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月曜日, 9月 20, 2021

【地域オープンイノベーションの今】Aichi Matching2020 成果報告<前編>

愛知県内企業と全国のスタートアップのマッチングを生み出す「Aichi Matching 2020」。2019年に続き、愛知県とCrewwがタッグを組み、愛知県内企業の経営資源と、全国のスタートアップのアイデアやサービスや技術をつなぐビジネスマッチングプログラムを提供した。
そこで、2020年内に2回開催されたプログラムの成果報告会の様子を、前編と後編にわけてレポートする。
目次
・「Aichi Matching2020」から生まれたオープンイノベーション事例
 Case1、ジャパンベストレスキューシステム株式会社
 Case2、スターキャット・ケーブルネットワーク株式会社
 Case3、株式会社吉見製作所
・愛知県における事業会社のオープンイノベーションについて
 新日本法規出版株式会社

Aichi Matching2020 振り返りと成果報告

Creww 田中健策

愛知県では、2019年に続き2020年もビジネスマッチングプログラム「Aichi Matching2020」を開催しました。これは、愛知県内の企業と全国のスタートアップが、実ビジネスにつながる商談を行うマッチングイベントです。

このプログラムの特徴は、3つあります。

1つ目は、「名刺交換で終わるマッチングイベントではない」こと。参加企業は、社内課題やチャレンジしたい事業領域をスタートアップに提示し、協業提案を募り、書類選考を行います。マッチングDay当日は、書類選考を通過したスタートアップとの商談となるため、具体的な討議が行えます。

2つ目は、「本気の事業パートナーが見つかる」こと。スタートアップのエントリー項目は、単にサービスを売込むのではなく、中長期で参加企業の事業化に繋がるような協業提案を頂く仕様となります。このため、ただの受発注の関係ではなく、事業パートナーとなり得る関係構築が可能と考えています。

3つ目は、「参加企業間で成功体験やナレッジの共有ができる」こと。プログラム期間中は、セミナーやイベント、マッチングDay、本日の成果発表会などを通して、各社の成功事例やナレッジの共有を行います。これにより、愛知県下のオープンイノベーションコミュニティを形成させる役割も担っています。

こうした特徴を持つ「Aichi Matching2020」は、参加企業のエントリーからスタートアップの提案募集、オンラインでの商談会「マッチングDay」までを一つとし、年2回開催(Batch1とBatch2)しました。これより、結果を報告します。

まずBatch1では、2019年からのリピーター8社を含めた13社の愛知県内企業が参加。スタートアップから170件の提案(79社)が集まり、書類選考を通過してマッチングDayに進んだのは67件。その後、協業や業務提携をスタートさせていたのが2件、具体的な協業に向けて協議中が10件、協業の可能性を探って協議中が15件、協業終了が40件という結果になりました。

Batch2では、Batch1からのリピーター6社を含めた16社の愛知県内企業が参加。スタートアップは201件の提案(85社)が集まり、マッチングDayに進んだのは78件。オンライン商談会が終わったタイミングで具体的な協業に向けて協議を進める意向があったのは、55件で、協業終了が17件という結果になりました。

昨年度(2019年度)と比べると、参加した愛知県企業数やスタートアップ数、エントリー数、マッチング件数等、すべての指標が大幅に増加していることがわかる。回を重ねるごとに、内外からの注目が高まってきているため、このような取り組みを継続することで、エコスステムの早期構築が実現できると考えています。

参加者のアンケート結果

スタートアップのアンケート結果

では具体的にどのような協業が生まれたのか、参加企業の中から3社に報告してもらいます。

「Aichi Matching2020」から生まれたオープンイノベーション事例

Case1、ジャパンベストレスキューシステム株式会社
経営企画室 野村智美

ジャパンベストレスキューシステムは、「困っている人を助ける」を経営理念に掲げ、日常生活における“お困りごと”を解決するサービスを全国に展開しています。

主な事業は、提携先のお客様向けに揃えたサービスコンテンツを提供している会員事業や、家財保険、スマホ保険等様々な商品を開発している保険事業、住宅設備の延長保証サービスを展開している保証事業があります。

今回、Aichi Matchingには、「生活の豊かさ・安心に繋がるサービスの創出・発掘」をテーマとして参加し、スタートアップが持つテクノロジーやコンテンツなどに、弊社のリソース(保有会員295万人、提携販路3000社、サービスインフラ2200社)を掛け合わせることで、新規サービスの開発や既存サービスへの新しいサービスコンテンツの組み込み、また、IoTを活用したサービス運営による顧客満足の向上につなげたいと考えました。

プログラム参加後は、連携可能性のあるスタートアップ20社をリストアップし、そこから8社に絞り商談会でディスカッションを実施。更なる協業可能性を探るため、6社を関連事業部へ紹介し、より協業可能性を感じた3社と協業に向けた具体的なディスカッションを開始するに至りました。

