個性的な声が集まるニュースメディア「Voicy」がスポニチと組んだ理由

Innovation
声で自由に情報を受発信できるユニークな放送局アプリ「Voicy(ボイシー)」が大手メディアから注目を集めています。2016年9月にβ版を公開後、毎日新聞社やスポーツニッポン、西日本新聞などと相次ぎ提携。プロから個性的な素人までがパーソナリティとして、質の高いニュースソースを活用して声で伝えることができるようになっています。株式会社Voicy(東京都渋谷区)を2016年2月に創業した緒方憲太郎さんに、サービスの現状と今後の展開を伺いました。
※この記事は、2017年3月13日にcreww magagineにて公開された記事を転載しています。

「声と個性」の表現力が加わることで、より人の感性に訴えられるなど、体温のある情報になり、新しい価値が生まれる

― 放送局アプリとして開発された「Voicy(ボイシー)」では何ができるのでしょうか

簡単に言いますと、活字メディアの情報を使い、誰もが声による発信ができるアプリです。また、発信するだけでなく聴くことも可能です。

発信者はパーソナリティということになり、新聞やWeb媒体など、弊社と提携しているメディアに載っている記事(一次情報)を声に出して読み、それが自らの“放送局(チャンネル)”のコンテンツということになります。

どんな記事を読むかは、パーソナリティの個性が出ますし、方言や独特の言い回しで読む方もいて、聴く側は自分の好きなパーソナリティの放送を選ぶことができます。

たとえば、プロ野球の結果を伝えるにしても、巨人ファンのパーソナリティと阪神ファンのパーソナリティでは、勝敗によって声色や伝え方も違ってきますし、標準語なのか大阪弁なのかでも変わってきますよね。

選ぶ記事も、面白いと思うニュースを取り上げる人もいれば、スポーツや、地域の情報などを積極的に選ぶ人もいます。チャンネルごと、つまりパーソナリティごとに違うコンテンツになり、そこにまた違ったファンがついてきます。

声で活字を彩る放送局アプリ「Voicy」

― Voicyを使えば個人が“ラジオ放送局”を開設するようなイメージですが、声コンテンツの元となる活字コンテンツは自由に使っていいわけですね

活字コンテンツについては、メディア各社とVoicyが提携し、記事をオープンソースにしていただき、声のコンテンツとして活用できるよう許可をいただいています。

現在は毎日新聞社さんやスポーツニッポン新聞社さん、西日本新聞社さんなどからVoicyの主旨に賛同いただいており、現在さらに幅広い分野や地域のメディアにお声がけしている最中です。

私たちとしては、「目」を使う文字コンテンツに、「耳」という流通経路と「声と個性」の表現力が加わることで、より人の感性に訴えられるなど、体温のある情報になり、新しい価値が生まれるのではないかと考えています。

作曲者と実際に歌う方が別であることも多い音楽の世界のように、情報コンテンツもネタの作り手と発信者が役割分担してもいいのではないでしょうか。

― どのような方がパーソナリティとなり、どんな方が聴いているのでしょうか

現在は一定のクオリティを担保するため、パーソナリティはオーディションという形で選ばれた方がチャンネルを作って放送をしています。といっても、厳密なオーディションで「上手い人を選ぶ」というよりは、世界観を共有して楽しんで個性的に配信していただけるかどうかを確認しています。

ナレーターや声優といった“声のプロ”の方もいますが、まったく経験のない方もいます。今は120名ほどがチャンネルを持っていますが、チャンネル数はオーディションごとに増えています。

たとえば、博多の地元紙である西日本新聞を博多弁で読んだり、総理大臣の一日だけを専門で追いかけている人がいたり、なかには自ら現場に突撃取材をしてコンテンツを作る人も存在します。テレビのようにニュースを綺麗に読む人より、個性のある“素人”のほうが人気はある場合もありますね。

