12.8 C
Japan
水曜日, 6月 23, 2021

スタンプをポンッ!で決済完了。りそな銀行×ギフティ×BUZZPORTによる「デジタル通貨」実証実験に迫る

「イノベーションのエコシステムを備えた街」神戸市とCrewwが共同で運営した「神戸オープンアクセラレータープログラム」。エントリー企業とスタートアップをキュレーションし、神戸市内で新規事業を創出させるプログラムだ。プログラム開始から1年経過した2018年、晴れて1つの新たな事業モデルが誕生した。りそな銀行と株式会社ギフティ、株式会社BUZZPORTによるデジタル地域通貨プロジェクト「旅するフクブクロ」だ。「旅するフクブクロ」は“デジタル化された商品券”。まだ実証実験の段階ではあるが、可愛いらしいテイストで簡便化されたUIは、広く受け入れられていく可能性をみせる。今回は日本を代表する酒どころの1つ「灘五郷」で行われた実証実験の様子をお届けする。
※この記事は、2018年3月12日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

ローカル特有の文化としてたびたび紹介される「地域通貨」。しかし、その成功事例はまだ少ない。その理由は、法定通貨と兌換できないことによる流通性の低さ、「わざわざ使うまでもない」と思わせてしまうユーザー体験の満足度の低さにあった。

りそな銀行・ギフティ・BUZZPORTの3社で行われた本プロジェクトは、そんな地域通貨に新しい風を呼び込む。「旅するフクブクロ」は、「福袋」と「スタンプ」の組み合わせによる楽しいUXを提供。「地域通貨」を使う理由となりうる「付加価値」をつけたサービスとなっている。

スタートアップと大手銀行。この異色のマッチングはCreww(クルー)が主催する「神戸スタートアップアクセラレーター」により実現した。今回は神戸の酒心館・菊正宗酒造で行われた「デジタル通貨」の実証実験の様子をお届けする。

スタンプポンッ!で決済完了。思わず買ってみたくなるUXとは?

「旅するフクブクロ」の使用画面のサンプル

今回の実証実験に参加した100組200名には2万円分のデジタル通貨が支給されている。専用の電子ウォレットのページに保存されたこの通貨を使い、灘五郷の10か店をめぐり様々な福袋を購入することができる。

ユーザーは使用する金額を記入し、購入するフクブクロを選択できる。酒心館では「2000円」「3000円」と2種類の福袋が用意されており、好きな福袋を選択できる。

福袋の金額を選ぶとスタンプを押印する画面が表示される。店員がスタンプを押すと…

恵比寿様を模したキャラクターが表示され、「決済完了」となる。

楽しく、思い出に残るUXが「旅するフクブクロ」の特徴だ。スタンプ技術は協業した株式会社ギフティの「Welcome!STAMP」の技術が応用されている。同社はIT技術を用いたギフトサービスが強みのベンチャー企業。先の「Welcome!STAMP」の導入事例には、長崎の五島列島で使えるデジタル商品券「しまとく通貨」がある。

このサービスは「日本酒」のようなコアなファンがいるコミュニティの熱量を上げることを期待されており、プロジェクトに参画したりそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏はこう語る。

「デジタル通貨によるキャッシュレス化によりファンコミュニティの購買行動がより便利に楽しくなることで、オフライン体験の幅が広がり、ファンが増える契機になれば良いと思う」。

ITに不慣れな層でも安心して使えるUX。単なる「購買行動」が思い出に

今回の実証実験は、日本有数の酒どころとして知られる「灘五郷」の一角を担う「神戸酒心館」で行われた。神戸酒心館の醸造する純米吟醸「福寿」は、山中伸弥教授がノーベル賞を受賞した折、受賞パーティでも振舞われたことで話題になった

当日、天気はあいにくの雨だったが、店内は多くの人で賑わっており、日本酒の「コア」なファン層の存在を感じた。写真は大阪から足を運んできた女性。友達に勧められ、実証実験への参加を決めたという。実際に使ってみた感想を聞いた。

―― 実際に「旅するフクブクロ」を使ってみていかがでしたか?
スタンプの仕組みがおもしろかったです。財布やポイントカードを出す手間が省け、会計がすぐに終わるのですごく便利でした。友達から誘われて参加しましたが、友達とも盛り上がり、とても楽しい体験になりました。

―― 電子マネーは普段からよく使われますか?
電車のICカード乗車券以外はあまり使いません。

―― 今回「地域通貨」としての電子マネーを使ってみていかがでしたか?
クレジットカードで商品が購入できる形式だと、なんでも買ってしまい、制御がきかなくなってしまう怖さがありました。今回の「旅するフクブクロ」は商品券のように金額が設定されており、無限に使う恐れがありません。使いすぎる心配がなく、安心して買い物ができました。

「大手銀行 × スタートアップ × 伝統産業」。コラボレーションの先に見えた新たな“Crewwの役目”とは?