1社目 :Secual
Secualは、スマートセキュリティやスマートタウンに関わる製品の企画から開発、販売などを行っているスタートアップです。不動産会社と提携し、分譲・賃貸物件の入居者向けのサービスや、物件オーナー・管理会社向けのサービスを提供している事業部との協業を考えました。

Secualのスマートセキュリティサービスと、弊社のサービスを掛け合わせることで、提携している管理会社の“痒いところに手が届く”サービス組成に取り組んでいます。

2社目:KUROFUNE
KUROFUNEは、外国人の人材紹介・人材定着事業や、日本在住の外国人労働者に所得補償保険を提供している会社です。

弊社のグループ会社である外国人のお部屋探しや入居後のトラブルに対応したサービスを提供しているワールド・ワイド・サポート株式会社(以下、WWS)との協業に向けた協議可能性を模索しています。

3社目:ONE TERRACE
ONE TERRACEは、高度外国人の人材紹介、外国人採用支援、オンライン日本語教育事業を展開している会社です。

こちらもKUROFUNEと同じく、WWSとの協業を考えており、現在は連携可能性のある取引企業を相互に紹介しつつ、留学生向けのサービスを組成できないか、検討を進めています。

Aichi Matching2020の振り返り
今回のマッチングイベントで勉強になったのは、スタートアップならではのスピード感で唯一無二のサービスを構築し、大胆に市場に参入する姿勢です。そんな大胆さを持ちながら、スタートアップは思想からサービスデザインまで一気通貫で、綿密に練られた事業を構想されていました。

事業会社はスタートアップの思想や事業を深く理解するのはもちろん、それに共感し支援することが大切だと思いました。

一方、課題として残ったのは、弊社の提供リソースの活用です。不動産会社を中心とした提携販路3000社というリソース以外は活用できておらず、協業に繋げられなかったため、あらためて自社の強みを棚卸し、次の協業に活かしたいと思います。

※2021年3月時点の状況及び情報です。

Case2、スターキャット・ケーブルネットワーク株式会社
DC事業本部 クリエイティブ事業部 鈴木健之

スターキャットは、名古屋を拠点に展開するケーブルテレビ会社です。特徴は、ケーブルテレビの放送事業とインターネットを提供する通信事業に加えて、映画の宣伝・配給・興行を手がける映画事業も営んでいること。この3つの事業を通じ、「生活情報メディア」になることを目指して成長し続けてきました。

昨年、新規事業を考えるクリエイティブ事業部を新設し、新規事業の立ち上げに強いコンサル会社とのワークショップを実施しました。その結果、既存事業である映画事業において新しい映画エンターテインメントを軸に新規事業を検討することになったのです。

実際、2020年の夏には、屋外で新しい映像エンタメを楽しむ「STAR SQUARE」と、若手映像クリエイターを世に出すことを目指した「NAGOYA NEWクリエイター 映像AWARD」を設立。

どちらもスタートアップとの協業で生み出した事業なので、さらに新しい映像体験をスタートアップとの協業で創造できないかと期待し、Aichi Matching2020に参加しました。

今回のAichi Matching2020でマッチングしたのは、日本初のVRに特化した国際映画祭「Beyond the Frame Festival」の運営やVR映画の製作・配給を行なっている東京のスタートアップCinemaLeapです。

目的も熱量も同じだったので、すぐに協業に向けた話し合いが始まり、VR映画を製作するプロジェクト「STARVAT VR LAB」を立ち上げました。

VR技術を用いたコンテンツは世界的に注目されており、三大国際映画祭でもVR部門が新設されるなど、将来が期待されている市場です。台湾をはじめ、世界各国でVR映画が作られていますが、日本は作り手が少なく、サポートや資金が不足しているのが現状。

そこで「STARVAT VR LAB」では、映画監督となる作り手を発掘し、VR映画で有名なプロデューサーと撮影陣がサポートしながらVR映画を製作します。そして、完成したVR映画は2022年度のカンヌやベネチア、釜山などで開催される各国の国際映画祭のVR部門に出品。ノミネートを目指します。

同時に、VR映画製作のノウハウを蓄積してVR映画にマッチする企画や演出手法を検証し、2023年からはVR映画の配給まで実現させたいと考えています。クリエイターを発掘・育成し、新しい市場と商流を確立させて、新しい映画エンターテインメントを創造する。必ず実現させたいと思っています。

Case3、株式会社吉見製作所
代表取締役社長 坂一宏

吉見製作所は、「形状記憶合金」を釣具やヘルスケア用品、アクセサリー、学習教材、医療機器、航空宇宙部品などに加工している会社です。自社商品も開発・販売しているので、その材料を活用して少量でも試作依頼に対応できることが特徴。また、関係する業界も幅広いという強みがあります。

Aichi Matching2020に参加した理由は、独自のネットワークでは出会えない人たちとの出会いを求めたから。形状記憶合金の知識や加工技術を持つ人材と材料、幅広い領域の企業や大学、研究機関とのネットワーク、釣具の全国の販売網を提供することで、新しい商品の創出や既存商品の付加価値などにつなげたいと考えました。

