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金曜日, 12月 1, 2023

【安藤ハザマ × Cube Earth】日米特許技術で世界の都市OSにイノベーションを起こす

安藤ハザマは、2022年度のアクセラレータープログラム「安藤ハザマ 新規事業共創プログラム2022」で、米国と日本で特許を取得している地理情報システム(注1)のプラットフォーム「Cube Earth」を活用し、自治体へ「スマート防災システム」を提供しているスタートアップ企業 「Cube Earth」を採択。自治体危機管理のDX化の一環として、防災システムやスマートシティ、ドローン、デジタルツインのシステムなど、次世代の社会インフラ基盤を開発するスタートアップだ。具体的にどのような取り組みを進めているのか。安藤ハザマ 経営戦略本部イノベーション部副部長の堀井浩之氏と、Cube Earth代表取締役会長の阿藻成彦氏、代表取締役社長の武田全史氏に話を伺った。

(注1)地理情報システム(GIS:Geographic Information System)
位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工して視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術。

空間IDでデータ連携。世界に通じる都市OS基盤

――Cube Earthの事業について教えてください。

阿藻 我々は、空間データを統合的に管理・加工し、高度な分析を可能にする特許技術を持つ会社です。具体的には、球体である地球の表面を正方形や立方体で区切り、固有の空間IDを発行。その空間IDとあらゆる位置情報、たとえば道路情報や人工分布、洪水や地震、高潮などのハザードマップと連携させ、そのビッグデータを解析するシステムを開発しています。

一般的に、球体を正方形や立方体で区切ると歪みが生じますが、歪みが出ないように区切れる技術で特許を取りました。

実例としては大阪府大東市で2023年3月に、ハザードマップのデータと住基データ、福祉データを連携させた「スマート防災システム-MAMORU-を納品しています。

武田 これにより何ができるかというと、特定の場所で洪水が発生した際、そこに住んでいる人が自力で避難所に行けるかどうかがわかるようになります。自力で逃げられない人が先にわかれば効率的な捜索や救命が可能になり、住民の命と財産を守ることにつながるのです。

阿藻 世の中には防災関連システムがたくさんあり、すでに多くの行政が導入していますが、データ連携できるシステムはありませんでした。でも弊社のシステムはデータ連携ができるため、次世代の防災システムとして世界中で活用できると考えています。

このシステムの強みは、防災だけでなくスマートシティのシステムへと拡張できること。防災を切り口に自治体へ導入し、交通データなどさまざまな情報と連携させていくことで、自治体のDX化やスマートシティ化につなげたい。

ヨーロッパでは先行してスマートシティの実証実験が始まっていますが、データ連携ができないことで壁にぶつかっている現実があります。だから、世界に通じる都市OSの基盤として普及させたいと思っています。

――今回、安藤ハザマのアクセラレータープログラムには、どのような理由で応募したのでしょうか。

阿藻 地域の防災・減災やスマートシティに寄与する技術やアイデアを求められていて、未来の街づくりという観点でとても親和性が高いと思いました。個人的にも、2005年に創業した不動産開発の会社で安藤ハザマさんには10年以上お世話になっていた経緯もあって、ぜひご一緒したいと思いました。

――安藤ハザマがCube Earthを採択した理由を教えてください。

堀井 弊社はSDGsへの貢献を通じたサステナブル経営を推し進めています。経済性と社会性の両面でビジネスを考えたとき、Cube Earthはその両面で事業の将来性が高いと思いました。加えて、資金面だけでなく、我々の営業拠点などのネットワークや営業力なども、Cube Earthの事業拡大に貢献できるのではないかと思い、採択しました。

「スマート防災システム」を全国、そして世界に

――具体的にどのような協業プロジェクトを進めているのでしょうか。

堀井 Cube Earthのシステム構築などに必要な資金を出資し、弊社の営業ネットワークを活用して全国の自治体に「スマート防災システム」を広めています。

近年、自然災害は激甚化しており、日本だけでなく世界中で多くの被害がもたらされています。各地で地震や洪水に備えたハード面での防災が進められていますが、ソフト面として災害発生時の自治体の情報共有や伝達手段は依然アナログが主体です。ソフト面のデジタル化を進めないと、救えたはずの命も救えません。

その点、Cube Earthの「スマート防災システム」は、災害時の被災状況や避難所の運営状況、避難者の安否情報などをタイムリーに伝達できるだけでなく、オフラインでも使用可能のため停電時も有効なシステムです。これを広く普及させることで、防災に役立てるとともにCube Earthの事業拡大に向けたサポートをしたいと考えています。

――安藤ハザマのネットワークを活用しながら広げているのですね。

堀井 各営業所に協力してもらい、各地の課題をヒアリングしながら営業活動をサポートしています。自治体へのシステム導入は今日明日で実現するものではないので、来年、再来年の導入につなげていきたいですね。

現在はその発展形として、ドローン関連ビジネスや遭難者の捜索に活用するための実証実験も始まっています。

阿藻 ドローンをA地点からB地点に安全かつ効率的に飛ばすには、いつ・どういう経路で飛ばすのかという計画と、今どこを飛んでいるのかの管理が必要です。飛行計画が重複せず、ドローン同士の衝突を避けるためには、ドローンの運行管理システムの構築は不可欠。

しかし現在の飛行経路は、緯度経度や海抜などのデータから取得した“点”でしか表記できていません。膨大な点による飛行経路では事故を起こしかねず、またデータ量が多いぶん効率的な運用が難しい。

そこに我々の技術を活用すると、たとえば3メートル四方の立方体で空間を区切ってドローンを誘導できるので、効率良くコントロールできます。だから、ドローンをコントロールする運行管理システム作りに参入しました。

武田 補足すると、まだ整備されていない“ドローンの交通ルール”を整備する際に、立方体の仕組みは非常に有効だとわかってきたんです。物流の2024問題を少しでも緩和させるためにも、ドローンを社会に普及させるべく、弊社の技術を活用したいと考えています。

(左 株式会社Cube Earth 武田全史社長/右 株式会社安藤・間 堀井浩之氏 )

事業拡大スピードが大幅アップ。組織作りも急務に

――協業する上で、大変だったことやぶつかった壁はありましたか?

