※この記事は、2016年8月24日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。
株式会社エル・エス・ピー OWNERS運営統括責任者 谷川佳氏
――2015年末、Facebookのタイムラインで「OWNERS」を見かけました。SNS等を通じて一気にサービスが認知された印象があるのですが、現在に至るまでの経緯を教えてください。
2015年6月頃から、OWNERSリリースのために勤めていた会社を辞めて、全国の生産者の元をまわり始めました。事業単独で起業するか事業として企業に売り込むかを模索していたのですが、以前より個人的にお世話になっていた株式会社エル・エス・ピーから支援を受けて、新規事業としてスタートすることになりました。
2015年12月1日にOWNERSをリリースした際、SNSの拡散やWBSなどのテレビ露出で一気に認知が広まりましたが、そもそも人に伝えたくなるようなサービスではないと継続していくのは無理だと思っていました。消費者と生産者をつなげる、という点では既に有名なサービスもある中で、新しい「オーナー制度」という切り口に興味を持ってもらえて良かったです。
――「オーナー制度」としての展開しようと思った理由はどこにありますか?
もとより、一次産業を活性化させて、人の生活を変えるビジネスをしたいというのがありました。
OWNERSを始めるまでは、自治体の企画やPRを行う会社に勤めていたのですが、そうしたプロジェクトベースの企画だと、どうしても短期的な盛り上がりだけで終わってしまったり、自治体の予算の都合で打ち切られることもあったりと、どうしても長期的な関係を築くのは難しかったんです。
一方、「オーナー制度」というもの自体はもとより生産者の間ではありました。しかし、いわゆるブランドのある産地でないと売れないとか、一区画で収穫できる生産物が何十キロも大量に届いたりと、現代のライフスタイルにマッチしていないと感じる部分が沢山あったので、なんとかこの制度を活かせないかと思い立ち上げました。
――これまでのオーナー制度との顕著な違いはどこでしょうか?
これまでのオーナー制度はそもそも紹介経由でないと生産者を見つけられなかったり、登録もFAXでしかできなかったりと、面倒な手続きの中で生産者を探す必要がありました。また登録をしても、収穫の時期に生産物が自宅に届くだけで、自分がオーナーになった生産物ができるまでの過程やそのプロセスが見えないものが一般的でした。OWNERSでは、そこを購入者の立場から見直し、どういう感情になれば、その生産物により「関わっている」という感覚を持てるかをを紐解いてサービスを組み立てました。
そこで生まれたのが「コミュニケーション」ができるという点で、実際のOWNERSではコミュニケーションページで、生産者から定期的に現在の生産過程や収穫の様子などが報告されます。そこにオーナーがコメントをして、生産者とやり取りすることもでき、生産者とオーナーの間に、いい関係が生まれ始めています。
オーナー特典の中には、登録した生産物が届くだけではなく、現地で生産者の収穫の手伝いができる「体験」を含めたプランもあります。普通にお店で買うよりも、生産者と購入者の距離をぐっと近付けることができました。
結果、商品ではなく、オーナーになるという体験やライフスタイルを楽しめるサービスになったと自負しています。
――現在、参加している生産者はどのような基準で提携されたのでしょうか?
もとからコネがあったわけではないので、立ち上げ時は、電話営業から始めました。
いわゆる「ECサイトを開きませんか」という営業の電話はよくあるようで、インターネットを通じて.. という言葉だけで拒否反応を示して切られてしまうことも沢山ありました。OWNERSは既存のECサイトではないということや、自分の想いをしっかりと伝え、ビジョンに共感してくれた生産者さんとパートナーを組みました。とは言っても、サービスリリース前は300件以上にアプローチしてパートナーとして組むことが出来たのは5件。数より内容で勝負しようと思っていましたが、それにしても苦戦しました。
リリース後の反響もあり、その後は全国の生産者の方々から「自分たちもOWNERSでオーナーを募集できないか」と連絡をいただくことが増え、現在では掲載待ちが出るようになっています。
行政だと平等性の担保が必要になるので、普通の生産者もこだわり抜いている生産者も一緒に扱わないといけないことが多いのですが、OWNERSでは、生産者の方が持つこだわりや、生産されるまでの物語の面白さで勝負できる方に絞ってお願いしています。

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