12.8 C
Japan
木曜日, 6月 4, 2020

「未来の仕事」を働き方という視点からカタチにしていく

株式会社オールアバウトのいちプロジェクトであるオンラインショッピング事業「スタイルストア」と専門家マッチング事業「プロファイル」から始まった株式会社エンファクトリー。エンファクトリー自体は2011年の設立になるが、そこでの事業は2005年からスタートしたものだ。
理念として掲げている「専業禁止」「複業推奨」がクローズアップされがちな同社ではあるが、事業を軌道に乗せるまでの流れについて、代表の加藤健太氏に聞いた。

エンファクトリーのスタートは大きなマイナスを抱えた事業だった

組織のいち事業として始まり、子会社化、親会社を変えてのスタートを切り、独自の成長曲線を描くエンファクトリーですが、ひとつの会社として歩み始めるまでの経緯を教えて下さい。

2005年にオールアバウトの広告以外のビジネスモデルとして、オンラインショッピング事業「スタイルストア」と専門家マッチング事業「プロファイル」が始まりました。丁度リーマンショックの頃に、この二つの事業が大きなマイナスを抱えていて、新たな出資先を見付けるということで分社化しました。コスト構造や業務改革、商品ラインナップの見直しやマーケティング施策の大幅変更等により黒字化。現在も増収増益を継続し、いよいよこれからというところまできました。

大きなマイナスを抱えた事業でありながら、辛抱強く取り組んで、ひとつの会社として成立させてきた原動力は?

私自身は元々、社長や上場を目指していたわけではなく、一緒に働く人たちにとって、より良い環境を提供しようとし続けた結果の今だと考えています。

最初の10年間はリクルート、CFOとしてオールアバウトで10年。期せずして10年毎に大きな転機が訪れているわけですが、その流れの中での今であり、2011年からの10年は自分の考えてきたことを形にする10年だとも考えています。

私が在籍していた当時のリクルートは裏側がいろいろ大変な時期だったのですが、そもそも大企業ではそのブランドや組織の力もあって、仕事が出来ると錯覚しがちです。もちろん個人として優秀な人材はたくさんいますが、スタッフ職で会社の動き方を裏から見ていると、それが危ないと思いました。

オールアバウト時代はそれを踏まえて、時代背景もあり、人材の自立を応援していましたし、CFOの時にはそのスタンスで人材ポリシーをつくっていました。とはいえ、社内セミナーや401Kの導入などでそれを促しても、その効果は一時的なものです。自分が代表取締役となったエンファクトリーで、「個人の生きる力」というところにフォーカスした事業を行うだけではなく、社外でするビジネスを奨励することで、ビジネスに対する当事者意識や経営者意識、自分の名前で繋がっていくネットワークなどを持っていってもらっています。

株式会社エンファクトリー 代表取締役社長 加藤健太

人がどのように働いていくことが幸せか? から考える事業

従業員の働き方から考えていくのは、スタッフ職を経験されている加藤さんならではの事業展開ですよね。

時代の流れとしても、大手企業でも突然の早期退職や倒産があり、「明日はどうなるか分からない」というのが正直なところだと思います。そういう流れのなかでは、組織にいても、ひとりになっても、生きていける力があることが必要です。幸い、インターネットもあり、個人でできることは増えていっています。そのため、力があるひとは、より快適な、自分に合った労働環境を求めて組織の外に飛び出していきがちです。

組織が個人に対して、その自立を「許容できなかった」という状態を作ってしまうと縁が切れてしまいます。力をつけた個人と連携していくというのが、これからの組織と個人の在り方のひとつです。自立した個人は、お客さんにどういう価値を提供して、それが実際幾らになって、最終的にどうやって儲けるかといったことを考えます。それは、企業経営をやっているのと一緒なので、会社にとってはそのプロ意識や意思決定の力が活かされます。

パラレルワーク(複業)制度とフェロー制度で個人の選択が尊重される環境を提供しています。この二つは個人が自立し、長い目でキャリアを考え、会社も受益者になるべく取り入れた仕組みだと考えています。自分を軸にして仕事を考えていくことで、会社での働き方にもいい効果があります。

そういった経緯でエンファクトリーが動き始めてからは「専業禁止」というのをスローガンにしましたが、禁止という強い言葉を使う方がメッセージとして伝わりやすいということで、必ずパラレルワーク(複業)をやれと言っているわけではありません。「専業禁止」という背景を理解したうえで、会社の仕事に100%集中したいというのも構いません。大事なのは自分が選択することです。それをまず自社で実現しようというところです。

フェロー制度についても、もう少し詳しく教えて下さい

独立後も当社の名刺を持って活動することができます。それによって個人は「会社の信用」を維持したまま独立できるし、会社としては独立できるような優秀な人と、これまでの信頼や関係性を元に仕事を依頼できます。そこには契約のような強制力はなく、言ってみれば苦労を共にしてきた信頼できる関係があります。

