オープンイノベーションで活用されるイノベーション人材とは

イノベーション人材の定義とイノベーション人材が注目されるようになった背景を解説します。
イノベーション人材の定義
イノベーション人材とは新たな産業や事業の創出に貢献することのできる人材を表す言葉です。これまでには存在しなかった新たなイノベーションを生み出すことは簡単ではありません。過去の経験や技術の蓄積、既存の方法論では創出することができないからです。つまり既存の組織内で能力を発揮している人材とはまた別に、イノベーション人材の発掘、育成などの作業が必要になることを意味します。
イノベーション人材が注目される背景
イノベーション人材が注目されている背景にはいくつかの要因が考えられます。既存の産業や事業の多くが飽和状態を迎えつつあり、行き詰まってきたこと、ポストコロナの時代となり産業構造やライフスタイルが激変し、新たな産業や価値の創出が求められていることなどです。
イノベーション人材に求められる能力

イノベーション人材の求められる能力については、多様な視点からのさまざまな言及があります。ここでは3つのポイントに絞って説明しましょう。
①課題設定力と解決力と実行力
近年のオープンイノベーションの特色として、社会の課題解決がテーマに設定された公募の増加があげられます。イノベーション人材に求められる能力の中でもポイントとなるのは課題設定力でしょう。課題設定力とは現状では顕在化していない課題を見出す能力です。
解決力は新たに見出した課題を解消するアイデアや方法を生み出す能力ということになります。
課題を設定し、解消する方法を見出したのちに、行動に移して課題の解決を実現するのが実行力です。
②知的好奇心と挑戦心
イノベーションが形になるまでには多くの場合、長い期間が必要となるため、いかに意欲を持続できるかがひとつのポイントになります。つまりモチベーションを持ち続けることが大切なのです。知的好奇心と挑戦心はモチベーションという言葉に置き換えることもできるでしょう。
挑戦心、すなわち現状を維持しようとする守りの姿勢ではなくて、攻めの姿勢を持つことが必要です。挑戦することによって自らを変革していけることがイノベーション人材に求められる重要な能力といえます。
③企業内のイノベーション人材に求められる調整能力
企業内部のイノベーション人材は外部の人材とは違う能力が求められる場合があります。組織の内部と外部の調整する能力、イノベーション人材同士をうまく組み合わせていく能力が必要となるのです。
イノベーション人材育成の取り組み

日本国内においてイノベーション人材育成の取り組みがどのように行われているのか、具体的な事例を紹介します。
文科省の次世代アントレプレナー育成事業
文部科学省によるアントレプレナー育成促進事業はアントレプレナー育成とベンチャー・エコシステムの構築を目的としたプロジェクトです。
アントレプレナーは起業家と訳され、アントレプレナー教育は起業家を育てるための教育ということになります。アントレプレナー教育はイノベーション人材の育成との共通点が多く、このプログラムへの参加がイノベーション人材としての成長にもつながると期待されているのです。
STARTUP STUDIO by CrewwとCreww Growth
イノベーション人材を育成する動きはプラットフォームにおいても活発化しています。Creww株式会社による「STARTUP STUDIO by Creww」は本業を継続しながら、新規事業を生み出していこうとしている企業内の個人に向けたインキュベーションプログラムです。プロダクト開発や市場検証など、実際に新しい事業を作っていく経験はイノベーション人材としての成長にもつながるでしょう。
同じくCreww株式会社による「Creww Growth」はスタートアップと事業企業との共創の場を提供するプラットフォームです。新たな事業の開発のみならず、実践によるイノベーション人材の育成という役割を果たすものといえます。
神戸大学のCreative School
神戸大学はイノベーション教育に力を入れている大学です。「未来社会を創造するための教育・人材育成」というテーマを全学部で掲げて、工学研究科に「未来社会創造研究会(未来道場)」を設立するなど、積極的なアプローチを行っています。
全学部で行われている「Creative School」と名付けられた教育プログラムの「オープンイノベーションコース」もそうしたアプローチの一環です。企業や自治体による問題の提示、学生によるアイデア創出、問題解決、プレゼンテーションの実施、学外有識者による評価と、実践的な教育に特化しています。
オープンイノベーションを推進する人材活用

さまざまな教育プログラム、インキュベーションプログラムなどによって、イノベーション人材の育成が行われています。しかしイノベーション人材不足という問題を解消するには、育成だけでは十分ではありません。育成した人材を適所に配置すること、異なった能力を持ったイノベーション人材を有機的に組み合わせることが必要になります。イノベーション人材の育成とともに、イノベーション人材を有効に活用できる人材の配置とイノベーション人材が能力を発揮できる環境の整備も求められているのです。
