10年構想を形に。“オタク談義”から始まった「AnchorZ × ムラテック」の協業とは?

Startup
技術力に強みを持ち、日時情報をカレンダーに自動登録する「CalPush」を展開するAnchorZ。そんな同社が新たなビジネスパートナーとしてタッグを組んだのがムラテックだ。
「ウマが合う」。そんな属人的な背景から協業が決定し、構想段階のビジネスプランを共同でブラッシュアップ。双方の技術力を掛け合わせたセキュリティシステム「ファイル分散によるセキュアなNAS」の開発が始まった。“認証の手間がなくなる”世の中を目指す同社代表取締役 徳山真旭氏に、協業に至るまでや、独自の特許技術への10年構想、その先に見据える既存事業と新規事業のシナジーを伺った。
※この記事は、2018年1月5日 、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

“オタク談義”から協業が決定。「まずは会ってみる」がスタートだった

― まずは、AnchorZの事業内容について教えていただけますでしょうか。
現在は、日時情報をカレンダーに自動登録する「CalPush」を提供しております。ネットワーク上を往来する膨大なテキストの中から日時や場所の情報だけを抽出するアルゴリズム「PMEngine」で世界特許を取得しており、その仕組みを利用しながらカレンダー通知を行うサービスです。

まずは、企業さまのホームページ内にJavaScriptのコードとタグを挿入。その状態で、日時情報を記載したイベントがタップされた場合、顧客のデバイスに付属するカレンダーに自動登録される仕組みになっています。

― どのような企業にご活用されているのでしょうか?
一つ具体的な例を挙げると、テレビ局さまです。番組HPにアクセスしたユーザーが放送日をタップすると、カレンダーに自動登録され、登録されたデータも活用できます。このように、イベントや新製品の発売日などを自動登録することでリマインダー効果により売上や集客の伸びがあるため、販促活動の一つとしてご利用いただくケースが多いです。

― 「crewwコラボ」に応募した背景を教えていただけますか?
弊社のサービスを通じて何か新しい取り組みができればと考え、応募させていただきました。そこでムラテックさまからお声がけをいただき、共同研究を行うことになったんです。現在はサービスのリリースに向けて鋭意開発しています。

― 「CalPush」の技術を応用した共同開発でしょうか?
いえ、それが全く違うんです。既存サービスの「CalPush」を通じた技術開発をすることがもともとの目的ではありましたが、まだリリースしていないサービスの技術を用いて新製品を開発することになりました。

ムラテックの担当者さまが、「まずは一度会ってお話をしましょう」とのことでしたので、何か目的があるわけでもなく弊社の概要についてお話をしていました。非常に技術に造詣の深い方でしたので、どうやって「CalPush」を開発したのか一生懸命にお伝えしたんです。

私も技術が好きなので、話が盛り上がり“オタク談義”になりました。そこで、まだ構想段階だったサービスの話もしたんですね。「一応、今進めているプロダクトのお話もしておこうかな」くらいの気持ちで概要をお伝えしたところ「こちらの方がよりシナジーあるんじゃないか!」とさらに盛り上がりました。私としましては、予期せぬ形で協業が決定したんです。

― 構想段階で協業が決定するのは、なかなか難しいことですよね。決め手はなんだったのでしょうか?
純粋に「ウマが合ったから」だと思います。ビジネスを考える以前に、お互いが好きな話で意気投合した結果協業が決定したので。「まずは共同開発をしよう」と、最初に約束だけしていただきました。

昨年の11月に初めてお会いし、4ヶ月後には共同開発契約を締結。そこから社内の方を何名かご紹介していただき、企画をブラッシュアップしていきました。9月には注文をいただき、現在に至ります。

実績のないツールは、実際にどのような効果を発揮するのか全く先が見えません。仮に技術に強みを持っていたとしても、ビジネスと成立しなければ意味がありませんよね。ただ、技術の相性は良いですし、何よりお互いが「何か面白いサービスを作ろう」と共通の目的を掲げていたことが決定打になりました。先方の上役にあたる方々も新しい事業に取り組むことへの柔軟さと決断力をお持ちで、大企業にありがちな「盛り上がるだけ」にはならなかったことはムラテックさまの懐の深さを感じました。

“誰にでも使える認証”の世界を目指し、「DZ-Security」を開発

― 現在開発中のサービスについてお伺いできますでしょうか。
「独自の生体認証」と「ファイルを分散する」の仕組みを組み合わせたセキュリティサービス「DZ-Security」です。どちらの仕組みも世界特許を取得しているのですが、順を追って説明させてください。

