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Japan
Sunday, December 3, 2023

【日野自動車×損害保険ジャパン】アクセラレータプログラム「HINO DE SAFARI」|「交通事故ゼロ」の実現に向けて、思いを一つに

日野自動車は、CrewwGrowthを活用し、アクセラレータープログラム『HINO ACCELERATOR 2021~HINO DE SAFARI~』を開催。この度、「ガンバリ運転ゼロプロジェクト」を提案した損害保険ジャパンの採択を決定しました。本記事は、事業化の共創へ向けチームを組む日野自動車と損害保険ジャパンとの対談の模様を収めたものであり、社会課題の解決にかける想いや事業化アイデア、今後の展望などについて、インタビューでの様子が記されています。
※この記事は、日野自動車株式会社Webサイトにて公開された記事を転載しています。

新たな領域 

2021年5月に、日野は、オープンイノベーションにより新規ビジネスを創出するプログラム『HINO ACCELERATOR 2021~HINO DE SAFARI~』をスタートし、「スマートな物流の実現のために」「もっと豊かなモビリティ社会の実現のためにをテーマに参加企業を募集しました。自社の経営資源と協業企業の技術・サービスを掛け合わせて共創するアクセラレータプログラムとしては商用車業界初note (supplementary information) symbolの取り組みでもありました。(※2021年5月時点、日野調べ)

応募企業は60社にものぼり、第一次審査ではデモデイ(最終審査)に進む5社を選出。その後、参加企業と日野の担当者との共創によって、8月18日のデモデイまでに各アイデアがブラッシュアップされていきました。

今回は、みごとにグランプリを受賞された損害保険ジャパン株式会社さま、優秀賞を受賞されたLocationMind株式会社さまの社会課題解決にかける想い、事業化アイデア、今後の展望などについて、事業化へ向けてチームを組む日野の担当者(以後、共創担当)との対談をお伝えします。

前編は、損害保険ジャパン株式会社さまへのインタビューをご紹介します。

【提案タイトル】「ガンバリ運転ゼロプロジェクト(自動車事故ゼロへ向けて)」
【概要】「ドライバーの健康・ストレス状態」と「車両から取得できるデータ」などを掛け合わせることで、健康やストレスに起因する事故の防止につながるアルゴリズムや仕組みを構築し、プロダクト化・サービス化を目指す
プレゼン資料(PDF)(2.02MB)

後編記事:「データサイエンスで物流をより豊かに」(優秀賞受賞 LocationMind株式会社さま)

<お話を伺ったのはこの方>
(左から) 損害保険ジャパン株式会社 自動車開発第二部 モビリティサービスユニットリーダー 岡本佑允さん、主任 林慶樹さん

(左から)日野自動車株式会社 商業CASE推進部 対馬圭介、DX推進部 榎並尚志、羽鳥慎吾

INDEX

1. 原動力は「物流業界の社会課題を解決したい」という強い思い

――――「HINO DE SAFARI」への参加はどのような思いからでしょうか

損害保険ジャパン株式会社(以後、損保ジャパン) 岡本さん:私たちは、損害保険会社元来の領域である「安心安全」や「健康」のサポートを基盤に、お客さまにとって価値ある商品やサービスを創造し、社会課題の解決、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
その点で、人流・物流における社会課題の解決を、協業しながら目指す「HINO DE SFARI」の考え方は、方向性が完全に合致していました。
また、保険サービスはもとより、安全運転や事故防止に関するサービスも提供する弊社では、物流業界を取り巻く課題解決に貢献できることはないかと、常日頃、考えていたこともありました。
そんな中、日野さんのような商用車メーカーと一緒に取り組めるのは、大変貴重だと考えました。特に、日野さんのコネクティッドデータの活用と弊社のリソースとの組み合わせは、まさに今回のテーマでもある、「もっと豊かなモビリティ社会の実現」に貢献でき、社会課題の解決につながると感じています。
チーム編成についても、自動車メーカーさまやサプライヤーさまに対する保険提案業務をする者、新事業に向けた取り組みを検討する役割を担う者など、複数の部署を横断したメンバーを集めました。

