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日曜日, 5月 31, 2020

コラボに挑むスタートアップに期待する「媚びない」姿勢

※この記事は、2016年2月8日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

進藤さんは経営企画部門の所属なんですね。大企業の中の新規事業に携わる部署と、スタートアップの特徴を教えてください。

大企業というのは、長い歴史の中で安定してまわる仕組みの追求をしてきているのが通常です。そのことによる組織力や効率性が大企業の強みであるとも言えるのですが、これは競争の内容やルールが比較的安定していることが前提になっています。ある種の計画至上主義や経験至上主義が自動的に織り込まれ易く、合議に重きが置かれる構造とも言えますね。ところが、新規事業を創出する過程では必然的に未知・未踏の要素を扱うことになるので、時として悪意なき社内常識や習慣のようなものが障害になります。邪魔する奴がいる、とか、制度が悪いといった他責的な話もあるでしょうが、それ以前に当事者自身の中でコンフリクトやスキルミスマッチが起こることが避けられません。そもそも構造に根差しているので簡単には変えられませんし、変えたら変えたで既存事業の強みが失われるのではないか、という当然の心配が生じます。このような問題は、少なくともゲームチェンジャーを志向するようなスタートアップには無いはずです。新しいことを仕掛けることへの内外の抵抗感というのは大企業とスタートアップでは格段に違いますよね。そこでスタートアップとのコラボレーションという選択肢を模索していました。

進藤さんや、進藤さんの所属している部署はスタートアップに不信感や抵抗はなかったんですか?

個人としては全くないですね。ずっとこの会社に勤めていますが、出向が多かったこともあり、私は自分のことを社内の常識や習慣が部分的に欠けている、インサイドアウトサイダーだと認識しています。総合商社に出向していた時にスタートアップへの投資を検討する業務に従事したことで免疫がついたというか、いまのスタンスを形成するのに大きく影響していると思います。

経営企画部門で新規事業の仕事をし始めてから、会社に気付きをもたらす、違和感のある出会いの場が必要と考えていました。出島とか、経済特区とか、一国二制度のような、現有の在り方はそのまま取り置きつつも、それでも新しい風にじかに触れて新たな成長の手掛かりを掴めるような、インサイドアウトサイダーとアウトサイドインサイダーが交わる場はどうやったら作れるのだろう、という課題意識です。

というのも、大企業には有形・無形を問わず膨大なリソースがあるはずなのですが、真面目に棚卸をしてもどうも既視感のある結果にしかならない。そんなはずはないだろう、少なからぬ無自覚な資産というものがあるはずだと感じていました。JRさんの駅ナカ事業のような、車両や運行管理技術といった認識に上りやすい“いかにも”なリソースではなく、膨大な人の往来、それ自体はずっと以前から目の前にあったのにいまほど真剣に活用されてこなかったもの、を事業リソースとして活用するような視点は、インサイドインサイダーが教科書通りの強み分析を重ねるよりもスタートアップの皆さんの力を借りた方が早く的確だという確信めいたものを持っていました。

良質なスタートアップに出会い、確実にコラボレーションを実現するためのcreww

―直接、スタートアップを探さずに、敢えてcrewwをつかったのはなぜですか?

色々なことを考慮しましたが、最後は直観です。まず商社出向時の経験から、良質なスタートアップに巡り合うにはランダムに動きまわっても、システマティックにやってもダメで、適度にアナログな繋がりがモノを言うという認識を持っていました。また、迂闊に失敗して社内に妙なタブーを作るかも知れないことを恐れました。「コラボやスタートアップはダメなんだ」「外部の風を入れるのは大変」となれば大きな損失です。ですから、適切なハブを探していたんです。そんな時、たまたま2014年暮れにどこかのワークショップで伊地知さんと知り合って、すぐに「ああ、この人だな」と思いました。ステレオタイプに押し込めるつもりはありませんが、信念が揺らがない、迎合してこない、そして大義があるという理想的な佇まいでした。

佇まい…もうそこは直感的なものなんですね。伊地知に出会って、コラボをするまでの流れや、選定基準を教えて下さい。

2015年の年明けから何度かオフィスをお邪魔して、互いに真面目な、しかし、とりとめのない話をしていました。その後、弊社の担当役員に引き合わせて2015年6月に契約し、9月にオリエンを行いました。 crewwコラボを通じて61件の応募があり、それらを4名のスタッフでチェックして、8件まで絞りこみました。課題選定のポイントは、既存事業を新たな視点からさらに伸ばせるか、自社の自覚的・無自覚的リソースに立脚した新たな事業が描けるか、です。弊社の既存事業は「金のなる木」というか、盤石だがもはや飛躍的な成長が望めないものを中心に構成されているので、持続的な成長を意図した事業ポートフォリオを組むためには、新たなスター事業か、金のなる木に水をやって太くするような事業を生み出す必要がありました。

今回のコラボはいかがでしたか?スターは生まれましたか?

