目次
スタートアップとの協業で新規事業の実証実験に挑む四国電力流のオープンイノベーションを紹介したい。
「四国電力アクセラレーター2018」とは
四国電力は新規事業創出のため、Creww株式会社のサービス「crewwコラボ」を活用し、2018年にアクセラレータープログラムを開催した。2018年のアクセラレータープログラムで目指すのは、お客さまや地域の皆さまの「しあわせのチカラになりたい」を合言葉に、エネルギーを中心に暮らしに関わるさまざまなサービスをワンストップで提供できる企業グループへの変革・成長だ。

「よんでんグループがこれまで培ってきたさまざまな経営リソースとスタートアップの皆さんが持つ斬新なアイデア・知見・ノウハウを融合させることにより、日々の暮らしや四国を始めとする地域・社会に対して、新たな価値やサービスを提供していく」という内容である。
スタートアップと狙いたい新規事業領域とは
アクセラレータープログラムの開催にあたり、四国電力が掲げた「スタートアップと狙いたい新規事業領域」は3つ。
その1:日々の暮らしに安心や快適さをお届けするサービス
よんでんグループは電気だけじゃない!IoTやAIなどの新技術やユニークなアイデアで暮らしの中のさまざまなお困りごとやニーズを解決し、日々の暮らしに安心や快適さをお届けするサービスを提供したい。
その2:地域・社会の課題解決や四国の観光資源活用に繋がるサービス
よんでんグループが事業基盤とする四国地域では、“高齢化”や“インフラ設備の老朽化”などの社会的課題が全国に先駆けて顕在化しています。一方で、豊かな自然や世界に誇る文化遺産・施設など、他の地域にはない魅力あふれる特長を有しています。こうした課題の解決や魅力の活用が図れるサービスを提供することにより、四国地域の活性化に貢献するとともに、四国発のサービスを全国にまで展開していきたい。
(具体的テーマの例)
・四国の主要産業のひとつである農業の活性化
・過疎化地域を支える新たな仕組み作り
・四国遍路などの文化遺産や豊かな自然を活かした新たなサービス など

その3:エネルギー利用の“新たなカタチ”に関する提案
よんでんグループは、電気を始めとするエネルギーの供給・販売を中心に事業を展開してきましたが、エネルギー利用の分野においては、東日本大震災以降の省エネ意識の高まりやITを始めとする各種技術の革新などにより、今後、これまでと違った取り組みが多数生まれてくることが予想されています。
地域の電力会社として、エネルギー利用の“新たなカタチ”を追求し、お客さまがアッ!と驚く新たな価値を提供していきたいという想いの中、アクセラレータープログラムが開催された。
四国電力がスタートアップに提供した自社リソースとは
企業はスタートアップにリソースを提供することにより、リスク、コストを軽減、短期間で新規事業創出の足がかりを得ることができる。今回、四国電力がスタートアップに提供した社内リソースは以下の通りである。
お客さまとのつながり(顧客基盤と接点)
四国エリアを中心に280万口を超える電気の契約を有しています。また、会員制Webサービス(よんでんコンシェルジュ)・SNSサービスなどのコンテンツや、お客さまセンター・PR施設などの事業用施設、お客さまと直接接する営業・配電マンなどの人的リソース
電気事業用のインフラ設備
四国の隅々までに渡って、電気事業用のさまざまなインフラ設備を保有しています。電柱や鉄塔、光ケーブル、発電所・変電所、電力量計(スマートメーター含む)、電柱上に設置したビーコン(発信機)など
蓄積した様々なデータ
ご家庭から得られる電力使用量データや電力需給実績など(発電・給電データ、四国域内の太陽光・風力発電計画・実績データなど)
よんでんグループ会社との連携
エネルギー、情報通信、建設・エンジニアリング、製造、商事、不動産、運輸、サービスなど、幅広い分野で多彩なグループ会社との連携
地場企業・自治体とのリレーション
これまでの事業活動を通じて、地元である四国エリアにおいては、地場企業や自治体などとさまざまなネットワークや協力関係
実証実験に進んだ新規事業とは
こうして2018年5月にスタートした「四国電力アクセラレーター2018」は、選考・採択・実証実験準備を経て、ついに2019年5月6月と連続し、2つの新規事業が実証実験開始としてリリースされた。
1つはイラストやマンガ制作サービスの提供を手掛ける株式会社フーモアとの「マンガの活用による地域活性化サービス創出に向けた実証実験の実施について」だ。
マンガを通じて四国の魅力を発信し、ファンを四国へと誘うアニメツーリズムプロジェクトの展開を試みるものである。

2つ目は高松市および映像の解析・活用によるビジネスソリューション事業を手掛ける ジーマックスメディアソリューション株式会社との共同事業「電柱を活用したカメラシステムの実証事業」。
高松市が推進する「スマートシティたかまつ」の実現に向けた取組の一環として、四国電力が保有する高松市内5箇所の電柱にカメラを設置し、インターネット経由で映像データの記録・解析等を行い、システムの有用性や運用上の課題等を検証することで、防災・防犯・交通量分析・まちづくりなどの地域が抱える課題の解決に繋げていくことを目指すものである。

いずれも、四国電力が2018年に実施したオープンイノベーションプログラム「四国電力アクセラレーター2018」において、最終審査を通過したスタートアップ企業4社中の2社であり、今後の事業化に向けた可能性検討のための実証実験として行うものである。
実証実験まで辿り付けた要因とは
2案件が実証実験開始まで辿り付けた要因は、主に以下の点が大きかったと言う。
・プレゼン時に策定したビジネスモデル自体に新鮮味があった
・プレゼン時の仮説(ニーズ想定等)が、その後の検討において具体化できた
・実証実験の目的とスキーム・役割分担が具体化できた
・社外・社内含めた様々な場面で関係者の協力が得られた
アクセラレータープログラム実施後の社内の声
アクセラレータープログラムを実施する目的は、新規事業創出だけではない。新規事業を生み出せる風土を社内に作り出すこともその目的の1つである。
今回のアクセラレータープログラムを通じて、四国電力では以下のような声が社内から寄せられた。
プロジェクト担当者の声
・書類選考やブラッシュアップ、プレゼンなどの一連の工程を限られた期限の中で行うことにより、事業モデル創出に向けた手順・ノウハウを短期間で体験・習得することができた。
・文化の違うスタートアップの方々と直接お会いし、お話をすることにより、実際の技術や業界の動向、考え方などに触れることができ、そのことが、今後の新規事業検討にあたっての視野を拡げることに繋がった。
・上記に加え、人脈という観点からも、様々な分野・業種の方と知り合うことができた。
・本プロジェクトが起点となって、社内・社外に新たな働きかけを行うことができた。(従来の枠組みの延長線上では、実証実験まで至らなかった可能性が高いと感じてます。)
また、プロジェクト担当者以外からも「これまでの四国電力にはない、ユニークな取り組みであり、新しいことに挑戦しているという姿勢・雰囲気が感じられる」といった声があるなど、「挑戦する風土」を創り出す機会にもなっているようだ。