聴く側も年齢や性別がさまざまで一概には言えないのですが、子育て中の方が目立っているかもしれません。寝る時には必ず聴いている、という方もいますよ。

大企業の延命を助けるためにスタートアップは存在しているわけでない

組むことで、世の中のために大企業とスタートアップで何を提供できるのか、互いに尊重した協力ができるかどうかの視点が大事です。

― Voicyのようなユニークなアプリで起業された緒方社長ですが、もともと公認会計士という“堅い職業”に就いていたそうですね

とにかく人が好きで、その影響なのか色んな人が集まる「会社」という存在が大好きだったんです。大学時代は物理学を専攻していたのですが、卒業後に経済学部に入学しています。寝ても覚めてもテニスに熱中するあまり、“理系”の道を諦めたという面がないわけではありませんが、会社好きだったということも決断した要因です。

社会に出たらとにかく多くの会社に携われる仕事がしたい、と考えた時に浮かんだのが公認会計士でした。経済学部に入ってから猛勉強して卒業の年に資格をとり、大阪の新日本有限責任監査法人でお世話になりました。

― 4年ほど公認会計士として活躍された後、世界を放浪されたとか

1年かけて30カ国以上を巡ったでしょうか。最終的にはニューヨークで就職して働くことになったのですが、海外放浪中米国ボストンでは医療系NPOを立ち上げたり、オーケストラのマネジメントをしたり、ニューヨークでは日本人のコミュニティを作ったり、現地でも多くの人とつながりを作りながら生活していました。かつてニューヨークで立ち上げたニューヨーク若手日本人勉強会というコミュニティは、今や1900人規模にまでなっているそうです。

― 帰国後はトーマツベンチャーサポートでベンチャー支援に注力されています

米国でゼロからコミュニティや事業を立ち上げる楽しさを経験したことや、トーマツとご縁があって「一緒に面白いことをしよう」と誘っていただいたのがきっかけです。

無のところから新たな価値を生み出すというスタートアップの支援は、本当にやりがいがあり、まさに天職だと思いました。当時は日本で一番ベンチャー企業をまわった公認会計士かもしれません。今も6社ほどの企業の顧問をさせていただいているのですが、やはり最終的には自分でもやってみたいという思いが強くなりまして・・・。特に、メディアは表現の部分でまだまだ変われるはずだという思いとアイデアも起業前から持っていました。

― スタートアップ支援の“プロ”だった緒方社長がCreww(クルー)を知ったきっかけは何だったのですか

ベンチャー支援を専門にしている企業に勤めていましたから、当然知っていまして、まさにCrewwはライバルですよ(笑)。われわれには監査法人特有の品質の高いコンプライアンスという縛りもありましたので、Crewwはしがらみなく自由に素早く動けていいな、との思いを、どこかで持っていました。当時自分のやりたいと思っていることを次々先にやられてしまっている感じでした。

自分が起業してからは、Crewwコラボを通じてスポーツニッポン新聞社さんと繋がることができ、本当に感謝しています。

― スタートアップの失敗も成功も数多く間近で見て来られたなかで、大企業との付き合い方という部分でアドバイスをいただけませんでしょうか

なぜ大企業と組む必要があるのか、深く考える必要があります。言い方は悪いかもしれませんが、スタートアップが唯一、大企業に勝っているのはスピード感、つまり意思決定の速さだけです。それ以外はだいたい大企業のほうが優れています。そのなかで両者にメリットがないのに組んだとしても、誰も得しません。

大企業の延命を助けるためにスタートアップは存在しているわけではありません。組むことで、世の中のために大企業とスタートアップで何を提供できるのか、互いに尊重した協力ができるかどうかの視点が大事です。それがないのに組んでもスタートアップ側にメリットはないでしょう。

また、コラボする際の細かな部分で言えば、大企業側の「稟議」がどういうプロセスになっているのかを知っておくとスムーズに進みます。できうる限り、最終意思決定者に近い人から話をしておかないと、途中で条件が変わってしまうことや、終盤で話がひっくり返されることもあります。頼る人や握る人を選ぶということもスタートアップが上手く大企業と組むために重要だと考えています。

執筆
INNOVATIVE PORT編集部 
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