プロセス面では苦労も多かったですが、実際に具体的な協業の入り口に立てたものもあり良かったと思います。提案の属性でいうと、金のなる木に水をやる事業の方が多かった印象ですね。

それはなぜでしょう。

私たちは先方のことを知らない状態から、先方は私たちの一般的な印象を知っている状態から、コミュニケーションがスタートします。ですから、特に注意を払わない限りは、自然と私たちの既存事業周辺に提案が集まりやすくなる傾向はあるように思います。

テーマの絞り方や応募要件を意識的に甘くした結果として、共同で事業を創出するという本来の趣旨とは異なるもの、例えば実質的に協賛を求めるようなお話が多かったことは反省点ですね。これは、「ひとつも応募がなかったらどうしよう」という弊社側の心配が少なからず働いたために自ら招いた結果と理解しています。

スタートアップに望むのは、他人のまま媚びずに一緒に働けること

お互い探り合いからはじめるため、苦労もあったということですよね。大企業とのコラボレーションを検討している企業に伝えたいことはありますか?

一緒にやろうというスタートアップが大企業側の経営課題を解きたいと思っているわけではないことも、大企業がスタートアップの成長や貢献を第一の目的にしているわけではないことも、ともに自明です。ですから、スタートアップには、大企業に迎合せずに、自らの理想の実現なり課題解決なりに全力になってもらいたいですね。「他人のまま仲良く取り組む」ということができなければ早晩破綻するものでしょうし、そうなれば失った時間は取り戻せません。

さらにcrewwに対して、もっとこれをやってくれると嬉しいというようなことはありますか?

企業を取り巻く機会と能力の構造的ミスマッチを解消することがcrewwの存在意義ですよね。まずは、大企業が持つ無自覚なあるいは過小評価されているリソースを発掘する作業に、アウトサイドインサイダーとしてより一層深く関与して頂けると有難いですね。殆ど定義の反復になりますが、大企業のみにこの作業を任せても既存事業向けに無駄をそぎ落としたリソースが出てくるだけですから、スタートアップが大企業と一緒にやることに対して高いモチベーションや的確なご提案を引き出すことが難しくなります。

また、首尾よくマッチングができたあとのフォローアップもとても重要な機能だと思います。たまたま出島で遭遇した慣習も文化も信念も異なる者同士ですから、些細なことで行き違いが生じることでしょう。投資に関する考え方も、成功の定義も互いに全く違うことが普通にありえます。大企業とスタートアップの協業が陥りやすい穴を埋めていくという機能は、コラボの価値やスタートアップコミュニティを高めていくうえで有益です。ここにはcrewwが優先的にタッチできるはずですから、ここに人・物・金・情報を充てていくような新たなサービスというものがあっても良いかなと思ったりしています。

執筆
PORT編集部 
「PORT」はCreww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。
PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

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コラボに挑むスタートアップに期待する「媚びない」姿勢

※この記事は、2016年2月8日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

タテからヨコへ変わりゆく世界

以前、「会社はコミュニティ化し、仕事はプロジェクト化する」という記事をエントリーしました。あれから1年。2020年という、世界と日本にとって節目となるであろうこのタイミングで、急激に変わりゆく世界を私なりに考察し、「タテからヨコへ変わりゆく世界」という概念でまとめてみました。昭和〜平成を「タテの世界」。令和を起点とする未来を「ヨコの世界」と定義しています。 タテの世界 タテの世界とは、際限なくタテに伸びていく階層構造(ヒエラルキー)です。上と下の概念は、主従関係や強制力と相性が良く、約70年前の世界大戦時においては「国家(軍隊)」、60年前の高度経済成長期は「会社」が代表的な組織構造でした。 上から下へ働く重力は中央集権と金融資本主義を加速させ、誰かや何かとの比較を肥大化させるエンジンとなります。仕事はニュートンのリンゴのように上から落ちてきます。集団の中で、リンゴをキャッチする最も”課題解決”が上手な人間が上へ上へと駆け登り、管理がしにくい個性と美意識は同調同質の圧力に潰されていきます。 タテ型経営の行き過ぎによってビジネスパーソンは会社の歯車と化し、コンプライアンスの徹底によって決められたことしかできない、やらない思考停止状態に陥ります。地球においては資源の奪い合いと温暖化が加速化し、富と機会の二極化は国家の右傾化を招きます。これらは全て、際限なくタテに「伸び切ってしまった」社会のひずみだと感じるのです。タテを否定しているわけではありません。ただし、上と下の距離感はもはや限界に近づいているのではないでしょうか。