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現実の世界をデジタル空間に複製!ダイナミックマップ基盤の高精度3次元データ
ーー事業内容やビジョンについて教えてください。
ダイナミックマップ基盤株式会社は、「高精度3次元地図データ」を提供しております。現実の世界を、高精度な3次元データに変換=デジタル空間に複製することで、自動運転車をはじめとした自律移動モビリティ等に対して正確な位置情報を提供可能とするサービスです。
例えば、2019年には、「高精度3次元地図データ」の提供が、ゼンリンを通じて日産自動車の世界初インテリジェント高速道路走行に採用され、先進運転支援システムの実現へ貢献しました。
また、当社のサービスは、自動車産業に限らず、3次元で捉えることが必要となるドローン産業や、国や自治体の防災対策、社会インフラの整備や、メタバースの構築、スマートシティの実現など、多様なシーンにおいて、効率的で安心/安全なデジタル社会に貢献する、裾野の広い用途があると言われております。
我々が目指しているところは、デジタルツインの構築により、それを基盤とした様々なサービスを展開していくことです。デジタルツインという基盤を活用して、社会の役に立つ、これまでにないサービスを創出することだと感じております。
ーー貴社の強みと課題について教えてください。
まず、プロダクトの強みとしては、弊社の「高精度3次元地図データ」が、自動走行の安全を守る要として、自律移動に求められる「cm」級の絶対的な精度であることです。すでに日本と北米で展開されており、今後欧州その他へも展開予定で、「日本発の技術で、グローバルに展開できるようなプロダクトを作っている」ということは、1つの大きな強みであるかなと思います。
次に、会社を軸とした強みは、弊社が、地図会社・測量会社・総合電機メーカー・自動車メーカーなど、国内トップレベルの多様な企業が集まり一体となった「オールジャパン体制」で設立されている点にあります。
弊社のメンバーは、結構ユニークで、多様な株主からの出向者を含め、多分野から集まってきた人間の知見を突き合わせてプロダクトを作っていけることは、今後アプリケーションを増やしていく際にも、非常に重要な強みになるのではないかと感じています。
反対に、課題となるのは、今後のグローバル展開を加速するにあたって、基盤となるオフィスやグローバル人材を確保する必要があることです。また、スタートアップにお勤めの方のように、イノベーションを積極的に提案できるような人材の厚みも、今後は大事になってくるのではと思います。
ーーアクセアレータープログラムを開催して、業界を超えたオープンイノベーションに取り組む背景を教えてください。
2021年に、Crewwのオープンイノベーション支援サービスCreww Growthを活用して、初めてのアクセラレータープログラムを開催させていただきました。
もともと弊社の社長には、従来より「自動車会社とに限らず、イノベーティブな取り組みをしていきたい」という意向があったことが、アクセラレータプログラムを開催したきっかけでもありました。
また、その想いと重なるようにして、ここ1・2年では、自治体が主催するスタートアップとの協業に関する取り組みも増えております。
2019年には、東京都が主催する「5G技術活用型開発等促進事業」において、東京都と協働して「スタートアップ企業を支援する」また、「支援する人を求める」開発プロモーターに選定されました。
今年度は、デジタル庁を発注者とする「デジタルツイン構築に関する調査研究」を受託しました。デジタル庁は、未来の自動運転車やドローンなどを活用した高度な自律移動モビリティの運航を実現するためにも、デジタルインフラの整備を進めています。
弊社とNTTデータのコンソーシアムは、デジタルインフラの整備を進めるために構築する「デジタルツイン」について、地上と地下に分けて、具体的なユースケースでの実証を行いながら、必要となる仕様や、整備手法を検討します。

本調査では、大企業が思いつかないようなユースケースの開発も期待されており、今般アクセラレーションプログラムを開催するはこびとなりました。
国をあげて推進する空間IDと3次元空間情報基盤による次世代サービス
ーーアクセラレータープログラムの開催も通じて実施される「2025年大阪・関西万博」に向けた取り組みについて、貴社のビジョンを教えてください。
「2025年大阪・関西万博」に向けたアクションプランには、「デジタルツインを活用した次世代エンタメ・サービス」というテーマが盛り込まれています。
空間情報のデジタル化や、空間情報が流通する仕組み(空間ID・3次元空間情報基盤等)の整備等を通じて、デジタルツインを構築し、「リモート・アバターとしての万博/大阪・関西への訪問・観光」や「XR を用いたコンサート・ライブ、キャラクターを投影してのゲーム等の次世代のエンターテイメント」、「配送ロボットや警備ロボット、ドローン等を活用した完全無人化したサービス」等の、リアル/サイバー両空間を組み合わせたユースケースの創出を目的としたものです。
このように、エンターテイメントサービスをはじめ、「空間ID」には様々な分野での活用が期待されております。
弊社も、アクセラレータープログラムを開催することで、「空間ID」技術を活用した新たな用途と、将来的な事業化を見込んだアプリケーションを創出したいと考えています。
スタートアップならではの幅広い提案を募り、3次元空間情報に関するデジタルツインの新たなユースケース共創を目指していきます。
アクセラレータープログラムを通じて探る「空間ID」の可能性
ーーアクセラレータープログラムで活用されることが前提となる「空間ID」について、改めて教えてください。
地下の世界を例に「空間ID」を説明いたしますと…地下には、水道管・通信管・ガス導管・電力ケーブルなどの配管が貼り巡らされていて、生活の基盤となるものが埋設されています。
老朽化が進んだ際には、それぞれにリノベーションが必要となりますが、実際に工事が施工される前には、お互いが埋設物の状況を突き合わせる必要も出てきます。
ですから、みんなが「地下のデータを共有したい」はずです。けれど一方で、地下のデータというのは、秘匿性が高いので、各事業会社が、扱いにとても気を遣っている面もあるのです。
そこで、多段的にサイズを選択可能且つ一意のIDを有する3次元ボクセルで位置特定可能な空間IDが有用となります。ボクセルに何の配管がどの位あるのかといった「属性情報」を紐づけることで、業界横断で、相互に参照し合うことが可能になるわけです。
ーー3次元空間において、何がどこにあるのかというポジショニングが分かる仕組みということでしょうか?

