフラの導入に従事し、全社表彰や最高評価を受賞。その後、シンガポールの日系製造業にて営業戦略を担当。帰国後、製造業向け会計ソフトウェアを提供する会社の立上げを経て、10年の法人営業経験から自身が感じた営業の課題を解決すべく株式会社Srushを創業。早稲田大学教育学部卒、一橋大学大学院商学研究科修了(MBA)。

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石神 美実子
広告代理店、広告制作事務所を経て、現在フリーランスのコピーライター・ライターとして活動中。キャッチフレーズやネーミング、プレスリリース等の制作から、WEBメディアの執筆まで幅広く従事。とりわけ、円滑なコミュニケーションを必要とする人物インタビューが得意。
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