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木曜日, 8月 11, 2022

進化するスタートアップエコシステム。東京バレーのビッグインパクト

VCやCVC、エンジェル投資家などが増加し、スタートアップエコシステムが急速に構築されつつある昨今の「第4次ベンチャーブーム」。日本は今回のブームを一過性のものに終わらせず、エコシステムの形成につなげていくことが重要で、政府もその形成を後押しするため2020年4月より「オープンイノベーション促進税制」に取り組んでいる。
また、スタートアップエコシステムを形成するには「都市」の役割も重要だ。人材やビジネスチャンス、資金等が集中する東京都は、その重要拠点として注目を集めている。そこで今回は、スタートアップエコシステムの形成を担う官民の当事者から、現状や課題、今後目指すべき方向性について議論を実施した。
登壇者
経済産業省 新規産業創造推進室長 古谷元
東京都 戦略政策情報推進本部 特区推進担当部長 米津雅史
株式会社サイバーエージェント・キャピタル 代表取締役社長 近藤裕文
Creww株式会社 代表取締役CEO 伊地知天

3年で潮目が変わったものの、キャッシュは足りない

―伊地知さんと近藤さんは、それぞれの立場からスタートアップエコシステムの現状についてどうお考えでしょうか。

伊地知 私は、欧米に比べると圧倒的に少なかった“チャレンジする人”を増やすべく、2012年にCrewwを設立しました。以来、新規事業を作りたい大企業とスタートアップのマッチングを図り、大企業の新規事業創出とスタートアップの事業成長を加速させています。

Creww株式会社 代表取締役CEO 伊地知天

日本は、欧米に比べるとスタートアップエコシステムの構築が弱いと感じています。シリコンバレーの中心・キープレイヤーになっているのはエンジェル投資家ですが、日本においてのキープレイヤーは大企業だと思うので、大企業とスタートアップのエコシステムを構築することが、日本におけるイノベーション創出においては重要だと考えています。

最初の数年はスタートアップと新規事業に取り組もうと大企業に提案しても「アクセラレータープログラムって何?」と、まったく相手にされませんでした。それが、ここ2~3年で確実に潮目は変わっています。

ついには、2020年4月から「オープンイノベーション促進税制(※1)」も創設します。ますますスタートアップは成長加速しやすく、事業会社も新規事業に取り組みやすい環境になると思います。課題先進国の日本では、大企業とスタートアップが協業することで、社会に新しい価値を作れるはずです。アクセラレータープログラムは社会実装のハードルが高い「大学発の技術シード」のハブにもなれると思っています。

「オープンイノベーション促進税制」とは:
イノベーションの担い手となるスタートアップへの新たな資金の供給を促進し成長に繋げていくため、国内の事業会社やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)から、設立10年未満・未上場のベンチャー企業に対する1億円以上の出資について、25%の所得控除が適用される税制である。適用期間は令和2年4月1日から令和3年度末まで。

 「成長戦略実行計画」(令和元年6月21日閣議決定)において、「第4次産業革命の可能性を最大限引き出すためには、既存企業が人材・技術・資本の閉鎖的な自前主義、囲い込み型の組織運営を脱し、開放型、連携型の組織運営に
移行する必要がある」とされている。
 そこで既存企業の有するリソースを最大限活用したオープン・イノベーションを促進するとともに、ユニコーン級ベンチャーの育成を図り、第4次産業革命における我が国企業の国際競争力を強化することを目的とする。

 「成長戦略実行計画」(令和元年6月21日閣議決定)において、「第4次産業革命の可能性を最大限引き出すためには、既存企業が人材・技術・資本の閉鎖的な自前主義、囲い込み型の組織運営を脱し、開放型、連携型の組織運営に
移行する必要がある」とされている。
 そこで既存企業の有するリソースを最大限活用したオープン・イノベーションを促進するとともに、ユニコーン級ベンチャーの育成を図り、第4次産業革命における我が国企業の国際競争力を強化することを目的とする。

近藤 日本の課題は、アメリカや中国と比べて圧倒的にキャッシュが足りないことだと思います。アメリカはスタートアップの投資額が約10兆円ですが、日本は約2000億円しかありません。それをどうやってグローバルスタンダードにもっていくかが課題だと感じています。

―ここ数年潮目が変わっている一方で、キャッシュは足りていない。

古谷 日本のスタートアップ投資額が少ないのはその通りなので、投資が円滑に回るように産業革新投資機構と取り組みを進めています。それと並行して、世界的なカンファレンスやサミットなどで、日本のスタートアップの良さを知ってもらうための仕掛けも必要だと痛感しているので、その辺りの整備も進めたいと考えています。

経済産業省 新規産業創造推進室長 古谷元

米津 伊地知さんに伺いたいのですが、大学の教授からは、技術シードを事業化しようとしたら事業会社(大企業)の人がキーマンになるとよく言われます。事業会社のどういった人が大学に巻き込まれると成功確度が高いですか?

伊地知 大学の技術シードを事業化するには、事業会社(大手企業)ではなくスタートアップ企業が担うべきだと思います。実際に、大学からも起業家やスタートアップを紹介してほしいという相談を多くうけます。

オープンイノベーションは、売上目標を成果に設定すると失敗する

―オープンイノベーションの生死を分けるものや、取り組みをもう一段進めるために必要なものは何でしょうか?

