12.8 C
Japan
月曜日, 9月 21, 2020

【PICKUP STARTUP】海外の企業や人とのコラボが加速。5年後10年後の生活をガラリと変えるVR/MR

VR といえば、大きくて重いゴーグルを装着して仮想現実に没入するイメージがあるかもしれない。しかし、リアルとバーチャルが溶け合う複合現実(MR)の技術は一気に進化し、MRグラスはサングラスサイズまで小さくなった。この領域で、ファッションやアート、カルチャー、音楽などライフスタイルに特化したVR /MR空間制作ツールと配信プラットフォームを提供しているのが、2016年に創業されたPsychic VR Lab(サイキックVRラボ)だ。大企業やアーティスト等とコラボしながら新しい文化・世界を作ろうとしている。VR/MRの進化によって、私たちの生活はどうかわっていくのか。取締役の渡邊信彦氏に話を伺った。

What’s VR/AR/MR?

VR(Virtual Reality)は、コンピューター上で仮想の世界を作り出す技術のこと。ディスプレイに映し出された「仮想世界」にいるような没入体験ができる。VR元年と言われた2016年に多様なVRゴーグルが誕生し、ゲームや教育、スポーツなどさまざまな分野で活用されている。

AR(Augmented Reality)とは、現実の世界に仮想の世界を重ねて「拡張」する技術のこと。CGでつくられた3D映像やキャラクターなどを現実の風景と重ねることで、現実の世界にCGキャラクターが現れるような体験ができる。わかりやすい例が、Niantic社の「ポケモンGO」だ。

MR (Mixed Realit6)とは、VRの仮想世界とARの現実世界が融合した複合現実の技術のこと。現実世界の情報を仮想世界に反映できるため、バーチャルな世界がよりリアルに感じられる。MRは、同じMR空間にいる複数の人が同時に同じ体験をすることが可能のため、エンターテインメントからビジネスまであらゆる分野での成長が期待されている。

VR/MRの制作・配信・鑑賞のハードルを圧倒的に下げた「STYLY(スタイリー)」

―渡邊さんはVR /MRにどのような可能性を感じているのでしょうか。

僕は2006年頃、仮想空間ゲーム「セカンドライフ」を日本に普及するチームにいたこともあって、VRで人間のライフスタイルは大きく変わると以前から思っていました。実際に、2006年当時とPsychic VR Labを創業した2016年では市場が大きく変わっていて、予想以上にハードウェアが進化しているし業界に対する投資額も大きくなるなど、世界中が期待している状況です。実際、VRを体験するハードウェアも、4年前は60万円と高額でしたが、今は3万円あれば体験できると安価に。

このマーケットで、僕らはファッションやアート、音楽などに特化したVR/MRの事業を展開しています。創業後、すぐに海外を中心に年間100件くらいの取材依頼や、海外の学生から「インターンをさせて欲しい」と連絡がたくさん来るようになりました。現在は世界中の人や企業とコラボしながら、一緒に新しい文化を作っているところです。

―具体的に、どのような事業を展開しているのでしょうか。

僕たちが提供しているのは、アーティストがVR /MR空間を制作し、簡単に配信できるクリエイティブプラットフォーム「STYLY(スタイリー)」です。「STYLY」を使えば、無料でVR /MR空間を作ることができ、公開された空間は誰でも自由に鑑賞可能。アーティスティックなものから立体漫画、ファッションショーなどいろんな空間が生まれています。

「STYLY」で公開中の作品

また、VR /MR空間を作れるアーティストを養成するためのスクールを京都と東京で運営しており、年に1回、グローバルなVRコンテンツアワード「NEWVIEW」も開催しています。世界中から多くの作品が集まるのは、ゴールドプライズは2万ドルの賞金というのも大きいのですが、アーティストの出口を作っている点があります。パルコ賞は受賞した作家は、渋谷パルコでバーチャルショーケースとして展示することができ、備え付けのVRグラスか、スマホに「STYLY」のアプリをインストールすると鑑賞できます。つまりパルコ に常設展示できるわけです。12月1ヶ月で2万5千人観賞した世界に類をみないxRミュージアムとなっています。他には松武秀樹さんが曲をつけてくれる賞やMedia Ambition Tokyo に出展できる権利など多くのプライズを用意しています。

