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金曜日, 2月 3, 2023

“治療”を“予防”に。ゲノムクリニックが語る、健康長寿都市・柏の葉キャンパスの魅力

千葉県柏市・柏の葉キャンパス駅に隣接する「31VENTURES KOIL」。コワーキングスペースとオフィススペース、さらにファクトリースペースを備え、地域に開かれた施設としてオープンイノベーションの可能性を広げている。この31VENTURES KOILで2019年4月にオフィス兼ラボを開設したのが、ゲノム遺伝子を読み解いて特定のがんの発症リスクを判定する事業を行う「株式会社ゲノムクリニック」。どのような可能性を秘めた事業なのか、またなぜ柏の葉キャンパスを選んだのか。三井不動産の西林加織をまじえ、代表取締役の曽根原弘樹氏に聞いた。
※この記事は、2015年12月10日、31VENTURESにて公開された記事を転載しています。

コンテストで出会い、KOIL内にクリニックを開設

曽根原 弘樹 /株式会社ゲノムクリニック 代表取締役医師・博士
西林 加織 /三井不動産株式会社 柏の葉街づくり推進部 ベンチャー共創事業部 事業グループ主事

三井不動産との出会いや印象を教えていただけますか。

曽根原:最初のきっかけは、三井不動産さんが共催しているAEA(アジア・アントレプレナーシップ・アワード)にエントリーしたことですね。コンテストなどに出た経験はほとんどなかったので、このときにたくさんのベンチャーの方と出会えたことや、刺激的な世界に飛び込めたことは大きな財産になりましたし、プラットフォームづくりをされている三井不動産さんは素晴らしい企業だなと感じました。

西林:AEAは2012年から行っているもので、曽根原さんに出場いただいたのは2017年でしたね。この年に初めて「柏の葉賞」という賞を創設したのですが、この「柏の葉賞」を受賞されたのが曽根原さんのゲノムクリニックでした。一般的なベンチャーコンテストではなく、せっかく柏の葉キャンパスという街で行っているものなので、この街のコンセプトである「環境共生都市」「新産業創造都市」「健康長寿都市」にマッチする方に賞をお渡ししたいと考え、柏の葉賞が生まれました。プレゼンテーションを聞いて、ゲノムクリニックのプロジェクトはまさに「健康長寿」「新産業創造」にぴったり。特に病気を「治療する」のではなく「予防する」という観点が当社の想いとも合致していたので、満場一致での授賞になりました。

曽根原:その後は、ゲノムクリニックを開設する際にこの31VENTURES KOILのオフィスを紹介していただきました。それから、実際に遺伝子解析を行うラボが別の場所にあるのですが、そちらも三井不動産さんに紹介いただきました。31VENTURES KOILにあるオフィスでは実際に検査を希望する人をお招きしてのカウンセリングや検査内容の説明にフィードバックを行っていますが、ラボは水道や換気扇などの設備が必要なため、別の場所に設けました。オフィスは駅からも近いので、アクセスしやすいのが魅力ですね。

治療ではなく予防のために。
がん発症リスクを知るゲノム解析

ゲノムクリニックで提供されている「BRCA seq(ブラカ・シーク)」は、疾病リスクを判定する既存の遺伝子検査などとはどのような違いがあるのですか?

曽根原:まず、「BRCA Seq」は乳がん・卵巣がんの抑制に深く関わる遺伝子である「BRCA」という遺伝子の配列を読み解き、そこからデータベースと照合して発症リスクがあるかどうかを判定する検査です。ゲノム解析という分野が広まりはじめたのはここ5年くらいのことで、日本でも関心が高まっています。いわゆる消費者むけ遺伝子検査では、個人間によくある遺伝子配列の違いを表面的に見ています。ですから、疾病を予測する精度もまだまだ低い。一方、我々が行っている検査では遺伝子全体の配列を読み解きますので、より精度の高い判定が可能です。また、検査を受けた人のデータはご同意が得られた場合、データベースに蓄積されていき、今後の判定精度の向上に役立てられます。3万円台(税抜)という非常に安い価格でご提供できたことも特徴です。

西林:遺伝子検査についてはいろいろなサービスがありますが、曽根原先生の行っている「BRCA Seq」に特に期待していることの1つは“現役の医師による検査である”ということ。医師自らがベンチャーをたちあげて、対面でカウンセリングを行い、医学的根拠にもとづいて検査結果を教えてくれるという点には大きな信頼感もありますよね。

曽根原:判定の結果、もしも発症リスクが高いということがわかった方には適切な医療機関に関する情報提供や、詳細な検査についてご説明するなどのフォローも行っています。

西林:普通だと、実際に発症するまでがんの有無はわからないものですし、定期健診を受けていても日常生活の中で発症してしまうと意味がありませんよね。

曽根原:まさにその通りです。ですが、ゲノムクリニックの判定結果があれば、いずれ訪れるかもしれない発症に対して対策を講じることもできますね。私は千葉大学医学部附属病院所属の医師でもあるので、適切な医療機関やとるべき措置をご提案できます。

「愛着のある街です」学生時代から過ごした
柏の葉キャンパスの魅力

曽根原さんご自身として、この街にはどんな魅力を感じていますか?