りそな銀行・ギフティ・BUZZPORTの3社合同で行われたプロジェクト「旅するフクブクロ」。日本有数の酒処「灘五郷」で、キャッシュレス化した新たな地域通貨を提供した。今回のプロジェクトは「大手銀行」「スタートアップ」「伝統産業」の3つの異なる産業が連携してのプロジェクトとなった。

「キャッシュレス化」が進む潮流の中で、このプロジェクトを実行することの意味は何か。どんな未来を実現したいのか、今後の展望について、りそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏にお話を伺った。

奥田氏は、今回の事例を端に発し、承継者不在の“レガシーセクター”と若い世代が中心の“スタートアップ”がシナジー効果を発揮する事例が増えていくのではないかと指摘する。

銀行が旅行をパッケージング?購買行動を軸にした「ファンコミュニティ」の創出で、地方にお金を還流させる

―― 今回、Crewwの「神戸オープンアクセラレータープログラム」で株式会社ギフティ・株式会社BUZZPORTとの連携が決まりました。実際にエントリーされてみてどんな感触を得ましたか?
Crewwは圧倒的に登録されているスタートアップの数が多く、連携した2社以外にも可能性を感じる企業さんとたくさん話をさせていただきました。自力でウェブ検索で探すとなると非常に労力がかかるので、Crewwを介して様々な経営者とお話できたことはありがたかったですね。

―― 多くのスタートアップとお話を重ねた中で、今回はギフティ、BUZZPORTとの連携を決めました。決め手はなんだったのでしょうか。

りそな銀行地域オフィサー 奥田浩之氏

銀行の3大機能は「決済、融資、預金」です。しかし、これから銀行が生き残っていくには、機能を高めるだけでは。お客さまに満足して頂くことが出来ません。顧客の記憶に残る質の高いUXを提供する必要があります。今回は質が高く、ユニークなUXを顧客にご提供出来る可能性を感じた2社と連携させていただくことを決めました。

―― 「大手銀行 × スタートアップ」は珍しい協業スタイルだと思いました。プロジェクトを進める中で、難しかったことはありましたでしょうか。
スタートアップと大手銀行で一番異なるのは文化です。銀行の人間とスタートアップの人間では使う言語が異なるので、コミュニケーションに少し難しさがありました。また、スタートアップは非常に動きが早く、逆に銀行側がスピードについていくのに苦労しましたね。スタートアップと関わる中で、逆に私たちの課題を認識できました。

―― 今回の「旅するフクブクロ」、最終的に目指すところとは?
私たちは今回のデジタル通貨を日常のあらゆるものに適用しようとは思っていません。目指すのは「ファンコミュニティのパッケージ化」です。

例えば旅行会社と組み、灘五郷へ行くプランを作るときに「電車や買い物、ホテルもすべてスタンプで決済が可能」というパッケージングです。キャッシュレスで電子スタンプを集めながら旅行する、新しい余暇の楽しみ方を提案することも目指す形の1つだと思っています。

―― 次のフェーズとして、どんなことを想定していますか?
デジタル通貨を広めるために、加盟店を増やすことが先決です。なるべく低い手数料で、加盟店が増えるような収益構造を考えていく必要があると思っています。

Crewwの新たな可能性“レガシーセクター×スタートアップ”で、良質な伝統事業を盛り上げる

―― 今回、地方の伝統産業と関わる中で、業界のさまざまな側面が見えたのではないでしょうか。
地方の産業の多くは経営に問題はありませんが、「次の事業」になかなか踏み出せないことが大きな課題の1つとしてあります。後継者問題も深刻です。今後、Crewwのスタートアップコミュニティ等と更なる連携を目指し、今回の試みに留まらず“レガシーセクター”の課題をスタートアップとコラボレーションすることで解決することができるのではないかと思いました。

―― スタートアップの若々しさを取り入れていくということですね。
地方では行政機関でもアントレプレナーを養成されたり、事業承継に取り組んでおられますが、まだまだ確度は高くありません。レガシーセクターの課題をスタートアップが解決するだけでなく、廃業してしまいそうな事業の「箱」を引き継ぐような動きができれば、面白いことができるのではないでしょうか。