そうですね。理論的な位置の特定と、空間IDをインデックスとして実際に様々なデータ・メタデータを紐付けて共有できるというところが、大きな役割であると思います。
ーー実際に「空間ID」を活用したサービスの事例はありますか?
実は「空間ID」に近い3次元グリッドの概念自体は昔からあり、地理空間情報の標準化を推進するOGCなどでも、関連した検証は行われています。ただし、ユースケースとして使われているものは、ほとんどないと思います。1番実装に近い分野が、ドローンかもしれません。
その中において、我々の「空間ID」は、地下や地上、将来的には自動運転にも活用できるのではないかと期待しております。
ーー「空間ID」をドローンと紐付けた際には、どういった場面で活用されるのでしょうか?
ドローンの場合、気にされる事物情報は、送電線や鉄塔、樹木等であると思います。しかし、GoogleMapで手に入る情報は限られています。例えば建物の中にある「通ってはいけないバリア情報」などは、各事業者がバラバラに整理している現状でありますが、空間に持たせた共通のデータにすることで、ドローンの運行や管理は、かなり楽になるはずです。
また、エアリスク・グラウンドリスクといった統計データも、ボクセルに紐付けることで、ルートの設定に役立つのではないかと思います。
ーー3次元の情報が統合されたプラットフォームの様な世界ですね。
そうですね。2次元で見た時には不可能な場合でも、3次元の情報を可視化することで、可能になるのなら、とても有益であると感じます。
デジタル庁・経済産業省も大きく期待!スタートアップの発想力

ーープログラムに参加するメリットを教えてください!
前回のアクセラレータプログラムは、社内で完結していたものであり、「高精度3次元地図データ」を使った新たな事業の創出を目指しておりました。今回のプログラムでは、発注元がデジタル庁・経済産業省でもある「肝煎り案件」であることが新たなメリットであると思います。ぜひ、そこを粋に感じて、ご応募いただければと思います。
産・学・官よりそれぞれの専門家にご協力いただきながら、プログラムを通じてスタートアップの育成にも繋がるよう準備をしております。
ーー貴社がオープンイノベーションを進める中で、ターゲットにしている領域はありますか?
領域は絞らず、かなり広く募集をします。提供できるリソースには、当社が整備する様々な種別の空間情報に加え、多くの空間データと空間IDを紐付けて利用することが可能なベクトルタイルシステム等があります。詳しくは募集要項をご覧頂きたいと思います。
ーーどの様なスタートアップにエントリーしてほしいですか?
スタートアップや学生の方々など幅広い層に応募頂きたいと考えており、「空間ID」の活用の仕方について、大企業では思い付かない様な自由な発想を、サービス化するところまで企画し、提案してくれることを期待しております!
ダイナミックマップ基盤が描く、デジタル社会の未来図は?
ーー貴社が解決したい社会課題や、今後の展開について教えていただけますか。
特に日本は、2次元・3次元の様々なデータがあるにも関わらず、現状ではそれが共有されていません。データの提供者が作ったものが、サービサーに流れていかないといった課題を、今回のプログラムを通じて解決したいと思っております。
また、一部のプラットフォーマーに重要なデータやアプリケーションが独占されている現状があるので、日本の規格で、データが必要な人から必要な人に渡る様な、オープンな仕組みを作りたい、という想いが根っこにあります。
今回の取り組みが、そういったゴールに少しでも早く到達できるような、きっかけになればと考えております。
ーー最後に、スタートアップの方へ向けたメッセージをお願いします!
空間IDの様に3次元空間をインデックスで定義するコンセプトは海外で若干の事例はあるものの、この規格自体が新しいものなので、ユースケースの提案についてもそれをプロモーターと一緒に作っていくことが大切です。我々も十分なサポートをしたいと思っておりますので、むしろそんなコミュニケーションを楽しめる方、チャレンジ精神をお持ちの方、ぜひ色々な方に応募していただきたいと思っております!

社名 | ダイナミックマップ基盤株式会社 |
設立 | 2016年6月13日 |
所在地 | 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-1-21 近三ビルヂング6階 |
代表者 | 代表取締役社長CEO 吉村 修一 |
事業概要 | 自動運転・ADASをはじめ多様な産業を対象とした高精度3次元データの提供 |
URL | https://www.dynamic-maps.co.jp/index.html |

総合商社にて化学プラント、交通インフラ領域等の新規プロジェクト開発・事業投資に従事。その後、米系コンサルティングファームにてエネルギー・素材領域の戦略策定等マネジメントコンサルティング業務に従事。
ダイナミックマップ基盤では同社が整備する高精度3次元地図データを含む空間情報を活用したサービスの企画・開発、およびスタートアップとの協業によるインキュベーションプログラムの開発を担当。デジタルツイン構築に関する調査研究事業においては、PMOとしてプロジェクトの運営を支援。
