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火曜日, 9月 28, 2021

【Creww×飯田市】地方での新事業創出の可能性、そしてオープンイノベーションへの挑戦へ

飯田市金融政策課と17の支援機関が連携し取り組むビジネス支援協議会「I-Port」の開港から3年。これまで、地域で生まれる多様な新規事業や事業展開への幅広いビジネス支援を継続してきました。その実績を振り返りつつ、今回は「事業をつくる=挑戦する」あらゆるビジネスパーソンの機会創出を数多く手がけてきたCreww(クルー)株式会社取締役の水野智之さんをお招きし、地方におけるビジネス支援の可能性や課題について、ともに語り合いました。

「ヒト・ カネ・チャンス」を創出するビジネス支援を

―今日ははじめての対談となります。まずは自己紹介的に、それぞれの業務や事業、取り組みについてお話をお願いします。

櫻井更さん(以下、櫻井):金融政策課は、飯田市市役所の産業経済部に属する一部署で、金融に関する起業家支援や事業支援、そして近年は事業承継の分野も含めた支援を行うセクションです。じつは地方行政のなかに「金融政策」を謳う課があることはとても珍しいことですが、飯田市は産業振興や、それを叶える融資も含めたビジネス支援に注力しており、地域の商工会議所等とも連携を図りながらこれを行っています。

飯田市金融政策課 櫻井更

なかでも大きな取り組みのひとつが、I-Port(飯田市新事業創出支援協議会)」です。これは、これまで金融機関や産業振興機関などが個別に行ってきたビジネス支援を横連携で行うことで、全国へ、世界へと挑戦する事業をより強く、確かに後押ししようとする協議会です。2017年に14の支援機関でスタートし、現在は17の機関がここに集っています。

水野智之さん(以下、水野):Crewwの創業背景について、簡単にお話をさせていただきます。2012年に創業し、今年の8月に9期目を迎えました。設立のきっかけは2011年、東日本大震災の後に、当時アメリカに暮らしていた代表の伊地知が帰国し、日本とアメリカの起業家を取り巻く環境の違いを感じ、環境を変えたいと思ったことでした。

Creww(クルー)株式会社取締役 水野智之

水野:すでに起業家であった伊地知(Creww CEO)が、帰国時に日本のビジネスの現状を調べてみたところ、日本にはいわゆる「スタートアップ」といわれるような先進的なビジネスに取り組んだり、新たなマーケット創造をめざす企業が成長できるような発展したエコシステム(ビジネス生態系)がまだ存在ないことに気がつきました。

しかし、人口減少や少子高齢化が加速するこれからの日本の社会を考えると、今までのような安定した市場ではなく、新たな市場や技術、サービスの創出が求められるのではないか。と同時に、残念ながら世界のなかでIT後進国となってしまっている日本こそ、こうしたスタートアップ支援のエコシステムが必要なのではないかと考え、創業に至りました。

私たちの企業サイトを見ていただくと、一見大手企業とスタートアップのマッチングを行なっている「マッチング屋」のように見えるかもしれませんが、私たちの本懐は、日本のスタートアップあるいは新しいことに挑戦する企業、個人事業主の挑戦を支えるプラットフォームづくりです。そうした方々がとくに挑戦に必要とされる「ヒト・カネ・チャンス」といわれる経営資源にアクセスできることをめざそう、そんな思いで創業したと言っても過言ではありません。

大挑戦時代をつくる。オープンイノベーション支援プラットフォーム

この「ヒト・カネ・チャンス」のなかでも私たちが最初に取り組んだのが、「チャンス」の部分。企業の新しいビジネスを創出するチャンスと、スタートアップが成長するチャンスを結びつけるため、オープンイノベーションのマッチングをオンライン上で行なっており、これが現在のコアビジネスにもなっています。

若者が戻ってこられるための地域産業の創出を

―立場やフィールドは一見異なるものの、お二人のおはなしから、「挑戦する起業家へのビジネス支援」、という共通点が見えてくるようです。櫻井さん、飯田市金融政策課が取り組むビジネス支援協議会「I-Port」の仕組みやこれまでの取り組みついて、もう少し詳しく教えていただけますか。

