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スタートアップとのオープンイノベーションにおいて、今後更に重要になるであろう『スコープ・ゴール・体制』の精度を今のうちに上げることを提案しています。約3か月で『スコープ・ゴール・体制』の構築を整えることができます。

Creww株式会社 Open Innovation Dept.CS team ディレクター
Born in 1981. While attending college in Washington State, USA, he started his first business with his college classmates. In 2014, he joined Creww Inc. to focus on supporting new business creation through open innovation between startups and major companies.
2020から見る、国内における「スタートアップとのオープンイノベーション」の変化とは
8年ほどスタートアップと大手企業のオープンイノベーションを見てきて、今、思うことは「スタートアップ側も事業会社側も双方に変化があるし、なかなか変わらないところもある」ということです。事業会社側で大きく変わってきている点でいうと、「オープンイノベーションプログラムのアウトプット」に変化があるように思います。8年前をアクセラレーター元年、つまり1段階目とすると2段階目、3段階目と大きく3回脱皮して変化しています。
Meet
1段階目はMeetと呼んでいます。これは単なるマッチングを意味しています。新規事業というよりは「珍しいベンチャーがいるらしいから知り合いたい」と言った入り口部分。交流会、展示会や名刺交換会における「偶発的な出会い=オープンイノベーション」という時代がありました。これはこれで当時は非常に需要が大きかった。ただ残念なことに、結果的に新しい事業は何も生まれなかったという現実がありました。そして、2段階目へ進んでいきます。
Collaboration
2段階目を「Collaboration」と呼んでいます。会うだけでは意味がなく、何かしら一緒に取り組むというアウトプット、つまり事業共創を目指す形です。例えば事業会社の告知力と顧客基盤を使ってスタートアップサービスを一緒に広げてあげるなど。よくあるのはスタートアップサービスに事業会社が乗っかるパターンです。一緒に徐々に市場拡大、マネタイズしレベニューシェアをしていく形です。これはこれでお互いに実利が生まれるので良いモデルです。さらに進化してきたものが3段階目。
Development
3段階目を「Development」と呼んでいます。2段階目と同様にスタートアップのサービスに乗っかりつつCollaborationする(協業する)。一方で自社やクライアントに「新しい価値提供の仕方や新しいビジネスモデルの発見」につなげていく。そして出資や買収に発展していきます。要は2段階目のその後まで進めていくものです。
例えば、不動産業界の事業会社が新しいモビリティの普及を目指すスタートアップと組んだとして、このモビリティを事業会社経由で住人に一緒に広げてあげるというものが2段階目の話。つまり一緒に市場を広げてマネタイズしていきましょうよ!と。これも十分素晴らしい取り組みです。
その新しいモビリティを利用することで近隣住人の行動範囲が広がって「駅チカ/駅前」の定義が広くなる。そうすると移動手段としての優秀さに加え、今まで賃料5万円だった物件が駅チカとなり6万円に上がる、といったように自社クライアントである不動産オーナーに新しい価値を提供できる展開になってきます。もっと言えば、このビジネスが発展することで、過疎化の激しい地方に持っていったら広大な田舎を狭くする事や無価値に等しい物件にも価値が出てくる可能性すらあるわけです。というのが3段階目の話です。
このように8年で1〜3段階のアウトプットの変化が見えたことは非常に面白いと感じています。
一方で「経営層と現場の温度差」に関しては8年たった今も変わらないようです。多くの場合、新規事業創出は既存事業衰退の危機感から経営層が経営企画や新規事業部をプッシュしミッションを下すわけですが、そもそもの経営層が思い描く新規事業と現場が考える新規事業の定義の差が大きいんです。これは今も昔もなかなか変わらないことですが、やり方次第では解決するものです。そろそろこのあたりも変革して欲しい、、、という想いが本音です。
おさえておきたい「スタートアップとのオープンイノベーションで必要な準備」
「Meet」のフェーズで分かったことは、オープンイノベーションは双方に実利が無いと誰も得しないため、「2段階目のCollaborationをいかに取り組むかが重要」ということにみんな気づき始めたことです。理想としては、「3段階目のDevelopmentを目指しながら、2段階目のCollaborationに重点を置きつつオープンイノベーションを進める形」だど思います。「Development」という目標を定めつつ、それを実現するために、まずは2段階目を着手というイメージですね。
オープンイノベーションを経由して社内風土の変革や社内イノベーターの育成は欠かせない要素ですが、ここに関しても結局スタートアップとやり取りが始まる2段階目以降にすべてのノウハウがあります。そういったことからも、2段階目のCollaboration(協業)に重点をあてていくのが筋が良いのではないでしょうか。
日本国内でアクセラレータープログラムが開催された当初は、単発的なイベントという位置付けでした。そこから徐々に、継続した事業創出の1つの有効な手段という認識に変わっていっているというのもこれらの変化を後押ししていると思います。
ポストコロナにおいて、今後のオープンイノベーションはどう変化するのか?事業会社に必要なことは?
