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月曜日, 10月 3, 2022

【イベントレポート】スタートアップサイエンスから学ぶ、ピボットの法則〜

自社が有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイディア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできた。新たな取り組みとして注目されているのが、オープンイノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティである。
本記事では、5月23日(水)に「docks」で行われた「creww academy vol.02〜スタートアップサイエンスから学ぶ、ピボットの法則〜」の内容をダイジェストでお届けします。
※この記事は、2018年8月1日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。 

今回登壇していただいたのは、起業の成功確率を上げる方法を「スタートアップサイエンス」として著書にまとめてこられた田所雅之氏、そして自身も起業家としてピボットに成功した実績をお持ちの株式会社ナイトレイの石川豊氏。

会場の男女比は男性8割、女性2割ほど。男性が多いのはテーマが難解だからなのか……と筆者も少し身構えてしまいましたがそんなことはなく、田所氏も石川氏もこれまでの経験を元に初心者でも理解しやすいよう噛み砕いて話してくださいました。
ここからは「ピボットとは?」という前提部分から、イベント内容をまとめてお伝えします。

1.そもそもピボットとはどんなものなのか

ピボットとは「ビジョンを変えずに戦略を変えること」。
ビジョンとは、“誰の困りごとをどのような方法で解決するか”を明確にしたものです。この根本的なところを変えてしまうのであれば、そもそも会社をやり直した方が賢明。根っこにある自分たちのストーリーは変えずに、戦略=顧客への届け方や見せ方、プロダクトそのもののスコープを変えることが「ピボット」です。

InstagramやGoogleなど、現在ユニコーン企業と呼ばれている企業の3分の2はピボットを経験していると言います。
最初から方向性や戦略が固まっておりピボットをしないのが1番ですが、そうもいかないのが現実。顧客から何かを学び、ピボットをしながら適切なビジネスモデルを見つけていくことがポイントです。

「ユニコーン企業はピボットを経験しているところが多い、だから自分たちもピボットをした方が良いのではないか」と、簡単にピボットをしてしまうことがよくあるそうです。
田所氏曰く、「ピボットで大切なのは、データを計測すること。ですが、UXが悪いからとピボットするのは間違っている。UXは基本的に継続して改善しながら、それでも例えば機能が足りないということであれば、ユーザーストーリーをベースに開発してあげる。それをやり切ったけれど無理だったなら、ビジネスモデルがダメだったということでピボットするという流れが適切です。
同じビジネスモデルを保って改善し続けていてもPMF(プロダクトマーケットフィット)が達成できない場合は、ピボットを行った方が良いでしょう」とのこと。

では、具体的にどのような条件を満たしていれば、適切なピボットと言えるのでしょうか。

2.良いピボット・悪いピポット、そしてピボットのタイプとは?

田所氏が示す良いピボットの条件とは主に3つ。
「ビジネスモデルをやりきること」、「客観的データに基づくこと」、そして「メンバーの納得感があること」。これらのどれかが欠けていると、適切なピボットとは言えません。

納得しているけれどやり切っていない場合は、時間の無駄になってしまう無意味なピボットに。対して、やり切ったけれどチームメンバーの納得感がないピボットは、チーム崩壊のリスクがあるリスキーなピボットになります。また、定性データや定量データを活用せずに完全主観的に行うことは、継続危機に陥る最悪なピボットに繋がります。
そして、事業提携先や投資家に振り回されるといった、カスタマーインサイトをベースにしないピボットも適切ではありません。

続いて、ピボットのタイプについての説明に移りました。

田所氏が提唱するピボットの種類は6つ。
グルーポンを筆頭にした、想定していた顧客とニーズが違っていたことによる方向転換である「カスタマーセグメントピボット」。
元々位置情報を共有するサービス内の1つの機能だった、写真を共有できるサービスに注目し、フォーカスしたプロダクトを作ったインスタグラムを代表とする「ズームインピボット」。
これと反対に、より包括的なサービスへと転換する「ズームアウトピボット」。

この他にも、顧客のニーズから浮かび上がった新たな課題を解決するために方向転換をする「カスタマーニーズピボット」、プラットフォーム形式からアプリケーション方式に(またはその逆方向)に転換する「プラットフォームピボット」、顧客の手に届くまでのチャネルの方向転換をする「チャネルピボット」があります。

自分たちのビジネスにおけるピボットがどのタイプに当てはまるかもしっかり見極める必要があります。

3.二度のピボットを経て、注目のサービスを作り上げた株式会社ナイトレイ・石川氏

「地図とインターネットがすごく好き」その想いから株式会社ナイトレイを創業した石川氏。誰かの真似をするのではなく“誰もやっていないこと”にこだわったそう。
「データを集め解析し、プロダクトに落とし込んでお客さんに提供する」という基本的なことにチャレンジしたひとつの結果が、inbound insight(インバウンドインサイト)というサービス。これは、「訪日外国人の方がどこにどのくらい来ていて、何を楽しんでいるのか」「国籍毎にどの地域にどのくらい滞在し、移動しているのか」というデータを集め、日本各地でビジネスチャンスがどのくらいあるかを独自に解析してWebサービスやレポートとして提供しているものです。
「訪日外国人の動向であれば、株式会社ナイトレイのサービスで全て手に入れられる」ということが強みであり、非常に好評だと石川氏は言います。

