12.8 C
Japan
日曜日, 5月 31, 2020

【セブン銀行×フーモア】ATMでイケメンボイスが聞ける! 金融×エンターテインメントの融合プロジェクト

「世の中の新しいモノゴトは全て、“組み合わせ”から生まれる」――。ヒット商品や斬新なアイデアなど、人々が「アッ」と驚く革新的なモノゴトは、既存するもの同士の意外な“組み合わせ”から誕生することが多い。それはビジネスやプロジェクトに関しても例外ではなく、まったく接点がないと思われる事業領域の企業同士が手を組むことで、新しいプロジェクトにつながることがある。今回紹介するのは、ATM事業をはじめとしたさまざまな金融サービスを提供する株式会社セブン銀行と、エンタメを活用したビジネスソリューションを提供する株式会社フーモアがcrewwコラボを通じて立ち上げた「セブンコンシェルジュ」。“金融”と“ポップカルチャー”、一見相反関係にある事業を展開する両社が、タッグを組むに至った経緯やプロジェクトの詳細、そして事業の展望に迫った。

―まずはじめに、プロジェクトの詳細を教えてください

芝辻:セブン銀行さんと取り組む「セブンコンシェルジュ」は、協業でオリジナルイケメンキャラクターを制作し、“いつもよりちょっと特別、ちょっと楽しい銀行取引”をコンセプトに、キャラクターがコンシェルジュのようにお客さまにATMや銀行口座のお取引きなどをご案内する、金融とエンターテイメントが融合した新感覚のプロジェクトです。
本プロジェクトのために描き下ろしたオリジナルの男性キャラクター7人と豪華声優陣とのコラボレーションにより、各キャラクターの性格やさまざまなシチュエーションに応じた台詞を多数収録し、まずはセブン銀行のATMやスマートスピーカー等への展開しています。

西井:ATMでの実証実験は8月27日からアニメイト池袋本店・新宿店設置のATMと、新宿歌舞伎町のセブン銀行ATMコーナーで始めています。今回、アニメイトさんにもご協力いただいているのですが、相性は抜群と思っていて。どのように利用されるかはまだわかりませんが、アニメイトさんに設置できたことについては、後々このプロジェクトに大きな価値をもたらしてくれると信じています。

株式会社フーモア/芝辻 幹也氏、斉藤 隼大氏

セブン銀行アクセラレーターに応募した経緯とは

芝辻:まず前提として、僕らのようなスタートアップ企業と大手企業さんが組んで新しいビジネスを広めていく、というcrewwコラボのコンセプトが弊社にハマっていて。弊社は元々、ゲームや漫画のイラスト制作から事業をスタートして、企業さんのプロモーション活動のお手伝いをしていました。その中で、多くの企業さんと組みながらお客様(ユーザー)との接触チャネルを増やしていけば、独自のIP(Intellectual Property:キャラクターなどの知的財産)を生み出すことが出来るんじゃないかと考えたんです。実現するためにいくつか模索する中で「セブン銀行アクセラレーター」のプログラムの募集があって、是非とも組ませていただきたいと思い応募しました。全国には多くのセブン-イレブンさんの店舗があって、それに伴いATMが置いてある。お客様とATMの接触部分を、独自IPを活用することで、より効果的なお客様へのアプローチが実現できるんじゃないかと思い提案させてもらいました。

―どのような過程を経てプロジェクトを進めていったのですか?

芝辻:まず、テキストベースでのエントリーで想いを伝えました。その後セブン銀行さんからお声掛けをいただき、企画を進めていきました。当時の課題としては4つあって、1つはセブン銀行の利用客と利用頻度を増やす。2つ目は、口座数を増やす。3つ目が、セブングループのシナジーを生かした取り組みをしたい。そして4つ目が銀行は保守的なイメージがあるので、先進的な取り組みにチャレンジをしていきたいという課題をいただいたんですね。その課題を基に、直接お会いしていく中でブラッシュアップしながら徐々に方向性を固めていきました。最初の段階では漫画を活用した方向で話し合っていたのですが、当時の担当の方からは「みんなにウケるというのは、逆に誰にも刺さらない」と言われていて。漫画よりももう少し広がりを見せるために、“イケメンキャラクター”という刺激的なキーワードに方向転換していったんです。弊社は女性向けの男性キャラクターを使用したコンテンツも持っていたので、知見をうまく活用できるんじゃないかというところも決め手の一つですね。

―“イケメンボイス”に至るにはどちらの意見が反映されたのでしょうか?