*渋谷パルコに常設展示のXR Showcase

2019年の最優秀作品は、子どもが生まれてから今までに描いた絵や創作物、思い出の数々を散りばめて作られた「たっくんミュージアム」でした。一歩先ゆく三次元のフォトアルバムの形と言える作品です。

「たっくんミュージアム」

「STYLY」の特徴は、これまでVR /MR空間の制作や配信には高いコストが必要だったのですが、そのハードルをぐんと下げたこと。アーティストは無料で制作できますし、小学生向けのワークショップを開催すると、小学生でも楽しんでVR 空間を作っています。

また、VR 機器がなくても、スマホアプリやWebからも見られるようにしたことで、鑑賞ハードルも下げました。結果、現在は「STYLY」に公開されている空間は1万を超え、登録アーティストは2万人を超えました。

MR空間の浸透で、5年後10年後には想像もできない世界に

―今後、現実と仮想世界はより重なり、社会に浸透していくのでしょうか。

そう思います。リアルとバーチャルが絡み合って境目がわからなくなり、人の行動や体験は大きく変わると思います。

たとえば小学校の社会科の授業で、遺跡を写真で説明されるよりも、立体的なVR /MR空間でダイナミックな遺跡を360度で見た方が、体験価値はずっと高い。移動を伴う会議や出張も置き換わると思います。そうなるとビジネスシーンもライフスタイルも変わってくるはずです。

ウォークマンが音楽を持ち歩けるものに変え、iPhoneでインターネットと常につながるようになって生活が変わったように、全ての人がVR/MRで「身にまとう空間」を簡単に作って配信できる世界を作りたいです。

―VR/MRの浸透によっては、私たちの生活はどう変わるとお考えですか?

たとえば、MRグラスにカメラとイヤホン、自動翻訳機能がつけば、海外のイベントを日本にいながら体験できるようになります。現地の人にジャックインできるチケットや、バーチャルガイドという新しい職業が生まれるかもしれません。

すでに、MRグラスをかけないと見られない「デジタルアートの展示会」や、街の中で開催されているイベントは多数あります。実際、KDDIと一緒に、渋谷の街をつかったアート展示や、1964年の渋谷駅前にタイムスリップして過去の渋谷の街並みを体験できる、5Gを活用した拡張体験イベントを開催しました。

STYLYMUTEKのARアートが最高にクールてもみんが目印 - STYLY MUTEK 渋谷 AR デジタルアート

音楽を聴くときも、「プレイリスト」と言えば空間にCDアルバムがザッと並び、そこから好きなものを選んで流せたり、ネットショップも空間にディスプレイされた立体的な洋服を前後左右から見て買えたりするようになる。ライブもアーティストを360度好きな角度から鑑賞するのも可能です。それが当たり前になれば生活は変わりますよね。

もちろん、技術の進化によって広告表現も変わるでしょうし、5年後10年後には想像もできない世界になっていると思います。

人, 天井, 屋内, 男 が含まれている画像
自動的に生成された説明

海外企業とのコラボを推進し、数年後に日本で広めたい

―Psychic VR Labはさまざまな企業と協業されていると伺いました。どのような企業との協業が多いですか?

国内外の通信キャリアやハードウェアの企業、アパレルブランド、ミュージシャン、アーティストなどとのコラボが多いですね。また、NTTデータNJKとはBtoB領域での協業を始めました。

日本の学校がVR/MRコンテンツを受け入れるのはまだ先になるとは思いますが、台湾や中国ではすでに実装されていて、授業中にみんなでジュラ紀に行って恐竜を見たり、世界の遺跡を体験したりしています。

教育の領域は、図鑑やDVDを作っている企業とコラボすれば実現できるので、そういった可能性も模索したいです。ただ、国内よりも海外からのオファーがすごく多いので、まずは海外での事例をたくさん作って日本に浸透させたいと考えています。

―海外とのコラボが多いとのことですが、日本のオープンイノベーションの課題はどこにあると思いますか?