――――損保ジャパンチームの魅力はどんなところでしょうか

共創担当 対馬:初めてご提案内容を読んだとき、いい意味で、非常にシンプルで混じりっ気のないストレートさが心に刺さったのを覚えています。先ほど、岡本さんがおっしゃった通りで、物流業界の社会課題をしっかりと捉え、解決したいという思いを強く持たれているチームです。特に「ガンバリ運転ゼロ」というフレーズが、私は本当に好きですね。ドライバーを敬い、ストレス状態をできるだけなくしたいという、物流業界の課題を、この一言で捉えているような気がします。デモデイまでの共創の中でも、この軸が一本しっかりとあり、全くブレることがありませんでした。これが、結果的にグランプリ受賞につながっていったのだと思います。次のステージをご一緒できることは、本当に嬉しく思います。
共創担当 榎並:初めてお会いした時、アイデアが豊富だなという印象を受けました。私たちの話に対して、次のアイデアがどんどん出てくるんです。だからこそ、この短い期間でも、ここまで濃縮された提案にまとめあげられたのだと思います。

事務局 羽鳥:私は事務局という立場でサポートさせていただきましたが、共創担当も損保ジャパンの皆さんも、ものすごい熱量でした。「交通事故ゼロ」は日野の中期経営計画の「Challenge2025」の安全に対する考え方と合致していて、個人的にも実現しないといけない、実現したいと思っています。ですので、そばでその議論がどんどん進んで形になっていく姿を見ていて熱いものを感じました。

2. ドライバーを「ガンバリ運転」から解放する、やさしいサービスを目指す

――――今回ご提案された「ガンバリ運転ゼロプロジェクト」のアイデアは、どのようにして生まれたのでしょうか

損保ジャパン 岡本さん:物流業界を取り巻く課題の中でも、近年は商用車が関係した事故、特に、ドライバーの健康状態が起因となる重大事故がクローズアップされることが多くなったことから、大きな社会課題の一つだと考えていました。さらに、ドライバーが精神的にも肉体的にも負担を抱えながら業務に従事しているという調査結果もあり、社会的な背景も踏まえて、ドライバーの健康状態に着目しました。
運行管理者のお話を伺うと、運転中のドライバーさんが心疾患によって亡くなってしまったり、ストレスや悩みを抱えながら業務に従事して事故につながってしまったケースがあることを知りました。やはり、少しでも早くドライバーの変化に気づき、何らかの手を打つことで防げる事故もあるのではないかと、今回のアイデアが生まれました。

――――「事故をサポートする」から「事故をなくす」という発想の転換は少し驚きでしたが

損保ジャパン 岡本さん:保険は、万が一事故が起こってしまったときに必要となるものであり、それをしっかりサポートするのは損害保険事業の要です。しかし、これからの社会を見据えると、自動運転などの新しい技術も普及し、移動の形も大きく変化することが予測されます。そんな中で私たちは、事故を起こさないためのサポートをしながらも、どうしても防ぐことができない事故にもしっかり対応する。その両面でお客さまをお支えしたいと考えています。
共創担当 榎並:やはり交通事故をなくすことは、誰もが純粋に願う、社会全体のうれしさです。我々、日野も、主体的に取り組んでいますが、さらに加速していくべきだと捉えています。損保ジャパンさんからこの提案をいただいたこと、そして、それに関われることが、とてもうれしかったのを覚えています。ここからさらに事業化に向けて動き出せるのも、とてもワクワクしています。

――――このアイデアの一番のポイントは

損保ジャパン 岡本さん:ずばり、ドライバーの心と体の変化からストレス状態を捉えることに着目した点です。「ガンバリ運転ゼロ」の名の通り、ドライバーがストレスを抱えたまま業務に従事する状態をなくすことを目指し、健康データ、日野さんのコネクティッドデータ、弊社の持つ過去の事故データを掛け合わせてアルゴリズムを構築し、異常検知やアドバイスへつなげる仕組みは、新しいと考えています。
また、STEP1、STEP2、STEP3と少しずつサービスを変えています。STEP1では運行前の、STEP2では運行中の、STEP3では日常生活全般の健康データからストレス状態を検知します。それぞれに用いる健康データ取得のデバイスも、スマートフォン、シートやシートベルトなどの車両装備、ウェアラブル端末などさまざまです。
中でも、スマートフォンを用いて手軽に短時間で計測できる技術を取り入れているのは新しいと言えます。

