12.8 C
Japan
火曜日, 5月 26, 2020

オープンイノベーションを実現するために求められる人材像とは?

三井住友銀行と日本総合研究所が主催する「未来2020 二次審査会」にて行われた特別セッション「イノベーション人材の育成」 。
日本経済の再興に向けて、急務であるイノベーションを実現するために求められる人材像とはどのようなものだろうか。事業会社とのオープンイノベーション、スタートアップにおける人材ビジネスで多くの実績を持つキーパーソンによるパネルディスカッションが行われた。

多くの事業会社にとって、新しいビジネスを生み出せるイノベーション人材をいかに育成するかは大きな課題である。三井住友銀行と日本総合研究所が主催する「未来2020 二次審査会」にて行われた特別セッション「イノベーション人材の育成」では、それぞれのビジネスモデルでイノベーション人材の育成に取り組んでいるフォースタートアップスCEOの志水雄一郎 氏、ローンディール 代表取締役の原田未来 氏、Creww(クルー)取締役の水野智之 氏によるディスカッションが行われた。

イノベーション人材の育成に取り組む3社とは?

宮田:まずは、それぞれの事業モデルについてお話し頂けますでしょうか。

志水:フォースタートアップス株式会社は2016年の9月に設立しました。スタートアップデータベースというユーザベースに並ぶ国内最大の ベンチャーデータベースを保有しています。ここで、次にどのチームがスタートアップとして勝ちそうなのかということを分析やリサーチをしており、そのデータをtoB に提供すると大企業のオープンイノベーションにつながり、 toCに提供すると人のキャリアにつながる、というビジネスです。スマートニュースなどハイバリエーションのユニコーン企業への出資や千葉道場へのファンドへの出資などを行っています。3年目のベンチャーとしては珍しくお金を投資してもらう側ではなく、投資をする側にすでにまわっています。

水野:Creww株式会社はスタートアップコミュニティを作ろうということで始まったんですが、最近はスタートアップにとどまらず、大企業の方々、大企業やスタートアップに属している個人の方までスコープを広げています。 個人の人にももっと挑戦の場を提供をしよう、ということで「大挑戦時代をつくる」というビジョンで 会社を経営しています。事業のメインは、大企業とCrewwのコミュニティに登録している約4500社のスタートアップとのアクセラレータープログラムの運営です。足掛け7年で約130回開催し、500弱のビジネスシーズを生んでいます。その中でも数は少ないですが、億単位で売上につながった共創事業や、 数十億の投資につながった案件も少しずつできてきました。

一方で、大企業の方々と仕事をしていると、くすぶっている人が少なからずいることが見えてくるんです。そういった課題に対して、最近では、個人の人にも起業や転職ではない選択肢としてスタートアップスタジオのような機会を提供したいと、個人のイノベーターを集め「 creww Start up Studio」というチャレンジの場を創りました。また、7年ほどアクセラレータープログラムをやってきてノウハウも溜まってきたこともあり、アクセラレータープログラムを標準化させ、クラウド化して、トップティア以外の会社でもイノベーションに取り組めるSaaSビジネス「Steams(スチームス)」を10月から始めています。

原田:「企業間レンタル移籍」という仕組みをやっています。サッカーが好きな方はなんとなくイメージがつくかもしれませんが、そのビジネス版のようなものです。大企業の人達に約1年間ベンチャー企業に出向とか研修という形で移籍をしてもらい、ベンチャー企業の事業開発などにを取り組んでもらいます。それが大企業にとっては人材育成につながります。ある程度形が整ってしまった大企業だと、挑戦する機会は狭まってしまいます。スタートアップの方からすると、大企業の優秀な人材が移籍してきてくれることで、事業開発をどんどん推進していけるというメリットがあります。また、大企業からすると、 社内では育たないタイプの人材を育てていけいる機会となります。今現在ですとパナソニックや NTT西日本やコミュニケーションズ、変わったところで言うと経産省からのベンチャー企業移籍といった事例が出てきています。

宮田:皆さんはバラエティ豊かなビジネスモデルも展開されていると思いますが、私自身もアメリカでベンチャーキャピタルをやっています。元々は2013年にアメリカでベンチャーキャピタルを始め、今70社ぐらいに投資をしているんですが去年から日本の投資も始め、今は5社ぐらい投資をしています。
実は、アメリカだとオープンイノベーションというものは、日本ほど大きなトレンドにはなっていないんです。一方、日本では、 起業する側も投資家も非常に少ないということで、大企業側とどう関わっていくかということが大きなテーマになってきます。そのような背景から、去年からパナソニックさんと新しい事業を作る会社を作ったりしています。

どのような人材がオープンイノベーションを実現、成功させていくのか

宮田:Crewwさんはもうすでに7年間アクセラレータープログラムを実施してきた中で、成功や失敗など様々な事例をご覧になってきたかと思いますが、どのような人材がオープンイノベーションを実現、成功させていくのでしょうか?