実際にマッチングしたスタートアップは複数社あり、たとえば弊社が開発している形状記憶合金を活用した「腰サポーター」との協業提案は2社から寄せられました。1社とは「姿勢矯正アプリ」との協業を、もう1社とは介護施設向けレンタル業との協業を協議中です。

それだけでなく、スタートアップからの提案を聞いて、弊社がつながりを持つ企業や大学に橋渡ししたケースもありました。

たとえば、画像解析技術を持つスタートアップと特殊な金属を扱うスタートアップは、釣り業界の企業に紹介しています。前者は、釣った魚を画像解析技術で瞬時に計測できるサービスにつながる可能性があり、後者は新しいルアーの開発につながると考えたからです。Aichi Matchingを超えたマッチングを創出できたのかなと思っています。

今回Aichi Matching2020に参加して良かったのは、スタートアップのエネルギッシュさと柔軟な考え方に触れられたこと。これはとても刺激になりました。

新しいビジネスを創出するには社外での出会いが必須ですし、すぐに成果が出なくても、人とのご縁がつながれば生まれてくるものがあるはずです。だから、今後も積極的に社外と協業し続けたいと思っています。

愛知県における事業会社のオープンイノベーションについて

新日本法規出版株式会社
総合経営企画室 新規事業開発課 課長 河合嘉之

新日本法規出版は、600種類に及ぶ加除式書籍や単行本など、専門家向けから実務書、暮らしに役立つ一般書籍まで、法律に関わる書籍を幅広く出版している会社です。

弊社がオープンイノベーションに取り組む背景にあるのは、出版業界の厳しい状況。雑誌や書籍は20年以上前から売り上げが減少しており、紙の出版の減少分を電子書籍でカバーできず、市場自体が縮小しているんですね。

そこで、新たな事業の創出は不可避となり、2011年に新規事業開発課を新設。「新日本法規オンライン(現LEGAL CONNECTION)」と「Westlaw Japan」という2つの事業を立ち上げました。しかし、そこで手詰まりとなってしまったため、部署内だけでなく社内から広くアイデアを募ろうと、社内ベンチャー制度を作りました。

結果、アイデアの「数」は集まったのですが、同じ会社の中で働いている人たちから出てくるアイデアは同質化していたんです。そこで、文化も背景も違うスタートアップのアイデアに期待して、2018年からアクセラレータープログラムを実施するようになりました。これまで、愛知県のプログラムを含めて6回のアクセラに参加しています。

オープンイノベーションで苦労した点

オープンイノベーションに取り組むにあたり、最初に苦労したのは、管理職クラスから総論賛成・各論反対があり、なかなか協力を得られなかったことです。

なぜなら、新規事業が必要であることは分かっていても、既存事業を運営する部署に負担がかかって職責達成を阻害するのではないかという心理が働いてしまうから。理解を得るまで、何度も丁寧に説明する必要がありました。

また、スタートアップとの協業にもギャップがあって、「生きている時間軸」の違いを理解するまでは苦労しました。

それは、スピーディーなやり取りが必要ということではなく、我々は100年企業を目指しているけれど、スタートアップは1年後の存続が不透明だから、意思決定のスピードが圧倒的に違うということ。これが理解できないうちは、意見がよくぶつかりました。

一方で良かったのは、社内の閉塞感を払拭できたこと。売り上げが落ちていると閉塞感がありますが、新たな試みに対して期待や賛同の声を多く得られるようになり、新しいチャレンジを称賛する雰囲気を醸成できたことは、会社にとって良い変化だったと思います。

また、スタートアップのスピード感に合わせたスピーディーな事業開発ができるようになり、同質化したアイデアから脱却できたのも良かった点。今では複数社との協業によって新しい事業をいくつも生み出すことにつながっています。

オープンイノベーションに取り組むにあたってのコツ

事業会社がオープンイノベーションに取り組むにあたってのコツは3つあり、1つはスタートアップの成長ステージの特徴を理解することです。シードやアーリーなどステージごとにどんな特徴があって、何を求めているのかを理解すると、スムーズな協業につながりやすいと思います。

2つ目はロジカルに考えすぎず、ときには思いや情熱ドリブンで進めること。収益性や成長性、競争優位性などをロジカルに考えるのは大切ですが、協業によって世の中にまだ確立されていない新しいマーケットを取りにいくんだ、という思いや情熱も大切です。

そして3つ目は、覚悟と楽観。スタートアップは人生をかけて新たなビジネス創出に挑戦しています。だから、事業会社の担当者に覚悟がないとうまくいきません。覚悟を持って取り組みつつ、楽観的に構える。この両面を持つことが大切ではないでしょうか。

事業会社のリソースに、スタートアップのアイデアやテクノロジーを掛け合わせると、スピーディーな事業開発が可能になります。しかも、クローズドではないオープンイノベーションに取り組むことで、社内外に向けてわかりやすいメッセージを発信することにもなります。

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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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