過去150回以上、事業会社とスタートアップの取り組みを見てきて、成功させるための重要な要素は大きく4つあるI believe that this is a good idea.それが「スコープ、ゴール、体制、スケジュール」。なかでも最初の3つはコロナの状況下か否かに関わらず、オープンイノベーションの成功率を高めるために必要な要素です。ですので、この期間を活用して「スコープ、ゴール、体制」は整理整頓しておくことをおすすめします。
オープンイノベーションに必要な「スコープ」とは?
スタートアップと共創を狙って「アクセラレータープログラムをやりたい!」と意思決定する際に、「ある程度狙いを定めたほうがいい」ということです。噛み砕くと、「どの領域でどのようなサービスを誰のためにどうやるのか」、そして「なぜそれを自社でやるのか」といったポイントをきちんと言語化していくということが大切です。ここが丸っと抜けて、とりあえず「新しい何か」という便利なくくり方をしてしまい、さっさとトライしてしまう事業会社は結構多いんです。
一度オープンイノベーションにチャレンジして、うまくいかないと嘆く企業の原因の多くは、ココにあると感じています。
|スコープが重要な理由とは?
スコープが抜けていることによる大きな弊害は2つほどあります。
①経営層と現場担当との「新規事業の定義」の認識がズレに拍車をかける
スコープを決めていないと「新規事業をどう考えているんだね?」という問に答えることが出来ません。なので、あらかじめ現場では「新規事業をこのように定義している」「それを実現するにあたって、このような領域のスタートアップと共創を目指したい」「まずはマネタイズに重点をおくのではなく、新しい市場の可能性、ビジネスモデルを模索したい」「自分たちだけでなく組むスタートアップにもこのようなメリットがある」、というように言語化できていることが理想です。
スコープを決め、取り組みの前に経営層と握っておかないと、どんなに素晴らしいスタートアップパートナーが見つかっても「これじゃないんだよなぁ」などと言われ、現場が泣きを見るということがオープンイノベーションの現場で発生しがちです。
②スコープがないと振り返りができなくなる
今やオープンイノベーションは単発的な取り組みではなくなってきています。つまり、いかに自社で継続的に取り組んでいけるかが多くの企業の命題となってきているのです。一度やったプログラムの反省を次回に向けて改善していかないと、ノウハウがなかなか蓄積されていきません。
スコープを定めておくことで、成功しても失敗しても何が良かったのか、何がまずかったのか振り返ることが容易になります。そういう意味でスコープの言語化は非常に大事なのです。
オープンイノベーションに必要な「ゴール」とは?
冒頭でご説明した三段階のDevelopmentに近い話です。オープンイノベーションにより良いパートナーを見つけ、協業が始まった際に、「最終的にどのように着地するつもりなのか」という絵があったほうが推進しやすい傾向にあります。
先程の不動産とモビリティの例のように、プロジェクトごとの連携に関する「ゴール」というのもありますし、一方で会社としてオープンイノベーションを「向こう数年でどう位置付け、そこに今回のオープンイノベーションをどう紐付けていくのか。」という継続的な視点を持っていく必要があります。
よくあるケースですが、中計などで「2030年に新規事業で売上の5%を!」と言ったトップメッセージが設定された場合。2030年からの逆算で本年度の取り組みの位置付けに加え、来年、再来年と計画立てておくことが重要It is.
なぜ必要なのかというと、オープンイノベーションは決して魔法の事業創出手段ではなく、むしろ失敗がつきものである、という前提があるからです。失敗をした際に単に社内から批判されるのではなく、「この失敗も含めた2030に向けた数カ年計画なんだ」と言える指針が必要になってくるんです。特に新しい事にチャレンジしてるケースでは、なおさらこう言った視点が重要になってきます。
オープンイノベーションに必要な「体制」とは?
オープンイノベーションに取り組むのは、人的リソースにおいても、時間的、経済的にも結構体力がいるものです。経営層を巻き込んだり、関係部署やグループ会社を横断したり、不明確なものを実現するために予算を勝ち取ってきたり、触れ合ったこともないようなスタートアップにいる人たちと交流したり。
なので、きちんと取り組む体制を整えて役割分担していくことが大事です。Crewwではプロジェクトオーナー、事務局リーダー、事務局メンバー、実際にスタートアップとやり取りするコーディネーターが誰で何名いるのか、また、オープンイノベーションに関わるメンバーをby nameで決めていったりしています。アクセラレータープログラムでは、同時に何十社のスタートアップとやり取りが並行して行われるので、「どこでボールが止まっているのか」「その原因はなにか」が見えづらいですが、体制を整えておくことでプロジェクトの進捗が可視化され、課題が解決しやすくなるThe first is the
上記3点のポイントを整えていくのは、結構時間を要します。ですので、オープンイノベーションを考えている段階から準備していくことをお勧めします。
スタートアップ共創の準備を検討している人が、最低限考えておきたいコトとは?
上記であげた3つの要素、「スコープ」「ゴール」「体制」を考えていくことは、それ相応に労力がかかります。ですので、まずはオープンイノベーションに取り組むにあたって現状抱えている悩みをリスト化してみてはいかがでしょう。小さなことから大きな事までなんでもいいので、ぜひ箇条書きにしてみてください。
