目次
この記事ではものづくり補助金を活用し外部との協業で新たに事業を開始、拡充することを検討されている人向けに、対象となる事業や補助率、対象経費について説明していきます。
・ものづくり補助金の対象となる事業
・類型で変わる補助額と補助率
・対象経費はオープンイノベーションにも対応
・審査項目と加点・減点項目
・メリットとデメリットを理解して正しく活用
ものづくり企業の活動を支援するものづくり補助金

ものづくり補助金の令和3年度の正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。中小企業庁が管轄する国の補助金施策です。
働き方改革や最低賃金のアップ、従業員の健康保険の加入対象の拡大、消費税のインボイス方式の導入などの制度変更により、今後ますます中小企業の負担は増えていきます。このような事業を取り巻く環境の変化に対応しつつ、革新的な商品やサービスを開発したり、生産のプロセスを開発したりすることで、生産性の向上を図る取り組みを行う企業を支援する目的で用意されているのです。
ものづくり補助金の対象となる事業

ものづくり補助金の対象となるには「付加価値額 +3%以上/年」、「給与支給総額+1.5%以上/年」、「事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円」の3つすべてを満たす事業であることが条件です。この条件を満たす3~5年の事業計画を作成し、審査を受け採択されれば補助金を受けることができます。
事業開始後、計画通りに要件を満たすことができなかった場合、補助金を返納しなければならないということもあり得ます。無理のない実現可能な事業計画でなければなりません。
付加価値額 +3%以上/年
付加価値額とは営業利益と人件費、減価償却費の合計額のことを指します。事業を通して社会にどれだけ新たな価値を生み出したかという指標。これが計画の期間中、毎年3%以上成長していく事業であることが要件です。毎年、一定の利益を上げ続けなければ対象から外れることになります。
給与支給総額+1.5%以上/年
給与支給総額とは従業員に支払う給与、賞与の総額のことで、法定福利費や退職金は含みません。この給与支給総額を毎年1.5%以上、上げていくことが条件になります。
日本経済団体連合会による調査にでは、2020年、2021年ともに中小企業の賃上げ率の平均は1.72%でした。この点を踏まえると妥当な条件のようにも感じられますが、スタートしたばかりの事業にとっては低いハードルではないでしょう。しっかりとしたシミュレーションが必要だと言えます。
事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円
事業場内の最低賃金が該当地域の最低賃金を30円以上、上回る必要があります。例えば東京都であれば2021年の最低賃金は時給1,013円ですから、一番低い賃金の従業員であっても時給1,043円以上の賃金を支払らわなければなりません。
類型で変わる補助額と補助率

主となる類型に「一般型」と「グローバル展開型」の2種類があり、「一般型」には「通常枠」と「低感染リスク型ビジネス枠特別枠」の2種類があり、類型ごとに補助額や補助率が定められています。
その他にも「一般型」と「グローバル展開型」の補助を受けようとする中小企業30社以上に対して、ビジネスモデルの構築や事業計画の作成の支援をサービスとして行う法人への補助として「ビジネスモデル構築型」もありますが、ここでは「一般型」と「グローバル展開型」を紹介します。
一般型の補助額と補助率
一般型は中小企業などが国内で行う新しい事業の、設備投資やシステム投資などのために必要な経費に対する補助で、「通常枠」と「低感染リスク型ビジネス枠特別枠」という2つの枠が用意されています。「低感染リスク型ビジネス枠特別枠」とは、AIやIoT技術を駆使し物理的な対人接触を減らすことができる製品やサービスの開発、生産プロセスやサービス提供方法の開発などに対する補助です。
補助額は「通常枠」と「低感染リスク型ビジネス枠特別枠」ともに100万円から1,000万円が用意されています。「通常枠」の補助率は中小企業で1/2、小規模企業者・小規模事業者は2/3です。
例えば、中小企業が200万円の設備投資をした場合には、その1/2の100万円が補助されます。「低感染リスク型ビジネス枠特別枠」は中小企業、小規模企業者・小規模事業者ともに2/3です。
グローバル展開型の補助額と補助率
グローバル展開型は中小企業などが海外で行う事業の、設備投資やシステム投資などのために必要な経費に対する補助です。海外事業への直接投資、海外市場の開拓、インバウンド市場の開拓、海外事業者とのオープンイノベーションのいずれかに合致することが条件とされています。
補助額は1,000万円から3,000万円と一般型より多く、補助率は中小企業の場合1/2、小規模企業者・小規模事業者の場合2/3と一般型の通常枠と同じ率です。
対象経費はオープンイノベーションにも対応

機械装置やシステムの導入のための費用、製品の設計・製造等の一部を外注する費用、試作品の開発のために必要な原材料費などのほか、オープンイノベーションにかかる経費である外部の専門家からの技術指導や助言を受けるための専門家経費、外部から知的財産権などを導入するために必要な技術導入費、クラウドサービス利用料なども補助の対象になっています。
ただし補助対象外の事業との区分が明確でないものや、直接関係のないもの・直接関係があっても人件費などは対象外です。
審査項目と加点・減点項目

審査項目として、事業要件を満たしていることはもちろん革新的な技術であるか、市場調査や収益と費用のシミュレーション、事業を支える体制づくりはできているか、地域特性を活かしたりオープンイノベーションで経済効果の波及があったりするか、といった点などが挙げられています。
創業5年以内のスタートアップや、制度変更に先んじて健康保険の対象者を拡大している場合などに加点があり、過去に類似の補助金を受けている場合には減点となるのです。
メリットとデメリットを理解して正しく活用

この記事ではものづくり補助金の対象となる事業や補助率、対象経費について紹介しました。補助を受けられるメリットがある一方、事前の計画が不十分で条件を満たさなくなってしまった場合は補助金の返還の義務が生じ、事業継続そのものに影響を及ぼすこともあります。
ものづくり補助金への申請の際は、補助金の目的をしっかりと理解し、綿密な調査とシミュレーションに基づいた事業計画を作成しましょう。
