12.8 C
Japan
土曜日, 3月 25, 2023

クールであること以上に、問題を解決することを第一に

スマホで撮った子どもの写真・動画をそのまま実家のテレビへ配信するサービス「まごチャンネル」は株式会社チカクのサービス。ユーザーの声に耳を傾け、その声を製品に転換する、ちょっと普通ではない尖ったスタートアップに至るには色々な経験があった。
※この記事は、2015年12月10日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

かっこよさ以上に、自分が本当に解決したい課題に挑む

Appleの日本法人に新卒から12年間勤務していましたが、自分で何かを創りだすことをやってみたいと思っていました。法人をつくることは、あまり重要なことだとは考えていなかったのですが、補助金の申請などで会社化しておいた方が色々とやりやすかったこともあり株式会社チカクを立ち上げた次第です。

「まごチャンネル」の原案は数年前からあったのですが、Appleに在籍していたのだから、「イノベーティブ」で「クール」なことをしないと周りから見てカッコがつかないんじゃないか? といった気負いや思い込みが、当時は正直あったと思います(苦笑)

そんななか、周りからどう見られようが、自分が個人としてまず解決したい問題をやろうと吹っ切れたタイミングがありました。事業規模や収益を一旦度外視して、やりたいことを突き詰めてみようと、今に至ります。

そういう背景もあり、あまり先の計画を立てないようにしています。市場環境の変化が早いので、計画に縛られすぎて変化に対応できなくなれば本末転倒です。何が最善かは環境やチームによるので一概には言えませんが、今この状況ではそれがひとつの正しい道だと信じて頑張っています。

売ることに気を取られ、つくることをおざなりにする危険

スタートアップは当然人数が少ないので、焦って販路拡大へ進むと、結局リソースを販売へ割くことになり、つくることが疎かになってしまいます。販売力があれば、微妙な製品でも売れてしまうので結果としてコレで良い、ということになるのは結局製品を磨くことを疎かにしてしまうことになるので今の段階では優先度は低いです。

リソースがふんだんにある大手企業に比べてスタートアップが差別化できる部分があるとすれば、とにかくユーザーの声をどれだけ聞いているのかという部分でしょうし、これからいつまでチームがユーザーの声を聞きながら動き続けられるかということでしょう。

小回りを効かせた動きこそスタートアップの強み

技術背景の変化も非常に大きく寄与していて、大手企業は決してユーザーの声を無視して開発をしているとは言えないと思います。やりたくてもできなかったという言い方が正解かもしれません。どうしても大企業は新しい製品を作る場合1製品あたり10万個といった数をつくらなければならないので、前提としてできなかったのだと思います。

スタートアップはその辺が臨機応変にユーザーの声を反映させることができて、結果としてユーザー満足度の高い製品を比較的提供しやすい環境にあるかもしれません。

3Dプリンターの登場により、プロトタイピングに必要なコストが1桁下がったことも大きな要因ですが、それもうまく使っているところと、従来型の開発方法にこだわっているところに分けられます。

設計をしっかりして、試作に入る従来型のパターンは決して間違っていないですし正しいと思いますが、私も含めて若い研究者は、設計に多くの時間を割くのではなく、粘土をこねるようにどんどんつくって仮説検証を何度も繰り返すことが、結果としてアイデアを形にするスピードが早いことに気付いています。

とはいえ変化は今後も起きてくるはずなので、新しい方法論について自分自身も常に注目し、使いこなせるように自らを変化していけるように準備をしてなければならないと考えています。

デザインの新しさとユーザーの満足度の両立

「まごチャンネル」の発想は、例えば正月に会った孫も、次の年の正月に会うと、成長していますよね。前に会った時は、赤ちゃんという印象だったのに、次に会った時はもうペラペラしゃべっているという成長の過程も、おじいちゃん、おばあちゃんに楽しんでもらいたいというところからきています。

私たちはスマホやPCの操作には慣れているのですが、ユーザーのおじいちゃん、おばあちゃんにはTVとTVリモコンの方が慣れています。自宅のテレビに「まご」専用チャンネルをつくることがあれば、気軽に写真や動画を見ることができます。

デザインの面では苦労しました。製品的にいわゆる黒物家電にカテゴライズされると、元々のコンセプトと違ってしまう。まったく新しい製品と体験を訴求するには見た目から違うことが重要でした。

ユーザーテストはかなり実施して、本体デザインには、おばあちゃんや主婦の皆さんから色々意見をいただいて今の形になりました。メディアアートみたいな感じだったり、八木アンテナを立てていたりしたものは、評判がよくなかったですね。埃が溜まって掃除が大変と言われてしまいました。

新しい写真や動画がくるとまるで離れて暮らす孫たちがこの家に帰ってきたかのように、窓が光るようになっています。これは、新しい写真がなかったら、楽しみを提供したいのに「がっかり」を提供してしまうことになります。そのようなことを避けるためです。