まずは「独自生体認証」の仕組み。独自と言っている箇所の説明は割愛させていただくことをご容赦ください。生体認証の詐称をさせないための独自技術として例え話をします。詐称をしたい側から見たときに、鍵穴のないドアの合鍵は作れませんよね?そんな独自の発想と技術です。

「DZ-Security」の特徴は、指紋や虹彩、顔認証や声紋認証などの情報で本人を識別する生体認証として自在に活用します。いつ何の認証情報をチェックしているのか分かってしまうことは、詐称のタイミングを教えているのと同じことになります。前述した鍵穴の場所の例え話と合わせてご想像をいただければと思います。

― もう少し具体的に教えていただけますでしょうか?
少し限定的かつ曖昧でわかりやすい言い方にさせていただきますね。たとえばスマートフォンには様々なセンサーがあります。このセンサーから利用者の使い方の癖を数値化して「その人だけの使い方」を認識に活用するんです。これを “振る舞い認証”としてDZ独自の活用をします。振る舞いにより、すでに本人かどうかが識別されている状態をできるだけ多く維持します。ただし、人間の生活や行動においてその状況は100%維持できるものではありません。そのために次に必要になるのが生体認証なのですが、これを前述した独自の生体認証で利用者に負担をかけないでバックグランドで行います。結果として利用者には全く認証のための負荷をかけることなく、非常に高度な認証を常に行うことができます。様々なセキュリティソリューションの利用の際に複雑な設定や面倒なパスワード管理も必要がなくなり、あらゆる層のユーザーが様々な素晴らしいサービスを利用する機会を劇的に増やします。

― 非常に画期的なアイディアの認証技術ですね。それに加えて「ファイルを分散する」仕組みがあるんですよね?
はい。ファイル分散の仕組みですが、前段で説明した認証の技術と対で利用することで最も簡単で堅牢なファイル管理を実現できます。現在クラウド上でデータ管理を行うのが一般的になりつつあります。DZ-Securityのもう一つの仕組みとして、クラウド上にあるデータを情報漏洩の危険から守るため、複数のクラウドにファイルを分散保存する仕組みをつくりました。

ユーザーが任意に契約(利用)しているクラウドドライブがA社とB社あるとします。これを論理的に一つのクラウドドライブ(DZ独自の「仮想クラウドドライブ」)のように取り扱うことによって、DZ-Securityでアップロードされたファイルは物理的には自動でバラバラにファイル分散され保存されます。仮にA社のクラウドのアカウント情報がハックされたり、盗まれたりしていたとしてもこれを誰も結合して復元することはできません。復元できるのは預けた本人だけであり、かつ「仮想クラウドドライブ」からファイルを選ぶだけの簡単操作で復元が可能になるんです。

通常のクラウド管理と操作は全く同じですが、生体認証を含めた「振る舞い認証」とクラウドへの分散保存により最小の手間で最高に安全な状況でコストもかけないでデータ保存できます。

この「独自の生体認証」と「ファイル分散」を組み合わせることで、利便性が高いのにもかかわらず、強固なセキュリティシステムになっています。

10年構想を実現させ、“セキュリティ不安”のない世界をつくる

― ムラテックさまとはどのようなサービスをリリースされたのでしょうか?
ムラテックさまは、非常にセキュリティレベルの高いNAS(ネットワーク上に接続することができるハードディスク)を開発されているので、そこに「DZのファイル分散技術」を応用していただくことになりました。スマートフォン向けに開発をしていた分散技術をNAS用に最適化した形ですね。

― 最後に、今後の展望を教えてください。
「PMEngine」も「DZ-Security」も10年前に構想したサービスでした。ようやく双方が形になったところで、今度は二つの技術を掛け合わせていきたいと考えています。たとえば、「DZ-Security」の認証は、その人がよく行く場所なども振る舞いとしてデータ蓄積します。「PMEngine」はカレンダーと連携してユーザーの行動予定をデータとして蓄積するサービスです。これが組み合わさればより精度の高い認証の仕組みとなります。

高度で素晴らしいセキュリティはたくさんあります。しかしながらどうしても簡単で便利に使えるのかというとそうではなく、どうしてもトレードオフの関係になります。私たちは誰でも簡単に利用ができて利用者本人以外には誰にも情報漏洩しない。そんなセキュリティの世界を実現するために努力を続けてまいりたいと思います。

Anchorz:http://anchorz.co.jp/

ライター:オバラミツフミ

執筆
INNOVATIVE PORT編集部 
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