組織と人、人と人が信頼で繋がる社会の実現

エンファクトリーの事業自体も個人支援になるものが多いですよね

そうですね。事業内容としては、プロマッチング事業、ショッピング事業、クリエイティブ事業になりますが、この共通点というのは、ローカルプレナー支援に紐付きます。ローカルプレナーというのは、クリエイター、専門家、企業に勤めながら副業などを通じて自立していこうとする個人のことです。アントレプレナーより、幅広い意味での個人事業主ですね。

そもそも人が働く環境も、時間や場所を選ばずに色々なことができる世の中になってきたので、企業の管理下に個人を止めることは難しくなってきています。会社は人を駒のように扱うのではなく、自立した個人が集まるプロ集団であることが、組織と個人の成長の鍵になります。

パラレルワークから、自分で始めた事業にシフトして独立していった社員の方との協業も機能していますか?

しています。パラレルワークや、フェローで繋がっていった縁だけではなく、パートナー企業もできてきて、その繋がりは日々自律的に拡大しています。良好なネットワークを維持拡大していくのに必要なのは、「これをやっている」と、それぞれがオープンにすることで、情報を共有していくことで、アドバイスしあえる状態になっています。

社員が辞めることは人的資産を失うことだという発想があると思いますが、IT業界は特に人材の流動が激しい業界でもありますし、この傾向は他業界にも波及しつつあると思います。そういった環境のなかでは、人に紐づくスキルやネットワークをいつでも引き出し合える状態をつくることが長い視点でのリスクマネジメントになります。社員が独立していくことで、信頼関係で結ばれた仲間が増え、必要な時に助け合えるので、とても快適ですよ。

※この記事は、2016年1月14日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

執筆
INNOVATIVE PORT編集部 
「INNOVATIVE PORT」はCreww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。
PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

Featured

新しい仕事と「STARTUP STUDIO」に同時にコミット。何歳になっても挑戦し続けたい

社会課題を解決するためのアイデアと、その事業を作り出したい個人をつなぎ、6ヶ月でプロダクトを作って事業会社に売却することを目指す「STARTUP STUDIO」。第一回目のプロジェクト「スマホでありがとうを届けるチップサービス『petip』」の立ち上げに参加したのが、Reproで働く金卓史氏だ...

社長秘書をしながら、3つの新規プロジェクトを牽引。松竹を変える起爆剤へ

演劇や映像をはじめ、総合エンターテインメントを提供する松竹。銀座にある歌舞伎座が象徴的だが、伝統を継承しつつ、実は長年新しいコンテンツや新しい体験を追求してきた、「進化し続ける企業」の一つだ。そんな松竹がグループ各社を巻き込み、2019年に初めてアクセラレータープログラムに挑戦。そのプロジェクトメンバーの公募に自ら手を挙げ、本業がありつつも3つのプロジェクトを推進したのが、秘書室・政策秘書の平岩英佑氏だ。平岩氏はどんなことを考え、どのようにプロジェクトを進めていったのか。話を伺った。

コラボに挑むスタートアップに期待する「媚びない」姿勢

※この記事は、2016年2月8日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

タテからヨコへ変わりゆく世界

以前、「会社はコミュニティ化し、仕事はプロジェクト化する」という記事をエントリーしました。あれから1年。2020年という、世界と日本にとって節目となるであろうこのタイミングで、急激に変わりゆく世界を私なりに考察し、「タテからヨコへ変わりゆく世界」という概念でまとめてみました。昭和〜平成を「タテの世界」。令和を起点とする未来を「ヨコの世界」と定義しています。 タテの世界 タテの世界とは、際限なくタテに伸びていく階層構造(ヒエラルキー)です。上と下の概念は、主従関係や強制力と相性が良く、約70年前の世界大戦時においては「国家(軍隊)」、60年前の高度経済成長期は「会社」が代表的な組織構造でした。 上から下へ働く重力は中央集権と金融資本主義を加速させ、誰かや何かとの比較を肥大化させるエンジンとなります。仕事はニュートンのリンゴのように上から落ちてきます。集団の中で、リンゴをキャッチする最も”課題解決”が上手な人間が上へ上へと駆け登り、管理がしにくい個性と美意識は同調同質の圧力に潰されていきます。 タテ型経営の行き過ぎによってビジネスパーソンは会社の歯車と化し、コンプライアンスの徹底によって決められたことしかできない、やらない思考停止状態に陥ります。地球においては資源の奪い合いと温暖化が加速化し、富と機会の二極化は国家の右傾化を招きます。これらは全て、際限なくタテに「伸び切ってしまった」社会のひずみだと感じるのです。タテを否定しているわけではありません。ただし、上と下の距離感はもはや限界に近づいているのではないでしょうか。