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木曜日, 6月 4, 2020

STARTUP IGNITION~起業家たちが挑戦し続ける理由

日本テレビのテクノロジーエンタテイメント番組と連動した恒例の大型イベント「SENSORS IGNITION(センサーズイグニッション)2017」が虎ノ門ヒルズで行われた前夜、3月22日に初めてとなる前夜祭「STARTUP IGNITION(スタートアップイグニッション)」が開かれました。「起業家たちが挑戦し続ける理由」をテーマに、Synapse売却の背景や、Snapeeeの軌跡など、苦闘してきた細かな軌跡や失敗経験にまで踏み込みながら紹介する一方、登壇者からは自身の反省も踏まえた本音のアドバイスが飛び交う異例の展開。参加した約50人が興味深く聴き入りました。

「SENSORS IGNITION前夜祭」“起業家の挑戦”をテーマに4氏が本音を語る

は次の4氏。

株式会社レレレの創業者で、現在は求人サイト「キャリコネ転職」「キャリコネ」などを運営する株式会社グローバルウェイで「グローバルウェイラボ」の室長をつとめる山本大策さん

写真共有サービス「Snapeee(スナッピー)」で知られる株式会社マインドパレットの共同創業者で、昨年10月に創業したジャクール(JaQool)株式会社の取締役として活躍する神尾隆昌さん

学生起業家としてモバキッズ(現シナプス株式会社)を創業し、2017年2月からは新たにDMM傘下としてオンラインサロン「Synapse(シナプス)」を運営する田村健太郎さん

起業家3氏に加え、モデレーターは「起業家と投資家を繋ぐ」をコンセプトとし、国内スタートアップを支援してきたスタートアップ・ブログメディア「THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)」の共同創業者である池田将さんがつとめました。

これまでの“失敗経験”とは

パネルディスカッションでは3人の起業家に対し、モデレーターの池田さんが「普段は聞きづらいことを聞いていくのが今夜のテーマ」と、これまでの“失敗経験”を引き出しながら過去の経歴と現在の事業概況を尋ねていきました。

グローバルウェイの山本大策さんが会社員時代に個人で作ったのは、コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会える「CoffeeMeeting(コーヒーミーティング)」。同サービスが高い評価を得たのを機に独立し、株式会社レレレとして、個人の時間を気軽に売買できるサービス「TimeTicket(タイムチケット)」もリリースしています。

初めに作ったCoffeeMeetingについて、「ユーザ数は今も多いのですが、マネタイズ面では失敗したかもしれません」と話す一方、「CoffeeMeetingでユーザさんの信頼が得られたことで、次に出したTimeTicketの利用につながっている」と明かしました。

現在はレレレをグローバルウェイに売却。社内でも独立的な存在である「グローバルウェイラボ」のチームを率い、新たな働き方に関する新サービス開発を進めている最中だといいます。「レレレ時代はすべてを一人でやってきたが、限界も感じた。今はあえて自分がやらないようにしている」と話します。

ジャクール(JaQool)株式会社取締役の神尾隆昌さんは、“アジア版インスタグラム”として1400万人以上のユーザを獲得して話題を呼んだ写真共有サービス「Snapeee(スナッピー)」の生みの親として知られます。しかし、2016年6月には会社を任意整理に踏み切ることに。

「投資家の方々には損をさせてしまったのに、温かく見守っていただき本当にありがたかった」と振り返る一方、「起業時に戦略がないままサービスのユーザビリティ向上ばかりを追求してしまい、結果としてマネタイズができず、それが敗因となった」と反省の弁を述べました。

現在は、ケンコーコムの元社長として知られる後藤玄利さんらとともに、モバイル翻訳サービスを展開するジャクールを2016年10月に新たに立ち上げ、海外からの訪日客に向けたサービスを急ピッチで開発している最中です。

シナプス株式会社の田村健太郎さんは、一橋大学経済学部在学時の2007年に起業し、2009年にはWeb漫画の投稿コミュニティサイト「MANGAROO」を立ち上げるなど、電子書籍関連のビジネスを展開。2012年に方向転換し、オンラインコミュニティを簡単に構築できるオンラインサロンプラットフォームの「Synapse(シナプス)」 をリリースしました。

元ライブドアの堀江貴文さんら著名人が愛用するなど、Synapseはオンラインサロンのパイオニアとして誰もが知る存在ですが、開始当初は苦労し、「2年くらいは売れなかったですね……」と田村さん。「堀江さんが使ったことで爆発的に伸びたので、堀江さんに足を向けて寝られない」と会場を沸かせました。

そんなSynapseの好調ぶりを見て戦いを挑んできたのは、あらゆる分野で次々と新規事業を立ち上げることで知られるDMM。2016年2月に「DMMオンラインサロン(DMMラウンジ)」を開始し、Synapseと真っ向から競合することになります。

なぜ競合相手に会社を売ったのか

SynapseとDMMのオンラインサロン分野での戦いについて、モデレーターの池田さんが質問を連続。田村さんは「ある日、亀山さん(DMM創業者の亀山敬司さん)の代理という方が訪ねて来られまして」と明かしました。これがきっかけとなって、2017年2月のDMMへの会社売却につながります。

「2年くらい頑張ってDMMと戦い続ければ、向こうが諦めるでしょうから、そういう選択肢もあった」と話す一方、「でも、DMMと一緒にやったほうが結局はユーザのメリットが大きくなるのではないかと考えた」と売却の背景を明かしました。

「で、いい感じに売れたんですか」と突っ込む池田さんに対し、田村さんは「満足はしています」と答えました。

DMMとSynapseの話題を契機にサービスとユーザの関係に話がおよび、巨大サービスの「Snapeee」を停止した経験のある神尾さんは「ユーザのケアが何もできず本当につらかった」と振り返り、「10社くらいに興味を持ってもらい、譲渡を検討しましたが、若い女性向けということもあって緻密な運用が求められます。他社では難しいことが分かり、断念せざるを得なかった。人生の負い目として今も反省しています」と吐露。

一方、山本さんは「(エンジニアなので)自分で作ったサービスを閉じるのは難しい」といい、「やっぱり自分は起業家には向いてないかもしれません、たまたまリクルート勤務時代に作ったサービスが人気が出ただけ」と分析しました。

一歩を踏み出せば、失敗しても何とかなる

失敗や反省も含め過去の経験が今のチャレンジにどう生きているかを尋ねる池田さんに対し、「投資家の話を全部信用しないこと。特にメディアの方は投資家の話を持ち上げ過ぎですよね」と山本さんが言うと、投資家とスタートアップをつなぐメディア運営者である池田さんが「ついに私に反撃が来てしまいました。すみません・・・」と頭を下げ、会場が湧きました。

起業について田村さんは「失敗しても何とかなりますし、応援してくれる人もいっぱいいる。とにかくやってみた方がいい」とアドバイス。神尾さんも「背水の陣とか命がけとか投資担当者はそんな言葉をよく使いたがりますが、命なんてかけたらダメ。やり切ってからの失敗を糧に、次の起業で恩返しするくらいの心構えでいないと」と言います。

山本さんも「会社を作る必要もないし、とにかく作りたいものを作って出してみればいい。もっと気楽に考えてみていい。その一歩を踏み出すことが大事なんです」と連続起業の重要性や起業のエコシステムに関する提言が次々と飛び出し、パネルディスカッション後も登壇者にアドバイスを求める参加者が相次いでいました。

執筆
INNOVATIVE PORT編集部 
「INNOVATIVE PORT」はCreww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。
PORT編集部https://port.creww.me/
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