Scrum Ventures 創業者/ゼネラルパートナー 宮田 拓弥 氏

水野:もともと素養を持っている人、いわゆる先天的なタイプの方だと環境さえ与えてあげれば自ら輝きます。最初からそういった素養のある人は活躍します。ですが、 大抵の人はそうではありません。その場合、イノベーションを起こす環境の中に身を置くことによって、取り組みを始め半年後ぐらいにインプットする情報が増え、変化が見えてきます。何をしなきゃいけないのか、なぜやるのか、どこに行くのか、そのようなことをよく考え、本質的な会話が増えてくる人は、結果として大企業の中でマネージャーポジションに上がったり、新しい新規事業の担当責任者に抜擢されたりしてきています。

宮田: ビジネス系、技術系、性別、年齢や経験などで、何か成功しているパターンに特徴的な属性はあるのでしょうか?

水野: Crewwの実績で見ると、35歳以下の若い人が圧倒的に多いです。変わろうという意思がなければまず変われないです。社会にとって、企業にとって、組織にとって、メンバーにとって、を主語に考えている方は、何歳であろう変わろうという意志が強いので、イノベーション人材に成長していきやすいです。一方、自分を主語に考える方は守りの姿勢になってしまうため、イノベーション人材には変われないパターンが多いと感じています。

企業間レンタル移籍という人材育成手法

宮田:企業間レンタル移籍って、かなり変わったモデルだと思いますが、 そういったモデルを思いつかれた背景と実際行ってみてどんなパターンが成功しているか2点をお聞かせください。

原田:大企業とは全く縁のないキャリアを歩んでいて、新卒で当時アルバイトをキッカケに入社した会社に13年間在籍しました。その後、転職をしたのですが、ずっとやってきた会社を35才の時に離れた時、一つの会社にしかいなかった時に、実は気づけていないことがたくさんあったんです。これってすごく勿体無い、ということに転職して初めて気がつけました。 ただ、転職をしないと外に出れない、というのも違う意味で勿体無い。であれば、辞めずに外を見る機会が作れないかなということで、今のビジネスモデルを考えました。サッカーにはレンタル移籍という仕組みがあるな、それをビジネスに代用することができるのではないか、という発想で起業しました。

成功例で言いますと、実は今、70社ぐらいのスタートアップに企業間レンタル移籍を導入してもらっていますが、大手企業から移籍してきている人は予想以上に頑張ってくれるという感想が出るんですね。スタートアップ企業は例えるならゴールのない世界で走っているようなものです。一方、企業間レンタル移籍として大企業から期待を背負って入ってきた人は、半年から一年で元の企業に帰らなければいけないため、マラソンを走ってる人の横で100mを走るような馬力の出し方をするんです。もちろん人選は大事なんですが、レンタル移籍をした方が、かなり気持ちを込めて働くため、結果としてイノベーター人材に成長していくというケースが多いです。

どのような人材が本当のスタートアップイノベーションを作れるのか

宮田:オープンイノベーションの必要性は求められているものの、志水さんが様々な起業家と長くに渡り関わっていた中で、スマートニュースとかメルカリなどの伸びているユニコーン企業にいる人と大企業の側にいる人との違いはどこにあるのでしょうか。また、どんな人が本当のスタートアップイノベーションを作れると思いますか。

志水: どっちでも活躍する人に違いはないような気がしています。ビジネスゲームで買った人が伸びているだけで、大きな違いはないと思っています。例えば、昭和の話をすると、トヨタやソニーは創業当時はスタートアップ、ベンチャー企業だったわけです。勇気を持った経営者のところにメガバンクが大きな資金を渡して、大きな勇気を支えた。そうすることで世界で勝負できる会社へ移行した。という流れだったと思うんです。これが平成時代どうなったかと言うと、勇気を持った人を生み出す仕組みが日本にはなかった。
ただ、シリコンバレーや深センの事例を見て、「米中は人とお金が成長企業に集中することで強い会社が生まれており、その流れが国家の競争力につながっている。それをどれだけのサイクルで回せるかが国の競争力なのだ」という情報をインプットできたスタートアップだけが勝負をした。 というのが今までの日本なんですね。
活躍するかどうかは、インプットしてディシジョンできた人から順に勝負をしてきたというだけで、それは大企業の中で活躍する人とベンチャーで活躍する人とでは大きくは違わないと思っています。