―― なるほど。それは面白そうです。
「伝統産業」などを中心に、スタートアップが入ろうとしても入れない、参入のきっかけにが乏しい業界はたくさんあります。そういった業界にもスタートアップが入っていければ、面白い動きが生まれそうですね。

また、「もったいないなぁ」と思う地方の動きの1つに、良質な事業が廃業に追い込まれたり、ときには非常に安い値段で売買されているといったことがあります。Crewwの提供するプログラムが地方に広がれば、そういった問題も解決できる可能性があるのではないでしょうか。

執筆
PORT編集部 
「PORT」はCreww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。
Facebook コメント
PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

Featured

【募集】「人間と自然の掛け橋」に。兵庫県加古川市の優良企業ムサシがスタートアップ協業

【オープンイノベーションインタビュー】 明治時代に全国屈指の金物のまち兵庫県三木市で金物問屋として創業し、1983年にムサシを設立。加古川に本社を置く同社は、高枝切鋏のムサシとして業績を軌道に乗せ、今現在はセンサーライトと園芸用品のムサシとして事業成長をしている優良中堅企業です。 そんな人と自然に関わる事業を展開する地域の牽引企業として、ここ数年最前線で課題に感じているのは、高齢者が加速するライフスタイルの多様化についていけない現状なのだとか。 そこで、スタートアップとの協業により、企業の枠を超えて社会課題解決につながるサービスや製品を生み出すべく、Crewwのオープンイノベーション支援サービスを使い、アクセラレータープログラム開催に向けて一歩を踏み出しました。 オープンイノベーションに乗り出すに至るまでの思いを、株式会社ムサシ代表取締役社長の岡本篤氏に伺ってみました。 #アクセラレータープログラム #オープンイノベーション #スタートアップ #ムサシ #大挑戦時代をつくる #Creww

【募集】日野自動車「本気のDX」。デジタルがブルーオーシャンの物流業界を変革し、日本に活力を

【アクセラレーターインタビュー】 1942年の設立以来、社会にとって必要不可欠なトラック・バスづくりを担い、日本の物流を支えてきた日野自動車。しかし、技術革新やライフスタイルの多様化に伴い、人や物の移動を取り巻く環境は急速に変化。さらに、ドライバー不足やCO2排出量の削減、持続可能な交通網の維持など、解決すべき社会課題は多岐にわたっています。 そこで、自社でのソリューション開発・提供だけでなく、他社との協業による社会課題解決を目指し、「HINO ACCELERATOR 2021 -HINO DE SAFARI-」を実施。スタートアップの技術やアイデアに日野のアセットを掛け合わせることで、物流業界や社会の課題を解決し、新たな価値提供を目指しています。具体的にどのような思いで取り組んでいるのか、日野自動車CDO(Chief Digital Officer)デジタル領域長の小佐野豪績氏に話を伺いました。

「呼べば5分で届く世界」セイノーHDとエアロネクストがオープンイノベーションで描く空の革命

【アクセラレーターインタビュー】 既存物流とドローン物流を連結・融合させた新スマート物流サービスを確立すべく、2021年1月にセイノーHDとエアロネクストが業務提携を締結。現在、山梨県小菅村にて、無在庫化と無人化を特徴とする、スマートサプライチェーン「SkyHubTM」の実証と実装にむけたプロジェクトを展開中です。 今回は、セイノーHDの河合 秀治氏とエアロネクスト田路 圭輔氏にご登壇いただき、「 SkyHubTM」についての詳細や協業に至った経緯、今後のビジョンなどについてお話しいただきました。 #オープンイノベーション #業務提携 #アクセラレーターインタビュー #セイノーホールディングス #エアロネクスト #SkyHubTM #スカイハブ #小菅村 #実証実験 #ドローン物流 #大挑戦時代をつくる #Creww

物流ソリューションの未来を切り開く為、これまでの常識にとらわれない「次の物流」の開発に、スタートアップの皆さまとチャレンジさせていただきたい。

【アクセラレーターインタビュー】 物流業界大手の佐川急便が、2021年度もアクセラレータープログラムを実施します。2014年からオープンイノベーションに積極的に取り組んできた同社は、スタートアップとのアライアンス活動の要となる新たな基地として、昨年「HIKYAKU LABO」を新設。物流を取り巻く環境や顧客ニーズが激変する中、スタートアップとの協業によって持続可能な社会を作るべく、社会課題の解決に取り組んでいます。「アクセラの審査には通過しなかったとしても、応募いただいたスタートアップとは何かしらの協業を模索したい」と語る執行役員・藤野博氏に、佐川急便がオープンイノベーションに取り組む背景やスタートアップと狙いたい領域などを伺いました!
Facebook コメント