阿藻 サポートやご支援をいただいて、ありがたい話ばかりです。Cube Earthに安藤ハザマというガソリンを入れてもらって、走り回っている状態ですね。ただ、走り続けるために組織作りは急務。これは我々が乗り越えるべき壁です。

武田 そうですね。事業が広がったことで人材不足問題にぶつかっています。そこに対しても、堀井さんからはいろんなアドバイスをいただいています。どんな人を仲間にするか、大学の教授や学生に協力をしてもらうのはどうか、と。

堀井 私もその点は気になっていて、Cube Earthに成長してもらいたくて全力でサポートしようとしていますが、その結果、相当な負担を強いてしまっているのではないでしょうか?

阿藻 いえ、その原因は我々の包容力の無さだと思っているので、我々が成長して包容力をつけて、安藤ハザマの提案を吸収できるようになれば、もっと相乗効果は出てくるはず。もうしばらく見守ってもらえたら嬉しいです。

――安藤ハザマは、数年前からアクセラレータープログラムに取り組み、さまざまなスタートアップとの協業を進めています。新しい挑戦に対して社内の反応はいかがでしょうか。

堀井 いろいろなスタートアップといろいろな協業をしていますが、社内の浸透には時間がかかります。社内向けにリリースを出すだけではなかなか広がらず、機会を捉えて自ら各支店に直接伝えることで、ようやく浸透し始めてきています。

スタートアップとの協業によるSEEDsを自治体に営業することで、弊社の営業にもスタートアップの成長にも貢献できると思います。

社会インフラにイノベーションを起こす

――今後の展望について教えてください。

阿藻 今までに経験したことのない自然災害が増えているので、まずは「スマート防災システム」の早期の全国導入を目指します。

そこから自治体のDX化、スマートシティ化、ドローンの管制システム構築を実現し、いずれは安藤ハザマの建設現場にも我々の技術を活用したい。仮想空間で工事をシミュレーションし、現実空間で安全に施工できるような、建設会社の新しい働き方にも寄与したいです。

――さまざまな社会課題の解決につながりそうですね。

阿藻 その通りで、応用範囲が広い技術なので幅広い社会課題解決につながります。とはいえ、我々の事業に継続性がなければ意味がないので、あちこち手をつけるのではなく、ぶれないように利益と実績を作りながら確実に事業を広げていきたいです。

武田 私は、我々の技術を世界中の人が活用することで、豊かに幸せに生きられる社会を作っていくのが理想。情報をうまく活用できる未来に貢献したいです。

堀井 安藤ハザマは、DXを通じて「新しい働き方」や「能力の拡張」を実現し、「新しい価値」を生み出すための「DXビジョン2030」を掲げています。建設の現場だけでなく、遠隔操作で効率的な工事を実現させるには、建設現場のデジタルツイン化やスマートシティは大きなテーマです。

Cube Earthはその基盤になれるシステムだと思うので、まずは「スマート防災システム」を全国の自治体に導入してもらい、徐々に機能を増やしながら自治体のDX化、スマートシティ化ができたらいいなと思っています。Cube Earthは社会インフラにイノベーションを起こせる技術なので、一緒に頑張っていきたいです。

インタビュイー
武田 全史 氏 株式会社Cube Earth 代表取締役 社長
データ解析、アルゴリズム作成、アーキテクチャ 、 地理情報 系 システムの開発、科学演算を利用した新しい新規案件の立ち上げを得意とする。
京都大学大学院を卒業後、株式会社アルカディア入社、中小企業システムインテグレータ会社、電子CADメーカー株式会社CSi Global Allianceに勤務後、
2015年に同社を起業。2022年2月に同社代表取締役社長に就任。データ駆動社会実現を目指す。
インタビュイー
阿藻 成彦 氏 株式会社Cube Earth 代表取締役 会長
立命館大学を卒業後、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。総合不動産デベロッパーにおいて、分譲マンションを中心に不動産開発の分野に従事。リクルートの独立支援制度により2004年に株式会社シティクルーズを設立し、大手不動産会社と様々な不動産開発事業に関わり、その分野は住宅、商業、ホテル等、多岐にわたる。また不動産投資顧問等ファンド、リートへの金融商品としての不動産開発分野にも関わる。
2021年11月に株式会社Cube Earth取締役就任。主に営業分野担当としてCube Earthに関わる。同社特許技術を不動産開発の延長としてスマートシティへの活用を目指す。2022年2月に同社代表取締役会長就任。
インタビュイー
堀井 浩之 氏 株式会社安藤・間 経営戦略本部イノベーション部副部長
1991年株式会社間組入社。財務、海外畑が長く、財務部にて会社分割、合併等の大型イベント、海外部門ではメキシコ駐在を経験し、現在、新規事業開拓、スタートアップ支援を行う。

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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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