伊地知 うまくいくプログラムとうまくいかないプログラムがあって、それはパターン化されています。一般的には、オープンイノベーションの生死を分けるのは「トップのコミットメントがあるかないか」だと言われていますが、その議論はすでに一周しているんですね。

うまくいかないのは、事業会社がオープンイノベーションの成果を売上目標に置いているプログラム。仮に売上500億円を目標にしたところで、急にそこまでの売上規模を作れることはほぼないし、再現性もありません。だから、一生懸命頑張った人が損をしてしまう。もちろん、それはスタートアップにとっても幸せな結果を生みません。

大切なのは、継続して新しい事業を生み出せる組織を作ることなので、段階的なステージを設定し、たとえば「3年後にステージ8までいけば成功」といった考え方をする必要があります。みんなが納得できる指標や評価軸を持つことが、オープンイノベーションを成功させるための一歩になるでしょう。

古谷 昨年、経済産業省から日本ベンチャーキャピタル協会に「日本のCVCとグローバルのCVCの活動状況の違いや課題」についての調査を依頼しました。すると、日本のCVCは「戦略」と「金銭のリターン」のうち「戦略」を重視していますが、グローバルは両方を追求しているという結果が出たんですね。

グローバルのレポーティングラインは技術責任者が多く、自社の技術を理解した技術責任者が、自社に足りないものや他社の知恵を借りたら実現できるものを明確にして事業戦略に落とし込み、結果、金銭のリターンにつなげています。

一方、日本のレポーティングラインは戦略担当役員が多く、まず投資から始めている。だから、事業戦略と技術戦略を明確にすることで成功事例を作る取り組みを続けたいと思っています。

米津 これまで東京都は、マッチングさせることを重視して、その先まで踏み込んでいなかったので、ちゃんと課題を解決できるような取り組みをしないといけないですね。

東京都 戦略政策情報推進本部 特区推進担当部長 米津雅史

伊地知 たとえば神奈川県は「未病サミット」を開催して、未病から病気になるまでをレベル分けして発表していました。同じように、経済産業省や東京都が旗振りをして、オープンイノベーションの評価軸をレベル分けして発表したら、新規事業づくりに取り組む人もやりやすくなると思います。僕らが可視化するのではなくて、官民連携で作れたらいいですよね。

近藤 オープンイノベーションを推進する人の評価や、チャレンジすること自体が評価されるような文化も作れるといいですね。

世界にチャレンジできる人を、官民連携でサポートする

―グローバル進出を見据えたスタートアップを生み出すための仕掛けはありますか? また、グローバルで活躍できるスタートアップの条件は何だと思いますか?

近藤 日本は生活コストが安くて安全で、創業コストも安く上場もできるから、あえて国外に出る必要がありませんでした。一方で、韓国は国内の市場が小さいから、最初からアジアやアメリカを狙えるような、チームとビジネスモデルを作るケースが多いんですね。

株式会社サイバーエージェント・キャピタル 代表取締役社長 近藤裕文

ただ、最近では日本のスタートアップもアメリカやロンドンに行って、自分たちでVC巡りをするケースが増えています。そういう世界にチャレンジできる人たちに、VCだけでなく国と東京都も早いタイミングからサポートできれば、チャンスをつなげられると思います。

伊地知 「まず国内市場を取ってから海外に進出すべき」という考えもありますが、日本は人口が減少するのだから、最初から国外に出ていくマインドを起業家と投資家の双方が持つことも大切かもしれません。

米津 最初からグローバルに出たい人に対して、行政として何ができるのかは突き詰めないといけないですね。「グローバル挑戦枠」のようなもので前例を作り、後に続く人を増やしていけたらいいなと思っています。

近藤 一方で、海外のスタートアップを日本に引き込むのも意義があると思います。実際、インドネシアや韓国のスタートアップを日本に招待したら、すごく日本の環境を気に入ってくれたので、こうした活動は続けたいです。

規制を緩和して、世界で戦えるスタートアップを増やしたい

―東京のスタートアップエコシステムを発展させていくための課題や、東京都と国に対して直接的な要望があればお願いします。

伊地知 出資に対しての税額控除はありますが、プロジェクトで使った費用に対しての控除や研究開発税制の拡大があればいいなと思います。シード期のスタートアップを増やすためにも、投資型クラウドファンディングの規制緩和や、ライドシェアなどの新しい取り組みをしやすくするなど、要望をあげたらきりがありません(笑)。

ユニコーン企業をつくるのも素晴らしいけれど、社会に役立つビジネスを立ち上げようとしている人たちに対して光が当たるような制度も作ってもらえると嬉しいです。

近藤 要望は2つあって、1つは競争力の根幹に関わる、ホワイトカラーの労働時間を無制限にしてもらいたいこと。これは「もっと働け」ということではなくて(笑)、米中のスタートアップが働きたいだけ働いて世の中にインパクトを与えているなかで、日本のスタートアップは労働時間が足かせになっているからです。このままでは、世界との差はもっと開くでしょう。

もう一つの要望はビザの緩和。一度日本に来ると「日本で働きたい」と言ってくれる海外のエンジニアは多いので、たとえばスキルの高いエンジニアはビザを緩和するなどの検討をお願いしたいです。


古谷 規制改革が必要なことは認識しているので、制度を見直してアップデートしたいと考えています。また、スタートアップがかっこいいと思われるようなロールモデルを作りたいので、上位層のメガベンチャーを押し上げるとともに、裾野を広げていきたい。大学の研究室や地方のスタートアップにも目を向けた施策も考えたいと思っています。

執筆
田村 朋美 
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

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