櫻井:では、I-Portも誕生の経緯からお話したいと思います。
まず発端としては2016年、この飯田市とその周辺地域において、ワンストップ型のビジネス支援の枠組みができないかというテーマが持ち上がりました。そして「共創の場」と「円卓」をキーワードに支援組織を作るべく、現役の事業者のみなさんはもちろん、支援する側となる金融機関や広域機関、さらに県における当該部署のみなさんとも意見を重ねました。

その結果、事業のなかでも地域内のみならず地域の外へと目を向けているビジネスへの重点的な支援をという方向性が共通認識として示されました。飯田から全国へ、世界へ挑戦しようとする事業に対し、たんなる融資にとどまらない情報発信の強化や、ビジネス・商品・サービスの高付加価値化、信用力の強化など、さまざまな取り組みでビジネスの成功を支えようという議論になり、これらのご意見を骨組みとしてI-Portが発足されました。

「I-Port」の一番の強みは、それぞれ異なる得意分野を有する市内外の支援機関が一堂に会しているということです。相談者はこの地域にいながらにして県や国や、県内各地のさまざまな支援組織の施策情報にアクセスでき、これを有効活用できます。さらに事業計画の作成アドバイスなど、ビジネスの構想段階から支援を行なっているのも特徴です。「I-Port」の最終的な目的は地域活性ですから、アイデアを否定するのではなく、優れた点を生かし伸ばしていけるような支援を心がけています。

そして、実際に融資が必要となる場面等では、17の支援機関のなかからそのビジネスに適した組織の皆様にお集まりいただき、起業家を囲んで文字通りの円卓会議を行います。融資が決まれば、信用保証料の全額をI-Portが負担するほか、年利1%という制度資金の利用が可能になりますし、事業内容は「ハジメマシテ、飯田」というオウンドメディアにて情報発信を行うなど、他ではめずらしい取り組みも含めた多様な支援を行っています。
先ほど水野さんが「ヒト・カネ・チャンス」とおっしゃいましたが、まさに我々も、たんなる融資先のマッチングにとどまらない総合的なビジネス支援を大きな特徴と考えています。事業認定はこれまで2016年に3件、17年に7件、令和元年度に4件と、計14件の事業に対し、こんにちまでビジネス支援を継続しています。

飯田市がビジネス支援に取り組む意義とは?

―ありがとうございます。水野さん、お聞きになってなにか質問等ございますか?

水野:私たちも創業当時は大手企業とスタートアップのマッチングが中心だったのですが、2年ほど前から自治体の方々とスタートアップ、あるいは自治体をハブとして地域の企業とスタートアップとの出合いを創出する取り組みも増えてきていますので、とても興味深いと感じました。一つお聞きしたいことがあるとすれば、飯田市さんとしてビジネス支援に取り組もうとされている、その意味や意義の部分です。

というのも、地域から外へ、というコンセプトそれ自体はとても素晴らしいことで、全国各地でも試みられていることだと思いますが、中から外という方向性だけではなかなかスケールしていかないという課題もあるのではないかと想像します。本来、中から外だけでなく、外から中(都市から地方)へも相互にシームレスにアクセスできる状態が理想でしょう。けれど、外となる私たちから見ると、中に入っていく理由やきっかけがなかなか見出しづらい。だからこそ、自治体としてビジネス支援のどの点に軸足があるか、どのようなコンセプトで取り組んでいるかということが非常に大切になると思うんです。

櫻井:これはひとことで言えば、「若者が帰ってこられるための産業づくり」でしょうか。もちろん、あらゆる域外の方の「外から中へ」の流れがスムーズにできることは理想的かと思いますが、まずここで育ち、外へ学びに出た若者たちが、鮭が川を遡上するように帰ってこられる、帰ってきたいと思える地域づくりというものは、I-Portの取り組みに限らない市政の一丁目一番地に位置付けられています。

水野:若者が戻ってこられるための地域産業の創出、これはまさに必然性そのものですね。せっかくなので突っ込んでお聞きしたいのですが、若者が戻ってくるであろう新産業というものに、飯田市さんとしてどのようなテーマや産業のイメージをお持ちでしょう。

櫻井:飯田市における産業構造の現状は、製造業が中心です。そして古くからの地場産業として、たとえば水引は全国のシェアの6割を飯田市が占めています。半生菓子や食品工業など、食品関係の工業も盛んですが、これは従来型の製造業となり若者が魅力を感じられるかどうかという課題があると思っています。
そこで今後は外部からイノベーティブな事業を積極的に誘致したり、また既存事業者であってもこれまでの製造業の枠を超えた、革新的な事業創造のため若者の能力が発揮できるような職場を産業基盤の創造ができればと考えます。

