12.8 C
Japan
水曜日, 9月 27, 2023

スマホの画面だけでデータ送受信 注目を浴びる「FlashTouch」技術

スマートフォン画面が発する光のシグナル情報と、タッチパネルの静電容量によって情報のやり取りができる「FlashTouch(フラッシュタッチ)」を開発したのが2012年5月創業の株式会社マッシュルーム(東京都品川区)です。iPhoneでは対応していないNFC(近距離無線通信技術)や、電波干渉リスクが心配されるBluetoothなどに代わり、スマホの双方向通信システムのスタンダードとなる可能性を秘めた斬新技術。大きな可能性と今後のビジネス展開について、原 庸一朗(はら よういちろう)社長に伺いました。
※この記事は、2016年1月14日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

スマホの液晶画面で読み取り、アプリやチップも不要

—— スマホの専用アプリもいらず、画面をタッチするだけでなぜ双方向で情報が通信できるのですか?「FlashTouch(フラッシュタッチ)」は、特殊な電波でも発信しているのでしょうか?

いえ、FlashTouchは電波で通信するものではありません。人間の目ではなかなか見えませんが、スマホの液晶画面は光が点減しています。この点減情報を光センサーで読み取ります。「モールス信号」のようなイメージです。

もう一つ、タッチパネルは指から出る微弱な電流によって入力ができますが、このタッチパネルの静電容量によっても情報をやり取りします。

スマホのウェブブラウザで専用ページを表示していただき、その画面をFlashTouch専用端末にタッチするだけで情報の送受信が可能になります。

そのため、NFC(近距離無線通信技術)のようにスマホ内に専用チップを搭載する必要はありませんし、Bluetoothのように電波を発信することもありません。

たとえば、NFCはiPhoneでは対応していませんが、FlashTouchはウェブブラウザとタッチパネルを持つ端末なら誰もが今すぐ使えるようになる技術です。また、電波を発信しないため、情報を盗み取られるリスクも格段に低くなります。

—— スマホと専用端末間で情報(データ)をやり取りする、という技術は、日本が主導するFeliCa方式による「おサイフケータイ」や、世界標準的なNFCが主導していますが、双方が並び立つ状況で決定打がありません。その間隙を突く形ですごい技術を開発されましたね

まだ導入前の実験を行っている段階ですが、大手メガバンクや大手電機メーカーなどから引き合いをいただいています。

たとえば、スマホ内にキャッシュカードの情報を格納しておけば、専用端末のある所でスマホをタッチしていただくだけで決済ができるようになります。スマホさえあれば、わざわざ銀行やATMへ行ってお金をおろす必要がなくなるわけです。

タッチされる側となるFlashTouch用の専用端末ですが、製造には1台あたり500円以下というコストしかかかりませんので、小さな店舗などに無料配布して普及させるのもそれほど難しくないのもメリットとなるのではないでしょうか。

—— 原社長はもともと研究者や技術者を目指していたのですか

明治大学では農学部で再生医療分野を学んでいましたが、研究者や技術者志望ではありませんでした。2008年に卒業後は、不妊治療を行っている産科婦人科を比較するWebサービスで起業しています。利用者はそれなりに多く、ビジネスモデルとしても高い評価をいただいたのですが、病院側の供給不足が生じている市場ということもあり、1年で閉じました。

その後、2012年に現在のマッシュルームを3人で新たに立ち上げるとともに、自身でもう1社、バイオベンチャーを創設して今も運営しています。

—— マッシュルームでは当初からFlashTouchの開発に取り組んだのでしょうか

最初はソーシャルギフトサービスのようなビジネスを立ち上げています。この「ippy(イッピー)」は、ギフトを送る側がお金を払わずに済み、メーカーや店舗に販促目的で金券を出してもらうというめずらしいスキームでした。

ただ、金券を使う際には加盟店でバーコードを読んでもらう必要があり、加盟店側のオペレーションがボトルネックとなってしまいました。この経験を機にFlashTouchの仕組みが生まれたともいえます。

—— FlashTouch以外にも「CHARIO KART(チャリオカート)」というユニークなプロジェクトも行っています

自転車のホイールにコンピュータを取り付け、Apple Watch(アップルウォッチ)によって動きを制御することで、ゲームの「マリオカート」をリアルな自転車で実際にやってしてしまおうと……(笑)

キノコが出ポイントに来ると、実際に自転車が加速し、アップルウオッチから緑こうらを発射すると他のプレイヤーにはブレーキ負荷がかかります。こちらは、当面ビジネスになりそうにはありませんが、リアルなレースゲームとして楽しめますよ。

株式会社マッシュルーム 代表取締役社長 原 庸一朗さん

—— Crewwではかなり積極的にコラボレーション(アクセラレータープログラム)に応募されていますね

インターネット上でCrewwの存在を知り、これまで5〜6社のコラボレーションに応募しています。もちろんFlashTouchのほうです。大企業の方の前のプレゼンテーションはやはり緊張しますが、出資に関係するプレゼンとは異なり、長期計画や市場の大きさなどが聞かれないのが特徴的でした。