フォースタートアップス株式会社 / 代表取締役社長 CEO 志水 雄一郎 氏

ただ、そうは言っても、日本でグロースしてるチームはまだ世界で勝ってはいないという事実があるんです。世界で勝っていないチームで活躍している人を議論しても、同じような人を集めても、正解は出てこないと思ってます。ですので、大きなゲームで日本の成長セクターに人とお金を集中させて、さらにもっと大きなゲームを起こし、2030年にインドに抜かれないように、2050年にブラジル、メキシコ、インドネシアに抜かれないような国にするべく、新しい産業をつくるために、みんなで勝負したいという風に思いますね。

アクセラレータープログラムはイノベーター人材育成のカギをにぎっているのか

宮田:アクセラレータープログラムというモデル自体がアメリカでも日本でもかなり成熟してきている中、一方でスタートアップスタジオなどの新しいモデルが出てきています。水野さんは大企業とアクセラレーターに参加するスタートアップ企業の両方を見ていると思うんですが、「オープンイノベーションの人材」というキーワードで言うと、アクセラレータプログラムのようなモデルに成功があるのか、それともCrewwが取り組み始めたスタートアップスタジオやSaaSのような新しいエボリューションに成功のカギがあるのか、 今のCrewwの考えを教えてください。

水野:「成長産業を見出してそこに人とお金を集中させていく」ようなことは大企業や銀行だからできることだと思うんです。オープンイノベーションの人材育成という観点から、Crewwはどちらかと言うと思想としてプラットフォーマーですから、 トップティアではない産業も含め、「みんながイノベーター人材に成長していく」というところ目指していきたいと思っています。成長可能性の高い企業を深掘りする部分は専門の方々にお任せし、「声や手、機会の届かない所にいかに届けるか」というところに機会をつくっていくことが僕らの思想です。

Creww株式会社 取締役 水野 智之 氏

そういう意味では、地方をはじめ、オープンイノベーションの可能性について知られていない方々に、「こういう世界があるんだよ」というインプットの機会をリアルな勉強会やセミナーだけではやはり足りないので、実際にアクションを起こす機会として提供したい。そんな思いでSaaSモデルにしてみました。

宮田:僕らが見てきたアメリカだと、もうすでにオープンイノベーションは誰もが行っているので、イケている会社のオープンイノベーションの場にしかイケてるベンチャーは集まらないという現状なんですが、さっきの話ですと、「イケている会社だけではなく、ティア2、ティア3 の企業にもイノベーションのプラットフォームとしてオープンイノベーションという手法を使って欲しい」ということなのでしょうか ?

水野:そうですね。やっぱり規模の話で言えばトップティアには勝てないかもしれない。ですが、全国には素晴らしい会社がたくさんあります。ALL JAPAN じゃないですけれども、そういう会社ももっともっと新しい事業を自分たちで生み出していって欲しい。「自分たちでしっかり自走できるビジネスができる」そういう状態を作っていかないといけない。 日本は99%が中小企業だと言われていますから、そういうところに一躍買えればと思っています。

宮田:ユニコーン企業みたいなものをどれだけ創り出すかというよりは、新規事業育成や組織改革みたいなところがCrewwさんのゴールになっていくんですかね。 

水野:そうですね。基本的にはユニコーンを育てるのは専門のところにお任せし、 我々Crewwは「ユニコーンって何?」というような会社にまで、新規事業やイノベーションの機会を届けに行く。そういう意味では事業開発とか組織開発とかの必要性というもの感じ取ってもらって、最初の第一歩を踏み出す機会というものをサービスとして提供していきたいと思っています。

後編につづく

モデレーター
宮田 拓弥 氏Scrum Ventures 創業者/ゼネラルパートナー
サンフランシスコをベースに、米国のテックスタートアップへの投資を行うベンチャーキャピタルを経営。これまでに、コマース、ヘルスケア、SaaS、動画、VR、Fintech、IoTなど40社を超えるスタートアップに投資を実行。日本および米国でソフトウェア、モバイルなどのスタートアップを複数起業。2009年ミクシィのアライアンス担当役員に就任し、その後 mixi America CEO を務める。早稲田大学大学院理工学研究科薄膜材料工学修了。
パネリスト
水野 智之 氏Creww株式会社 取締役 / Managing Director
日本の高校を卒業後、アメリカの大学へ進学。
これまでに複数のIT系ベンチャー企業で営業や経営に携わった経験を活かし、2013年にスタートアップコミュニティーを運営するCreww株式会社に入社。2017年、同社取締役に就任し、オープンイノベーション事業やコワーキング事業や新規事業などの事業部門全体を統括する。また内閣府や総務省などの行政機関との連携も図っており、全国の自治体や大学での講演も多数行っている。
パネリスト
志水 雄一郎 氏フォースタートアップス株式会社 / 代表取締役社長 CEO
 
