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※この記事は、2018年2月26日 、creww magagineにて公開された記事を転載しています。
高額な家電販売に、ARというソリューション。
“家電のO2O”を実現する、「scale post viewer AR」

― まずは、ヒナタデザインの事業内容について教えていただけますでしょうか
大谷佳弘(以下、大谷):スマートフォンで簡単に商品の実物大の大きさや色を確認できるアプリ「scale post viewer AR」を展開しています。もともとプロダクトデザインがしたくて会社を立ち上げたのですが、ウェブやUI設計/デザインも行う中で、諸々の試行錯誤を経て現在の事業へとたどり着きました。
― 開発の経緯を教えていただけますか?
大谷:僕が役員もしているアーキノートという会社で、建築士のためのアプリを開発していたことがきっかけです。建築士の方たちはアイデアを模索する際に、何度かコピー機を使って図面を同じ縮尺に合わせています。それではとても面倒だろうと思い、スマホで写真を撮影し、デジタル画像で縮尺を合わせられるアプリをリリースしました。
すると弊社のクリエイティブアドバイザーをしている建築士が、「実物大でも衣装デザインを見たい」と言うんです。これまでにない発想だっただけに、とても面白いと感じました。実物大で画像を表示するサービスが世界中でなさそうだったので、そこから「scale post viewer AR」が誕生したのです。

AR表示させたい商品のQRコードをアプリで読み取ると、カメラ越しの画面に実寸大で表示が可能になる。(詳細な使用方法はこちら)
大谷:「scale post viewer AR」は、スマホのカメラで映し出した光景に、特定の画像を実物大の大きさで表示することができます。たとえば冷蔵庫を部屋の中に置きたいと考えたときに、実際のレイアウトを購入前にARで確認できるんです。
今回crewwコラボを通じて協業させていただいたビックカメラ様とは、ECサイトで販売されている商品のうち、48のアイテムをAR表示できるようになっています。高額な商品でも、自宅で購入の意思決定ができるようになるのではないかと考えました。
小売大手が挑む“イノベーションのジレンマ”の打破。
ウェブから仮想空間へとつながる“新たなお買い物体”とは?
― 小売店との相性が良さそうですね。ところで、ビックカメラ様が「crewwコラボ」に応募された理由を教えていただけますか?

吉沼由紀夫(以下、吉沼):当社は、「より豊かな生活を提案する、進化し続けるこだわりの専門店の集合体」を目指して、事業の拡大を進めてきました。時代とともに変化するお客様のニーズに常にお応えしていくために、取扱い商品の拡大や接客・サービスの充実に努めることはもちろん、当社の店舗が“最新情報の発信基地”となり、新しい買い物のカタチを提案し続けることが重要であると考えています。
現在、当社は実店舗とインターネット通販サイトとを連携させ、今まで以上にシームレスで便利なショッピングの場をご提供できるよう、オムニチャネルの強化に取り組んでおります。そのスピードを加速させるためにも、他社様との協業や、スタートアップのノウハウを取り入れることに、大きな魅力を感じていました。
― ECサイトを通じた、新たな買い物体験を生み出そうと考えたのですね。
吉沼:そうです。ただ、我々も初めての取り組みでしたので、小売りにとらわれずさまざまなご提案を受け入れようと考えていました。数十社からご応募をいただいた中で、ヒナタデザイン様はとても相性が良かったのです。
― 実際にコラボをしてみて、社内の雰囲気に変化はありましたか?
吉沼:これまでの商談といえば、弊社に取引先の方が足を運んでくださるケースがほとんどでした。しかし今回のコラボでは、私たちがスタートアップのオフィスにお伺いし、非常にフラットな立場でアイディアを議論することができました。
今までは商品を取引するか、しないかを「判断する」ことが主なやりとりです。今回のようにアイディアをブラッシュアップしていく経験は少なかったので、非常に有意義だったと感じています。

王睿(以下、王):「crewwコラボ」の中でもっとも有意義なのは、提案を受けてから社内プレゼンに至るまでのブラッシュアップ期間にあると思っています。ヒナタデザイン様とのコラボも、最初のアイディアと最終アウトプットは多少変化がありました。お互いのニーズをすり合わせし、また社内のリソースをどう活用するか話し合うことで、これまでにない取り組みができました。
特に今回は、現場でお客様の生の声を聞いている販売スタッフの意見を取り入れながらアイディアをブラッシュアップしていきました。役員が集まる社内プレゼンを、現場のスタッフが担当したケースもあります。「普段では経験できなかったものを得られた」という声が多数あり、素晴らしい知見が得られたと思っています。
技術への理解が成功の鍵。協業を実現した“ブラッシュアップ期間”
― 提案とアウトプットに変化があるとお伺いしまいしたが、ブラッシュアップ期間中に苦労された点はありますか?
大谷:当初の提案では、お部屋の画像データをお客様にも登録していただき、そこに商品画像データを配置するアプリでした。一方で、当時開発を進めていたARでの画像表示の提案に切り替えましたが、やはり新しい技術を取り入れるのは不安やリスクを伴います。そこを勇気を持って導入を決断していただけたことが、協業のポイントになっているのではないでしょうか。
吉沼:ヒナタデザイン様のご提案は、我々が持つ課題を解決する上で相性がとにかく良かったのです。実物の確認ができないネットショッピングはもちろん、店舗で購入した場合でも、「自宅に運んでみたら入らなかった」というケースが一定数あります。それではお客様にご迷惑をかけてしまいますし、小売店としてはコスト負担が大きくなってしまいます。
AR技術について詳細は知っておりませんでしたが、ブラッシュアップ期間を通じて理解を深め、確実にニーズのあるサービスだと確信したことが大きかったです。
王:実際に導入してみて、紹介ページを観てくださるお客様が一定数いらっしゃることを確認できました。まだ導入して間もないですが、ニーズを把握できたことは今後につながってくると思います。
住宅展示場に派生する新たなチャネル。ARで実現する小売販売の未来
― 今後、今回の協業から新たな取り組みに派生していく可能性はありますか?
王:主に当社のインターネット通販サイトで展開している現在の取り組みを、店舗にも拡げていきたいと考えています。将来的に、たとえば店舗で電子レンジなどを購入する際、自宅のラックに設置できるかどうかを店舗にいながら確認できるようになれば、非常に有意義です。
さらにその先には、自宅のリフォームをご検討中のお客様に対して、リフォーム後の部屋のイメージをシミュレートできるサービスも展開できれば良いですよね。実は、ビックカメラでもリフォームの提案を行なっております。
大谷:他社様との取り組みで、すでに住宅販売サービスと「scale post viewer AR」を掛け合わせた取り組みを実施しています。住宅展示場でビックカメラ様の商品をAR表示すれば、その場で購入される方もいるのではないかと考えています。小売販売の新たな形を提案できれば嬉しいです。
吉沼:「これを買おう」と決めて店舗に足を運んでくださるお客様ではなくとも、たまたま店舗に足を運び、商品に興味を持ってくださった方に強くアプローチができるのではないでしょうか。
アプリをダウンロードしてくださった場合、自宅で再度商品をチェックすることも可能です。紙のカタログにQRコードを付与すれば、捨てられずにずっと持っていてもらえるかもしれません。今回の協業を皮切りに、ますますお買い物体験を向上させていければと思っています。
Company Name | 株式会社ヒナタデザイン |
launch | 2016年10月01日 |
address (e.g. of house) | 東京都千代田区外神田6丁目11-14 |
representative director (i.e. someone chosen by the board of directors from among the directors to actually represent the company) | 大谷 佳弘 |
Company HP | https://creww.me/ja/startup/scalepost/info |