斉藤:両社で話し合った結果ですね。セブン銀行さんのATM利用者は基本的にセブン-イレブンの来店層と同じで、ボリュームゾーンでいうと30、40代の男性がメインターゲット。だからこそ今回の取り組みでは、空白地帯の若い女性ユーザーをターゲットにしたいと。当初は男性にも女性にも受けるという万人受けするものという話もあったのですが、何回も議論したうえで本気で狭い層を取りにいくのであれば、エッジの効いた企画を出しましょうということで、このような形になりました。

芝辻:弊社もどちらかというと、ゆるキャラみたいな万人受けするものを作っていくより、“イケメン”をキーワードに作った方が、狭いターゲットながらも深く食い込めるのではないかと考えていました。銀行の口座を新しく作るとなるとハードルは高いですし、ゆるキャラを作るだけでは弱いよねと。とはいえ、提案先は銀行さんなので、提案する際は金融系の会社もエンターテインメントと組んでやっている実績をベースに話をさせいただいて、尖った案に寄せていった経緯があります。

株式会社セブン銀行/西井 健二朗氏

―この提案の印象はいかがでしたか?

西井:直観で「イケる!」と思いましたね。元々ATMにアニメやゲームなどの遊び要素を加えるということ自体は社内的にも「アリ」という共通認識で、違和感はなかったです。今回のコラボプロジェクトの募集で金融系の提案が少なかったこともありますが、こういったポップカルチャーとの取り組みは、セブン銀行でしかできないだろうと。その部分に関しては社長も同じ熱量でした。加えて、ちょうどその(プレゼン)当時、自分の中で「面白いことって、もしかしたら僻地(考えもしない遠いところ)から生まれるんじゃないか」という勝手な仮説を持っていて。社内のキーワードとしても「イノベーションは僻地から」と言っていて、その部分とも合致していたのかなと。近すぎる事業領域よりも失敗は多くなるかもしれないけど、遠くの組み合わせの目新しさは当たる可能性はある。ただ、その時点では直感でしかないので(笑)。救われたのは、その場で社長も副社長も取締役も出席していて、プレゼンのとき「いいよね」と、言質を取って進められたこと。最終プレゼンでは意思決定者、できれば社長は出席推奨というcrewwコラボの性質が結果として進めやすくなったんだと思っています。

芝辻:セブン銀行さんはATMサービスがベースとなっている会社ということもあって“銀行”として何ができるのか、すごく考えられている印象を受けました。銀行というと堅い印象があったのですが、セブン銀行さんに関して言えば新しいことにチャレンジする印象ですね。初期のプレゼンの時点で担当者の方からは「みんなに受けることは、逆に言うと『誰にも刺さらない』」という話を口酸っぱく言われていたので (笑)。プレゼン中は、セブン銀行さん側の役員の方々が「本当に大丈夫か?」みたいな表情でお話されていましたよね(笑)。採択後は、セブン銀行さんの社内の男性キャラクターやアニメが好きな方々が一緒に取り組んでくださって、スピーディになっていきました。

斉藤:アニメに造詣が深い3名の“選ばれし勇者”的な方々を抜てきしていただいて(笑)。弊社側もそれにこたえなければいけないとなって、弊社側の“勇者”も2人呼びました。キャラクター設定などは、女性陣がキャッキャと楽しみながら作っていましたね。

―尖ったプロジェクトに前のめりで進めていけるのは心強いですね。進めていくにあたり苦労したことはありますか?

斉藤:プロジェクトで目指す機能を使える状態までにするのはもちろんなのですが、この尖ったATMをどこの店舗に置くかという選定と設置交渉は難しかったですね。そもそもセブン銀行さん側の規定で設置場所に関する条件もありましたし、アニメ好きの女性が多いエリアに置かなくては効果が薄いと思ったので。

―役割分担など決めて進めていたのでしょうか?