2008年に会社設立をし、資金調達とメンバー集めをし本格稼働し始めた2011年に最初のピボットを迎えたそう。
「当初、ユーザー向けのサービスを1から作ってデータを集めるよりも、既に数千万人〜数億人が使っているサービスから知見を得られないかと、TwitterなどのパブリックなSNSデータの解析でロケーションに紐づくビッグデータを蓄積しながら、ぐるなび・食べログ・グルーポンの先を作るという切り口で“ローカル×ソーシャル×スマートフォン”を軸にした店舗と利用者向けB2B2C新サービスを開発していきました。
しかしこのとき、大量のデータ解析結果から人気施設や人々の動き、感情はある程度分析できていたものの、『アプリやWebサービスを新規導入して業務をする余裕がない』という店舗の人側について深く知れていなかったんですね。
店舗はたくさんあるのに、サービスを導入検討してくれるところはすごく少ない。ならばやり方を変えよう、とここで気づきました。」と、石川氏。

続けて、「ビジョンは変えたくなかった。『もっと世の中を良くしたい』『ロケーションに関わるデータを集めて、解析をして、どうやったらみんなの役に立てるのか』という想いが根底にあったので、給料が出る出ないといった状況は関係なかった。
だから根底の部分は変えず、最初のピボットで、店舗ではなくロケーションに関わる業者に提案にいくなど、アプローチ先を変更しました。ちなみに、東大などの学会に乗り込んだりもしました。
2014年頃には、民間や自治体ごとに違うアプローチすると価値が出せるんだという成功体験を積み重ねていきました。」と語っていました。

2回目のピボットは、2015年。
これから訪日外国人の流入が増えるだろうと気づいていた複数のお客さんから、『訪日外国人の解析はできないのか』と要望があったことがきっかけで、一発勝負に出たとのこと。強い顧客ニーズを基に、日本人(日本語)のロケーションデータ解析技術を発展させ訪日外国人のロケーションデータ解析技術を作り上げ、inbound insightというサービス名にして新プロダクトとしてリリースしたのだそう。
これが幅広い顧客のニーズにヒットし、リリースして数ヶ月で数百社、1年で3000社に使ってもらえるサービスに成長。

株式会社ナイトレイは、2017年にはさらなる顧客開拓、パートナー開拓、組織体制強化、モビリティ領域へのチャレンジを開始し、自動車業界の大手との業務提携も実現しています。

4.田所氏・石川氏が考える「ピボットを成功させる法則」とは?

石川氏による実体験を元にした講演に続いて、田所氏・石川氏による対談へ。
お二人の対談では、主に田所氏が石川氏のピボットを深掘りしていくような形で進んでいきました。ここでは、

田所雅之氏(以下、田所)「株式会社ナイトレイが成功したポイントはいくつかあると思います。
まずは市場に代替案がなかったこと、石川さん自身が現場に行っていたこと、そして執着心があったことが大きかったのではないでしょうか。」

石川豊氏(以下、石川)「スタートアップはそもそも少人数なので選択肢があまりないとは思うけれど、現場に出向くことは自分でやるということにこだわった方がいいかなと思います。」

田所「地図が好きじゃなかったら片っ端からやらなかったですよね。お金は関係ないとはいえど生活するには必要なもの。片っ端からやっている中でめげそうにはならなかったですか?」

石川「めげそうになりましたね。でも、ナイトレイをはじめてから色々ありましたけど、1番よかったのは『地図・ロケーション、ビッグデータ、あとはインターネットという領域の中でイノベーティブなサービスを作り上げたい』という軸をブラさないということは考え抜いていて。それに賛同してくれる人も1人はいて、そうやって始められたのがよかったのかなと思います。だから、いくら辛くても不思議と辞めてしまおうという結論にはならなかった。普通だったらきっとみんな辞めていると思いますけどね。」

田所「インバウンドに注力したナイトレイの事例はカスタマーセグメントピボットだと思うのですが、その決断をするとき、メンバーからの反対はありませんでしたか?多分納得させたのだと思いますが、どうやって納得させたのでしょう?」

石川「その時の社内の体制が、共同創業ではなく僕がほとんど株を持っていたんですね。あとは、僕の想いに共感した人しか入ってきていないということと、当時の従業員に対して『ナイトレイは地図好きでないと入れないからね』と言っていたほどで、最低限の意識合わせをした上で進めていました。
それと、現場に行っていたのが僕だったので、『石川が言うなら仕方ない、やってみようか』という感じもあったと思います。」

田所「僕自身もスタートアップの支援をしているのですが、1番最初にやるのがミッション・ビジョンの磨き込みなんですね。ミッション・ビジョンの解像度をあげなければやっていくべきことが見えてこないんです。例えスキルが今は低くても、それらの理解の深さがあればポテンシャルがあると思います。“意味付け”が大事ですね。」

5.まとめ|田所氏「ピボットは諸刃の剣。でもスタートアップにとって最大の武器になる。」

「勢いのみで行うピボットは、スタートアップをダメにしてしまうけれど、ピボットは最大の武器にもなり得る」と田所氏。ピボットは諸刃の剣で、会社にとって非常に役立つものになるのか、自分たちを傷つける結果になるかは使い方次第です。実践する際は、田所氏が仰っていた「良いピボットの条件」を全て満たしたうえで行っていきたいものですね。

質疑応答の中では会場から笑いが溢れるなど、ユーモアや具体例を交えながら、盛り上がりを見せました。講演終了後のネットワーキングでは、会場内での交流も盛んに行われていたようです。

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PORT編集部https://port.creww.me/
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