大手企業のイノベーション、スタートアップとの協業の必要性|パネルディスカッション

米倉:イノベーションの必要性を国が唱えて20年。状況は変わっておらず、GDPも変わっていない。つまり、やり方を変えないといけない、というのが現状です。大企業という大きな車輪と新しいスタートアップという車輪の2つが回って、今、世界は成長しているんだと思います。
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 米倉 誠一郎教授
パネリスト:
・資生堂代表取締役副社長 島谷 庸一氏
・株式会社クレディセゾン代表取締役会長CEO林野 宏氏
・アリババ株式会社 代表取締役社長 CEO 香山 誠氏
イノベーションの手法を変えなければいけない今、日本の企業を代表して今回のパネリストがスタートアップとの協業の必要性について語られた。
自身が社内ベンチャーという形で緑屋を現在の形に成長させたクレディセゾン。林野氏は緑屋を日本一のカード会社にしただけではなく、海外ではGrabはじめ様々なスタートアップへ投資をしている。投資をすることで、社内の雰囲気が変化していくと言う。また3700万人におよぶ決済データというアセットにスタートアップのテクノロジーを掛け合わせることで、さらなるイノベーションを加速させている。
「お客様商売」という強みを全面に、さまざまなスタートアップとの協業に対しても門戸を広く解放し、オープンイノベーションに足して積極的という特徴だ。
資生堂は創業147年と歴史が深く、伝統や歴史のイメージが強いが、5年前から将来をつくっていこうと、イノベーション変革がおこった。最近はアメリカ、日本、ヨーロッパと3局体制にして、それぞれの地域がイノベーションをどうになうか、という程になっている。化粧品業界が従来のライフサイエンスやマテリアルサイエンスなどの技術開発だけでなく、近年ではテクノロジー系のスタートアップと協業することが増えている。新しい技術、新しい会社を提供するのが使命なので、そこを目指して世界中の技術、テクノロジーとの協業、グローバルでとにかく一番進んでいるスタートアップとの協業を積極的に進めている。
日本の会社でありながら、国ごとの特色を活かして拠点展開をし、それぞれの強い技術と協業していくことで、グローバルと市場に向かって価値提供していっている。スタートアップ側としては大企業との協業の際は、何が求められているかを把握し、自社の提供価値をしっかりと考えることが重要である。
オープンイノベーションと言う定義が出来上がる前、今から30年前よりアメリカの研究機関と協業を行ってきたこともあり、オープンイノベーションについては非常に積極的である。世界的にトレンドにいち早く近づくのはスタートアップと協業、ジョイントであり、それが成果に繋がっているとのことだ。
9〜10億の決済者が「身分特質」「履約能力」「信用歴史」「人脈関係」「行為偏好」の5項目について個々人の点数を算出し、総合点で格付けするジーマポイントを展開するアリババはそのビッグデータが何よりも強い武器である。アルファロメオを350台(半年の目標である)を30数秒で売ったり、同様にマセラティの2000万円台クラスをインターネットだけで10秒ほどで100台を完売することで、ビッグデータの可能性を見せつけた。自社自体がイノベーションの段階にあるとのことで、資生堂などの大手企業との協業が目立つ他、中国国内では可能性のあるスタートアップを次々と買収。日本のスタートアップとの協業はまだないとのことだが、面白い商材をもっているスタートアップでアジアで勝負していきたいとことは、一緒にやってみたいとのこと。
."協業の上で一番大事なのは、現実を動かしていく力。本気で何ができるのかを考えないとそこからしか協業はうまれないのかな」という林野氏の言葉が印象深かった。
スタートアップワールドカップ日本代表が決定!
今回都内で開催された「スタートアップワールドカップ2020東京予選」。日本の技術力・ビジネス力で世界をリードしたい。そんな熱い思いを持った選りすぐりのスタートアップが日本代表の座を競った。
満員の観客席の中、ファイナリスト10社がピッチを終え、スポンサー特別賞として、非接触型の静脈・掌紋認証システムを個人認証プラットフォームとして提供する「ノルミー」がマイクロソフト賞、イエバエを活用し、畜産糞尿を有機肥料や飼料に100%リサイクルする循環システムを開発する「ムスカ」がサントリー賞、独自開発の人工知能エンジンをB to B向けに提供する「シナモン」がセガサミーグループ賞を受賞。そして日本代表にはソーラー発電所の設置と太陽光発電システム機器販売する「Looop」が選ばれた。5月のサンフランシスコにおける決勝戦が楽しみである。