斉藤:ほとんどの工程を一緒になって作っていましたね。その中でも、セブン銀行さん側の担当の方には、本当に前向きに対応していただきました。通常業務が忙しい中も合間を縫って、今の段階では使われないようなレベルの(キャラの)裏設定まで考えていただいて。「このキャラとこのキャラは裏でこんな相関関係にある」とか(笑)。モチベーションが尋常じゃないくらいの熱量で、こちらも刺激されたぐらいです。声優さんのキャスティングに関しては双方で希望を出し合って、コミケなどのイベントもあったので稼働の可否も含めて決めていきました。

西井:声優のキャスティングにはこだわりましたね。企画を作り上げていく過程でアニメ好きの友人に相談したら、「独自IPでは弱いから、作品の象徴としてCV(キャラクターボイス)だけにはこだわった方がいい」という助言もでました。予算に糸目は付けずにオファーをして、結果全員超一線級の奇跡的なキャスティングが実現したのかなと思っています。

―コミケ(コミックマーケット94)の出展ブースの反応も上々だったみたいですね

斉藤:ブースで呼び込みをする際、さまざまな言葉を叫んでいたんですが「現在小野友樹さんの声で(ATM)体験できま-す」と、声優さんの名前を出すとガッと人が集まってきて。声優効果を直に実感したので、こだわって良かったと思いました。あとは、セブン銀行さんがコミケに出展すること自体が、SNS上でも話題になっていましたよね。

西井:今回の実証実験では東京だけにしかATMを置かないこともあって、秋田の方から「東京になかなか行けないので、秋田にも是非!」と、地方からも問い合わせをいただいています。

セブンコンシェルジュの今後の展望とは

西井:実は本プロジェクトにおいて、弊社側としては新規口座開設数などのKPI(業績評価指標)は設定していなくて。今回のような取り組みをやりたい、という金融機関が1社でも出てくれば成功だと思っているんです。他の金融機関は公式キャラクターを使っているだけのところが多いと感じているのですが、もっと独自性のあるものを積極的に採用して挑戦していきたい。日本が外国よりも勝っているところって、やっぱり(アニメなどの)ポップカルチャーの部分なんじゃないかなって思ってるんです。金融機関という堅めのところが、オリジナルのIPを作るというような動きが広まれば面白いかなと思っています。

芝辻:生み出した「コンシェルジュ」を、どうやって育てていくか模索しています。今まではセブン銀行さんと一緒にやってきたものを、もっと弊社の方でもドライブさせていきたいと思っていて。例えば今回作り出したコンテンツがあるので、このキャラクターたちを“深く”していくストーリーを付けていくなども展望としてあるのかなと思っています。今までセブン銀行さんにお世話になりながら取り組んできたので、弊社の方で組めるパートナー(企業)とは手を組んで、「セブンコンシェルジュ」をより盛り上げていければいいなと思っています。

斉藤:弊社は元々、コンテンツ制作の会社。オリジナルのIP制作の依頼が増えている中で、もっとIPを独り立ちをさせていきたいです。現状でいうと「セブンコンシェルジュ」は、まだセブン銀行さんの“マスコットキャラクター”という立ち位置なのですが、今後は弊社側の方で一つのIPとして独り立ちさせて女性のユーザーに対してアプローチして、結果的にセブン銀行さんのユーザーも増やしていく設計を両社で話し合っていこうと考えています。B to Bで見ると、セブン銀行さんのキャラクターというのは引きが強くて。他の企業さんに話すと、必ずと言っていいほど何かしら組みたいとお話をいただくんです。企業が本気でIPを持つことがこんなにもインパクトがあるのか、と実感しています。

アクセラレータープログラムを総括してみて

西井:今回の取組みが実現したことは、非常に実りあるものだと思っています。このような機会がなかったら実現していないどころか、考えもしなかった領域のプロジェクトなので。新しい事業として、一から全部(上層部を)説得していたら膨大な時間が掛かるだろうし、このレベルのエッジはなくなってしまうと思います。初期の段階から皆「いいね」って言ったよね、という進め方ができたのは良かったかなと思います。

芝辻:今までの他企業さんとの取り組みの中で一番大きな形になっていますし、何よりも他のプロジェクトにも繋げやすいのが良かったです。ちなみに今回のプロジェクト、外部の方たちの反応が本当にすごいんですよ。セブン銀行さんの懐が深いので、あちこちで“セブン銀行”の名前を使わせていただいてます(笑)

