オープンイノベーションが当たり前になるまでのステップ
Crewwは設立からの7年間、122回のアクセラレータープログラムを実施してきました。その中で見えてきたのは、オープンイノベーションが本当に広まるには3つのステップがあることです。
オープンイノベーションの重要性が叫ばれるようになって、大企業とスタートアップが良好な関係性を築くようになりました。原理原則、2社間であればオープンイノベーションに取組むことでそれぞれ新しいチャレンジができ、win-winの形を作ることができます。この点はどれも変わらないのですが、2社間の共創による成果ができた前提で今後、オープンイノベーションがさらに広まる為には何が必要とされるのかということです。

1つ目は「ソーシャルインパクト」のステップ。「ソーシャルインパクト」のニーズは既に顕在化してきています。結局、2社間のwin-winだけで終わらせずにより多くのプレイヤーで、社会実装までやりに行く。社会実装を通して当事者だけではなく業界全体や社会全体にインパクトを与えるという事が求められてきています。
2つ目のステップは「コモディティ」です。新規事業を創り出していかねばならないのは今やどの組織も同じです。オープンイノベーションの数をこなす事でプロセスを標準化する事ができるようになる。そうなれば費用面や精神面でのハードルは下がり、おのずとチャレンジへの敷居は低くなります。そうして標準化されたプロセスによりオープンイノベーションによるチャレンジが民主化されていけば、より多くの企業や人が新規事業創出にチャレンジでき成功体験を得られるようになるでしょう。それがまた標準化へと組み込まれる事で良いサイクルが生まれていきます。
そして最後のステップは「インフォーマル」。イノベーションは法人プロジェクトから個人レベルまで分解されていきます。すでにアメリカやヨーロッパではそういった概念でスタートアップスタジオのようなものがどんどんと普及し始めてきています。スタジオとはハリウッドのスタジオのようにプロフェッショナルが集まって1本の映画を作り、出来上がると解散するというようなもの。同じように新しいサービスやプロダクトは法人に関わらず個人や個人の集まりから今後もっと作られていくようになります。
どれも少しずつ顕在化されているものの、これらが当たり前の考えになるには、まだ時間がかかります。そこで、よりオープンイノベーションの敷居を低くするために、7月より新プログラム「Business Matching」サービスをスタートしました。
Business Matchingとは
事業会社とスタートアップのアクセラレータープログラムの課題は、ゴールが「新規事業創出」のため、コストと期間に高いハードルがあることでした。
そこで共創のハードルを下げるべく、 “新規事業に限らない”事業共創や業務提携など「実ビジネス」につながる商談を目的としたマッチングイベント「Business Matching」をスタートします。
これは事業会社とCrewwコミュニティが持つ全国4000社以上のスタートアップをつなぐイベントですが、最終的に名刺交換で終わってしまうものではありません。
まず事業会社にお申し込みいただくと、確度の高いマッチングに導くためにCreww が具体的にニーズをヒアリングします。目的や狙い、解決したい課題、障壁となる社内課題、提供できるリソース、そして担当者情報などを明確にして募集ページを作成。
その募集ページを見てスタートアップはエントリーするのですが、エントリー時に「共創したい理由(ビジネススキームや解決したい課題、当該の事業会社と実現したい協業、生かしたいリソース等)」を詳細に記載してもらう仕組みを導入しました。
事業会社はそのシートを見て書類選考をし、最大5社を選んで商談会「マッチングDay」に参加。そのため、突発的にスタートアップと会うイベントとは違い、会いたいスタートアップと最初から具体的な商談ができるのです。
お申し込みからマッチングDayまでは2ヶ月弱のため、短期間でのパートナー探しが実現。加えて、従来のアクセラレータープログラムよりもはるかに低い金額で参加でき、実ビジネスにつながる確度の高いマッチングが可能となります。
7月より新たに始める会員制サービス「creww corporate membership」の会員になっていただくと、無料で参加いただけます。(第一回目のCrewwマッチングは8月29日(木)開催)
会員制サービス「creww corporate membership」とは
「creww corporate membership」は、コミュニティスペース「docks」を活用した事業会社向けコミュニティで、ノウハウやナレッジを共有する会員制サービスです。
「オープンイノベーションに関する情報収集がしたい」「スタートアップとの共創戦略を整理したい」「他社事例を知りたい」といった事業会社向けに展開します。
このサービスで提供するのは主に4つあり、1つは約100社のスタートアップがコワーキングスペースとして活用している「docks」の利用権提供。このコミュニティスペースを利用することで、日常的にスタートアップとつながることが可能となります。

2つ目は、常駐のCrewwコミュニティーマネージャーによる、オープンイノベーションを実施するにあたっての悩みや相談へのアドバイスです。オープンイノベーションを行う前、担当者が最初に戦うのは社内だとよく言われますが、その一歩を突破するのに時間がかかるケースが散見されます。

コミュニティーマネージャーが介在することで、スタートアップ共創における考え方から戦略設計、プロジェクトにおける組織体制の構築などが整理され、プロジェクト全体の推進がスムーズになります。
3つ目は企業間のナレッジシェアを目的として、月に数回、会員だけを集めたワークショップ等の開催。オープンイノベーションを成功させた事業会社の話やナレッジ共有会、テーマに合わせた特別セミナー、専門家やオピニオンリーダーを招いたワークショップなどを想定しています。

そこでは、オープンイノベーション実施に必要な戦略設計や組織体制構築など、深い知識を持つCrewwメンバーが、ノウハウや知見をシェアします。
最後は、「Crewwマッチング」への参加です。アクセラレータープログラムを小規模に試したい、既存事業での共創から始めたい場合に役立つはずです。

会員制サービス「creww corporate membership」の詳細はこちら
最後に
いま、さまざまな分野での革新的なサービスの社会実装は、先進国ではなく新興国で進んでいます。
たとえば、ルワンダのスタートアップは、医薬品や血液、ワクチン等を病院に輸送する「救命ドローン」を数年前から実装しており、スイスでも国営郵便が山岳地帯の配達をドローンで届けています。
一方で、日本を含めた先進国は変革の必然性が低く、既得権益の関係から革新的サービスの実装は進んでいません。この動きは今後も加速し、新しい技術やサービスは新興国で試されて発展し、数年遅れて先進国に入ってくる、「逆タイムマシン」が成立することになるでしょう。
これと同じ現象が、日本の大手企業とスタートアップには起きています。革新的な技術やサービスが次々とスタートアップで試され、実装されている今、大手企業はいかにスタートアップと共創するかを考えるのが大切です。 Crewwはより多くの日本企業に新しいチャレンジをしていただけるよう、これからもさまざまな角度からサポートを続けたいと考えています。

「INNOVATIVE PORT」はCreww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。