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日曜日, 2月 28, 2021

アナログなリーガル業界に変革を起こす!リーガルテックのLIRIS社とのオープンイノベーション

1948年の設立以来、法規関係書籍を中心とした総合法令情報企業として、日本の法治国家形成を支えてきた新日本法規出版株式会社。長年、あらゆる領域のビジネスに寄り添ってきた同社は、2018年に、国内最大級のオープンイノベーション支援サービスを運営するCreww(クルー)のサービスを使い、アクセラレータープログラムを開催。そして、リーガルテックのスタートアップLIRISと開発したサービスを、2020年10月にローンチした。そもそもなぜ同社はアクセラレータープログラムを導入したのか、そしてどんな取り組みをしてどんな未来を描いているのか。新規事業開発課の河合嘉之氏に話を聞いた。

社内だけでは新規事業アイデアの「質」に限界があった

―2018年に、アクセラレータープログラムを導入した背景について教えてください。

新日本法規出版は、これまで600種類を超える法規書籍や専門家向け実務書、一般向け書籍など、法律に関する情報提供を通して、あらゆるビジネスを支えてきました。

しかし、紙の出版市場は年々低迷を続けているため、このまま出版事業だけを展開していたのでは、いずれ立ち行かなくなります。この状況を打破するために、新規事業開発課では新しい事業を模索していました。

当時、部署に在籍していたのは3名。この少人数で話し合っていてもアイデアの質と量が足りない状態が続いたので、社内ベンチャー制度を立ち上げて、社内から広くアイデアを募ることにしました。

すると、アイデアの「量」はクリアできたのですが、やはり同じ社風で働いている社員からは同質化したありきたりな提案が多く、アイデアの「質」に対する課題は解決できなかったんですね。

質に対する課題を解決するには、我々とは文化や思考の異なる発想が必要。そこで、2018年にアクセラレータープログラムを導入し、スタートアップとの協業による新規事業創出を目指しました。

アナログなリーガル業界に変革を起こしたい

2018年のアクセラレータープログラム募集イメージ

―スタートアップを募るに当たって、どのような強みを打ち出したのでしょうか。

これまでに培ってきたノウハウや知見、ネットワークから、我々の強みは大きく3つあります。1つは、「情報収集力とコンテンツ制作ノウハウ」です。総合法令情報企業として70年以上、法律関連のコンテンツを作ってきた実績があります。

2つ目は、「営業力と販売チャネル」です。士業や官公庁などリーガル業界に多くの販売チャネルを持ち、さらに全国各地に営業拠点があるため、ダイレクトにエンドユーザーとの接点を持てます。3つ目は「リーガル業界における認知度と信頼、ブランド力」。法律に関わる20万件以上の顧客との接点があります。

こうした強みを生かして、スタートアップと「リーガル業界のブレイクスルー」を作りたいと考えました。

リーガル業界は最適化やデジタル化が進んでいないため、法律に関する業務に携わっている人だけでなく、その先のエンドユーザーまで不便を強いられています。そこに、スタートアップのアイデアやテクノロジーを掛け合わせたら、業界全体に大きなインパクトがあるはずだ、と。

とはいえ、「法律」という狭い領域ですし、弊社は業界以外での知名度は低いため、果たしてスタートアップから応募があるのかは正直不安でした。それでも、想像をはるかに超える応募と、我々とは違う観点からの発想が集まったのは本当に嬉しかったです。

今回は4社を採択させていただいて実証実験を進めたのですが、自分たちでは気づけなかったこと、今までなら無理だと判断していたことにも挑戦できたのは、新日本法規出版としても大きな財産になったと思います。

M&A作業の効率化を目指し、第一弾となるサービスをローンチ

新日本法規出版は、LIRISと業務提携し、LIRISが提供する企業内での契約管理の課題を解決するサービス「LIRIS(ライリス)契約ライフサイクルマネジメント」の販売を行っています。

―今回、リーガルテック企業のLIRISとの協業で「契約ライフサイクルマネジメント」の販売を開始されました。具体的にどのような提案から、今回のローンチに至ったのかを教えてください。

LIRISの社長はもともと弁護士事務所出身で、「弁護士が労働集約的な作業に追われる状況を変え、もっとハイバリューな仕事に集中してもらいたい」という、実体験に基づく課題解決を目指して起業されていました。