西井:この事例を足がかりに、もっと広げていって欲しいと思います。

―最後に、アクセラレータープログラムへ応募を検討しているスタートップ企業へアドバイスを

西井:大企業に向けて伝えたいのは「採択したらしっかり形にしなければいけない」ということでしょうか。プロジェクトを採択したのであれば、責任を持って予算を付けて世に出さなければ、(お互いの)時間を無駄にしてしまう。金銭的には「世に出なかったな」と思うだけですが、時間的な損失は大きい。私たちのような硬いイメージのある“銀行”でもここまでやったんだから(笑)。振り切ってやって欲しいなと思います。やはり足踏みしちゃう企業もありますからね、だからこそ私たちは振り切ってやったんです。

芝辻:スタートアップ側でいうと、そもそもこのようなコラボ事業に申し込まない企業が多いと思うんです。「自分の会社とは合わない」と自分で決めつけてしまったりして。でも、実際に先方に会って話をしてみると、「こういう課題があるんだ」と新しい発見がある。そこから、全然違う領域の企業とも「一緒にできる」ことが思いつくこともあるんですよね。だからあまり臆せずに、まずは行ってみることをお勧めします。確かに、まったく違うものは難しいかもしれないけど…、少しでも可能性があるのであれば応募してみてください。実際、自分もcrewwさんの取り組みについては元々知っていたのですが、弊社とは全然合わないと思っていたんですけど (笑)。

西井:「イノベーションは僻地から」ですね(笑)

このインタビュー記事は、2018年12月19日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。
- Advertisment -

Featured

新しい仕事と「STARTUP STUDIO」に同時にコミット。何歳になっても挑戦し続けたい

社会課題を解決するためのアイデアと、その事業を作り出したい個人をつなぎ、6ヶ月でプロダクトを作って事業会社に売却することを目指す「STARTUP STUDIO」。第一回目のプロジェクト「スマホでありがとうを届けるチップサービス『petip』」の立ち上げに参加したのが、Reproで働く金卓史氏だ...

社長秘書をしながら、3つの新規プロジェクトを牽引。松竹を変える起爆剤へ

演劇や映像をはじめ、総合エンターテインメントを提供する松竹。銀座にある歌舞伎座が象徴的だが、伝統を継承しつつ、実は長年新しいコンテンツや新しい体験を追求してきた、「進化し続ける企業」の一つだ。そんな松竹がグループ各社を巻き込み、2019年に初めてアクセラレータープログラムに挑戦。そのプロジェクトメンバーの公募に自ら手を挙げ、本業がありつつも3つのプロジェクトを推進したのが、秘書室・政策秘書の平岩英佑氏だ。平岩氏はどんなことを考え、どのようにプロジェクトを進めていったのか。話を伺った。

コラボに挑むスタートアップに期待する「媚びない」姿勢

※この記事は、2016年2月8日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

タテからヨコへ変わりゆく世界

以前、「会社はコミュニティ化し、仕事はプロジェクト化する」という記事をエントリーしました。あれから1年。2020年という、世界と日本にとって節目となるであろうこのタイミングで、急激に変わりゆく世界を私なりに考察し、「タテからヨコへ変わりゆく世界」という概念でまとめてみました。昭和〜平成を「タテの世界」。令和を起点とする未来を「ヨコの世界」と定義しています。 タテの世界 タテの世界とは、際限なくタテに伸びていく階層構造(ヒエラルキー)です。上と下の概念は、主従関係や強制力と相性が良く、約70年前の世界大戦時においては「国家(軍隊)」、60年前の高度経済成長期は「会社」が代表的な組織構造でした。 上から下へ働く重力は中央集権と金融資本主義を加速させ、誰かや何かとの比較を肥大化させるエンジンとなります。仕事はニュートンのリンゴのように上から落ちてきます。集団の中で、リンゴをキャッチする最も”課題解決”が上手な人間が上へ上へと駆け登り、管理がしにくい個性と美意識は同調同質の圧力に潰されていきます。 タテ型経営の行き過ぎによってビジネスパーソンは会社の歯車と化し、コンプライアンスの徹底によって決められたことしかできない、やらない思考停止状態に陥ります。地球においては資源の奪い合いと温暖化が加速化し、富と機会の二極化は国家の右傾化を招きます。これらは全て、際限なくタテに「伸び切ってしまった」社会のひずみだと感じるのです。タテを否定しているわけではありません。ただし、上と下の距離感はもはや限界に近づいているのではないでしょうか。