慶應SFC卒業、インテリジェンス(現パーソルキャリア)にて『DODA』立ち上げなどを経て、2016年に東証1部上場企業グループ戦略子会社として成長産業支援プラットフォーム『NET jinzai bank』を創業、Co-Founder & CEOに就任。2015-16年『Japan Headhunter Awards』にて『Headhunter of The Year』2年連続受賞。2017年 国内初『殿堂』入りHeadhunter認定。
パネリスト
原田 未来 氏株式会社ローンディール / 代表取締役
2001年、株式会社ラクーン(現 東証一部上場)入社。部門長職を歴任し同社の上場に貢献。2014年、株式会社カカクコムに転職し、新規事業開発。自身の経験から複数の業界・企業・職種を経験することの意義を実感するとともに、個人と組織の信頼関係の重要性に気づく。個人が「会社を辞めることなく外の世界を見る経験」として、企業が「人に成長機会を提供する手段」として、レンタル移籍を構想。2015年に株式会社ローンディールを設立。
執筆
PORT編集部 
「PORT」はCreww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。
オープンイノベーションプログラム
アクセラレーターについての詳細はこちら
PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

Featured

新しい仕事と「STARTUP STUDIO」に同時にコミット。何歳になっても挑戦し続けたい

社会課題を解決するためのアイデアと、その事業を作り出したい個人をつなぎ、6ヶ月でプロダクトを作って事業会社に売却することを目指す「STARTUP STUDIO」。第一回目のプロジェクト「スマホでありがとうを届けるチップサービス『petip』」の立ち上げに参加したのが、Reproで働く金卓史氏だ...

社長秘書をしながら、3つの新規プロジェクトを牽引。松竹を変える起爆剤へ

演劇や映像をはじめ、総合エンターテインメントを提供する松竹。銀座にある歌舞伎座が象徴的だが、伝統を継承しつつ、実は長年新しいコンテンツや新しい体験を追求してきた、「進化し続ける企業」の一つだ。そんな松竹がグループ各社を巻き込み、2019年に初めてアクセラレータープログラムに挑戦。そのプロジェクトメンバーの公募に自ら手を挙げ、本業がありつつも3つのプロジェクトを推進したのが、秘書室・政策秘書の平岩英佑氏だ。平岩氏はどんなことを考え、どのようにプロジェクトを進めていったのか。話を伺った。

コラボに挑むスタートアップに期待する「媚びない」姿勢

※この記事は、2016年2月8日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

タテからヨコへ変わりゆく世界

以前、「会社はコミュニティ化し、仕事はプロジェクト化する」という記事をエントリーしました。あれから1年。2020年という、世界と日本にとって節目となるであろうこのタイミングで、急激に変わりゆく世界を私なりに考察し、「タテからヨコへ変わりゆく世界」という概念でまとめてみました。昭和〜平成を「タテの世界」。令和を起点とする未来を「ヨコの世界」と定義しています。 タテの世界 タテの世界とは、際限なくタテに伸びていく階層構造(ヒエラルキー)です。上と下の概念は、主従関係や強制力と相性が良く、約70年前の世界大戦時においては「国家(軍隊)」、60年前の高度経済成長期は「会社」が代表的な組織構造でした。 上から下へ働く重力は中央集権と金融資本主義を加速させ、誰かや何かとの比較を肥大化させるエンジンとなります。仕事はニュートンのリンゴのように上から落ちてきます。集団の中で、リンゴをキャッチする最も”課題解決”が上手な人間が上へ上へと駆け登り、管理がしにくい個性と美意識は同調同質の圧力に潰されていきます。 タテ型経営の行き過ぎによってビジネスパーソンは会社の歯車と化し、コンプライアンスの徹底によって決められたことしかできない、やらない思考停止状態に陥ります。地球においては資源の奪い合いと温暖化が加速化し、富と機会の二極化は国家の右傾化を招きます。これらは全て、際限なくタテに「伸び切ってしまった」社会のひずみだと感じるのです。タテを否定しているわけではありません。ただし、上と下の距離感はもはや限界に近づいているのではないでしょうか。