—— FlashTouchの技術を使ったどんなビジネスを提案してきたのですか

主にFlashTouchの要素技術を使った新規事業です。ただ、新しい技術ということもあり、そのリスクをとっていただける大手企業が少ないのが残念です。現時点では、どんなコラボの形が最適なのか模索しているところです。

—— 最後に、Crewwのコラボを体感してみて、どのように思われたかお話いただけますでしょうか

現状はかなり広いテーマで募集されていますが、大企業のなかで絞られた具体的な課題で募集されていたなら、こちらの提案もより細かな内容とすることができます。

新しいことをやりたい、ということを目的化するのではなく、募集する側の大手企業がゴールをどこに置いているかを見極めなければならないと感じています。

執筆
INNOVATIVE PORT編集部 
「INNOVATIVE PORT」はCreww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。
Facebook コメント
PORT編集部https://port.creww.me/
PORT by Crewwは、Creww株式会社が運営する、社会課題をテーマに、新規ビジネス創出を目指すスタートアップ、起業家、復業家、 企業をつなぐ挑戦者のためのオープンイノベーションメディアです。

Featured

【協業案募集】土や人が築く未来。| 建設業の働き方改革に挑むTSUCHIYAの挑戦!

【オープンイノベーションインタビュー】土木事業をルーツに、国内建設事業を主軸に置きながら、海外事業、航空事業、環境事業と合わせて4つの事業リソースを有する「TSUCHIYA」。【継承と挑戦】が自らの役割ー。そう語る代表取締役会長兼社長 土屋智義氏の先見の明が、設立70周年を迎える「TSUCHIYA」を築き上げてきました。 成長を止めない同社が、今、アクセラレータープログラムを開催する理由は何か。スタートアップにとって「TSUCHIYA」と共創する魅力とは何か。常務取締役執行役員 増田亮一氏にお話を伺いました。 #募集 #TSUCHIYA #アクセラレータープログラム #インタビュー #オープンイノベーション #スタートアップ #共創 #協業 #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる

【協業案募集】製造業の現場から、世界の産業界を変える!|リックスが挑むイノベーション

【スタートアップ募集】2022年に創業115年を迎えた「リックス」が、2023年8月にアクセラレータープログラムを開催します。不透明な時代の変化に対応しながら、独自の製品やサービスの提供で製造現場を支えてきたリックスが、初のプログラム開催に至った背景や、スタートアップとの共創に期待するものとは。リックス株式会社の代表取締役 社長執行役員 安井 卓氏にお話を伺いました。 #リックス #アクセラレータープログラム #共創 #スタートアップ #メーカー商社 #Creww #大挑戦時代をつくる

【三井物産 × スタートアップ4社】スタートアップとの共創!三井物産が切り開く未来とは

【Creww Growth活用協業事例インタビュー】鉄鋼製品のトレーディングを起点に、鉄に限らない製造業、メンテナンス業、デジタルプラットフォーム業へと展開を進める三井物産株式会社の鉄鋼製品本部。同本部は、2022年12月に『三井物産スタートアップ共創プログラム 2023 Ver1』と題した同社初となるアクセラレータープログラムを開催した。産業課題・顧客の潜在的ニーズを先取りした新たな事業の共創を目指した本取り組みから、どのような成果が生まれたのだろうか。三井物産株式会社 鉄鋼製品本部 戦略企画室の長谷川明彦氏に話を伺った。 #三井物産 #三井物産スタートアップ共創プログラム2023 #オープンイノベーション #活用協業事例インタビュー #CrewwGrowth #Creww #大挑戦時代をつくる

【募集】<日本初> 静岡県の浜松・湖西・袋井3市合同で、スタートアップの実証実験をサポート!

【オープンイノベーションインタビュー】浜松市では、令和元年度からいち早く 、全国のスタートアップと共に地域課題を解決すべく、庁内の各分野を所管する原課 を巻き込んでさまざまな実証実験に取り組んできた。 このノウハウを活かし、今年度からは近接する湖西市と袋井市も加わって、遠州地域 3市が合同でスタートアップの実証実験サポート事業を実施することが決定した。 スタートアップにどんなメリットがあり、3市が合同で取り組むことによりどんな未来が訪れるのか。浜松市産業部スタートアップ推進課の米村仁志課長、湖西市産業部産業振興課の工藤崇裕課長、袋井市産業部産業未来課の廣岡芳康課長に話を伺った。 #募集 #浜松市 #湖西市 #袋井市 #静岡県 #アクセラレータープログラム #アクセラレーターインタビュー #オープンイノベーション #スタートアップ #CrewwGrowth #大挑戦時代をつくる #Creww
Facebook コメント
jaJA