Crewwが実践する、地方自治体との3つの連携モデル

―ではここで、水野さんからCrewwが取り組んでこられた自治体との連携事例についてのご紹介をお願いいたします。

水野:Crewwは創業期から、細かいものを含めるとのべ170回ほどオープンイノベーションのプログラムを開催してきました。先ほどお伝えした通り、近年は行政・自治体と関わるプロジェクトが増えてきていまして、直近ですと埼玉県、佐賀県、愛媛県、愛知県、広島県といった自治体とのプロジェクトが進行中です。それぞれ特徴は異なりますが、自治体のみなさんと取り組むイノベーションへのチャレンジは大きく3つに当てはまるのかなと思っています。

「N対N(多数対多数)」のマッチングで新たなビジネス創出

愛知県スタートアップ戦略「Aichi Matching2019 Batch02 」とは?

2020年1月16日

一つは、企業の新ビジネス・新規事業を作ることを目的に、地方自治体とCrewwが共同開催という形で「N対N(多数対多数)」のマッチングで新たなビジネスの創出をめざすケースです。
たとえば佐賀県では、「ヘルスケア」と「ビューティ」をテーマに、このキーワードに関連する事業会社と、弊社が保有する約5,000社のスタートアップデーターベースとのマッチングが行われました。これは常日頃、我々が企業×スタートアップで行なっていることと同じで、私たちの得意中の得意分野です。愛知県でも同様の取り組みを行なっているのですが、こちらでは製造系企業の参加が多いのが特徴的でした。規模としても大企業である必要はなく、むしろ中堅・中小企業が参画していただいて共創を実現できている状況です。

創業支援型のマッチング

プロスポーツチームと連携する埼玉県のオープンイノベーション

プロスポーツチームと連携する埼玉県のオープンイノベーション

2020年8月28日

もう一つのケースは、創業支援型のマッチングです。象徴的な事例は、埼玉県と行なっている、スポーツをテーマに特化した創業支援と協業の取り組みでしょう。浦和レッズ、大宮アルディージャ、西武ライオンズ、越谷アルファーズというスポーツチーム4チームにご参加いただき、スポーツに関連するスタートアップが集いました。

これは一見、先ほどの佐賀県と愛知県と同様の「テーマ設定をしたN対Nのマッチング」に見えますが、ここで主となっているのはじつは、協業というよりも創業支援。もちろん、協業は必須条件ではありますが、最優先課題はあくまでもスタートアップ創業支援、という位置付けとなっているのが特徴です。県内で創業するか、県内に支店等をオープンする予定のスタートアップを創業3年以内に区切って対象にし、事業計画、資金調達、メンタリングなどといった支援プログラムと並行しながら、協業を検討し実施しています。

地域特有の社会課題解決型マッチング

3つ目は、自治体そのものの課題をスタートアップが解決していく、「地域特有の社会課題解決型マッチング」です。
これは創業支援でも事業マッチングでもなく、完全に自治体の課題とスタートアップやベンチャーの持っているビジネス、テクノロジーをかけあわせて地域の課題を解決するような形ですね。しかし当然ながら、自治体は事業体ではありませんので、団体関係各社を巻き込みながら、実証実験やフィールドのあっせんなどを担ってくれます。

こうした取り組みのなか、現在までに企業の累計で557件ほど、新しいビジネスの種(タネ)が創出されました。なかにはもちろん、業務提携や資本提携、M&Aを行ったものもありますし、年間で億単位の売り上げを上げる大きなビジネスに成長した事例もあります。

情報を届ける。人が動き出す。

―とくに地方自治体と連携したものを中心に、Crewwの実績や実例をご紹介いただきました。さらにお聞きしますが水野さん、飯田市との連携の可能性など、お感じになられた部分はありましたか。

水野:先日、採用活動の一環で社会人のインターンシップ参加サービスのワークショップに弊社が受け入れ側として参加したんです。ワークショップのテーマはこちらで作ってくれということだったので、「地方の中堅企業が、オープンイノベーションを実施したい場合にどんなサービスがあったらしやすい環境となるか」というようなテーマを設定して、チームに分かれてアイデア出しから発表までを行なったんです。