大手企業の課題は、セキュリティの壁が高いこと。社外に「公開できない」ことが多ければ多いほど、スタートアップは何もできません。セキュリティを守ることは大切ですが、自社の常識やルールの枠をどうしたら超えられるかを考えるべきだと思います。

ルールを変えるために会社や業界をどう動かせばいいのかを考え、大手企業とスタートアップが対等な立場でお互いの強みを出し合い、新しいものをつくる。そして実りがあれば分け合う。そういう考えにシフトしないと進まないのではないでしょうか。

ただ、数年前に比べると、大手企業も少しずつ変わり始めている実感はありますし、スタートアップとの協業で新しいものを生み出す会社に変えたいと考える若手は増えていると思います。 だから、大手企業から「一緒にこういう未来を作ろう、そのためにこの資産を活用しよう」と対等な立場で発信して成功事例を増やしていけば、日本もイノベーションを起こせる国になると思っています。

インタビュイー
渡邊 信彦 氏 株式会社Psychic VR Lab 取締役COO
大手Sierにて金融機関のデジタル戦略を担当、2006年執行役員、
2011年オープンイノベーション研究所 所長 を歴任、セカンドライフブームの仕掛け人の一人としてメタバースのビジネス開発に関わる。その後、起業イグジットを経て、Psychic VR Labの 設立に参画。2017年2月取締役COO就任、現職。他に事業構想大学院大学 教授、地方創生音楽フェス「one +nation」のFoundeなどを務める。
社名株式会社Psychic VR Lab
設立2016年5月19日
所在地東京都新宿区新宿1丁目34−2 MORIAURA 2F
代表者山口 征浩
事業概要ファッション/アート/カルチャー/音楽などライフスタイルに特化したVR(Virtual Reality)空間制作ツールの提供及び配信プラットフォーム事業
URLhttps://psychic-vr-lab.com/
執筆
田村 朋美 
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。

Featured

資金調達額9億円のユニロボットのファウンダーが語る「日々立ちはだかる失敗の壁との向き合うコツ」

新型コロナのような不測の事態でも、極力スタートアップの成長速度は落とさない為に、数々の荒波を経験し乗り越えてきた先輩スタートアップから失敗事例や成功事例、リリカバリーしてきた経験やノウハウをシリーズでお届け。第一回目は次世代型ソーシャルロボットの開発で知られるユニロボット株式会社代表 酒井拓さん...

「イノベーション立県」広島のオープンイノベーションによる地域課題解決

数年前より、国をあげての「オープンイノベーション」に関する取組が活発化してきており、各自治体においても、イノベーションを加速させるべく様々な施策が練られている。今回は広島県の象徴的なオープンイノベーション事例について広島県を代表して商工労働局イノベーション推進チーム担当課長の金田典子氏と「広島アクセラレータープログラム」の仕掛け人で広島銀行法人営業部 金融サービス室シニアマネージャーの栗栖 徹 氏にお話を伺った。

新しい仕事と「STARTUP STUDIO」に同時にコミット。何歳になっても挑戦し続けたい

社会課題を解決するためのアイデアと、その事業を作り出したい個人をつなぎ、6ヶ月でプロダクトを作って事業会社に売却することを目指す「STARTUP STUDIO」。第一回目のプロジェクト「スマホでありがとうを届けるチップサービス『petip』」の立ち上げに参加したのが、Reproで働く金卓史氏だ...

社長秘書をしながら、3つの新規プロジェクトを牽引。松竹を変える起爆剤へ

演劇や映像をはじめ、総合エンターテインメントを提供する松竹。銀座にある歌舞伎座が象徴的だが、伝統を継承しつつ、実は長年新しいコンテンツや新しい体験を追求してきた、「進化し続ける企業」の一つだ。そんな松竹がグループ各社を巻き込み、2019年に初めてアクセラレータープログラムに挑戦。そのプロジェクトメンバーの公募に自ら手を挙げ、本業がありつつも3つのプロジェクトを推進したのが、秘書室・政策秘書の平岩英佑氏だ。平岩氏はどんなことを考え、どのようにプロジェクトを進めていったのか。話を伺った。