――――STEP1・STEP2・STEP3とサービスの内容が分けたのはなぜでしょうか

共創担当 対馬:実は、当初ご提案いただいたのはSTEP3でした。ここから3つにまで増えたのは、デモデイまでのブラッシュアップ期間に、議論を重ねてアイデアを磨いた結果です。まず一つは、ドライバーさんへの負担を考慮しました。確かに、ウェアラブル端末で24時間健康データを計測するのが理想的ですが、現実的には、他にもいくつかステップを分けるのが良いのではという意見もあり、細分化に向けて検討を重ねました。
損保ジャパン 岡本さん:まずは、ドライバーさんの仕事や生活の全体の流れを紐解いていきました。日々の業務が点呼から始まり、運行中のほとんどは運転業務に従事、再び点呼で業務を終えてご自宅に帰る。その流れの中のどこにアプローチできるかを検討しました。さらに、ドライバーに与える影響はもちろん、コストや導入時の運送事業者への負担についても配慮しました。
共創担当 対馬:一つは、運行開始・終了後の点呼でドライバーと接する運行管理者に向けたサービスがあると分かり、徐々にステップが綺麗に分けられました。
損保ジャパン 岡本さん:ブラッシュアップしていく中で、実際に運送事業者さまへヒアリングする機会もあり、現場の知見を生かしたさまざまなアドバイスをいただきました。やはり、専門的な観点でのご意見はさまざまな気づきがありました。今回の提案は、弊社だけでは導き出すことができませんでした。多くの方のお力添えで、最終的には、お客さまの必要に応じてサービス展開できるカタチにまとめられたと思っています。

――――実際に運行管理者やドライバーへの注意喚起・アドバイスをするのは、サービスとしても新しいですね

損保ジャパン 岡本さん:実際にどのような形や仕組みでアドバイスをするか、詳細についてはまだまだこれから詰めていく必要があります。例えば、点呼時にドライバーのストレス状況を検知できれば、運行管理者に向けて、ドライバーの産業医診察を促すように伝えるのも一つです。ガンバリ運転をなくす対策につながる材料を提供できればと考えています。

――――健康データの取得には、新しい技術も必要になりますが

損保ジャパン 岡本さん:STEP1のスマートフォンを用いた健康データの取得については、既存の技術を活用予定です。STEP2、STEP3については、これから最適なデバイスや技術を検討していきます。正確に、手軽に、ドライバーの状態の変化を計測できる方法を見つけていきたいと思います。
共創担当 榎並:まずは、ドライバーがストレスを感じることなく計測できることを一番に考えながら、議論を重ねたいと思います。もちろん、日野の既存技術の活用や新たな開発の他にも、他者の技術を取り入れる、広い視点でアイデアをお互いに持ち寄って進めていきたいですね。

――――一番の課題はどこにあるのでしょうか

損保ジャパン 岡本さん:ドライバーの健康データと車両データから、アルゴリズムの相関関係をきちんと導き出せるか、アルゴリズムを構築できるかは、まだまだ未知の領域です。今後、実証実験を重ねて、着実にカタチにしていきたいと思います。また、サービスとして、運送事業者やドライバーに受け入れていただけるよう、試行錯誤を続けます。
共創担当 対馬:岡本さんのおっしゃる通りです。例えば、心拍数一つにしても、人それぞれ傾向が異なると思いますし、運行ルートとの関係性もあるかも知れません。データが取れただけでは、本当にお役に立つような「確からしさ」のあるデータにはならないと思います。やはり実証実験で、「しきい値」のようなものをブラッシュアップして、より信頼できるものにしたいですね。そこが一番の肝になると思っています。

3. 共に挑む「交通事故ゼロ」の社会

――――事業化へ向けての今のお気持ちは

損保ジャパン 岡本さん:この取り組みは、実現に向けて非常に高いハードルがあります。弊社としても大きなチャレンジです。決して弊社だけで実現できるものではなく、日野さんと一緒に取り組むことで、初めて乗り越えられるものです。目指す世界観が一致している両者だからこそ、共に力を合わせて、もっと豊かなモビリティ社会の実現に向けて新たな価値を創造し、お客さまや社会課題の解決向けて、全力で取り組んでいきたいと思います。
損保ジャパン 林さん:実用化に向けた取り組みは弊社内でも加速させて対応しています。少しでも早くこのサービスを提供できるよう、皆さんと一緒に協業・共創できればと思っています。
共創担当 対馬:これからもさまざまなアイデアが出てくると思いますが、やはり、軸をぶらさずにやっていきたいと思います。また、事業性や収益性を詰めていくと、ビジネスモデルをどうするかという生々しい議論も出てくるでしょう。もちろん、それも重要です。ただ、この共創においては、「社会課題の解決」を第一優先に進めたいです。このサービスはとても価値のあることだと信じています。
共創担当 榎並:「交通事故ゼロ」の社会課題は、日野も損保ジャパンさんも全員共通です。この思いが達成できるようにこれからも頑張っていきたいです。

転載元:日野自動車株式会社HP
インタビュー 損害保険ジャパン株式会社さま 「交通事故ゼロ」の実現に向けて、思いを一つに | 日野自動車株式会社 (hino.co.jp)

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