曽根原:千葉大医学部に入る前には東大大学院で遺伝子に関わる基礎研究をしていたのですが、その頃に柏の葉キャンパスで3年ほど研究をしていました。当時はららぽーと柏の葉ができたばかりで、仲間と「なんだなんだ!」って見に行った記憶があります(笑)。思い出も多くて、柏の葉の発展とともに学んできた……とても愛着のある街ですね。

KOILについてはいかがですか? ここにオフィスを構えようと思った決め手になったポイントなどがあれば教えていただけますか。

曽根原:雰囲気がとてもいいんですよ。いわゆる「オフィス」という固い空気はありませんし、オープンな感じが気に入っています。他のオフィス利用の方やコワーキングスペースを使っている方とも、あれこれ話したりすることはありませんが、姿を見かけたりすると「お互い頑張っているんだな」なんて感じられたりもします。それから、カフェ(CAFE AGORA)もお気に入り。気分転換がてら論文を読んでくつろいでいます。

西林:私たちも、ここにぜひゲノムクリニックさんの拠点を設けてもらいたいという思いがあったんです。というのも、31VENTURES KOILの良さは垣根なく誰でもアクセスできるところにもあると思っていて。カフェもありますし、オフィス利用者でなくても気軽に訪れられる場所なので、いろいろな人がカウンセリングに訪れるであろうゲノムクリニックさんには合うんじゃないかなって。

曽根原:確かに、家族連れの方なんかもAGORAで食事されているのを見かけますね。

西林:31VENTURES KOILは“いろいろな人が出会い、交流できる場”をめざしてつくられた場所なので、それこそファミリーの方やオフィス・コワーキングスペース利用者の方、それから近隣の大学キャンパスにいる研究者や病院のドクターなど、立場やバックグラウンドの異なる人がここで出会って、そこからまた新しい可能性が生まれていってくれることを願っています。

多様な“知”が集まる立地を生かして、
今後も成長を続ける柏の葉キャンパス

KOILという場に大きな可能性を感じるお話もあったところで、柏の葉キャンパスエリアの今後の可能性についてお聞かせください。

西林:柏の葉はもともと東京大学や千葉大学、国立がん研究センター東病院、それから産業技術総合研究所など、最先端の研究や多彩な技術が集まっているエリア。この魅力を活かした街づくりをしていきたいと考えて「柏の葉スマートシティ」構想を推進しています。これまでの「知」の集積は柏の葉ならではの恵まれた魅力です。それらの「知」を街の中に広げて、根づかせていくことが目標です。

曽根原:柏の葉という立地を考えると、やはり国立がんセンター東病院があることは大きなアドバンテージ。がん研究においては国内の大きな拠点のひとつでもありますし、がんゲノム医療の中心として発展していくはず。また、医師は意外と起業に積極的なんです(笑)。私の同期でも独立して起業した医師が何人かいますし、これからもっと大きな波になるのではと思いますよ。

確かに、医療やヘルスケアに対する関心は高まっていますし、ビジネスチャンスとしても開拓しやすいかもしれません。

曽根原:例えばAI技術なんかも、医療技術の進歩に密接にかかわってきます。そうなった時に、医師は幅広い医療知識を備えているので、さまざまな分野に対応できると思います。AIを用いた画像診断技術がいくら進歩しても、それを正しく読み取って活用できる知識がないともったいないですよね。

ますます医師が忙しくなりそうな気もします(笑)。

曽根原:そんなことはないですよ(笑)。例えば初期のがんと進行してしまったがんでは治療の患者さんへの負担だけでなく、手術の難しさも大きく変わります。初期のがんであれば大きな負担なく治せることが多いので、皆さんがこまめに検査を受けて早期発見・治療に取り組んだり、「BRCA Seq」のような検査でご自分のリスクを把握・予防したりといった行動で、医師にかかる負担も軽減することができるんです。ですから、健康診断や検査をこまめに受けて、ご自身の健康への関心を常に保っていただけたらと思います。

ヒトの遺伝子は約22000個。
この解析をさらに進めたい

ゲノムクリニックとしては、今後どのような展望をお持ちですか。

曽根原:曽根原 当社としては、2つの面での成長を考えています。まず1つめは、「BRCA Seq」をもっと多くの人に知ってもらい、受けてもらうことですね。例えば今は対面カウンセリングのみでの対応ですが、オンライン対応などで遠方の方にも受けていただけるようにしたいですね。もう1つは、判定に使える遺伝子数を増やすこと。つまり、検査内容をさらに充実させることです。今は2つの遺伝子に着目して乳がん・卵巣がんのリスク判定をしていますが、人間にはおよそ22000個の遺伝子があります。これらすべてにどんな意味があるのかを見つけ、最終的には22000個すべての遺伝子機能を解明したい。もちろん大きな努力を要しますが、病気を予防し介入するために役立つ情報が増えます。リスクに対して予防措置をとる医療を「先制医療」といいますが、これがこれからの医療のいち分野としてますます成長していくと考えています。

西林:ここ柏の葉では場所や資本、ネットワークを提供できる企業と、フットワークや発想力、そして技術力に優れたベンチャー企業が手を組むことで、どんどん新しいコラボレーションを生んでいきたい。そんな好循環が生まれる街にしていきたいですね。

柏の葉キャンパスに住めば、知らないうちにどんどん健康にまつわる知識や関心が高まっていきそうです! 本日はありがとうございました!

執筆
31VENTURES 
三井不動産ベンチャー共創事業部「31VENTURES」の公式WEBサイトhttps://www.31ventures.jp/column/
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