見据えている世界観の近い人の厳選採用

まだまだ小さなチームなので、採用基準については妥協しないようにしています。その裏返しとして採用にはまだまだ苦労しているのが正直なところですね(笑) 決して焦ってはいないですが、スキルや経験はもちろんのこと、私たちが実現したい世界観にきちんと共感してもらえるか、チームのカルチャーに溶け込める性格か、ということをとても重視しています。やはり少人数でやっている以上、新しく入社する人がチーム全体に与える影響は大きいです。

いまの創業メンバーも人の紹介であったり、採用ページ経由での面接だったりしたのですが、共通しているのは会って1時間話をしただけで見据えている世界観がとても近いことがはっきりと互いに分かったことです。もうすぐ新しいメンバーも増えるのですが彼も同じですね。これから体制としてはまず10人を目指していきたいと思います。もちろんアウトソースで出来る部分もあるのですが、同じ目標を共有し、同じ環境でずっと一緒に働くというのは非常に重要だと考えています。そう言ったことは製品の完成度にも影響するはずなので。

Facebook コメント
PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

Featured

【SceneryScent × アネスト岩田】“香り噴霧器”で新たな価値と市場を生み出す

【Creww Growth活用協業事例インタビュー】日本の塗装機器や空気圧縮機の業界を95年以上リードし続けているアネスト岩田。“開発型企業”として国内外で1,200件を超える特許出願数を持ち、世界20カ国以上の拠点、35社のグループ会社を持つ企業だ。 同社は2020年に導入したアクセラレータープログラムで、香り空間演出・プロデュース事業を展開するスタートアップSceneryScent社(シーナリーセント)を採択し、わずか1年半で、人感センサー内蔵香り演出機器「Ambiscent(アンビセント)」のデモ機を開発。社外でのトライアルがスタートした。 具体的にどのような取り組みを重ねているのか。アネスト岩田の和泉孝明氏と、SceneryScent代表の郡香苗氏にお話を伺った。 #アネスト岩田 #SceneryScent #シーナリーセント #Ambiscent #アンビセント #スタートアップ #オープンイノベーション #活用協業事例インタビュー #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる

【熊平製作所 × MAMORIO】創業125年のトータルセキュリティ企業が、スタートアップ共創で未来の「安心・安全」を創る

【Creww Growth活用協業事例インタビュー】広島銀行とCrewwは、広島県下のイノベーションエコシステムの構築に向け、広島県内に新たな事業の創出を図ることを目的に「HIROSHIMA OPEN ACCELERATOR 2021(広島オープンアクセラレーター2021)」を共催しました。本記事では、プログラム参加企業である熊平製作所と、「なくすを、なくす」をミッションに、紛失防止デバイス「MAMORIO」を始めとした 様々な製品・サービスを提供するIoTスタートアップ「MAMORIO」との共創プロジェクトにフォーカス。株式会社熊平製作所 新規事業開発部 取締役部長 茶之原 氏に、プロジェクトの共創に至った背景や、スタートアップとの共創から実際に得た体感や変化について、お話を伺いました。 #広島銀行 #広島県 #イノベーション #広島オープンアクセラレーター2021 #熊平製作所 #MAMORIO #IoT #スタートアップ #共創 #新規事業 #協業事例インタビュー #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる

関東近郊2万坪の土地 × スタートアップで、今までにない斬新な “場” を作りたい|Gulliverが挑む!

【オープンイノベーションインタビュー】中古車売買でお馴染みの「Gulliver」を運営する株式会社IDOMが、2022年10月24日から「Gulliver アクセラレータープログラム2022」を実施。新しい購買体験の提供と、生活を彩るクルマの価値を創造する新しいコンセプト店舗の開発をテーマに、関東近郊に2万坪の土地を用意し、スタートアップの皆さんと一緒に新しい場づくりに取り組みたいという。具体的に、どのような構想を描いているのか。株式会社IDOMの経営戦略室チームリーダー、三樹教生氏に話を伺った。 #Gulliver #IDOM #スタートアップ #アクセラレータープログラム #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる

スタートアップ募集!【豊富な開発技術力 × デミング賞大賞の社内風土】モノづくりメーカーのOTICSに、今求めるパートナーを聞く

【オープンイノベーションインタビュー】高出力・低燃費・低エミッション化などの要求に対し、積極的な技術提案と高精度な品質で応えるOTICS(オティックス)の自動車部品は、多くの車種で採用されています。一方で、120以上の国と地域が目標に掲げる「2050年カーボンニュートラル」に向け「脱炭素化」の企業経営に取り組むOTICSは、初めてのアクセラレータープログラムを開催。豊富な開発経験と生産技術力を活かせる協業案、自然環境保全や社会・地域に貢献できるアイデア等をスタートアップから広く募集します。デミング賞大賞も受賞したOTICSの社風、アクセラレータープログラムの開催に至った背景や、募集ページだけでは伝わらない魅力、プログラムに関わる方々の想いを、株式会社オティックス 経営管理本部TQM経営戦略室 係長 奥村守氏に話を伺いました。 #OTICS #自動車 #カーボンニュートラル #アクセラレータープログラム #協業 #スタートアップ #デミング賞 #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる
Facebook コメント