このとき集った参加者のみなさんがすごく多様なバックグラウンドお持ちだったので、首都圏出身者以外の方が中心になって自分の地元企業をペルソナに設定し、ディスカッションしてみたんです。その中で一番多かった話はつまるところ、仕組みより「情報と人」、この二つが大きな課題だということでした。参加者のみなさんの感覚では、地方にはまず情報が届いていないし、仮に届いていたとしても、実績がないと動けないとか、日本特有の習慣みたいなところがあるというんです。

イノベーティブな取り組みに前例なんてあるわけがないので、リスクを取って踏み出すかどうかというところがもっとも重要なわけですが、そのためにも情報が必要だと、みなさんおっしゃる。加えて、取り組む「人」ですね。専任である必要はなかったとしても、そもそもそうした動きができるような人間が社内にはいないとか、地域に見つけられないとか。この課題をすごく、強調されていたのが印象に残りました。まさに僕らも、さまざまな自治体と取り組ませていただくなかで顕著に課題と感じる点だなと共感しながら、今後我々も情報の届け方や人の問題を解決していかないといけないと思いを新たにしたところです。

―官産だけでなく、学も巻き込んで、まず情報を届けていくと。

水野:そうですね。なぜそう考えたかというと、例えば、地方大学の学生が卒業したあとの就職先を調べてみると、7割が公務員なんです。でも、起業家という新しい考え方や、新事業にトライするスタートアップの現場を目にする機会を今まで地域の学生が持っていなかったとしたら、その情報を届けることで感化されたり、強い関心を抱く人がいるかもしれませんよね。実際、私の授業を受けてくれた学生の一人が、その後東京のオフィスを訪ねてくれたこともありました。そんな風に、情報を届けることで心が動く、行動や思考が変わる。そのきっかけになることは多いにあるのではないかと感じています。

―櫻井さんは、地方自治体として感じている課題については、いかがでしょうか。

櫻井:短期的な課題と、中長期的な課題があると思っています。まず、短期的にはこの新型コロナウイルス感染症の影響のなか、起業や事業拡大のマインドが少し冷え込んでいるのかなという感触で、ビジネス支援の前向きな相談というのがなかなか持ち込まれないという課題です。
中長期的には、先ほど情報と人というお話を水野さんからいただきましたが、行政が支援組織の窓口を担うデメリットも感じています。具体的には数年ごとの人事異動によってノウハウが蓄積されづらいといった行政ならではの課題を補完するために、起業支援に民間の力をお借りする必要があるのではないかと思っているところです。市内の既存の組織としては、2019年にオープンしたS-bird(南信州飯田産業センター)という組織があり、そこにはオーガナイザーやコーディネーターといわれる企業OBのみなさんがたくさんいらっしゃるので、そうした方達に我々の機能を移管していくことも一つかと思いますし、Crewwさんのようなスタートアップのビジネス支援に長けた企業さんにお願いをするということも、十分選択肢の中にはあるのではないかと思います。

水野:それはとてもうれしいですね。私たちは日本国内のさまざまなスタートアップや、事業が生まれる仕組み、環境、エコシステムが生まれる取り組みを行なっていくことがCrewwのミッションですので、行政・自治体の皆さんとの連携はマストなんです。そのなかで今日、飯田市さんのお話を聞いて、その背景にある思いにとても共感しましたし、今「I-Port」で行なわれているビジネス支援の持続性をいかに保てるかということのお手伝いができたら幸いです。
また、「I-Port」の取り組みをさらに飛躍させていくためにも、我々のようなテクノロジーカンパニーが入っていくことの意味は大きいのではないかなと思います。今まで、私たちの自治体さんとの連携は都道府県単位が多かったのですが、逆にここで先行して事例を作ることができれば、同様の市区町村のみなさんに対する、刺激にさえなることができるチャンスになり得そうです。

―今後の展開が楽しみです。お二方本日はありがとうございました。

Creww(クルー)
「大挑戦時代をつくる」を合言葉に、ビジネス創出をめざすスタートアップ、起業家、複業家、企業をつなぐWEB上のマッチングサービスを運営。2012年に創業し、近年は地方自治体とも連携したビジネスマッチングや事業支援にも取り組んでいる。

執筆:ハジメマシテ、飯田(あなたの「ハジメル」を応援する、南信州・飯田市の起業支援情報メディア)
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PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

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