そんなLIRISから最初に提案されたのは、M&A業務の効率化を図るサービスの開発です。M&A時、弁護士は紙の契約書を見て、内容や締結される日などをエクセルに打ち込むという、アナログで時間がかかる作業をしています。これは労働集約的でとても非効率な業務。

我々も、M&Aで煩雑な作業を経験していたため、この課題には共感しましたし、LIRISの「業界を変革したい」という熱い気持ちに惹かれ、一緒に業界を変えたいと思いました。

ただ、M&A業務を効率化させるためには、AI が契約書から必要な情報を抽出する精度を高める必要があります。そこで、弊社が実際に取り交わした膨大な量の契約書を読み込ませて機械学習をさせ、まずは「契約書ライフサイクルマネジメント」サービスを共同開発しました。

―契約書ライフサイクルマネジメントサービスについて、具体的に教えてください。

これは、企業内で手間がかかっていた契約管理業務を効率化するサービスです。契約書は、作成から締結まで長いプロセスがある上に、紙であることがほとんど。

社内の手続きにしても、「今はどの部署が作業しているのか」といったステータスが不明瞭ですし、営業から法務に契約内容の問い合わせがあれば、法務はファイリングされた膨大な契約書の中から探す必要があります。

こうした課題を解決するために、契約書をデジタル上で一元管理できるサービスを開発しました。加えて、サービス利用者は、弊社が持つ350種類以上の契約書・法的文書テンプレートも使用可能にしました。

2020年10月にローンチしたばかりですが、サービスの質が高まれば、第2弾としてM&A業務の効率化サービスをローンチさせたいと考えています。

新しい挑戦を社員が歓迎。部署も東京のWeWorkに移転

新日本法規出版 イノベーションベース

―今回のオープンイノベーションにより、社内に生まれた変化があれば教えてください。

まず、一字一句間違えてはいけない法律に関する出版事業を展開し、カタカナや横文字が苦手で、硬くて真面目な社風の当社が、アクセラレータープログラムに挑戦したこと自体、大きな変化だと思っています。しかも、出版業界の未来に不安を感じていた社員は、新規事業創出へのチャレンジを喜んでくれました。

実際、ブラッシュアップメンバーを社内公募で募ったのですが、5人~10人枠のところに40人以上からの応募があったんですね。もちろん、公募に際して文書を出すだけでなく、全国の拠点をオンラインでつないで「歴史の1ページを作ろう」と、直接熱量を伝えた効果も多少あると思います。

それでも、本業との兼務な上に、関わったからといって昇進や給与に変動はないのに、多くの人が手を挙げてくれたのは本当に嬉しかったですね。今回の成功体験は、必ず次につながると思いますし、第二弾のM&A業務効率化サービスをローンチできれば、もっと社内は変わるのではないかと考えています。

それからもう一つ、新規事業開発課は人数を増やして、名古屋本社から東京に移転したんです。しかも、市ヶ谷にある既存オフィスではなく、WeWorkに入居しました。これは本当に大きな変化で、今後はWeWork内での協業にも注力したいと考えています。

―他社との協業によって、これからどんな社会を作りたいですか?

法律はすべての人の行動や生活と密接に関係していますが、多くの人にとって身近な存在ではありません。例えば、何かあったときに「信頼できる弁護士は誰で、費用がどれくらいかかるか」がわからないですよね。こうした、リーガル業界のブラックボックスを見える化して障壁を取っ払い、法律と人との距離を近づけたいと考えています。

そのために必要なのが、リーガル業界のデジタル化です。リーガル業界はアナログな文化が根強く、属人化や業務の煩雑さが大きな課題になっています。その慣習や業務に変革を起こし、効率化や最適化を実現させるためにも、我々はこれからも新しいことへの挑戦をし続けたいと思っています。

インタビュイー
河合 嘉之 氏 新日本法規出版株式会社  
総合経営企画室 新規事業開発課 課長 

新日本法規出版に入社後、6年間におよぶ営業経験後、経営企画室に異動。経営企画室では、SFAの導入や、電子書籍のローンチ、M&Aの実施、財団法人の立ち上げに携わる。2011年から新規事業開発に注力し、社内ベンチャー制度の立ち上げ、アクセラレータープログラムの企画・運営に従事。グロービス経営大学院(MBA)修了。

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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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